電源の選択などに影響を及ぼす第4版医療用機器規格

著者 Jeff Schnabel COO, Same Sky

新たな使用方法と期待によって安全性と有効性に対する要件が高まっている中、医療用電気機器のIEC 60601-1技術規格が変更されました。第4版と呼ばれる最新版の規格を採用する最初の地域は、北米とEUです。 当該の市場に投入される製品は、2019年1月1日までに準拠する必要があり、他の地域も後に続くものと予想されます。

医療用機器のメーカーにとって、この動きへの最善の対応策は、新規格をすぐに理解し、新規格に応じて新製品を設計することです。第4版では、スマートフォンやウェアラブルなどのワイヤレス機器の一般的な使用増加と、家庭などでの医療用機器の新しい使用コンテキストのために必要であった、電磁適合性(EMC)の制限強化などの複数の変更が行われています。 全般的には、この改正により、製品の設計プロセスとドキュメント、および機能と性能が影響を受けます。

IEC 60601-1の背景

IEC 60601-1は、コア規格である60601-1-1と、EMC(60601-1-2)のような特定の分野をカバーする複数の付随規格(60601-1-x)で構成される規格スイートです。他の付随規格に含まれる60601-1-11は、家庭医療機器用に最近導入されたものです。

特定のタイプの製品の要件を定義する「個別規格」(60601-2-x)のセットもあります。たとえば、60601-2-16は血液透析および血液ろ過機器をカバーしています。

現在、米国、カナダ、EUに加えて、日本、ブラジル、韓国など、世界中の多くの地域で第3版の60601-1が参照されています。 第3版自体は最近3.0から3.1に更新されており(500以上の変更と明確化が含まれています)、一部の地域はこの更新にまだ対応していません。 さらに、中国と台湾は第2版の適用を続けています。

60601-1に対する最新の改訂は第4版と呼ばれるようになっています。 付随規格60601-1-2でカバーされているEMCの問題をいっそう深く掘り下げるため、改訂版では60601-1規格の多数の重要な側面を包括的にカバーするように拡張されています。

安全性および機能に対するアプローチの変更

一般に機器の機能や性能を規定することが好まれた従来の規格設定アプローチから一歩進めて、第2版以降の60601-1では、リスク分析と危険に基づく設計原則が重視されるようになっています。 最終的に、これにより、より堅牢で動作環境にいっそう適した、さらに安全なシステムの設計が促進される可能性があります。製品の認証を受けるには、適切な分析が行われ、その結果が機器の設計時に考慮されたことを証明するドキュメントを提出する必要があります。

第2版では、患者の観点から、増大するリスクの重大度に応じて、以下の3つの製品カテゴリが設けられています。

  • タイプB(身体):同じ室内の、患者から半径6フィート以内の範囲で使用される機器
  • タイプBF(身体フローティング):血圧モニタなどのように、患者の皮膚に接触する機器
  • タイプCF(心臓フローティング):ペースメーカーや除細動器など、患者の心臓に接触する機器

第3版では、オペレータと患者が異なる方法で電気ショックの危険を受けやすいことが認識されました。 それに従って、絶縁と分離の代わりに保護手段(MOP)の概念が導入され、患者保護手段(MOPP)とオペレータ保護手段(MOOP)を個別に考慮することが許可されています。表1に示すように、分離、沿面、絶縁について各MOPカテゴリに異なる仕様が適用されます。

分類 絶縁 沿面/クリアランス 絶縁
1 x MOOP 1500VAC 2.5mm/2mm ベーシック
2 x MOOP 3000VAC 5mm/4mm ダブル
1 x MOPP 1500VAC 4mm/2.5mm ベーシック
2 x MOPP 4000VAC 8mm/5mm ダブル

表1:第3版でのオペレータ(MOOP)と患者(MOPP)の保護に関する分離と沿面の仕様。

第4版はこれらの原則を基にして、リスク分析アプローチを拡張しています。 遠隔医療や自己モニタリングなどの最新の医療提供手段、およびそれらをサポートするために発達している機器の新しいクラスを認識し、生命維持装置と非生命維持装置のみを区別する従来のクラスが、3つの用途カテゴリに置き換えられています。

医療用機器の用途カテゴリの画像

図1:医療用機器の用途カテゴリ。(画像提供:CUI, Inc.

第3版のイミュニティ仕様では医療用機器の近くで「静かな」電磁環境を実行する専門ユーザーの能力が想定されていましたが、新しい第4版のクラスでは、民生用スマートフォン、ウェアラブル、他のデバイスなどのワイヤレス機器がどのような環境にもいつでも存在するので、このようなことはもはや妥当ではないことが確認されています。 第4版で定義されているさらに厳しいテスト仕様では、このような環境で発生する可能性がある干渉源に対するイミュニティを確認することが目的とされています。 表2、3、4では、放射RF、高速過渡、出力不安定に対するイミュニティに関する第3版と第4版の仕様を比較します。

IEC 61000-4-3:放射RFイミュニティ
テスト 第3版 第4版
エンクロージャ

非生命維持装置:3V/m、

生命維持装置:1kHz、2Hz、80~2500MHzで10V/m 80% AM

専門:3V/m

家庭:1kHzまたはリスク周波数80~2700MHzで10V/m 80% AM

表2:放射RFイミュニティ仕様。

IEC 61000-4-4:電気的高速過渡
テスト 第3版 第4版
AC電源またはDC入力 ±2kV、5kHz PRF ±2kV、100kHz PRF
入力/出力ポート ±1kV、5kHz PRF ±1kV、100kHz PRF

表3:電気的高速過渡に対するイミュニティ。

IEC 61000-4-11:電圧ディップ、ドロップアウト、停電
テスト 第3版 第4版
電圧ディップ(16A) >95%ディップ、0.5期間0°および180° 60%ディップ、5期間30%ディップ、25期間 100%ドロップ、0/5期間、0°、45°、90°、135°、180°、225°、270°、315° 100%ディップ、1期間30%ディップ、25/30期間

表4:電源変動に対するイミュニティ。

60601-1規格が従来の規範的アプローチから変わったため、メーカーには、設計分析、設計のプロセスと原理、特定の要素が組み込まれた、または省略された理由の説明が詳しく記述されている高品質のドキュメントが添付された新しい製品を認証用に提出する、より大きな責任があります。

このような原理的変更にもかかわらず、規格の焦点はまだ基礎安全および基本性能を保証することにあります。基礎安全では、機器使用時の物理的な危険によって直接もたらされる、許容できないリスクが排除される必要があります。基本性能は新しい版ほど明確に定義されており、使用できない場合、またはメーカーによって指定されている限度を超えて低下した場合に、許容できないリスクを生じる機能が具体的に示されるようになっています。

電源の選択と安全性

第2版でのタイプB、BF、CFの機器の区別、および第3版の保護手段の原則から明らかなように、電源の特性は機器が安全性要件を満たすかどうかに対して重要な影響を及ぼします。 表1で説明されている分離要件では、医療用アプリケーション専用に設計された電源が要求されています。さらに、タイプCFの要件では、特殊な医療用電源だけでなく、電源と患者に対する接点との間にさらなる分離バリアも要求されています。

より厳しいイミュニティ要件が規定されている第4版の登場により、電源のEMC性能も監視の対象になります。 したがって、準拠プロセスを容易にするために、60601-1第3版(3.1)の最新の改訂および第4版で規定されているEMC規格に準拠する医療グレードの電源を選択することが推奨されます。 CUIがDigiKeyで提供する内部および外部電源は、IEC 60601-1第3.1版および第4版のEMC規格に準拠しており、製品メーカーはこれを利用することで、認証を容易にし、発売までの時間を短縮できます。

CUIが提供するさまざまな内部および外部電源の画像

図2:CUIは、IEC 60601-1技術規格の第4版以上の要件を満たすさまざまな内部電源および外部電源を提供します。 (画像提供:CUI, Inc.)

行動を起こすとき

米国とEUは、期間を合わせて、第4版60601-1規格への準拠を必須要件としました。 2018年12月31日以降、米国食品医薬品局(FDA)に提出されるすべての新製品は新しい規格に準拠する必要があり、EUは同じ日を現在の3.1版ベースのEN 60601-1-2:2007規格の撤回期限日(DoW)に設定しています。ただし、米国では従来の機器を米国内で販売することが引き続き許可されているのに対し、EUはそのような譲歩をしておらず、DoW以降に輸入されるすべての医療用機器は第4版に準拠する必要があります。 ですから、今こそ行動を起こすべきなのです。

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