医療測定と設計者にまったく新しい機会をもたらすフォトニクスとオプトエレクトロニクス

患者の血中酸素濃度(SpO2)を測定するために広く使用されているフィンガークリップオン装置(パルスオキシメータ)は、ほとんどの人がご存知でしょう。ここで言う血中酸素濃度とは、正式には末梢毛細血管酸素飽和度1として知られるものです。1980年代の初めから広まったこの光学技術は、時間がかかり、かつ危険を伴う非リアルタイムの血液採取プロセスであったSpO2測定を、ごく当たり前の非侵襲のリアルタイム測定へと完全に変貌させました。

もちろん、このデバイスの開発は迅速でも簡単でもありませんでした。研究と実験、血液酸素と光学特性に関するデータの収集、アルゴリズムの開発には、何十年もの時間が費やされました。その取り組みでは、一定した性能を有する異なる波長のLEDの開発と、相補的なフォトトランジスタの開発が並行して進められました。

光SpO2テストは現在では十分に理解が進み、独自のメータ開発者向けにICベンダーが使いやすいICと評価キットを提供しています。Maxim Integratedの高集積MAX30102酸素濃度計および心拍数モニタなどがそうですが、これには、アナログフロントエンド、管理機能、I/Oがすべて含まれ、Maxim IntegratedのMAX30102ACCEVKIT評価キットでサポートされています。

図1:Maxim IntegratedのMAX30102は、SpO2ユニットのLEDを駆動するほか、フォトトランジスタ出力のデジタル化とデジタルI/Oポートを提供する高集積の単一ICソリューションを提供します(画像提供:Maxim Integrated)

これは間違いなく、光学機器とエレクトロニクスの融合が、個人使用であれ、研究室であれ、医療検査にどのような変革をもたらしたかの最も代表的な例ですが、まだまだ他にもあります。このような研究の多くはまだ実験段階にあるか、あるいは医療製品には避けられない長い承認待ちの段階ですが、これらの開発は魅力的で注視すべきものです。

SpO2メータのように把握しやすいものには、通常はフォトトランジスタとLEDまたはレーザーダイオードの組み合わせを使用します。たとえば、ミシガン州立大学の研究チームは、指先装置を開発しています。このデバイスは、力センサの上に光センサを使用して、継続的に血圧の測定値を報告します。2

従来的な腕カフ(腕帯)を使った血圧の読み取りは、依然としてかなり迅速で、非侵襲かつリスクフリーですが、この重要な生命徴候を頻繁に読み取ったり、目立たないように監視するには不便です。

図2:MITの実験システムは、青色光源を広視野顕微鏡およびビデオカメラ(右)と組み合わせ、指先から白血球数の自動計測を実現しています(画像提供:MIT)。

すべてのオプトエレクトロニクス医療機器が、LED/レーザーダイオード光源と1つ以上の光センサだけに依存するわけではなく、ビデオカメラや画像解析もまた強力なツールです。MITの研究チームは、化学療法を受けている患者の白血球数を評価するために、非侵襲で使い方が簡単な、即時に近いシステムに取り組んでいます。3 このシステムは青色光源と組み合わせた広視野顕微鏡を使用します。その光は、約50~150ミクロンの皮膚下を透過し、顕微鏡に接続されたビデオカメラに投射されます(図2)。この撮像の配列は爪の根元に焦点を合わせたもので、毛細血管が皮膚表面に非常に近く、白血球が単一の縦列内を通過しなければならないほど狭く、そのため白血球が数えやすくなっているのがわかります。

MITのシステムは基本的な電子機器と光学部品の応用ですが、フォトニクスベースのシステムにはいろいろな動向があり、制御とデータ収集のために電子機器を使用して高度なフォトニクスをサポートしています。このような設計の多くは、可視光、近赤外または近紫外領域のレーザーの単色光の非弾性散乱によるラマン分光法などの高度な技術を存分に活用しています。レーザー光は、システム内の分子振動、フォノン、その他の励起と相互作用し、レーザー光子のエネルギー(および波長)を上下にシフトさせます。

次にこのエネルギー/波長のシフトは、分子を同定し得る構造的指紋を供するデータを生み出します。今日の技術では、ラマン分光法システムを実現することは実現可能であるだけでなく、実際には難しいものではありません。

ラマン分光法を使用する多くの先進医療システムの中には、フランスのマルセイユにあるフレネル研究所(Institut Fresnel)のバイオセンシングと画像処理用のレンズレス内視鏡があります。この手法では、可撓性のある中空コアファイバが圧電アクチュエータを使用して関心対象の内部器官に光を誘導します。また、圧電アクチュエータは、そのスペクトル放射を捕捉します。4、5(図3)。その目的は、いくぶん侵襲的ながらリアルタイムで悪性組織の生体検査を行うことです。

図3:中空の光ファイバを使用して関心のある部位にレーザービームを伝え、それを誘導するためにピエゾプローブを使用することで、この光による「生検」技術は針をベースにした検査に取って代わるものになり得ます。4(画像提供:Institut Fresnel(Laser Focus World誌を通じて))

これを標準的な生検と比べてみましょう。標準的な生検の場合、検査中の組織片を針で抽出し、化学的に安定化させ、脱水してワックスで包埋し、選択色素で染色した後、顕微鏡で検査します。痛みを伴うこのプロセスは数日を要し、患者にとっては精神的にも肉体的にも財政的にも辛いものです。

多くの電気技術者は、レンズ、光学波長、反射、屈折、光源、センサなどの光学の基礎の少なくともいくらかは教育を受けています。これは必要なことであり、役に立ちます。最近では、これらの概念を最新のLED、レーザーダイオード、フォトダイオード、フォトトランジスタと組み合わせて使用​​することで、指先SpO2センサのような、驚くほど広く普及し、実効性のあるデバイスが作られています。

しかし、今日の電気光学は、光源とレンズの単純な「線形」の組み合わせだけでなく、制御およびデータの取り込みや解析のための電子機器にも踏み込んでいます。今や医療機器には、高度な物理学と光子原理が日常的に応用されています。そこに取り込まれたアイデアは、最近まで実現不可能と思われていたもの、あるいは以前は夢想だにされなかったものです。だからこそ、計装を行うエンジニアにとっては、これらの新しい技法や技術を注意深く勉強することが、賢明な行動と言えるのです。

読者が現在、医療検査分野に従事していなくとも、これらの技術の多くは他の検査や測定アプリケーション(化学物質、材料)に適応されており、多くの相互作用があります。最低限、フォトニクス関連ウェブサイトの発表を定期的にチェックし、どこで動きがあり、それがどこに向かい、そして自分がそれをどのように活用できるのかを掴んでおくことは、やるだけの価値があります。

 

リファレンス:

1 – DigiKey、「血中酸素濃度モニタリングの設計課題の理解と解決

2 – ミシガン州立大学、「腕カフの正確さに対抗する新しい血圧アプリケーションとハードウェア

3 – MIT、「モニタは危険なほど低白血球レベルを検出する

4 – Institut Fresnel、「可撓性の非線形画像処理内視鏡用中空コアフォトニック結晶ファイバとラマンプローブ

5 – Laser Focus World誌、「リアルタイム生検を目標にするマルチモーダル内視鏡検査

著者について

Image of Bill Schweber

エレクトロニクスエンジニアであるBill Schweber氏はこれまで電子通信システムに関する3冊の書籍を執筆しており、また、発表した技術記事、コラム、製品機能説明の数は数百におよびます。これまで、EE Timesでは複数のトピック固有のサイトを統括するテクニカルウェブサイトマネージャとして、またEDNではエグゼクティブエディターおよびアナログエディターの業務を経験してきました。

Analog Devices, Inc.(アナログおよびミックスドシグナルICの大手ベンダー)ではマーケティングコミュニケーション(広報)を担当し、その職務を通じて、企業の製品、ストーリー、メッセージをメディアに発信する役割と、自らもそれらを受け取るという技術PR業務の両面を経験することになりました。

広報の業務に携わる以前は、高い評価を得ている同社の技術ジャーナルの編集委員を務め、また、製品マーケティングおよびアプリケーションエンジニアチームの一員でした。それ以前は、Instron Corp.において材料試験装置の制御に関するハンズオンのアナログおよび電源回路設計およびシステム統合に従事していました。

同氏はMSEE(マサチューセッツ大学)およびBSEE(コロンビア大学)を取得した登録高級技術者であり、アマチュア無線の上級クラスライセンスを持っています。同氏はまた、MOSFETの基礎、ADC選定およびLED駆動などのさまざまな技術トピックのオンラインコースを主宰しており、またそれらについての書籍を計画および執筆しています。

More posts by Bill Schweber氏
 TechForum

Have questions or comments? Continue the conversation on TechForum, Digi-Key's online community and technical resource.

Visit TechForum