小型5G MIMOアンテナを使用して最適なコネクティビティと美観を実現

著者 Stephen Evanczuk

DigiKeyの北米担当編集者の提供

より高速なデータレート、容量の増加、シームレスなコネクティビティを求めて、5Gネットワークの導入が世界的に加速しています。複数データストリームの同時送受信、スペクトル効率の向上、全体的なネットワークパフォーマンスなど、5Gのメリットを十分に発揮するためには、MIMO(マルチ入力マルチ出力)アンテナ技術がきわめて重要です。

アンテナの選択肢は数多く存在しますが、多くの用途で必要とされているのは、小型で薄型のMIMOアンテナです。これなら、スペースに制約のあるシステムに合わせて設計したり、セキュリティ、住宅、小売などの用途で目立たない場所に設置したりできるためです。

この記事では、小型で目立たない5Gデバイスの設計者が直面する課題について簡単に説明します。さらに、広いスペクトルカバレッジ、グローバルな互換性、使いやすさを実現しながら設計者のニーズを満たす、Taoglasの小型5G/4G MIMOアンテナを紹介します。

小型薄型5G MIMOアンテナの用途と課題

小型で薄型の5G MIMOアンテナを目立たないように設置することで、多くの用途で必要とされるデータレートとカバレッジを実現できます。民生用電子機器やセキュリティシステムの設計者は、美観を損なうことなく5Gの性能を実現したいと考えています。交通機関や産業用の用途では、従来の大型アンテナは車両や装置のオペレータにとって目障りだったかもしれませんが、小型のアンテナを使用すると、そのような影響を排除できます。小型アンテナの場合、デジタルサイネージ、ポイントオブセールキオスク、ネットワークアプライアンスなど、小型で自己完結型の用途の設計に対して5Gコネクティビティをより簡単に追加できます。

産業用プロセスシステムやモノのインターネット(IoT)における用途では、小型の5G MIMOアンテナを簡単に追加して、遠隔地に5Gネットワークコネクティビティを提供したり、既存の通信ネットワークのバックアップコネクティビティオプションとして機能させたりできます。

複数のアンテナを使用して結合的な処理を行うことで、個々のデータストリームを多重化してリンクの信頼性を向上させるとともに、信号損失を補償して高いデータレートを維持することができます。MIMOアンテナは、ミリ波通信における高い経路損失や、5Gネットワークで広く使用されているスモールセル展開で悪化するマルチパスフェージングによる信号劣化に対抗するものです。

MIMO技術には大きな利点がありますが、実装面での課題もあります。たとえば、最適な放射性能を確保するために、相互カップリングを最小化し、MIMOアンテナ素子間の絶縁性を最大化することなどです。

以前のMIMOアンテナ設計では、アンテナ間の物理的距離を長くすることでこれらの問題に対処していました。そのため、ユーザーは大規模なアンテナシステム設置への対応を余儀なくされていました。スペースに制約のある設備に対応しようとすると、MIMOアンテナ設計で複数のアンテナを配置する物理的なスペースは、かなり限られてきます。その結果、相互カップリングや効率低下といった影響が、いっそう顕著になります。

これらの課題を克服するには、より高度な材料、デカップリング方法、小型化、グランドプレーン設計の最適化といった新しいアプローチが必要になります。

よりシンプルな5Gアンテナ設置ソリューション

新たなアプローチの優れた応用例として、TaoglasのCometシリーズ MA322.A.001 MIMOアンテナがあります(図1)。このデバイスは、80 x 18.1mm、113gのパック状の薄型フォームファクタで5G MIMO性能を提供します。

TaoglasのMA322 5G MIMOアンテナの画像図1:MA322 5G MIMOアンテナは、マグネット実装または接着剤実装で目立たないよう簡単に取り付けられる設計になっており、サイズはわずか80 x 18.1mmです。(画像提供:Taoglas)

MA322は小型軽量であるため、実用性や要望の関係で大きく重いアンテナを使用できないような用途でも使用できます。また、マグネットまたは接着剤で実装できるよう設計されており、実装用の穴を開けたくない既存の用途でも5Gコネクティビティを提供できます。たとえば、アップグレードされた5G通信が必要なファーストレスポンダや緊急車両といった用途です。ユーザーの用途へのアンテナ接続を簡易化するため、このアンテナのMIMO 1および2の接続部それぞれに対し、高周波SMA(サブミニチュアバージョンA)コネクタが付いた2mの低損失ケーブルが付属しています。

屋内外の設置に適したこのアンテナエンクロージャは、動作温度範囲が-40℃~+85℃で、IP67に準拠しており、防塵保護および水深1mまでの浸水保護を提供します。エンクロージャはASA(アクリロニトリルスチレンアクリレート)プラスチック製で、長期間の屋外設置に必要なUV(紫外線)安定性を備えています。単体の3Mフォームパッドも付属しており、マグネットがつかない面に接着剤で実装することが可能です。

このアンテナは、欧州連合(EU)のREACH(化学物質の登録、評価、認可および制限)規則ならびにEUのRoHS(有害物質使用制限)指令に準拠しています。

世界中のセルラー周波数に対応する高性能

2本の高性能5G/4Gアンテナを備えたMA322は、世界中の5Gセルラー周波数および、617MHzから5925MHzまでの4G、3G、2G帯に対応しています。また、通常の小型アンテナでは得られない性能特性も実現しています。

MA322アンテナは、リターンロス特性が低く、電圧定在波比(VSWR)の仕様値がゼロであるため、信号性能を犠牲にすることなく、標準的な小型アンテナの効率レベルで動作します(図2)。

Taoglas MA322の効率を示すグラフ図2:MA322は革新的な設計により、同様のサイズのパック型アンテナではこれまで達成できなかった効率レベルを実現しています。(画像提供:Taoglas)

MA322アンテナは、設計者が求めてきた長距離通信と経路損失軽減をかなえるべく設計されており、動作周波数範囲全域にわたって安定したピークゲインレベル(図3)と優れた全方向放射パターン(図4)を達成しています。最大ピークゲインは4.2dBi(等方性に対するデシベル)であり、動作周波数範囲には3550MHzの周波数帯域が含まれます。これは、米国とヨーロッパで使用されることの多い5G帯域内にあります。

Taoglas MA322の安定したピークゲインを示す画像図3:MA322は、安定したピークゲインを求める声に応え、最大ピークゲイン仕様値4.2dBiを達成しています。(画像提供:Taoglas)

Taoglas MA322の均一性の高い放射パターンを示す画像(クリックして拡大)図4:MA322は、ここに示す3550MHzの周波数帯域を含め、動作周波数範囲全域にわたって均一性の高い放射パターンを提供します。(画像提供:Taoglas)

安定した性能と設置しやすさを備えたMA322アンテナを使用すれば、多様化する用途に5G設備を簡単に設置できます。

まとめ

より高度な材料や設計方法が利用可能になったことで、5Gの運用に必要なレベルのゲインと効率を達成できるTaoglasの小型MIMOアンテナの開発が可能になりました。この小型薄型デバイスにより、セキュリティ、美観、使いやすさが求められてスペース制約のある用途に対し、5Gコネクティビティを追加できます。

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著者について

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Stephen Evanczuk

Stephen Evanczuk氏は、IoTを含むハードウェア、ソフトウェア、システム、アプリケーションなど幅広いトピックについて、20年以上にわたってエレクトロニクス業界および電子業界に関する記事を書いたり経験を積んできました。彼はニューロンネットワークで神経科学のPh.Dを受け、大規模に分散された安全システムとアルゴリズム加速法に関して航空宇宙産業に従事しました。現在、彼は技術や工学に関する記事を書いていないときに、認知と推薦システムへの深い学びの応用に取り組んでいます。

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