財務を促進するため注目を集めるESGへの取り組み
エレクトロニクスのサプライチェーンでは、さまざまな方向からリスクがやってきます。このため、OEMやそのベンダーが潜在的なリスクを測定する方法として、環境・社会・ガバナンス(ESG)のガイドラインを活用するケースが増えています。これは自然な流れの一環です。調達はそれまで取引関係や価格削減を第一目標として重視していましたが、長期的な戦略を立てた方が良好で持続可能な結果を得られると考えるようになり、より包括的なアプローチを採用するようになっています。
その理由は、数え上げればきりがありません。消費者は確かなESGの証を求める傾向を高めており、多くの業界に新たな厳しい規制が導入されています。また、投資家や従業員、人材候補たちは、組織の質を測る尺度としてESGを用いることが増えています。こうした流れを裏付ける調査も行われており、ESGに関して高い成果を挙げている組織は財務的成長が速く、より高い評価を得ていることが示されています。
たとえば、2022 BDO Technology CFO Outlook Survey1によると、調査対象となったCFOの69%が、ESGプログラムの導入は自社の長期的な財務パフォーマンスにプラスの影響を与えると回答しています。また、23%が2022年のサプライチェーンの最優先課題としてESG目標の達成を挙げました。これは、コスト削減や資本効率などを抑えて、最も多い回答です。
図1:調査対象となったテクノロジー企業の約半数のCFOが、ESGへの投資を増やしていると回答しています。それらのESGプログラムの目標はさまざまですが、多くのCFOがESGへの投資を、人事から財務に至るまで、主なビジネス上の課題に対処する機会として考えています。(画像出典:2022 BDO Technology CFO Outlook Survey)
未踏の領域
特にエレクトロニクス業界では、この新しい方向性の兆候が見えつつあります。たとえば、エレクトロニクス業界の団体であるIPCが昨年に発表した「ESG for Electronics Initiative」2では、「エレクトロニクスメーカー向けに、ESGのガイドライン遵守と報告への業界固有のアプローチに関する手引きを作成し、業界が協力して達成していく意欲的な目標を策定する」と宣言しています。
この団体は、ESGが関係する分野を以下のように規定しました。
- 環境:温室効果ガス、再生可能エネルギー、水道管理、廃棄物管理、製造におけるエネルギー管理、埋立地転換、新本社ビル、製品のエネルギー効率、材料調達
- 社会:従業員の健康と安全、人権、コミュニティ、製品ライフサイクル管理、労働力の多様性に関する目標、従業員の能力開発、公正な賃金と福利厚生、団体交渉
- ガバナンス:取締役会における性別構成、持続可能性の課題や多様性とリンクした役員報酬、株主総会、リスク管理の専門知識を有する部門長、サプライチェーンの完全性、倫理、コンプライアンス
材料調達については、製品ライフサイクル管理、団体交渉、サプライチェーンの完全性、倫理、およびコンプライアンスがどれもリストの中心を占めます。ESGへの取り組みが成功する唯一の方法は、サプライチェーンと調達に関するガイドラインを重に立案し、実行することです。
準備不足への対処
サプライチェーンの上流との最初の接点である調達部門が、ESGへの取り組みにおいて重要な役割を担っていることは明らかです。しかし、McKinseyの最近の調査によると、ツール、スキル、およびデータが不足しているため、大多数がこの仕事に自信が持てないと報告しています。調達部門はこの能力を強化できるはずです。それも、歓迎すべきことに、実際の強化を、数年ではなく、数か月で達成できるというのです。McKinseyは、ESGに焦点を当てたデータ、プロセス、機能を開発することでESGをビジネスに統合するための、以下のような3ステップの手順を紹介しています。
1:ベースラインと目指すべき到達点を決定する:まず、ESGの観点で部門の現在地を把握することから始めます。リスクを生むギャップや、容易に改善できる分野を探してください。それらの候補を、部門全体のESG課題に照らして検討し、持続可能な調達のための測定可能な目標とターゲットを設定します。
2:コアを確立し、価値創造に向けた取り組みを推進する:ESGの指標と方針を定め、それらを部門のサプライヤ選定、調達、供給管理プロセスに組み入れます。同時に、最優先するESGテーマをいくつか選びます。そのテーマに対して、革新と改善の両方を推進することを目的とした部門横断的なイニシアチブを通じて取り組みます。
3:部門をシフトさせる:成功した取り組みをスケールアップし、展開していきます。持続可能な購買ガイドラインがサプライチェーンでしっかりと理解され、導入されたら、部門全体にそれを根付かせます。調達担当者は、持続可能な調達の方針と適用について定期的にトレーニングを受ける必要があります。達成すべき重要指標を測定する必要があるため、表明された目標に対するパフォーマンスを追跡します。
図2:ESGを調達アジェンダの最優先事項に押し上げるのに、何年もかける必要はありません。そうではなく、持続可能な調達とは、ビジョンを描き、方針を実行し、結果を測定し続けることです。(画像提供:McKinsey)
実のところ、ESGはビジネスアプローチであり、姿勢なのです。事前定義された調達とサプライチェーンのツールセットではありません。以前は、ESGパフォーマンスは主に大手上場企業の課題でしたが、現在は、OEMから下流のサプライヤまで、バリューチェーンのあらゆるレベルの組織が配慮すべきことです。投資家から従業員、顧客に至るまで、ステークホルダーは、組織がリスク管理に配慮していることの証として、優れたESGレポートカードをますます求めるようになっています。
参照資料:
1:https://www.bdo.com/insights/industries/technology/cfo-survey-technology
2:https://www.ipc.org/esg-electronicshttps://www.ipc.org/esg-electronics
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