サーマル製品:購買担当者が知っておきたいこと

著者 Rolf Horn(ロルフ・ホーン)

熱管理は、エレクトロニクスで脚光を浴びることはありませんが、デバイスの温度を下げて適切に動作させる立役者とも言えます。購買担当者は、さまざまな種類のサーマル製品を見分け、その機能の仕組みを理解し、リードタイムに関する考慮事項を意識することで、最良のソリューションを調達することができます。

熱ソリューションにどのような手法を選ぶかは、一般的には購買担当者だけで決められる問題ではありません。そこには必ずエンジニアが関与します。なぜなら、標準的な電子部品の調達とは異なるアプローチが必要だからです。

さまざまなタイプのサーマル製品の分け方の1つに、アクティブ冷却とパッシブ冷却を基準にする方法があります。アクティブ冷却は電力を使用して冷却を行うもので、ファン(ACまたはDC)やペルチェデバイスなどがあります。電力を必要としない冷却技術にはグリース、パテ(ペースト)、サーマルパッドなどがあります。

CopalのF310R-05LLC 5VDC軸流ファンの画像図1:アクティブ冷却に使用できるCopalのF310R-05LLC 5VDC軸流ファン(画像提供:Nidec Copal Electronics)

スペース

最も重要な考慮事項は、どの程度のスペースを利用できるかです。たとえば、エンクロージャが大きなコンピュータではファンのスペースを十分確保できます。

ウェアラブルや携帯電話などの場合は、利用できるスペースは極めて重要になります。大型の熱ソリューションは難しいため、代わりにサーマルパッド、ゲル、グリースなどを利用する必要があります。これらの技術は、制約のあるスペースに対処するために使用できるソリューションタイプです。もう1つ重要な点として、ワイヤレスRFモジュールや電源などの熱を発生する部品やモジュールのタイプにも注意すべきです。

熱放散

部品から発せられる熱は、アプリケーションの外部に放散する必要があります。熱を吸収するだけでは不十分で、ケース、別の部位、または空中など、他の何かに熱を伝導させる必要があります。

熱管理の目的は、部品から熱を取り除いて他の場所に放散することです。熱が取り除かれずに部品に吸収されると、その影響は最も軽ければ性能の低下、最悪の場合は部品の破壊につながります。

用途によってスペースを確保できる場合は、ヒートシンクが使用できます。ヒートシンクは金属またはセラミック製のシンクで、部品の上に設置します。ヒートシンクにはフィンまたはリブがあり、それが熱を部品から空中に移動させます。ヒートシンクは、部品にしっかりと取り付ける必要があります。部品の表面は、滑らかに見えても実際には起伏があります。ヒートシンクと部品の間の表面には、フレキシブルパッドゲルグリースなどの中間材を充填する必要があります。ヒートシンクによっては、基礎部分と一体型の中間パッドが付属しているものもあります。

Chemtronicsのヒートシンクグリースの画像図2:冷却する部品とヒートシンク間の隙間を埋めて、熱伝導を高めるChemtronicsヒートシンクグリース(画像提供:Chemtronics)

タイミング

ソリューションの選択と同様に重要なのは、それをどのような場合に選択するかです。一般的なソリューションでもあるサーマルパッドには、最も重要な技術的パラメータが2つあります。1つは熱をどの程度放散できるか、もう1つはどの程度の速さで放散できるかです。これらは、設計プロセスの前または設計の最中に計算する必要があります。さらに実際のアプリケーションでテストが必要になりますが、その際にはエンジニアの出番となります。

次に考慮すべき重要なパラメータは、パッドにどの程度の柔軟性が必要かです。この段階で、目的の用途にパッドとゲルのどちらを使用するかを検討することも重要になります。ゲルであれば、グリースまたはパテのいずれかです。グリースの問題点の1つは、グリースを塗布した部品のやり直しや修理が必要になったとき、メンテナンスの際に汚れが周囲に広がるなどの難点があることです。また、長期的にはグリースは十分信頼できるとは言い難く、それはグリースの形崩れやグリースが部品の表面全体に均等に広がらない場合があるためです。一方で、グリースは他のソリューションに比べて非常に安価です。

大半の場合はパッドの方が適していますが、部品の形状に合わせてカットする必要があります。ソリューションにパッドを選ぶと、用途に応じた調整が必要になるなどコスト高につながる可能性もあります。購買担当者はケースに応じて変わるこれらすべての事項を考慮することに加えて、メーカーがパッドのカットでどの程度の品質を保てるか、作業にどのくらい時間を要するかも考慮する必要があります。

リードタイムについては、大半のメーカーが標準的な期間として5~6週間程度、さらにプレカットに1~2週間を加えて見積もります。メーカーによっては最大で12週間を見積もる場合もありますが、これは多くの原材料を組み合わせた材料を使用するためで、他のメーカーの都合で期間が変わる場合があるからです。つまり、外部的な問題によってリードタイムが長引くこともあります。

たとえば、数年前に日本で発生した地震では多くの接着剤工場が操業不能に陥りました。接着剤はパッドの重要な要素でもあり、リードタイムが16週間またはそれ以上に延びたのです。新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の状況下では、閉鎖した工場もあります。ただ、DigiKeyでは保有在庫があるのでリードタイムに差し障りはなく、パンデミックの影響は最小に留まっています。結局は、目的の用途に応じて、また、価格とそのトレードオフ対象に応じて状況が変わります。

トレーサビリティ

熱管理では、部品のトレーサビリティも重要な考慮事項です。DigiKeyでは、真正な製品であることを保証するために、製品買い付けはメーカーからの直接購入のみになっています。これにより、購買担当者は試作で潜在的な問題をすばやく特定し、問題の原因により早く辿り着くことができます。

熱管理でトレーサビリティが重視されるもう1つの理由に、保管寿命があります。特殊なサーマルパッド、グリース、またはパテでは、ディストリビュータが保管寿命に注意することが重要です。さまざまなパッド、メーカー、化学製品類に応じて保管寿命は異なり、1年の場合もあれば5年の場合もあり、さらには無期限の製品もあります。期間はともあれ、調達担当者は購入プロセスで保管寿命を考慮しなければなりません。

熱管理ソリューションの調達は通常の電子部品に比べて複雑かもしれませんが、その作業を通じてエンジニアリングのチームと購買チームの新たな協力体制が築かれる、という見返りも期待できます。DigiKeyは、65社を超える一流メーカーの数千種類に及ぶさまざまな熱管理部品を、即時出荷に対応する在庫から提供しています。他の製品と同様に、DigiKeyと社内のエンジニアチームは、熱管理ソリューションの意思決定を担う購買担当者の方々を対象に、24時間年中無休のカスタマサポートを提供しています。

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著者について

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Rolf Horn(ロルフ・ホーン)

Rolf Hornは、6年以上にわたってDigi-KeyElectronicsのアプリケーションエンジニアリング部門で仕事をしています。そこで彼は、先端技術製品の選択と使用方法についてお客様にサービスを提供しています。DigiKeyは、電子部品分野でフルサービスを提供する世界最大のディストリビュータの1社であり、1,000社を超えるハイクオリティな有名ブランドメーカーから1,110万を超える製品を提供し、即日出荷が可能な260万点超の在庫を誇っています。