インラインフィルタを使用した低コストの信号源によるテスト性能の向上

テストに純粋な正弦波が必要にもかかわらず、高調波レベルの高い任意波形/ファンクションジェネレータしか利用できないということはありませんか。おそらく、2つの信号発生器の出力をミックスして、ミキサ出力で上側サイドバンド成分を選択する必要があるでしょう。どのようにすればよいのでしょうか。その解決策は、SMAコネクタ付きCrystek CorporationCLPFL-0200(図1、左)やBNCコネクタ付きのCLPFL-0021-BNC(図1、右)のようなインラインRFフィルタを使用することです。

図1:SMAコネクタのCLPFL-0200 (左) やBNCコネクタのCLPFL-0021 (右) のようなインライン同軸フィルタは、信号源の信号高調波やノイズを低減することができます。(画像提供:Crystek Corporation)

RFフィルタは、必要な周波数成分を通過させながら、不要な周波数を選択的に減衰させることで信号を浄化します。インラインフィルタは、同軸ラインでの使用を目的とし、公称インピーダンスは50Ω(オーム)で設計されています。これらのフィルタは、信号の帯域幅を狭めることでノイズを低減します。また、高調波、イメージ、干渉信号を減らすために信号スペクトルを制御します。

フィルタのタイプ

インラインフィルタには、ローパス、ハイパス、バンドパスなどいくつかのタイプがあります(図2)。

図2:ローパス、ハイパス、バンドパスフィルタの周波数特性を示します。(画像提供:Art Pini氏)

ローパスフィルタは、一定のカットオフ周波数以下の周波数を通過させ、カットオフ周波数を基本周波数のすぐ上に設定することで、信号の高調波を除去することができます。ハイパスフィルタは、一定のカットオフ周波数以上の周波数を通過させ、カットオフ周波数を電力線周波数以上に設定することで、干渉信号を除去することができます。バンドパスフィルタは、希望する帯域内の周波数を通過させることで不要な信号を減衰させるもので、RFフロントエンドのプリセレクタとして採用されることがあります。信号がほとんど損失なく伝送される領域を通過域、信号が大きく減衰する領域を阻止域と呼びます。通過域と阻止域の間の領域が遷移領域です。

適切なフィルタの選択

フィルタは特定の周波数特性に合わせて設計されます。これには、通過域から阻止域への遷移の鋭さ、通過域と阻止域の平坦性、周波数の関数としての位相特性などが含まれます。図3に示すように、いくつかの古典的な設計があります。

図3:数種類の古典的フィルタの周波数特性は、ロールオフ特性と平坦特性の違いを示しています。(画像提供:Art Pini氏)

バターワースフィルタは、フラットな通過域特性と中程度のロールオフ率を持ちます。ベッセルフィルタは、最も直線的な位相特性を持ちますが、ロールオフは最も遅く、一般的には帯域制限されたパルス波形を最小の歪みで伝送しなければならない場合に使用されます。チェビシェフフィルタはロールオフが速いですが、通過域にリップルがあります。逆チェビシェフフィルタは、通過域特性が平坦で、ロールオフが速いですが、阻止域にリップルが生じます。バターワースとチェビシェフの2つが、最も広く使用されているインラインフィルタです。

どのタイプのフィルタでも、ロールオフ特性は次数の影響を受けます。次数は、フィルタの伝達関数から導き出され、設計における極の数を示します。一般に、フィルタの次数が高いほど、ロールオフは速くなります(図4)。

図4:次数5~9のバターワースローパスフィルタの応答比較です。次数が高いほど、遷移領域でのロールオフが速くなります。(画像提供:Art Pini氏)

CrystekのCLPFL-0200は7次のバターワースローパスフィルタで、通過域はDCから200メガヘルツ(MHz)、周波数210MHzでの挿入損失は2.2デシベル(dB)です。このフィルタは、8ビットのA/Dコンバータ(ADC)で有効ビット数(ENOB)を測定する際に、信号発生器の出力を浄化するために使用できます(図5)。

図5:信号発生器から高調波とノイズを除去するために200MHzのローパスフィルタを使用した結果を示します。フィルタリングされた信号(下のトレース)は、ノイズと高調波のレベルが大幅に減少しています。(画像提供:Art Pini氏)

上側のトレースは、基本波からわずか22dB下の第2高調波を含む信号発生器出力スペクトラムを示しています。フィルタ(下側のトレース)を使用すると、第2高調波は70dB以上減少し、他の高調波はノイズフロア以下になります。また、フィルタのカットオフ周波数より上のノイズフロアは40dB以上低下していることに注意してください。

ハイパスフィルタは、目的の信号よりも低い周波数の干渉信号を除去します(図6)。

図6:目的の30MHz信号(上側のトレース)から13MHzの干渉信号を除去するためのハイパスフィルタが使用されている様子です。フィルタリングされた信号は下側のトレースに表示されています。(画像提供:Art Pini氏)

図6では、ハイパスフィルタが13MHzの干渉信号を減衰させ、目的の30MHz信号を通過させています。干渉信号の影響は、時間領域ビュー(左上)で信号ピークの振幅変化として見ることができます。フィルタリングされた信号(左下)のピーク振幅は平坦です。

CrystekのCHPFL-0025-BNC(BNCコネクタ付き7次25MHzチェビシェフハイパスフィルタ)のようなフィルタで、干渉信号を減衰させることができます。

Crystekフィルタは9次までの構成で提供されています。たとえば、前述のCLPFL-0021-BNCは、21MHzのチェビシェフ特性、9次のローパスフィルタです。オクターブあたり約55dBでロールオフする遷移領域を提供します。

バンドパスフィルタは通常、ローパスやハイパスフィルタよりも多くの部品を必要とするため、スペースを取り、BOMを増やすことになります。Crystekは、表面弾性波(SAW)技術を使ってこの問題に対処し、バンドパスフィルタをローパスフィルタやハイパスフィルタと同じパッケージに収めることを可能にしました。SAWバンドパスフィルタの1つの例として、SMAコネクタ付きのCrystekのCBPFS-0915があり、915MHzを中心とした26MHzの帯域幅を持ちます。

まとめ

インラインRFフィルタは、信号源からの高調波、ノイズ、干渉を除去し、テスト性能を向上させます。Crystekのような企業は、信号調整のニーズに合わせて幅広いインラインフィルタを提供しています。

著者について

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Arthur(Art)PiniはDigiKeyの寄稿者です。ニューヨーク市立大学の電気工学学士号、ニューヨーク市立総合大学の電気工学修士号を取得しています。エレクトロニクス分野で50年以上の経験を持ち、Teledyne LeCroy、Summation、Wavetek、およびNicolet Scientificで重要なエンジニアリングとマーケティングの役割を担当してきました。オシロスコープ、スペクトラムアナライザ、任意波形発生器、デジタイザや、パワーメータなどの測定技術興味があり、豊富な経験を持っています。

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