プリント回路基板:非常に大きな役割、不当に小さな評価
プリント回路基板は文字通り、エレクトロニクス製品およびシステムの基盤です。数十、数百、さらには数千もの能動部品、受動部品を小さな土台(パッド)と髪の毛ほどの細いトレースで「配線」してつなぎ、さらに物理的な支持、実装タブ、コネクタ配列なども備えています。PCBまたはプリント基板と呼ばれることも多く、かつて、業界標準策定機関のIPC(旧称Institute for Interconnecting and Packaging Electronic Circuits)は、呼称をプリント配線基板(PWB)に変えようとしましたが、結局その呼び名は忘れ去られました。
読者の皆様に、プリント回路(pc)基板の不可欠な役割とその汎用性、機能性について改めてご紹介するまでもないでしょう。しかし多くの場合、シンプルでありながら必須の存在なのに、取るに足らない受動部品と軽く捉えられがちです。でもこのような単純化は誤解の元です。
プリント基板の興味深い歴史
これまでプリント基板は興味深い歴史を辿ってきました。約50年前に初めて開発されたとき、多くの設計者はそれを、必要だが頭痛の種と考えました。プリント基板は、ポイントツーポイントの配線とはんだ付けを行う手作業の代わりに必要とされました。そのような手作業は、100本以上の真空管で作られるカラーTVなどの製品に必要な部品密度と製造時間に通用しなくなったのです。実際、当時のある大手TVメーカーは、同社のテレビが職人の手作りであることを売りにして、素性の知れない回路基板など使わないと豪語していました。そのマーケティングの末路は想像に難くありません。
最初のプリント基板は片面で、昨今のガラスエポキシ複合材ではなく、フェノール樹脂またはベークライト製でした。スルーホール部品とソケットリード用にはドリル加工の穴でなく、パンチ穴でした。はんだ付けはまだ手作業でした(図1)。線幅は3~6mm程度でした。
図1:この画像のような基本的な片面スルーホールのフェノール樹脂基板が、最初の一般的なプリント基板のコンセプトでした。(画像提供:TheEngineeringProjects.com)
このような初期の基板は信頼性にも乏しく、被覆材の剥離、許容誤差の問題、不均一なはんだ付けなどの不具合を抱えていました。にもかかわらず、故障は許されませんでした。多数の部品点数、ICパッケージ、部品の小型化、多くのピン数、そして表面実装部品などを扱う唯一の実用的な手段が、プリント基板だったからです。今のプリント基板は、このような初期の製品と比べれば性能、機能のあらゆる面で桁違いに進歩しています。
興味深いことに、一部の家電製品には今も片面フェノール基板が使用されており、ほぼすべての部品を保持しています。上面ワイヤジャンパの挿入により、非常に低コストの片面基板を使用できます(図2)。
図2:2010年の電子レンジに使われていたフェノール製プリント基板には、電源(低電圧および高電圧)、トランス、電源デバイスなど回路部品の多くが含まれています。低コストの片面基板を使用できるように、上面ジャンパを使用しています。(画像提供:Low Price Mart)
マルチタスクをこなす精密部品としてのプリント基板
軽く考えられがちな部品ですが、現在のプリント基板は高度な設計の精密部品です。プリント基板に期待される役割は非常に多く、単なるコンポーネントキャリアや相互接続プラットフォーム以上の機能を発揮します。プリント基板が果たす役割には、以下のものがあります。
- 基本の両面プリント基板の場合、露出した層に電源とグランドを配線します。
- 一般的な4層基板などの多層基板では、1つの内部層が1つ以上のレールに電力を供給し、別の内部層にはグランド機能があります。導電性ビア(via:vertical interconnect access)は、必要に応じてこれらの層を接続します。
- 高温部品の近隣にある銅は、ヒートシンクとして機能するか、熱をディスクリートのシンクに逃がすための熱コンジットとして機能します。
- プリント基板の銅線は、ストリップラインまたはマイクロストリップのトポロジを使用して、RF伝送ライン、フィルタ、アイソレータ、またはサーキュレータとして機能するように構成できます。
- プリント基板はアンテナとしても設計でき、多くの場合シングルバンドアンテナではなくマルチバンドアンテナとして設計されます。
- RF受動デバイス(コンデンサおよびインダクタ)も、適切な銅パターンを使用して構築できます。
- 精密な寸法のトレースは、トレース全体のIRドロップによる電流フロー測定のための低値抵抗(数ミリオーム)として機能します。
- 銅は、オペアンプへの高感度で低レベルのアナログセンサ入力の周りでガードリングにもなります。
- 基板の銅はEMCシールドとして働き、入射RFが回路に影響を与えるのを防ぎ、基板からの放射を減衰させます。
- ハーネス内の個別のワイヤを終端する硬質ピンと軟質ピンの両方に対するプッシュインレセプタクルとなります。
これでも不十分とおっしゃるなら、リストに追加された新しい使い道をご紹介しましょう。それは、Würth ElektronikのリボンケーブルIDC(圧接コネクタ)用の嵌合コネクタとしての機能です。IDCの標準的な嵌合ペア(一方がピンコンタクト(ピン)を備えたオス、もう一方がソケットを備えたメス)の代わりに、WürthのアプローチではオスIDCの嵌合用として基板を使用します。
といっても、ワイヤを基板に直接差し込む使い方はこれが初めてではありません。長年にわたり、硬質ピンまたは軟質ピンの1本1本がプリント基板のメッキ穴に押し込まれていました。しかし、これらのピンを取り外すとピンと基板を傷つけてしまうため、1回挿入したらそのままでした。対照的に、WürthのREDFIT IDC SKEDDコネクタ ファミリは、指定されたプリント基板の穴のサイズ変更とメッキを使用して最大10回、さらに許容差を大目に見て最大25回挿抜できます。
図3:WürthのREDFIT IDC SKEDDコネクタ ファミリでは、オス(ピン)IDCとフラットケーブルとの嵌合にIDCレセプタクルが不要なため、コストを節約しBOMを簡素化して、ワイヤをコネクタに変える作業を減らせるため、潜在的な問題の原因も減ります。(画像提供:Würth Elektronik)
地味で評価が低いプリント基板ですが、次の変化は何でしょう?広く使われているFR-4ガラスエポキシ基板は、今ほど主流ではなくなりそうです。FR-4の固有の特性は、比誘電率、比誘電率(er)、損失率(tδ)、吸湿性などの繊細な電気的および素材上の要素が重要になる、マルチギガヘルツ(GHz)の厳しい設計要求を満たしません。また、これらの数値にはGHz設計ニーズへの適合性が必要になる上に、FR-4にはない非常に低い温度係数も必要になります。機械的および寸法的な温度係数も、さらにその重要性を増します。というのも、このような周波数では微小なズレでさえも電子的性能に影響するからです。
たとえ誰かがプリント基板を「取るに足らない」部品として扱っても、その見当違いな評価を鵜呑みにしてはなりません。プロジェクトの成功は、他の部品と同様にプリント基板にも大きく左右されます。プリント基板機能の最大化、厳しい仕様に準じた多層基板の製造、基板の搭載、適切なはんだ付けなどの技量は、基本性能、不良率/廃棄率、使用場所での信頼性に直接影響します。
参照資料:
1 – Wikipedia、“FR-4” https://en.wikipedia.org/wiki/FR-4
2 – Wikipedia、“Printed circuit board” https://en.wikipedia.org/wiki/Printed_circuit_board#Materials
3 – Wikipedia、“Via (electronics)” https://en.wikipedia.org/wiki/Via_(electronics)
4 – SEEED Studio、“Printed Circuit Board (PCB) Material Types and Comparison” https://www.seeedstudio.com/blog/2017/03/23/pcb-material/
5 – Al Wright、Epec LLC.、“PCB Vias - Everything You Need To Know” https://blog.epectec.com/pcb-vias-everything-you-need-to-know
6 – John W. Schultz、Compass Technology Group、“A New Dielectric Analyzer for Rapid Measurement of Microwave Substrates up to 6 GHz” https://compasstech.com/wp-content/uploads/2019/02/A-New-Dielectric-Analyzer-for-Rapid-Measurement-of-Microwave-Substrates-up-to-6-GHz.pdf
7 – Rogers Corp.、“Characterizing Circuit Materials at mmWave Frequencies” https://www.microwavejournal.com/articles/32237-characterizing-circuit-materials-at-mmwave-frequencies?v=preview
8 – Rogers Corp.、“Laminate Materials Simultaneously Increase μ and ε, Reducing Antenna Size” https://www.microwavejournal.com/articles/32056-laminate-materials-simultaneously-increase-mu-and-epsilon-reducing-antenna-size
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