厳しい環境下での高品質な電力供給に役立つLiイオンキャパシタ
再充電式電池や電気二重層コンデンサ(EDLC)を使用した分散型電源ソリューションに取り組んだことがあれば、その限界をよくご存知でしょう。電池には、環境性能、システムサイズ、および安全性に関連したトレードオフがあり、コストの増加や効果の低下につながります。EDLCはこれらの問題の一部に対処できますが、多くのアプリケーションに必要なエネルギー容量を持ち合わせていません。
これらの限界に対処するために、ハイブリッドスーパーキャパシタとも呼ばれるLiイオンキャパシタ(LIC)を活用できます。LICとは、スーパーキャパシタのようなカソードと、Liイオン電池のようなアノードという、2つの異なる技術を融合させた非対称デバイスのことです(図1)。その非対称構造により、LICは、高エネルギー密度、高電力密度、環境耐性、および耐久性の恩恵を得られる電力品質アプリケーションに適しています。
図1:LICは、Liイオン電池のようなアノードとスーパーキャパシタのようなカソードという2つの異なる技術を非対称構造で融合させています。(画像提供:
Eaton)
LICは、バックアップ電源や、ピーク電力消費時の電圧低下からの保護を提供することができます。化学工場や半導体製造などの産業用システムでは、電力品質の短時間の低下でも、高コストのダウンタイムが発生します。ブラウンアウトや停電により、データセンター内のキャッシュメモリ、RAIDシステム、およびストレージサーバの動作に支障をきたす場合があります。
ここでは、エッジでの電力品質保護アプリケーションにおける使用に適したLICの例として、Eaton、Taiyo Yuden、およびTecate Groupの3社を紹介し、LICを使用する際に注意が必要な設計上の考慮事項を簡単に説明します。
LICは、-25°Cまでの動作に対応しています。
多くのLICの動作温度範囲は-15~+70°Cですが、アプリケーションをより低温の環境で動作させる必要がある場合、Eatonは、-25°Cまでの動作に対応した30ファラド(F)のLICであるHSL1016-3R8306-Rを提供しています(図2)。このLICは、20°Cの周囲温度で250,000回以上の充電に対応し、メンテナンスフリーの耐用年数は最大20年にも及びます。標準的なスーパーキャパシタに比べ、最大8倍のエネルギー密度を実現しています。
図2:HSL1016-3R8306-Rは、-25°Cまで動作する30F LICで、20°Cの周囲温度で250,000回以上の充電に対応しています。(画像提供:
Eaton)
高温動作用のLIC
Taiyo YudenのLIC1840RH3R8107 100F LICは、高温の産業環境や屋外環境のニーズに対応します。これは、75mΩの等価直列抵抗(ESR)で最大85°Cの動作に対応しています(図3)。このLICは、85°Cで2.2~3.8V、105°Cで2.5~3.5Vの動作電圧範囲を備えており、高温での使用に適しています。このLICは、高温下で使用した場合の静電容量劣化率や内部抵抗の変化が少ないのが特徴です。
図3:LIC1840RH3R8107は、最大85°Cで3.8Vを処理する高温対応のLICです。(画像提供:Taiyo Yuden)
高エネルギーアプリケーション向けの450F
高エネルギー密度の恩恵を受けるアプリケーションを設計している場合、Tecate Groupの18種類のLICから成るファミリの中で最大のデバイスとなる、同社の450F TPLC-3R8/450MR18X40が最適であると思われます(図4)。このデバイスは、2.25Aの連続電流を提供し、ピーク定格は14.1Aです。サイズは直径18mm × 高さ40mm、重さは18gです。TPLC-3R8/450MR18X40は、定格電圧および最大動作温度で動作させた場合、予測寿命は500,000サイクル、耐久性定格は1,000時間となっています。
図4:450F TPLC-3R8/450MR18X40(後列中央)は、Tecate GroupのTPLCシリーズの中で最大容量のLICです。(画像提供:Tecate Group)
LICを使用した設計
他のスーパーキャパシタと同様に、LICの電圧は充電状態に応じて直線的に変化します。単一セルからの安定した動作電圧を必要とするアプリケーションでは、電圧ブーストコンバータが必要です。多くの場合、複数のLICを直列に接続した設計では、電圧を安定させるダウンコンバータの恩恵を受けることができます。
0Vまで放電可能な他のスーパーキャパシタとは異なり、LICでは通常、損傷を防ぐために最小放電電圧が2.2Vに制限されており、動作の信頼性を高めるセル管理システム(CMS)が必要です。CMSは約2.2VでLICの放電を停止し、複数のセルを直列に接続した設計ではセル電圧を均等に保ちます。標準的なEDLCが通常約30秒で放電するのに対し、LICは数分かけて放電します。これは、エッジでの電力品質ソリューションにおいて重要な違いです。
LICの寿命は、印加電圧と動作温度に直接関係します。高温と高動作電圧により、LICの寿命が短くなります。寿命を最大化するための主なパラメータは動作電圧を下げることであり、これは複数のセルを直列に配置することで実現できます。
まとめ
LICは、過酷な環境下で使用する分散型電力品質ソリューションを設計する際に、優れた第3の選択肢を提供します。LICのハイブリッド構造は、Liイオン電池とEDLCの特性を組み合わせています。LICは長いサイクル寿命と高いエネルギー密度を提供します。数秒ではなく数分にわたる長時間の放電は、エッジでの電力品質ソリューションにおいて重要な違いとなります。LICは、より小さく、より頑丈で、より安全なソリューションを提供できます。もちろん、その効果を最大限に引き出すためには、優れたシステム設計の実践が必要です。
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