Y1安全コンデンサの厳しい要件に対応

高電圧のライン-グランド間用途に安全コンデンサを選択する際には、妥協は禁物です。 この国際規格は、Y1タイプの安全コンデンサや、主にAC主電源回路で使用されるその他固定コンデンサの安全性能の試験と認証に関して複雑で厳格です。

IEC 60384-14規格は、世界中で広く採用され、各国の規制に組み込まれています。 この規格は、ライン間(Xクラス)およびライン-グランド間(Yクラス)の用途に使用されるコンデンサの要件を規定しています。 各カテゴリにはさらにサブクラスがあり、Y1はユーザーの安全性と電磁妨害(EMI)抑制に特化しています。

安全性はY1タイプ規格の最重要事項であり、コンデンサは重大な不具合を防ぐために安全に機能停止するように設計されていなければなりません。 主要家電製品、スマートホーム機器、HVACシステム、医療機器、産業用制御システムなどの民生用電子機器に広く使用されています。

Y1タイプのコンデンサは、一般的にスイッチング電源やその他のグランド絶縁を必要とする用途で、最大8kVのインパルス電圧に耐える必要があります。

そのため、設計者は電圧定格、静電容量値、環境要因、アプリケーション固有の要件に基づいて、適切な事前認証済み安全コンデンサを選択することが重要となります。 さらに、プリント回路基板(PCB)上のY1コンデンサの配置は、性能とEMI抑制能力に大きな影響を与える可能性があります。 最大限の効果を得るために、コンデンサを最適に配置するベストプラクティスに従うことを強くお勧めします。

厳格な試験要件

事前認証済みのY1タイプコンデンサを使用することで、必要な厳格な試験手順を経ていることが保証され、サージに耐え、確実に動作し、安全に機能停止することが可能になります。 また、振動や極端な温度などの過酷な環境条件にも耐えられるように設計されています。

コンデンサは、絶縁耐力、静電容量およびエネルギー損失、リーク電流、温度安定性、耐湿性、熱衝撃に関する試験を受けています。 また、長期的な電圧ストレス、高電圧過渡現象、炎、振動、衝撃にもさらされます。

試験は、米国に所在する保険業者安全試験所(Underwriters Laboratories)やその他地域にある同様の機関などの独立機関によって監視および認証されています。 メーカーは、認証機関による監査の際には、試験結果、材料仕様、生産記録の完全な文書を提出することが求められます。 認証取得後は、米国消費者製品安全委員会(CPSC)などの市場監視当局による監視を受けることもあります。

規格および認証規則に準拠しない場合、認証ラベルの取り消し、罰金、製品リコール、さらには市場からの排除につながることもあります。

Y1誘電体の選択

Y1安全コンデンサは、誘電体絶縁とエネルギー貯蔵にセラミックまたはポリマーフィルム材料を使用しています。 材料の種類は、静電容量や熱安定性などの性能に影響を与えます。

セラミックベースのコンデンサは通常、ピコファラッド(pF)から低ナノファラッド(nF)の範囲で低い静電容量を提供し、低い静電容量が許容される高周波EMI抑制を提供し、一般的によりコンパクトなサイズで入手可能です。 そのため、スイッチモード電源、車載回路、LEDドライバ、そして増え続ける民生機器などの用途に適しています。

フィルムベースのコンデンサは、nFからマイクロファラッド(μF)以上の広い静電容量範囲をサポートしており、より高いエネルギー貯蔵や低周波数でのフィルタリングを特徴とするアプリケーションに広く採用されています。 大型でかさばるため、産業用や高出力用途など、サイズがそれほど重要でない場合によく使用されます。

Murata ElectronicsのセラミックDK1シリーズ

製品ベンダーがより小型のデバイスを展開する中、コンデンサもまた、より小さなフットプリントで高性能を維持するために進化しなければなりません。 Murata Electronicsは、薄型でコンパクトなAC/DCスイッチモード電源アプリケーション向けに設計されたY1セラミック面実装安全コンデンサの製品ラインを提供しています。

MurataのDK1シリーズ セラミックY1コンデンサは、外形寸法が11.4mm x 6mm、高さがわずか2.5mmで、設計者は電源アプリケーションの薄型化に活用することができます(図1)。 これらの部品は小型でありながら、10pFから1500pFの静電容量値を提供し、Y1定格電圧は250VAC(RMS)から500VAC(RMS)まで対応しています。

図1:MurataのDK1シリーズ Y1コンデンサは、薄型でコンパクトな面実装オプション(L = 11.4mm、W = 6mm、T = 2.5mm)を設計者に提供します。(画像提供:Murata Electronics)

DK1シリーズのデバイスは、高ストレス条件下での長期信頼性試験を実施済みです。 熱、湿気、電気的ストレスに対して優れた耐性を発揮します。 -40°Cから+125°Cの使用温度範囲で動作します。6000メガオーム(MΩ)以上の高い絶縁抵抗により、電源、産業用制御装置、医療機器の安定性と安全性を確保します。

DK1シリーズのYコンデンサは、クラスXコンデンサとしても使用でき、X1(最大4kV)やX2(最大2.5kV)のコンデンサよりも高いサージ係数を提供することで、さらなる安全マージンを実現します。 Y1およびX1/X2の認証を取得したコンデンサは、グローバル市場における設計や在庫管理の課題を軽減します。 ただし、設計者はコスト、静電容量の要件、認証を評価し、デュアル認証を取得した安全コンデンサが用途に適していることを確認する必要があります。

MurataのDK1シリーズは、堅牢な安全機能が必要な民生用電子機器、産業用機器、その他スペースに制約のある設計など、幅広い用途に対応するオプションを提供します。 以下のコンデンサはその数例です。

  • DK1B3EA101K86HAH01(図2)は、100pFの低静電容量と300VAC定格を特長としており、信号処理回路や高速データ通信機器などの用途において、回路性能に影響を与えることなく高周波EMIをフィルタリングするのに適しています。
  • DK1E3EA102M86HAH01は、1000pFの静電容量と400VACの定格電圧を提供します。 中程度から高レベルのEMI抑制、広帯域フィルタリング、高電圧または産業グレード環境での耐性を必要とするアプリケーションに最適です。
  • DK1B3EA471K86RAH01は、470pFの静電容量で、高いノイズ抑制と安全性のバランスを提供します。 産業機器用AC/DC電源やモータ付き家電製品など、ノイズフィルタリングと電圧安定性の両方を必要とする用途に適しています。 定格は300VACです。

図2:MurataのDK1B3EA101K86HAH01は静電容量が低いため、性能に影響を与えることなくEMIフィルタリングが可能です。(画像提供:Murata Electronics)

まとめ

Y1安全コンデンサは、高電圧アプリケーションに不可欠です。厳しい環境条件下のさまざまなアプリケーションにおいて、インパルス電圧に耐え、確実に動作し、安全に機能停止することを保証するために厳格な試験を受けています。 Murata ElectronicsのDK1シリーズ セラミックY1コンデンサは、コンパクトで薄型のソリューションを設計者に提供します。DK1シリーズは多様な静電容量値と電圧定格で入手可能です。

著者について

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Pete Bartolikはフリーライターで、20年以上にわたってITとOTの問題や製品について研究し、執筆してきました。それ以前は、IT管理専門誌『Computerworld』のニュース編集者、エンドユーザー向け月刊コンピュータ誌の編集長、日刊紙の記者を務めていました。

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