八木アンテナ:シンプルで柔軟性があるためDIY愛好者に最適で、すぐに入手可能
多様なアプリケーションのニーズに対応するため、数多くの基本的なタイプ(およびそれらのタイプ内のバリエーション)で使用可能な、さまざまなアンテナと構成があります。アンテナには、長いワイヤを使ったシンプルなものから、複雑なマルチバンドアレイ、さらには多入力/多出力(MIMO)配置などがあります。
この膨大な種類のアンテナの中で、DIY愛好家や商用設計者の間で長く愛用されてきたのが八木アンテナ(正確には八木・宇田アンテナ)です(図1)。
図1:基本的な八木アンテナは、商用、住宅用、軍事用アプリケーションで広く使用されている3素子アンテナで、多くの場合、屋上やマストに設置されます。(画像提供:EuroCaster/Denmark)
八木アンテナの人気の理由
八木アンテナが人気を博している理由はたくさんあります。
- アンテナに必要な寸法が簡単に計算できます(ただし、根底にある電磁気解析は複雑です)。
- 素子の厚みや端部効果などの実用的な問題に対応するために、これらの寸法を調節することはよく知られており、サイジング解析に織り込むことができます。
- 簡単に組み立てられるので、DIYプロジェクトにも使用できます。
- ホームセンターで入手できる標準的なパイプや接続金具を使用すれば、屋外用の頑丈なアンテナを簡単に作成できます。
- 提供される性能の割には、アンテナのサイズは控えめです。
- シンプルな単一給電点を備えており、抵抗性インピーダンスがほとんどなので、必要に応じて伝送線路とのマッチングも容易に行えます。
- 調節の自由度が高く、社内や現場においてゲイン、指向性、帯域幅、サイドローブなどの要素を(合理的な範囲内で)簡単に変更できます。
- 基本設計では、通常は等方性(dBi)と高い前後比(10~20dB、標準)を基準とする十分なゲイン(8~10dB標準)、および少なめの帯域幅(中心の10~20%)を提供しますが、これらの数値を改善する方法もあります。
- 幅広い周波数帯で動作するように設計・製作することができ、30MHzから3GHzの範囲の商用ユニットを多数揃えています。
- 数百ワット以上の高電力に対応するさまざまなバージョンを提供できるように、構造を簡単に拡張することができます。
八木アンテナの沿革
八木アンテナは、1926年に日本で八木秀次教授と、その門下の西村雄二氏の同級生だった宇田新太郎教授によって開発され、宇田氏が日本の雑誌でその理論を発表しました。その直後に八木氏が帝国学士院紀事に『Projector of the Sharpest Beam of Electric Waves』として発表した英語の論文が広く注目を集めました。それが、八木の名前がこのアンテナに冠されている理由です。
ケーブルテレビやインターネット配信がなかった時代にテレビ信号を受信するには、物理的なアンテナを使用したオーバーザエア(OTA)RF信号しか選択肢がありませんでした。テレビ送信機から約10~20マイル以上離れている場合、送信機のパワーや場所の詳細にもよりますが、単純な折り返しダイポールが提供するよりも高いゲインのアンテナが必要でした。八木アンテナは、この要件を満たす最も一般的な選択肢でした。
これらの放送テレビ用八木アンテナは、電器店、家電店、ホームセンターのほとんどに置いてある標準アイテムでしたが、現在でもある程度は残っています。OTAテレビの視聴者は、自宅と異なる方角にある送信機からの信号を受信したい場合、八木アンテナを目的の送信機に向けて回転させる手動または電動の機構を追加することもできました。
古い地域では、八木アンテナが使用されなくなっても、煙突や別のマストに取り付けられたままにしている家が少なくありません。皮肉なことに、「コードカッティング」(ケーブルテレビから地上波テレビへの回帰)の流行によりOTAテレビが再び注目を集め、八木アンテナを含むあらゆるタイプのアンテナ販売が増加しています。
八木アンテナは、OTAテレビ以外にも、方向探知、アマチュア無線、軍事システム、および高指向性、前方ゲイン、高前方/後方比、最小サイドローブが重要なアプリケーションで広く使用されています。
八木アンテナの動作の基礎
最も単純な八木アンテナは、通常金属製の支持梁に沿って配置された3つの素子で構成されています(図2)。中央の素子だけが電気的に接続されています(「励振」素子と呼ぶ)。中央の素子は、単純な中心給電型の半波長ダイポール、または折り返しダイポールアンテナのどちらかになります。励振素子の背後には絶縁されたやや長めの反射素子(リフレクタ)があり、その前方には短めの絶縁された「導波器」(導波素子)があります。
図2:基本的な八木アンテナは、励振(アクティブ)ダイポール素子とその後ろにある受動反射素子、その前にある受動導波器の3つの素子を1本のブームに搭載したものです。(画像提供:RFWireless-World)
反射素子や導波器は、アクティブな励振素子とは対照的に、「非励振」素子(または「寄生素子」)と呼ばれることもあります。しかし、その回路内の部品の性能に悪影響を与える不要で望ましくない非励振素子と異なり、これらの非励振素子はアンテナ機能にとって重要なものです。励振素子の電磁(EM)場を意図的に歪ませるように反射素子と導波器素子を「チューニング」することで、動作が行われます。
反射素子は、目的の帯域幅で誘導性があるように見える大きさになっています。励振素子に誘導されたEM電流は、反射素子に対して位相がずれるため、非励振素子からの電力を反射させます。これにより、アンテナは非励振素子と反対方向に多くのRF電力を放射するようになります。
反射素子はディスクリートコイルを追加することで誘導性にすることができますが、実際には、より簡単で安価な方法、つまり反射素子を励振素子より長くする方法で対処することがほとんどです。標準的な経験則として、反射素子を励振素子より5%長くします。
非励振素子を誘導性でなく容量性にした場合は、誘導電流の位相がずれるため、アンテナ全体から放射される電力をその素子の方向へ向けることができます。これはディスクリートコンデンサで実行可能ですが、ほとんどの場合、励振素子より5%程度短くすることで対応します。
また、励振素子と受動素子の間隔も重要です。開始点となる励振素子と反射素子の間隔は0.23波長(λ)~0.35λ、励振素子と導波器の間隔は0.125λ~0.15λです。これにより、高い指向性と前後比、および控えめなサイドローブを備えた放射パターンが得られます(図3)。
図3:シンプルな八木アンテナの一般的な放射パターンは、高い指向性と前後比を備え、サイドローブも控えめです。(画像提供:Electronics-Club)
この基本的な八木アンテナは、10Ω~40Ωの抵抗インピーダンスを備えた平衡伝送線路として現れるため、インピーダンスマッチング回路が必要です。また、非平衡同軸伝送線路を平衡伝送線路に変換するインピーダンスマッチングバランでアンテナを励振することも可能です。
八木アンテナの柔軟性
八木アンテナの基本的な配置を見ればわかるように、このアンテナは調節の自由度が高いのが特徴です。励振素子や非励振素子の長さや直径、間隔を変えることで、設計者は指向性、ゲイン、前後比、帯域幅、サイドローブなどのアンテナパラメータを変更したり、トレードオフしたりすることができます。
八木アンテナは3つの素子のみに制限されないため、八木アンテナの柔軟性はそれらを変更できるだけにとどまりません。励振素子の前方に近くなるほど短くなる導波素子を増やすことで、アンテナの指向性を高め、サイドローブを低減させることができます(図4)。
図4:ブームを延長して受動導波素子を追加することで、八木アンテナの指向性と前後比を高め、サイドローブを低減させることができます。(画像提供:Electronics-Notes)
これらの追加された導波素子の間隔は波長率ともなっており、アプリケーションに合わせて八木アンテナの性能をさらにチューニングできるように調節可能な別のパラメータとなっています。八木アンテナの中には、6本以上の導波素子を備えたものもあります(図5)。これらの素子を追加すると、主支持体の全長が長くなりますが、複雑さにはほとんど影響がありません。
図5:7つの導波器を備えたこの八木アンテナのように、導波器を増やすとブームの長さが長くなりますが、構造の複雑さへの影響はほとんどありません。(画像提供:TreLink Communication Co., Ltd.)
市販されている八木アンテナ
従来のアナログ帯域や新しいデジタル帯域のOTAテレビ用に特別に設計された標準的な八木アンテナが市販されているだけではありません。多くの帯域のOTAテレビ用に設計された標準的な八木アンテナも市販されています。たとえば、Antenna Technologies Limited Companyの220-6H-MKは、220MHzを中心とする6素子(励振素子1、反射素子1、導波素子4)の八木アンテナで、215MHz~225MHzの3dB帯域幅を備えています(図6)。
図6:220-6H-MK八木アンテナは、215MHz~225MHzの3dB帯域幅を備え、1つの励振素子、1つの反射素子、4つの導波素子で構成されています。(画像提供:Antenna Technologies Limited Company)
この頑丈なアンテナの重量はわずか4.25ポンド(1.9kg)で、9dBiのゲイン、15dBの前後比、5フィート(1.5m)のブーム長を特徴としています。受風面積はわずか0.67フィート2(0.06m2)で、最大時速125マイル(200km)の風に耐えることができます。
より高い周波数向けには、Siretta Ltd.のクアッドバンドOscar 3Aが、GSM/GPRSアプリケーション向けに中心周波数850、900、1800、1900MHzのカバー範囲を提供します(図7)。この垂直偏波アンテナは最大200Wまで対応し、全範囲で11dBiのゲインと1.6未満の電圧定在波比(VSWR)を提供します。サイズは縦570mm x 横180mm x 高さ36mmで、FMEのオスコネクタと、標準アンテナポールに使用可能なユニバーサルクランプが付属しています(図7)。
図7:Oscar 3Aは、中心周波数850、900、1800、1900MHzのカバー範囲を提供し、最大200Wまで対応可能で、11dBiのゲインと1.6未満のVSWRを提供します。付属品としては、マストに設置するための基本的な取り付け金具があります。(画像提供:Siretta Ltd.)
まとめ
八木・宇田アンテナは100年近く前のものですが、最も柔軟で汎用性があり、調節可能なアンテナ配列の1つとして、今でも広く利用されています。高いゲイン、指向性、前後比、および低いサイドローブが要求されるアプリケーションに適しています。このシンプルな外観のアンテナは、Antenna Technologies CompanyやSirettaなどのメーカーから多くの周波数帯に対応した標準品として提供されています。また、DIY愛好者でも簡単に製作し、必要に応じて調節することができます。その人気と歴史から、高度に理論的なEM分析から実践的な製造/評価記事まで、何千もの研究資料が入手可能です。
参考記事
1:ワイヤを超えて:厳しいワイヤレス要件を満たすためのアンテナの進化と適応
https://www.digikey.jp/ja/blog/beyond-wires-antennas-evolve-and-adapt
2:アンテナ:設計、アプリケーション、性能
https://www.digikey.jp/ja/articles/antennas-design-application-and-performance
3:アンテナの選択は多くの因子で決まる
https://www.digikey.jp/ja/articles/antenna-selection-depends-on-many-factors
4:アンテナの仕様と動作を理解するために、その1
https://www.digikey.jp/ja/articles/understanding-antenna-specifications-and-operation
5:アンテナの仕様と動作を理解するために、その2
https://www.digikey.jp/ja/articles/understanding-antenna-specifications-and-operation-part-2
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