ファクトリオートメーション用の統合型高性能ネットワーク電源

ファクトリオートメーションの目的は、製造プロセスにテクノロジーと高度な制御システムを適用し、それによって生産性を向上させ、製造コストを削減することです。ファクトリオートメーションでは、材料とワークフローの処理はコンピュータ制御のワークステーションに依存し、人間のオペレータが必要になるのは監督、監視、調整、メンテナンスのみです。これを可能にするために多くのテクノロジーが結集されますが、その基盤となるのは、ファクトリオートメーションのニーズを念頭に置いて設計、製造された、信頼性が高く効率的な統合型電源です。

たとえば、SiemensSITOP電源ラインアップには、ベーシック、スタンダード、アドバンストなどのさまざまなオプションが用意されています。Siemensのアドバンスト電源ラインアップは、高効率、小型化、過負荷動作、システム統合などの特長を備えています。そのため長年にわたり、最大限の信頼性と自動化された機能性を実現する上での最良の選択肢となっています。SiemensのSITOPスタンダードクラス電源は、堅牢性と包括的な診断機能を必要とする、それほど厳格でない産業用アプリケーション向けに設計されています。

これら2つのSITOPオプションを詳しく見てみましょう。

完全統合型のアドバンスト電源

SiemensのSITOP電源システムのアドバンストクラス電源には、同社のPSU8600電源シリーズの一部である6EP34378MB002CY0が含まれます。6EP34378MB002CY0は、4出力、24V(公称)の電源で、DINレールに取付けることができます。出力電圧レベルは4~28Vで調節可能です。各出力は最大10Aを供給でき、総出力電力定格は960Wです。出力1と2、または3と4を並列に接続すれば、2つの出力から20Aで24Vを得ることができます。入力は400~500Vの3相ACです。PSU8600の他のバージョンでは、単相入力または2相入力が利用可能です。

6EP34378MB002CY0の全体効率は93%で、動作中の低温維持に役立ちます。これにより、電源は自然対流を介して受動的に冷却されます。金属ハウジングは左右のクリアランスを必要とせず、上下に必要なクリアランスはわずか50mm(1.97インチ)です。また、-40~+60°Cの動作温度範囲を備えています。

6EP34378MB002CY0は、幅125mm(4.92インチ)、高さ125mm(4.92インチ)、奥行き150mm(5.9インチ)の小型システムです。基本ユニットの物理的寸法は、電源拡張モジュール、バッファモジュール、無停電電源(UPS)モジュール、バッテリモジュールなど、PSU8600を補助するその他の各モジュールを補完するサイズになっています(図1)。

図1:SiemensのSITOP PSU8600ベース電源と拡張および補助モジュール。拡大画像に写っているのは、モジュールを電気的に接続するシステムクリップリンクです。(画像提供:Siemens)

独自のシステムクリップリンクを使用してモジュールを追加することで、PSU8600ベースユニット電源を増強できます。拡張電源モジュールは、最大合計36の電源出力を追加できます。

短期的な停電の場合に、バッファモジュールを使用して100ミリ秒~10秒間の通電が可能です。これは、プロセスを安全にシャットダウンするのに十分な時間です。UPSとバッテリモジュールは、数時間単位でより長時間のバックアップ電力を供給します。

すべての拡張モジュールは、電源とデータ転送の両方に対応したシステムクリップリンクを介してモジュールをベースユニットに電気的に接続し、追加配線の必要性を最小限に抑えます。

PSU8600電源は、オートメーションシステムおよびTIA(Total Integrated Automation)ポータルに完全に統合できます(図2)。

図2:PSU8600コンポーネントは、包括的なデータ交換と統合を可能にします。(画像提供:Siemens)

PSU8600ベースユニットには、2つのPROFINETポートが搭載されています。PROFINETはProcess Field Networkの略で、産業用Ethernetを使用したオートメーション業界のデータ通信規格です。これは、産業用システムのデータ収集と装置の制御用に設計されています。

ベースユニットにはOPC-UA(Open Platform Communications Unified Architectureの略)も搭載されています。これは、OPC協議会によって開発された、センサからクラウドアプリケーションへのデータ交換を行うクロスプラットフォームであり、オープンソースの規格です。要するに、産業用オートメーションに使用されるマシンツーマシン通信プロトコルです。

この電源は、Siemensのヒューマンマシンインターフェース(HMI)システムであるSIMATIC WinCCをサポートしています。Siemensは、SIMATIC PCS 7に直接統合するためのモジュールとフェースプレートを提供する、SITOPライブラリも用意しています。また、SITOP電源の初期設定(コミッショニング)、エンジニアリング、および監視を行えるSITOP Managerも提供しています。このツールは、SIMATIC TIA PortalやSIMATIC PCS 7のようなエンジニアリングフレームワークに依存しません。

これらのシステムはいずれもPSU8600の監視と制御を可能にします。出力電圧の設定や変更が可能で、出力電流、電圧、過負荷や短絡状態など、完全な動作状態や診断情報を監視できます。

スタンダード電源

スタンダードクラスの電源には小型で堅牢、優れたエネルギー効率といった特長があり、迅速かつ簡単に設置できます。スタンダード電源は、アドバンスト電源と同じような高度な制御を必要としない、広範な固定電圧を備える産業用アプリケーションを対象としています。この電源のシステム統合では、動作状態と診断機能を重視しています。

SiemensのPSU6200シリーズの電源は、アドオンモジュールとともに、スタンダードクラス電源のバックボーンとなっています(図3)。

図3:1.3~40Aの出力電流範囲でACまたはDC電源が利用可能なPSU6200電源の例。(画像提供:Siemens)

PSU6200シリーズの電源は、同様のDINレールエンクロージャを使用しており、左右密着取り付けと対流冷却を可能にします。利用可能な電圧出力は12、24、48Vで、出力電流定格は1.3~40Aです。より一般的に使用されているPSU6200電源の仕様を表1に要約します。

モデル 入力タイプ 入力電圧(V) 出力電力(W) 出力電圧(V) 出力電流(A) 効率(%) 出力数
6EP34447SB003AX0 AC/DC 323~576
450~600
240 48 5 95.6 1
6EP34467SB003AX0 AC/DC

323~576

450~600

480 48 10 96.2 1
6EP34477SB003AX0 AC/DC

323~576

450~600

960 48 20 96.6 1
6EP34367SC003AX0 AC/DC

323~576

450~600

480 24 20 95.9 1
6EP34377SB003AX0 AC/DC

323~576

450~600

960 24 40 96 1
6EP34377SC003AX0 AC/DC

323~576

450~600

960 24 40 95.9 1

共通の電圧と異なる出力電流定格を備えた複数の電源を利用できるため、より高い電力レベルへのアップグレードが非常に簡単です。また、これらの電源の電源電圧は、単相のACまたはDCであることに注意してください。シリーズの他の電源では3相ACを使用しています。

PSU6200シリーズの電源はすべて95%以上の優れた効率を誇り、これによって熱を抑えて信頼性を向上させます。

基本電源ユニットは、拡張モジュール、冗長モジュール、選択モジュール、バッファモジュール、UPSモジュールなど、各アドオンモジュールによって拡張できます(図4)。

図4:アドオンモジュールは、不安定な電源や負荷が存在する場合に、電力バスの信頼性と安定性を向上させます。(画像提供:Siemens)

拡張モジュール、バッファモジュール、およびUPSモジュールについては前述しましたが、スタンダードクラス電源内でも同じ機能を果たします。冗長モジュールは2台の電源を接続することで、1台が故障した場合にもう1台が負荷の供給を引き継ぎ、ダウンタイムを防ぎます。セレクティブモジュールは個々のバスライン電流を監視し、短絡や予想以上に高い負荷が発生した場合に、バス全体の損失を防ぐために障害のある回路をシャットダウンします。

表中の最大出力レベルが240W以上の電源ユニットは、アクティブ力率補正(PFC)を備えています。さらに、内蔵の診断LEDディスプレイと、オートメーションソフトウェアに接続するための診断インターフェースポートも備えています。

診断表示モニタには、電圧OK、電流利用率、耐用年数の状態など、主要な動作パラメータとステータスを表示します。診断インターフェースは、プログラム可能なロジックコントローラ(PLC)または他のオートメーションソフトウェアのデジタル入力にインターフェース接続するシリアルデータバスです。診断ポートは、出力電圧、負荷電流の状態、動作時間、温度の状態、およびデバイスのタイプを提供します(図5)。

図5:電源の状態を表示する診断モニタディスプレイ(左)とWinCC PSU6200シリーズ フェースプレート(右)。(画像提供:Siemens)

まとめ

SiemensのSITOP電源と補助アドインは、自動化された工場でどのような電源ニーズがあっても、重要な生産プロセスをサポートします。使いやすいソフトウェアと連動した完全かつ調整された電源製品ラインアップは、最新の工場に容易に統合できる信頼性の高い電源システムを保証します。

著者について

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Arthur(Art)PiniはDigiKeyの寄稿者です。ニューヨーク市立大学の電気工学学士号、ニューヨーク市立総合大学の電気工学修士号を取得しています。エレクトロニクス分野で50年以上の経験を持ち、Teledyne LeCroy、Summation、Wavetek、およびNicolet Scientificで重要なエンジニアリングとマーケティングの役割を担当してきました。オシロスコープ、スペクトラムアナライザ、任意波形発生器、デジタイザや、パワーメータなどの測定技術興味があり、豊富な経験を持っています。

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