高電圧LED照明の効率と電力密度を最大化するワイドバンドギャップ技術
2022-08-03
高電圧LED照明は、高輝度放電(HID)照明などの従来技術に代わる有効な技術であることが証明されています。高電圧LED照明の採用により、多くのメーカーがさまざまなアプリケーションに対する生産と実装を急いで行うようになりました。光質や電力密度は大幅に向上しましたが、効率が対処すべき重要な側面となりました。また、初期のアプリケーションでは、故障率が予想よりもかなり高くなりました。高電圧LED照明の主な課題は、電力密度と効率を高め続けながら、今後のアプリケーションに対して信頼性の向上と低価格化を実現することです。この記事では、ワイドバンドギャップ(GaN)技術を取り上げ、高電圧LED照明の効率と電力密度の課題に対処する方法を説明します。図1に示すLEDドライバアーキテクチャのうち、降圧部分に焦点を当てながら、ワイドバンドギャップ技術を使用して効率と電力密度を最大化する方法を考察します。
ワイドバンドギャップ(GaN)半導体は、シリコンなどの従来の半導体に比べ、より高いスイッチング周波数で動作します。電子を励起して価電子帯の頂点から伝導帯の底にジャンプさせ、回路で利用できるようにするために、ワイドバンドギャップ材料には、より多くのエネルギーが必要となります。したがって、バンドギャップを増やすと、デバイスに大きな影響が及びます(また、より小さなチップサイズで同じ作業をすることが可能になります)。バンドギャップが大きい窒化ガリウム(GaN)などの材料は、より強い電場に耐えられます。ワイドバンドギャップ材料が持つ重要な特性は、高い自由電子速度と高い電界密度です。これらの主な特性により、GaNスイッチは同種のシリコン部品と同じ抵抗と降伏電圧でありながら、最大10倍の高速化と大幅な小型化を実現します。これらの主要な特性によって将来の照明アプリケーションへの実装に理想的なものとなるため、GaNは高電圧LEDアプリケーションに最適です。
図1:非絶縁型ハイパワーLEDドライバのシステムアーキテクチャ。(画像提供:STMicroelectronics)
図1は、GaNワイドバンドギャップ技術を適用する際の基本例となる、LED照明アプリケーションのハイレベルなアーキテクチャを示しています。ワイドバンドギャップ材料はアプリケーション全体にわたり実装可能ですが、効率と電力密度を最大化するために、緑色で強調表示された高電圧電流発生器による降圧に焦点を当ててワイドバンドギャップ技術を活用します。ほとんどの照明アプリケーションでは、広いAC入力電圧範囲にわたって高い力率と低い高調波歪みが要求されます。この場合、LEDドライバにクリーンな400VDC入力を提供し、電力品質の要件を満たすために、PFCブーストを実装することが好まれます。フロントエンドのPFCブーストコンバータには、トランジションモード(TM)や連続伝導モード(CCM)など、複数の選択肢があります。トランジションモードの特徴は、パワーMOSFETのターンオン時のゼロ電流スイッチングと可変周波数動作です。また、設計が簡単で、インダクタのサイズが小さく、昇圧ダイオードの逆回復がないといった利点もあります。主な課題は、高いピーク電流とRMS入力電流であり、電力が大きくなるとEMIフィルタも大きくなります。その代わりに、CCMは固定周波数で動作します。昇圧インダクタ電流は、ほぼゼロのクロスポイントに加え、常に平均的な成分を含んでいます。インダクタは20~30%のリップルに対応するよう設計されており、TM動作に比べてEMIフィルタが小さくなります。このため、TM動作と比較すると、同じ出力電力でも昇圧インダクタが大きく、EMIフィルタが小さくなります。主な課題は、制御がより複雑になることと、超高速ソフトリカバリーダイオードまたはSiCダイオードが必要になることです。その結果、CCM PFCは一般的にTM PFCよりも高価になります。理論的に言えば、CCM PFCの整流ダイオードの代わりに、ゼロ逆回復スイッチを使用できます。こうして、GaNトランジスタはこのアプリケーションにとって非常に良い選択肢となります。
入力段とパワー変換の2段目の間には、オプションで絶縁を導入できます。この例では、絶縁を使用せず、入力PFC段の後にCC/CV制御の非絶縁型反転降圧段を設けています。絶縁が必要な場合は、アプリケーションの出力電力要件に応じて、共振型パワーコンバータ(LLC、LCC)やフライバックコンバータを使用できます。
PFCブーストコンバータは、その出力で(入力AC電圧のピークよりも高い)安定化されたDCバス電圧を生成し、この高いDCバス電圧を反転降圧コンバータ段に渡します。ステップダウン動作は非常にシンプルです。降圧のスイッチがオンの場合、インダクタの電圧は、入力電圧と出力電圧の差(VIN – VOUT)になります。スイッチがオフの場合は、キャッチダイオードが電流を整流し、インダクタの電圧は出力電圧と同じになります。
LEDドライバ用のMasterGaNシステムインパッケージ(SiP)
高電圧照明アプリケーションでは、電力密度や効率と並び、設計の複雑さが重要な課題となっています。GaNなどのワイドバンドギャップ半導体を使用すれば、回路の電力密度や効率を高めることができます。STのMasterGaNファミリは、高電圧スマートパワーBCDプロセスのゲートドライバと高電圧GaNトランジスタを単一パッケージに統合することで、この課題に対処しています。MasterGaNを使用すれば、図1に示すようなトポロジを容易に実装できます。ハーフブリッジ構成の650V GaN HEMTトランジスタを2個組み込み、ゲートドライバも内蔵しています。この例では、降圧パワー段の全体を単一のQFN 9×9mmパッケージに統合し、外部部品の点数を最小限に抑えています。通常は、デュアル(ハイサイド/ローサイド)ハーフブリッジゲートドライバの絶縁型高電圧部に必要なブートストラップダイオードも、SiPに組み込まれています。その結果、MasterGaNデバイスを使用するアプリケーションでは、スイッチング周波数や出力を上げながら、標準的なシリコンソリューションに比べて電力密度を劇的に向上させることができます。具体的に言うと、このLEDドライバアプリケーションでは、PCB面積の30%削減を実現し、ヒートシンクは使用されませんでした。
高電力LED照明のアプリケーションでは、CCMが最適な動作モードとなります。GaNデバイスにCCMを実装する場合は、前述した高いレベルの利点に加え、コスト削減も期待できます。全体の電力損失に対するスイッチング損失の影響が低減されるため、高電力アプリケーションに対応するための非常に低いRDSONは必要ありません。また、GaNには逆回復がないため、回復損失の排除やEMIの低減により、CCMを使用する際の主な短所も軽減できます。また、固定オフ時間制御を備えたCCM動作により、VOUTにおける出力電流リップルの依存に対する補正が非常に容易になります。高電圧LED照明などの多くのアプリケーションにとって、CCMを使用したGaNスイッチの実装が優れた組み合わせであることは明らかです。
図2には、反転降圧トポロジの基本スキームと、MASTERGAN4を用いた実装を示しています。
図2:MASTERGAN4で実装した反転降圧トポロジ。(画像提供:STMicroelectronics)
MASTERGAN4は、ハーフブリッジ構成の225mΩ(25℃標準)、650V GaNトランジスタ2個、専用のハーフブリッジゲートドライバおよび、ブートストラップダイオードを内蔵しています。この高レベルの統合によって設計を簡素化し、9×9mmの小型QFNパッケージでPCB面積を最小化します。図3に示す評価ボードは、MASTERGAN4を使用して反転降圧トポロジで設計され、以下のような仕様を備えています。最大450Vの入力を受け入れ、LEDストリングの出力電圧を100V~370Vで設定できます。スイッチング周波数70kHzの固定オフ時間(FOT)CCMで動作します。最大出力電流は1Aです。
図3:MASTERGaN4を使用した反転降圧デモの例。(画像提供:STMicroelectronics)
このソリューションのコントローラであるHVLED002は、単一のPWM制御信号を生成するために使用します。次に、シンプルなシュミットトリガをベースにした外部回路は、2つの相補信号を生成するために使用し、適切なデッドタイムでローサイドとハイサイドのGaNトランジスタを駆動します。また、MASTERGAN4が必要とする電源電圧を生成するために、2つのリニアレギュレータも搭載されています。MASTERGAN4で実装した反転降圧トポロジは、電力密度と効率を向上させるソリューションを生み出しますが、後述する結果がそれを物語ります。
実験結果:
図4の効率プロットは、出力電流が0.5Aと1Aの場合のLEDストリング電圧の関数として、従来のシリコンソリューションに対する提案されたソリューションの利点を示しています。
図4:MasterGaNとシリコンMOSFETの効率対LED電圧。(画像提供:STMicroelectronics)
MASTERGAN4の効率は、LEDストリングの電圧範囲全体で96.8%以上を維持しています。GaNソリューションの低い伝導損失と最小限の駆動・スイッチング損失により、すべての電力レベルにおいて効率性向上が最大化されていることを確認できます。
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表1:GaNとシリコンMOSFETのサイズ比較
表1では、シリコンソリューションとMASTERGAN4ベースのソリューションを比較しています。このように、GaN設計の実装により、全体としてPCB面積の30%以上の削減が示されています。この結果により、この反転降圧トポロジにおいて、GaNで採用可能な1つの方法が示されます。スイッチング周波数を70kHz以上に上げると、出力インダクタとコンデンサのサイズを小さくできますが、その代償として、駆動損失とスイッチング損失が大きくなります。より高い周波数でフィルタサイズを小さくすると、電解コンデンサは、より大きく信頼性の高いセラミックコンデンサに置き換えることができます。フィルタコンデンサと降圧インダクタのサイズのトレードオフは、ターゲットアプリケーションに必要なスイッチング周波数に基づいて最適化できます。
まとめ
この記事では、MASTERGAN4をベースとしたLED照明アプリケーションに対する反転降圧トポロジの実装について考察しました。システムインパッケージの構成には、ハーフブリッジ構成の650V、225mΩ GaNトランジスタや専用ゲートドライバが搭載されています。GaNソリューションとシリコンの比較では、より高い効率とPCB面積の削減が示されています。MasterGaNは、照明アプリケーションに対する小型、高効率、高電力の反転降圧実装に理想的なソリューションとなります。
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