インダストリ4.0ファクトリにおける安全性の強化と可用性の向上

インダストリ4.0の生産ラインを設計する場合、安全性が不可欠です。たとえば、モータやドライブのようなサブシステムは、多くの場合、国際電気標準会議(IEC)62061安全度水準(SIL)2や国際標準化機構(ISO)13849-1性能水準(PL)cを満たす必要があります。これらの要件を満たすため、一般的にコンタクタを使用してモータを安全に接続したり切り離したりすることができます。定格55kW未満の小型モータでは、標準的なコンタクタを使用することで、シンプルでコスト効率の高いアプローチを実現できます。

多くの人が知っているように、モータと標準コンタクタの間にカップリング装置が必要なため、高出力レベルのモータに対するIECとISOの安全要件を満たすことは、より複雑でコストがかかります。良いニュースとしては、55~250kWまでの定格のモータに直接接続できるフェイルセーフ内蔵の強化型コンタクタがあるため、システムのコストやコンポーネントの数を削減し、信頼性を向上させることができます。

この記事では、Siemensの革新的な安全定格コンタクタを例に、定格55~250kWのモータ用のフェイルセーフコンタクタを使用した簡易アーキテクチャを簡単に説明します。そして最後に、ドイツ機械工業連盟(VDMA)の規格を使用して安全定格コンタクタの性能を定量化する際の課題について説明します。

安全定格コンタクタによる簡素化

約55kWまでの電力レベル用のコンタクタは、フェイルセーフコントローラやセーフティリレーの出力に直接接続し、安全適合アプリケーションの要件を満たすことができます。これらのフェイルセーフコントローラやセーフティリレーの出力は、一般に直流24ボルト(VDC)で5A以下に制限されています。これらは高出力のコンタクタを制御するために必要な力を備えていないため、コントローラまたは安全リレーと標準コンタクタの間に、駆動力を高めるためのカップリングデバイスが必要です。これらのカップリングデバイスにより、コスト、複雑さ、スペースが増加します。

これに対処するため、Siemensは、標準のドライブコイルに加えてフェイルセーフ制御入力を備えたコンタクタを使用する革新的なアプローチを開発しました。このフェイルセーフ制御入力は、従来のコンタクタが24VDCで5A以上必要なのに対し、24VDCで約5mAの作動電流で動作するように設計されています。つまり、セーフティリレーやフェイルセーフコントローラから直接コンタクタを駆動できるのです。

フェイルセーフコンタクタはフェイルセーフ制御入力によって制御されますが、コンタクタコイルは、信頼性の高い動作を保証するために、電源電圧に常時接続されています(図1)。

図1:従来のコンタクタ(左)ではカップリングデバイス(右上の2つの青いボックス)が必要でしたが、フェイルセーフコンタクタ(右)を使用すると不要になります。(画像提供:Siemens)

フェイルセーフ動作

Siemensは、従来のAC/DCやフェイルセーフ制御を統合したコンタクタなど、革新的なSiriusモジュラー制御オプションを幅広く提供しています。フェイルセーフ動作機構は、コンタクトの摩耗状態を示す残存寿命(RLT)信号をオプションで装備することができます。これにより予防保全が可能になり、システムの信頼性と可用性がさらに向上します。RLT回路は、3つの主コンタクトそれぞれのコンタクト摩耗情報を保存します。コンタクトの磨耗はLEDで表示され、最も磨耗の激しいコンタクトのRLTが20%まで低下すると、追加のリレー出力が発生します。

フェイルセーフコントローラの出力に接続できるため、これらのコンタクタはF-PLC-INコンタクタと呼ばれ、フェイルセーフ制御入力の黄色いマークの端子またはコイルカバーによって物理的に識別できます(図2)。

図2:3RT2037-1SF30(左)と3RT1056-6SF36(右)のようなF-PLC-INコンタクタは、黄色の端子またはコイルカバーによって視覚的に識別できます。(画像提供:Siemens)

数字で見る安全性

VDMA標準シート66413では、安全性評価に使用できる以下4種類のデバイスが認められています。

  • タイプ1デバイスは、セーフティリレーやフェイルセーフプログラマブルロジックコントローラ(PLC)などの安全機能用に開発されたもので、特定のSILまたはPL要件を満たしています。
  • タイプ2デバイスは、必ずしも特定の安全要件を満たすために開発されたものではなく、安全な動作を評価するためにアプリケーションデータが必要です。
  • タイプ3デバイスには、電気機械式コンタクタのような摩耗しやすい部品が含まれます。これらは、必ずしも特定の安全要件を満たすために開発されたものではなく、広範な安全性評価が必要になる場合があります。
  • タイプ4デバイスは安全機能用に開発されており、ランダム故障は発生しません。

Sirius F-PLC-INコンタクタにはエレクトロニクスが内蔵されており、純粋な電気機械式コンポーネントではないため、タイプ3デバイスには該当しません。これらはタイプ1デバイスであり、特定のSILおよびPLC要件を満たし、包括的な安全関連仕様が付属しています。これにより、標準的なコンタクタと比較して、安全度計算のタスクが簡素化されます(表1)。

表1:Sirius F-PLC-INコンタクタはVDMAタイプ1デバイスであり、詳細な安全関連データとともに提供されます。(画像提供:Siemens)

まとめ

コンタクタは、IEC 62021 SIL 2およびISO 13849-1 PL cの安全性と信頼性の要件を満たすと同時に、コスト削減にも取り組む必要があるインダストリ4.0オートメーションシステムで重要な役割を果たします。上述したように、Siemensの革新的なSirius F-PLC-INコンタクタは、少ない部品点数と複雑さの低減により、これらの要件を満たすのに役立ちます。

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ジェフ氏は、パワーエレクトロニクス、電子部品、その他の技術トピックについて30年以上にわたり執筆活動を続けています。彼は当初、EETimes誌のシニアエディターとしてパワーエレクトロニクスについて執筆を始めました。その後、パワーエレクトロニクスの設計雑誌であるPowertechniquesを立ち上げ、その後、世界的なパワーエレクトロニクスの研究グループ兼出版社であるDarnell Groupを設立しました。Darnell Groupは、数々の活動のひとつとしてPowerPulse.netを立ち上げましたが、これはパワーエレクトロニクスを専門とするグローバルなエンジニアリングコミュニティで、毎日のニュースを提供しました。また彼は、教育出版社Prentice HallのReston部門から発行されたスイッチモード電源の教科書『Power Supplies』の著者でもあります。

ジェフはまた、後にComputer Products社に買収された高ワット数のスイッチング電源のメーカーであるJeta Power Systems社を共同創設しました。ジェフは発明家でもあり、熱環境発電と光学メタマテリアルの分野で17の米国特許を取得しています。このように彼は、パワーエレクトロニクスの世界的トレンドに関する業界の情報源であり、あちこちで頻繁に講演を行っています。彼は、定量的研究と数学でカリフォルニア大学から修士号を取得しています。

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