電力品質改善ソリューションで水処理プラントの電気インフラを保護

著者 Steven Keeping(スティーブン・キーピング)

DigiKeyの北米担当編集者の提供

水処理プラントの電気料金は、その運営予算の最大40%を占める可能性があります。そのため、プラントの効率性を最大限に高めることが不可欠です。しかし、プラントのポンプ、モータドライブ、照明機器、コンプレッサは、高調波歪み、ラインノッチング、電圧降下および電圧上昇、電気ノイズなどの電力品質(PQ)の問題に直面します。これらのPQの問題は、非効率な運用、停電、機器の損傷を引き起こします。

PQ改善装置は、水処理プラントにおける問題を解決します。ドライブ絶縁トランス、ハードワイヤレギュレータ、パワーラインコンディショナ、サージ保護デバイス(SPD)、アクティブトラッキングフィルタなどの製品は、効率を高め、停電を防止し、貴重な電気資産の損傷を防ぐために役立ちます。

この記事では、水処理プラントの電気機器設計者が直面するPQの問題について簡単に説明します。また、これらの問題の緩和と効率の最大化に適用できるSolaHDのPQ改善装置をご紹介します。

PQの問題

水処理プラント(図1)へのエネルギー供給は一般的に信頼性が高いものの、PQ問題が頻繁に発生します。このような問題は、望ましくない高調波歪み、電圧降下および電圧上昇、電気ノイズとして現れます。

画像:水処理プラントへのエネルギー供給図1:水処理プラントへのエネルギー供給では、非効率な運用、停電、機器の損傷を引き起こす可能性のあるPQ問題に直面することがあります。(画像提供:SolaHD)

水処理プラントにおけるPQ問題は、落雷などの外部要因や電気機器自体などの内部要因に起因することがあります。たとえば、低品質の可変速ドライブは、非線形負荷がパルスで電流を引き込むときに生じる高調波歪みを発生させる可能性があります(図2)。高調波により、導体は標準電源の60Hz以外の周波数で電流を流さなければならなくなります。

画像:非線形負荷がパルスで電流を引き込むときに生じる高調波図2:非線形負荷がパルスで電流を引き込むと高調波が発生します。高調波により、導体は標準電源の60Hz以外の周波数で電流を流さなければならなくなります。(画像提供:SolaHD)

完全な正弦波ではなく、電圧正弦波に沿った特定のポイントで非線形電流を流すことで、電気機器は基本周波数の整数倍の高調波周波数を発生させます。低周波数高調波(たとえば、180Hz、300Hz、または420Hz)は、電力システムを流れる低周波数電流の歪みや位相シフト電流によって発生します。高周波数高調波(1kHz~3kHz)は、高出力の非線形電子スイッチ負荷における高電流のスイッチングによって発生します。

もう1つの高調波現象であるラインノッチングは、DCモータドライブ、モータスターター、電源などの水処理装置における電流整流器のスイッチングによって発生します。ラインノッチングは通常、シリコン制御整流器(SCR)の整流によって発生します。電流が1つの導電SCRから別のSCRに切り替わる短い時間の間、短絡が発生します。新しいSCRは導通を開始し、前のSCRは短時間導通を続けます。これにより、通常は数マイクロ秒(µs)(電圧を低下させるのに十分な時間)の位相間短絡が発生します。ラインノッチングは、負荷の要件に合わせて変化する整流の角度が一定ではないため、AC半周期のどの時点でも発生する可能性があります。

電力品質問題の原因となる外部および内部要因はいくつかありますが、その約80%は電圧降下によるものです。IEEEでは、電圧降下を60Hzにおける通常電圧から10%~90%の電圧低下と定義しています。降下事象の持続時間は60秒(s)未満、8ミリ秒(ms)以上です(図3)。

画像:電圧降下は10%~90%の電圧低下図3:電圧降下は10%~90%の電圧低下であり、PQ問題の80%の原因となっています。(画像提供:SolaHD)

電圧上昇は電圧降下よりも発生頻度は低いものの、同様に問題となります。電圧上昇は、半周期から数秒間の一時的な電圧レベル上昇を伴う過電圧状態です(図4)。このような電圧変動は、水処理プラントにおける大型機器の負荷シャットダウンや、力率補正(PFC)コンデンサのスイッチングなどのその他事象によって引き起こされる可能性があります。

画像:電圧上昇は、一時的な電圧レベルの上昇図4:電圧上昇は、半周期から数秒間の一時的な電圧レベルの上昇です。(画像提供:SolaHD)

その他の電圧問題とノイズ

電気機器や配電システムは、電圧過渡現象、中断、不均衡など、その他の電圧問題を引き起こす可能性があります。電圧スパイクとも呼ばれる過渡現象は、わずか数マイクロ秒間続く電圧の大幅な上昇です(図5)。落雷、機械的なスイッチング、コンデンサまたはコンデンサバンクのスイッチング、不具合発生後の電力システムの再通電、トランスのスイッチング、特定機器の突然の停止などは、すべて過渡現象の原因となります。

画像:過渡現象は、大幅な電圧上昇図5:過渡現象は、わずか数マイクロ秒間続く大幅な電圧上昇です。(画像提供:SolaHD)

電圧中断とは、数秒から数十秒間続く電力供給の中断を指します。5秒以上の中断は通常、持続的中断と呼ばれます。その主な原因は、エネルギー供給会社の発電または配電ネットワークにおける事故や機器の不具合です。

電圧不平衡は、3相システムにおける最も一般的な問題の1つです。3相電圧の大きさが同一で、位相差が120°の場合が正常な平衡状態です。ある相が他の相と比較して過剰に負荷がかかると、その相の電圧が低下し、不均衡が生じます。

電圧や電流の流入・流出により、電源のオン・オフ時にあらゆる機器から電気的スイッチングノイズが発生することがあります。ノイズは急激な電圧変動を引き起こし、望ましくない影響や電子回路の損傷を引き起こします(図6)。

画像:急激な電圧変動を引き起こす電気ノイズ図6:電気ノイズは急激な電圧変動を引き起こし、電子回路を損傷する可能性があります。(画像提供:SolaHD)

プラント設備へのPQ問題の影響

PQ問題は、水処理プラント設備の効率、信頼性、寿命に影響を与えるさまざまな形で現れます。たとえば、高調波は、中性導体やトランスの過熱、回路ブレーカのトリップ、高い中性電流の発生、システム容量の減少、さらには電気コネクタの緩みなど、水処理プラント全体の設備に影響を与える可能性があります。

ラインノッチングは高周波数高調波を発生させ、水処理施設の高感度ロジックコンポーネントや通信電子機器に損傷を与える可能性があります。また、ノッチングによって発生する追加の電流フローは、電磁妨害(EMI)フィルタやラインフィルタに悪影響を及ぼします。さらに、電圧ノッチングはPFCコンデンサにさらなる損失を生じさせ、動作温度の上昇につながる可能性があります。

電圧降下時の問題としては、ACモータを定トルク負荷で使用する給水ポンプが、より多くの電流を消費し、効率を低下させ、時には過負荷リレーをトリップさせることがあります。

電圧上昇は通常、即座に機器の故障につながることはありませんが、電圧上昇が繰り返し発生することでシステムに過剰な負荷がかかり、システムが弱体化する可能性があります。電圧上昇はまた、回路ブレーカやその他の保護装置の誤作動を引き起こすこともあります。電圧上昇に関連するさらなる問題は絶縁劣化であり、火災を引き起こすことで水処理プラントの安全な運転を脅かす可能性があります。

停電は水処理プラントの運転を停止させ、電気機器の寿命を縮める可能性があります。さらに、多くのモータ制御回路やプロセス制御システムは、電圧中断後に自動的に再起動するように設計されていません。

電圧の不均衡は、機器に深刻な損傷を与える可能性があります。たとえば、誘導モータに不均衡な電圧が供給された場合、ライン電流は通常、電圧不均衡の数倍の大きさになります。これは、5%の電圧不均衡で給電されるモータでは、20~30%の電流不均衡が発生する可能性があることを意味します。この追加電流はモータの抵抗(I2R)損失を引き起こし、数十°Cの温度上昇につながります。

電気ノイズは、水処理プラントに設置されているソリッドステートセンサや制御装置にとって深刻な問題です。これは、それらが高速かつ極めて低い電力レベルで動作しているためです。信号電圧が低いほど、許容できるノイズ電圧の振幅は小さくなります。

PQ問題の軽減

高調波の軽減は、電圧変化、ドライブ誘導による接地電流の低減、コモンモードノイズの低減という3つの重要な機能を備えたドライブ絶縁トランスを使用することで実現できます。このトランスは非線形負荷の熱に耐えなければなりません。1例として、SolaHDの23-22-112-2ドライブ絶縁トランスがあります。このトランスは、120Vまたは240Vの入力を受け、120Vの出力を提供し、出力高調波歪み(入力範囲内の全負荷時)は、総RMS値の3%です。高調波の実効値(RMS)は、1周期における高調波成分の平均電力を表します。

ドライブ絶縁トランスは、中和コイルが追加されているため、ほぼ高調波のない出力となります(図7)。この仕組みを理解するために、中和コイルが接続されていない従来のトランスについて考えてみましょう。開回路となったコイルには、磁束の一部がコアの中心脚から外側脚へと通過する際に、電圧が誘導されます。この電圧は、出力巻線からの漏れ磁束により、高い奇数次高調波成分を含んでいます。

画像:SolaHD 23-22-112-2ドライブ絶縁トランス図7:23-22-112-2ドライブ絶縁トランスは、中和コイルの追加により、ほぼ高調波のない出力を実現しています。(画像提供:SolaHD)

漏れ磁束は2つの経路で出力巻線に戻ります。1つの経路は中和コイルをバイパスし、もう1つの経路は中和コイルにリンクします。これらの磁気経路のリラクタンスを制御することで、中和コイルに結合する2次磁束の度合いを制御することが可能です。中和コイルは、2次(または出力)コイルに追加される極性で接続されています。

この絶縁トランスの出力は定電圧で、高調波がほとんどありません。高調波は依然として中和コイルに存在しますが、2次巻線からの磁束がそれらの高調波を誘導するため、各コイルの高調波は位相差が約180°となり、結果として相殺されます。

SolaHDはまた、高調波低減用に63-23-125-4 250VA MCRハードワイヤレギュレータ(図8)も提供しています。このレギュレータは120V、208V、240V、480Vの入力と120Vの出力を提供します。出力高調波歪み(入力範囲内の全負荷時)は、総RMS値の3%です。

画像:SolaHD 63-23-125-4 MCRハードワイヤレギュレータ図8:63-23-125-4 MCRハードワイヤレギュレータは、総RMS値の3%の出力高調波歪みを実現しています。(画像提供:SolaHD)

このハードワイヤレギュレータは、SolaHDの鉄共振型トランス技術を使用して構築されています。鉄共振は、デバイス内に2つの独立した磁気経路を生成し、その間の結合を制限するトランスの設計技術です。この設計の利点の1つは、基本周波数と比較して、入力電流に含まれる高調波電流がごくわずかであることです。トランスの出力側は並列共振タンク回路を備えており、負荷に供給される電力を補うために1次側から電力を消費します。

鉄共振型トランスは、共振を利用して電源電圧の変化を低減し、負荷により安定した電圧を供給する非線形回路を形成します。

トランスのリラクタンスは、ある一定の磁束密度(飽和)を超えると急激に変化します。このトランスは、一方の磁気経路(共振磁路)を飽和状態に保ち、もう一方の経路を非飽和状態に保ちます。このように動作している場合、1次電圧にさらなる変化が生じても、飽和電圧や2次電圧は変化せず、安定化が達成されます。

パワーコンディショナは、重要なプロセスシステムを電圧降下から保護するために設置されます。

電圧降下耐性のある電圧レギュレータや電源は、電源電圧の低下からもシステムを保護します。

電圧上昇はSPDで対応できます。SPDは、サービス入口、分岐パネル、または近くにある専用の高感度電子負荷に設置できます。電圧が上昇すると、SPDが電流を接地ワイヤに流します。閾値を超える過渡パルスに対しては、電力は効果的に接地に短絡されますが、通常の電流フローには影響がありません。

SolaHDのSTCHSP121BT1RU SPD(図9)は、AC電源および低電圧信号ライン用のサージ抑制機能を提供します。このサプレッサは、コモンモードおよびノーマルモードノイズのフィルタリングと金属酸化物バリスタ(MOV)保護を特長としています。過渡現象に対する応答時間は5ナノ秒(ns)未満であり、最大サージ電流耐量は39kAです。SPDは落雷などの事象による過渡電圧からの保護も提供しますが、包括的な雷保護システムに取って代わるものではありません。

画像:SolaHD STCHSP121BT1RU SPDサプレッサ図9:STCHSP121BT1RU SPDサプレッサは、コモンモードおよびノーマルモードノイズのフィルタリングとMOV保護を特長としています。(画像提供:SolaHD)

ノイズの軽減には、SolaHD STFV025-24Lなどのアクティブトラッキングフィルタが使用されています。このユニットは入力ACパワーラインを継続的に追跡し、高周波ノイズを検出すると応答します。 このフィルタは、ローパスのインダクタ-コンデンサ(LC)フィルタによって低電圧/高周波ノイズを除去します。低エネルギーの高周波ノイズの低減には、LC抵抗(LCR)フィルタが使用されます。 各相と中性導体に配置されたインダクタは、ラインの最大電流消費に対応できるサイズです。STFV025-24Lの応答時間は5ナノ秒未満であり、一般的なカテゴリAリング波(6kV、200A、100kHz)の過渡現象の低減は、ピーク値で10V未満です。

まとめ

PQ問題を防止することは、効率を高め、停電を防ぎ、貴重な電気資産の損傷を防ぐために不可欠です。これらの問題には、高調波歪み、電圧降下および電圧上昇、過渡電圧、電気ノイズなどが含まれます。これらの問題に対処するには、多層的なアプローチが必要です。SolaHDは、ドライブ絶縁トランス、ハードワイヤレギュレータ、パワーコンディショナ、SPD、アクティブラインフィルタなど、さまざまな保護装置を提供しています。これらのコンポーネントにより、必要な保護対策を容易に提供することができます。

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著者について

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Steven Keeping(スティーブン・キーピング)

スティーブン・キーピング氏はDigiKeyウェブサイトの執筆協力者です。同氏は、英国ボーンマス大学で応用物理学の高等二級技術検定合格証を、ブライトン大学で工学士(優等学位)を取得した後、Eurotherm社とBOC社でエレクトロニクスの製造技術者として7年間のキャリアを積みました。この20年間、同氏はテクノロジー関連のジャーナリスト、編集者、出版者として活躍してきました。2001年にシドニーに移住したのは、1年中ロードバイクやマウンテンバイクを楽しめるようにするためと、『Australian Electronics Engineering』誌の編集者として働くためです。2006年にフリーランスのジャーナリストとなりました。専門分野はRF、LED、電源管理などです。

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