非接触給電とデータ伝送で、摩耗のない低メンテナンスの産業用ソリューションを実現
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2025-12-22
フレキシブルで信頼性の高い接続は、ロボットツールや回転装置(例:精密インデックステーブル)に使用されるアプリケーションなど、産業用途では不可欠です。このようなシステムでは、移動や回転が激しく、汚れや振動にさらされることが多いため、従来のコネクタやスリップリングが故障する可能性があります。
設計者は、こうしたアプリケーションやその他の困難な用途において、従来のソリューションの限界を克服する新たな選択肢を必要としています。新たな選択肢には、最大100Mbpsのセキュアな全二重Ethernet接続をサポートし、センサやその他のコンポーネント向けに最大50Wの電力を12mm(データのみの場合は40mm)のギャップを介して伝送できることが求められます。
幅広いシステム設計に対応するためには柔軟な取り付けオプションが必要であり、迅速な診断のためにはシンプルで視認性の高いLEDインジケータが必要です。
過酷な産業環境での動作にはIP65の環境耐性が必要であり、ソリューションはEN 62262に基づくIK06(最大1ジュールの外部機械的衝撃に耐える性能)を満たす必要があります。設置や交換が簡単なため、メンテナンス費用やダウンタイムを最小限に抑えることができます。
この記事では、まず、さまざまな産業用アプリケーションで従来型のコネクタとスリップリングを使用する際の課題について簡単に説明します。次に、 Phoenix Contact NearFiカプラの機能を掘り下げ、困難な産業用アプリケーションにおける非接触給電・データ伝送の電気的、機械的、セキュリティ要件を、同製品がどのように満たすかをご紹介します。
ロボットの信頼性に関する課題
自動組立工程で使用されるロボットの頻繁なツール交換は、コネクタにとって大きな課題となる場合があります。こうしたツール交換では、毎日数百回の挿抜サイクルが必要となる可能性があります。
サイクルのたびに接点は汚染物質にさらされ、接触摩擦による摩耗が生じます。コネクタが正確に位置合わせされていない場合、接点が曲がってしまう可能性があります。
その結果、コネクタの信頼性が低下し、メンテナンスのための予期せぬダウンタイムが発生します。ツール取り付け用のコネクタに加え、一部のロボットは、回転するアームや関節のデータ・電力伝送にスリップリングを利用しています。
スリップリングの制限事項
スリップリングは、風力タービンや、食品・医薬品の加工・包装ライン、その他の工業プロセスでも見られます。従来のコネクタと同様、スリップリングも、汚染物質にさらされると損傷する可能性があり、機械的に過度に摩耗することがあります。
スリップリングは摩擦により高温になることがあり、熱管理に注意が必要な場合があります。用途によっては、スリップリングが強い振動や突発的な衝撃を受け、損傷や接触圧の不安定化、さらには機械的故障を引き起こす可能性があります。
従来のコネクタとスリップリングの両方が、サイズや動作上の制約、メンテナンス時のアクセス要件に関連する機械設計上の課題を引き起こす可能性があります。さらに、振動、埃、汚れ、接点の磨耗などによる断続的な接続など、アプリケーション上のさまざまな課題もあります。
NearFiソリューション
「より優れた」コネクタを使用することで、性能や信頼性の段階的な向上が図れる可能性があります。しかし、本当に必要なのは、コネクタに関する最も困難な課題を解消する、画期的なアプローチです。それがNearFiソリューションです。
NearFiは、数センチメートルのエアギャップ、プラスチック、ガラス、木材などの非金属材料を介して、摩耗のない信頼性の高い通信と電力供給をサポートする非接触技術です。データ伝送のみの場合、NearFiは40mmのエアギャップを介して接続することができます。電力、または電力とデータを組み合わせた伝送では、12mmのエアギャップを介して接続することができます。
NearFiは、データ伝送に60GHzワイヤレス技術を使用し、ベースカプラからリモートカプラに電力を供給するために誘導結合を使用します。カプラは、IP65およびIK06に適合するハウジングとM12接続技術を特長としており、厳しい産業環境において摩耗のないメンテナンスフリーの動作を保証します。
NearFiシステムでは、設計者は次の3つのソリューションから選ぶことができます。
- データと電力を同時に伝送する場合は、1234224ベースカプラと1234225リモートカプラを使用することができます。
- データサポートなしで電力を結合する場合は、1234226ベースカプラと1234229リモートカプラを使用することができます。
- 電力なしでデータを伝送する場合は、1234232ベースカプラと1234234リモートカプラを使用することができます。
全二重Ethernet
NearFiでは、データは遅延なく双方向で同時に交換されます。アップリンク用とダウンリンク用に、別々の周波数帯域で2つの並列60GHz接続を使用することで、全二重のリアルタイムデータ伝送が可能になります。このため、PROFINETやEtherCATのようなタイムクリティカルな産業用プロトコルに適しています。この伝送技術はプロトコルに依存しないため、どのような標準Ethernetプロトコルでも使用できます(図1)。
図1:NearFiは、プロトコル非依存の全二重100Mビット/秒Ethernetをサポートします。(画像提供:Phoenix Contact)
近距離無線通信(NFC)の使用は、NearFiの性能における重要な要素です。空間を無限に伝播する電磁波に依存する従来の遠距離通信とは異なり、NFCのエネルギーは無限に放射されるわけではありません。距離とともに急速に減衰します。NFCは低電力技術であり、電磁妨害(EMI)の可能性をさらに軽減します。
NFCの使用は、WLANやBluetoothのような既存のワイヤレス技術との確実な共存も保証します。また、標準的な産業用干渉スペクトラムはNearFiの伝送に影響を与えないため、NearFiを展開する際の周波数プランニングが不要になります。
範囲が限定されているため、複数のNearFiリンクを干渉なしに近接させることができます。言い換えるなら、NFCはEMIに対する実質的な耐性を備えた信頼性の高い、メンテナンスフリーの高速データ伝送を可能にします。最後に、カプラハウジングのLEDリングは接続ステータスを表示し、トラブルシューティングを容易にするため、セットアップと診断をスピードアップします。
ビット単位の伝送
同期型ビット単位の伝送技術を採用していることも、NearFiの性能を支える重要な要素です。ビット単位の技術は、他のワイヤレス通信におけるパケット単位の伝送とは対照的です。
パケット単位の実装では、一般的に大きな遅延が生じます。トランスミッタに到着したデータは、送信前にパケット化されなければなりません。レシーバでは、データがシステムに出力される前にパケットが分解されます。
NearFiの同期伝送では、データは到着したときに、パケット化も分解もなく、ビット単位で直接送信されます。これにより連続的なデータストリームが生成され、遅延が実質的に排除されます。そのためNearFiは、タイムセンシティブネットワーキング(TSN)、PROFINET、EtherCATなど、タイムクリティカルな産業用Ethernetプロトコルに適しています(図2)。
図2:NearFiはビット単位の伝送を利用することで、従来のパケットベース通信にしばしば伴う遅延の課題を軽減します。(画像提供:Phoenix Contact)
さらに、データはバッファリングやパッケージングなしで伝送されるため、NearFiはプロトコル透過型であり、設定を必要とせずにあらゆるEthernetプロトコルを扱うことができます。
NearFiは、通信を近距離に限定することで、セキュリティ上の懸念に対応しています。また、暗号化、認証、トークン化などの高度なセキュリティ対策にも対応できます。
電力供給
NearFiシステムは、一部のスマートフォン用ワイヤレス充電器と同様の100~148.5kHzの周波数帯域を用いた誘導電力伝送を利用しています。最大50W(24VDC、2A)、並列接続では最大100Wまで伝送できます。
アクティブ閉ループ制御により、作業領域全体で安定した電力伝送を実現します。電気的に絶縁された2つの電圧(各50W)の伝送もサポートします。データ接続と同様、電力供給もベースカプラとリモートカプラを使用します。
ベースカプラは、コントローラなどの電源から24VDCの電力を受け取ります。統合通信電源/センサ電圧コンバータは、USコンバータ(「U」はドイツ語で電圧を表す記号)としても知られ、24VDCの電力を誘導伝送用の高周波電力に変換します。リモートカプラは高周波誘導電力を受け取り、I/O、スイッチ、センサ、アクチュエータ、その他の機能で使用するために、UA(アクチュエータ電圧)コンバータで24VDCに変換します(図3)。
図3:ベースカプラとリモートカプラの間で電力が誘導結合されます。(画像提供:Phoenix Contact)
高速スタートアップ
NearFiの高速スタートアップ機能は、リアルタイムリンクの迅速な再確立(<500ms)を可能にします。それが可能なのは、NearFiカプラが互いに接近している最中に電力伝送とデータ通信が始まるからです。
高速スタートアップは、ロボットのツール交換などのアプリケーションにおいて、サイクルタイムを大幅に短縮することができます(図4)。また、NearFiの双方向データ伝送機能により、新しいツール(またはその他のアタッチメント)がシステムに対して自身を識別し、正しいアイテムであることを確認することも可能です。
図4:ロボットツール交換ステーションにおけるNearFiの使用可能性。(画像提供:Phoenix Contact)
その他のアプリケーション例
NearFiカプラは、向かい合わせ、オフセット、または接線角度で組み合わせることができます。また、ベースカプラが固定され、リモートカプラが回転するような用途にも使用できます(図5)。NearFiカプラは箱から出してすぐに使えるので、プログラミングの必要がなく、アプリケーションの開発と展開がスピードアップします。
図5:このアプリケーションでは、左のリモートカプラが回転し、右のベースカプラが固定されています。(画像提供:Phoenix Contact)
NearFiがロボットのツール交換に適しているのと同じ特長は、無人搬送車(AGV)や材料・ワーク搬送装置などのアプリケーションのニーズにも対応できます。
空港などで見られる回転アンテナは、従来のスリップリングをNearFiカプラに置き換えることで利点を得られます。同様に、精密インデックステーブルは産業用途だけでなく、食品・飲料業界や製薬業界のボトル充填機にも使用されています。
まとめ
NearFi技術は、一見解決困難と思われる数多くの課題を解決します。プロトコルに依存しない100Mビット/秒のEthernet通信をワイヤレスで提供するとともに、50Wの電力をワイヤレスで供給し、柔軟性と使いやすさを兼ね備えています。NearFiカプラは、IP65およびIK06の定格とM12接続を備え、過酷な産業環境で使用できるように設計されています。次期設計を差別化するために、NearFiをどのように活用しますか?
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