車載用バッテリ回路におけるNTCサーミスタの信頼性

電気自動車のバッテリ管理システムでフレキシブルPCBを使用する場合、レーザーはんだ付けによる機械的応力や温度変化が面実装NTCサーミスタの熱クラックを引き起こす可能性があります。これは、検出するのが難しい破壊的な故障を招くおそれがあります。部品クラックの脅威は、フレキシブルな終端を備えたバルク金属酸化物サーミスタを利用することで最小限に抑えることができます。

電気自動車(EV)市場が急成長を続けるにつれ、技術的な課題やそれに対処するために開発される技術革新も増えています。このうち、設計技術者が最も力を入れているのは、バッテリ技術、電源回路の効率、急速充電ソリューションの改善です。

現在、EVに使用されている電池組成はリチウムイオンが主流で、単セルの電圧は3.6V~3.7Vです。そのため、全体の電圧が500V~900Vの電力システムを作るには、直列並列セットアップでこれらのセルを最大数百個必要とする場合があります。さらに、これだけ多くのセルを含むシステムの性能を最適化するには、効率的なバッテリ管理システム(BMS)で温度、インピーダンス(内部セル抵抗)、電圧、充放電電流を監視する必要があります。これらの仕様はそれぞれバッテリの性能に影響を与えます。

BMSは、セル管理コントローラ(CMC)とマスターセントラルユニット、またはバッテリ管理コントローラ(BMC)で構成されます。CMCは、マルチチャンネル集積回路(IC)(現在は最大16チャンネル搭載)を使用して監視機能を実行し、BMCは個々のCMCの制御機能を処理します。このタイプのシステムで測定されるコアパラメータは、温度、インピーダンス、電圧、電流です。

温度測定に特化した場合、負温度係数(NTC)サーミスタが最も一般的な部品ソリューションです。通常、デバイスは「ホットスポット」を特定するために、セルやモジュールの壁、または電気接続部のごく近くに取り付けられます。サーミスタの温度が上昇すると、部品の抵抗温度係数が負に大きくなるため、電気抵抗は高感度曲線で減少します。温度は、ICに内蔵されたA/Dコンバータ(ADC)により、抵抗-サーミスタネットワークの電圧を測定することで決定されます。正確な温度読み取りは、バッテリの適切な機能とシステムの安全性にとって非常に重要です。正確な温度測定には、NTCと測定回路の抵抗値が非常に重要です。

一般的な面実装NTC。(画像提供:Vishay)

高電圧バッテリシステムは、20個以上の面実装NTCサーミスタで構成され、アセンブリされたバッテリ構造の周囲に巻かれたフレックス回路上に配置されます。実装基板がFR4 PCBの場合、これらの部品をリフローはんだ付けやウェーブはんだ付けすることが可能です。しかし、一部のフレックス回路では、こうしたはんだ付け技術を使用できず、他の高感度部品へのダメージを避けるために、局所加熱によるレーザーはんだ付けに頼っています。このプロセスが厳密に制御されていないと、セラミック部品の熱クラックにつながる可能性があります。同様に、バッテリシステム全体も、アセンブリや操作において大きな機械的応力を受ける可能性があります。ここでもまた、フレックス回路アセンブリは、部品の終端を介したねじり応力や、クラックの原因となる部品への直接的な圧力にさらされる可能性があります。

SN/Pb(錫/鉛)プレートつや消し仕上げ、鉛含有率4%以上。(画像提供:Vishay)

このタイプの故障は、いくつかの要因に左右されるため、検出が難しく、予測どおりに発生する可能性も高くありません。さらに、積層セラミックコンデンサでよく知られているように、実際の部品の故障(部品のクラック)は、かなり後になるまで、つまりシステムが配備されたずっと後になるまで表面化しない可能性があります。このような故障は壊滅的なものとなる可能性もあり、交換や修理に非常にコストがかかります。

温度変化やフレキシブルPCB使用時に発生する可能性のある機械的応力による部品クラックのリスクを軽減するため、Vishay NTCSシリーズのサーミスタは、焼成厚膜材料ではなく、硬化エポキシのポリマー終端にニッケル錫を電気メッキしたバルク金属酸化物材料を採用しています。このソリューションは、多層構造セラミックコンポーネントに見られる他社製のフレキシブル終端ソリューションに加え、ストレステストにおいて代替終端材料を大幅に上回るフレキシブルな終端構造を提供します。

フレキシブルPCB回路を使用するバッテリ管理アセンブリへのストレスはアセンブリごとに異なる可能性があるため、ねじり力や熱ストレスを吸収できるフレキシブル終端ソリューションを採用することで、フィールド故障の可能性を大幅に低減し、信頼性と耐用年数を向上させることができます。

著者について

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Alain Stasは現在、Vishayの非直線抵抗器担当プロダクトマーケティングエンジニアを務めています。Planet AnalogにサーミスタやRTDを使った電子シミュレーションに関する記事を複数執筆しているほか、hackster.ioでVishayの部品を使ったシミュレーションに関する技術ブログを運営しています。AlainはULB(ベルギー、ブリュッセルのブリュッセル自由大学)で土木工学と物理学の理学修士号を取得し、固体電子工学と材料科学を専門としています。

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