産業用オートメーションキャビネットとエンクロージャにとって保護は非常に大切
2019-08-08
ファンは、多くの熱管理システムにとって主要な部品です。屋内用アプリケーションでも屋外用アプリケーションでも、温度を維持し機器を冷却する適切な熱管理を行うことは、システムの性能を最適化し、機械やシステムの稼働時間や動作寿命を延ばし、さらに実地でメンテナンスを行う時間やコストを節約するには欠かせません。直接冷却と気流によってヒートシンクや電源またはプリント基板から熱を放散するために使用するファンは、幅広いアプリケーションで効率的に動作できなければなりません。そのアプリケーションは、制御キャビネットや電子機器のエンクロージャ、ビルオートメーションシステムやテレコムシステム、屋外用キオスクなどの従来のものから、代替エネルギーや電気自動車など新たに登場したものまで様々です。これらのアプリケーションの多くはフィルタリング機能を備えたファンを必要としており、そのファンが電子機器を保護するとともに、圧力降下の抑制、耐水性、さらに防火、大量の浮遊塵埃の捕捉機能などを可能にする役割を果たします。ルーバー型フィルタファンキット、ルーバー型ファンガード、およびフィルタは、ファンブレードへの侵入を保護できるため、ファンでよく使用される一般的なグリルまたはガードと比べて優れた保護性能を発揮します。
ルーバー型ファンガードは安全機構の一種で、指や他の物体がファンブレードに誤って接触するのを防ぎます。ルーバー型フィルタファンキットは、粉塵、汚れ、水分などの異物がキャビネットやエンクロージャに入り込むのを防ぐことに特化して設計されています。たとえば、一般的な産業用キャビネットまたはエンクロージャ設備を冷却および保護するには、ファン1つと追加のフィルタガード、または2つのファンが必要な場合があります。キャビネット内にある部品のタイプと点数、およびそれらの場所に応じて、1つの吸気ファンをエンクロージャ上部または下部に取り付けると、相対的に温度が低い外気を取り入れられます。もう1つのフィルタガードを排気位置に取り付けて、キャビネット内にある部品で昇温された周囲の空気を排出できます。通常、吸気側はキャビネットの下部に設置し、排気側はキャビネットの上部近くに設置して、自然に発生する対流を活用します(図1)。エアフィルタリングの強化、および内部部品の保護という面で、産業の現場やオートメーション環境にありがちな要件の厳しいアプリケーションに対しては、ルーバー型フィルタファンキットが最適なオプションと言えます。
図1:2ファン式標準キャビネット設備のファン位置。(画像提供:Orion Fans)

図2:2ファン式キャビネット設備の例(左)と単一ファン/フィルタガード式キャビネット設備の例(右)。(画像提供:Orion Fans)
ルーバー型フィルタファンキット
ルーバー型フィルタファンキットには、ファン、ルーバー型ファンガード、フィルタ、金属ガード、ハードウェアなど、産業用アプリケーションに必要なすべての部品が含まれています。キットは完全組み立て済みの状態なので、設置工程が容易です。ルーバー型フィルタファンキットには様々なサイズのファンがあり、過酷環境用のファンと組み合わせて産業用アプリケーションや船舶用アプリケーション向けに保護機能を増強できます。過酷環境用のファンをルーバー型フィルタファンキットと組み合わせることで、IP55、IP56、IP68の防塵防水機能を実現し、さらに塩水噴霧も防止します。今ではIP68定格とATEX認証を受けたECファン付きルーバー型フィルタファンキットも提供されており、ゾーン2機器での使用にも対応します。これらのフィルタファンキットによって、爆発性雰囲気または可燃性ガスをともなうアプリケーションでの爆発や発火の恐れがなくなります。
図3:スナップオン式、スライド式、ヒンジ式ルーバー型ファンキットの例。(画像提供:Orion Fans)
ファンは過度の熱や汚れに晒される環境で使用すると、通常の環境条件で動作する場合に比べて、故障する確率が大幅に高くなります。汚れたエアフィルタは、気流をブロックし、内部モータの温度上昇を引き起こすため、ファンモータを損傷させる場合があります。理想の設計温度以上でファンモータを動作させると、ベアリングの潤滑特性が急速に失われ、過熱や故障が早期に発生します。過酷環境用のファンとアクセサリは、最も過酷な条件で動作し、埃、水分、塩水噴霧、塩水飛沫、温度変化、湿度などから保護するように設計され、試験が実施されています。これらをルーバー型フィルタファンキットと組み合わせるとIP定格と保護レベルが向上するので、この組み合わせはシステムや機械の稼働時間が重視される産業用アプリケーションにとってよりいっそう重要なソリューションとなります。たとえば、特定のファンモデルにはクラスB(PBTプラスチックファン用)またはクラスF(金属ファン用)のNEMA絶縁定格があり、より高いファン動作温度が許容されます。ルーバー型フィルタファンキットとの組み合わせにより、NEMA定格が維持され、設備での最大限の保護が可能になります。
AC、EC、またはDCで稼働
ルーバー型フィルタファンキットには、用途に応じて、AC、EC、またはDCのファンがあります。ACファンとECファンは主に壁のコンセントから電源を取り、DC(直流)ファンは主に電池、分散型電源回路、または整流器(交流を直流に変換する)から電源を取ります。通常、ACタイプのフィルタファンキットには、115V、230V、および115/230Vデュアル電圧の各タイプがあります。大半のECフィルタファンキットは、90~265VACのユニバーサル入力電圧を備えています。また、大半のDCフィルタファンキットには、5V、12V、24V、48Vの各タイプがあります。ルーバー型フィルタファンキットのファンのサイズは、80、92、120、172、180、200、225、および280mmのタイプが用意されています。どのサイズのファンを使用するかは、ファンのCFM定格、およびエンクロージャまたはキャビネットのサイズと種類、さらにキャビネット内で発生する熱負荷によって決まります。フィルタがあることで、ルーバー型フィルタファンキットを備えたファンの定格風量は約40%減少します。現在、ルーバー型フィルタファンキットのCFM範囲は、約67CFM~約700CFMです。
ルーバー型ファンガード
ルーバー型ファンガードは、指や他の物体がファンと接触しないように保護します。幅広いアプリケーションに対応し、フィルタ媒体を交換する際のメンテナンス時間を短縮できるように、ルーバー型ファンガードには、スナップオン式、スライド式、ヒンジ式など複数の様式があります(図4)。スライド式はプッシュ/プル機構で簡単に開くことができ、ヒンジ式はヒンジを軸に本体が開きます。
図4:スナップオン式、スライド式、ヒンジ式ルーバー型ファンガードの例。(画像提供:Orion Fans)
スライド式とヒンジ式のルーバー型ファンガードは、ツールなしに簡単に開いてフィルタを交換できます。ルーバー型ファンガードは格子の角度が45度の状態で通気を行うため、高度な保護と最高レベルの風量を兼ね備えています。ファンガードはプラスチック製で、UL94V-0規格に適合した難燃性があり、UV保護特性により耐久性が増し、外観も損ないません。また、さまざまな要因から最大限の保護できるよう、高密度の発泡シール材が使われています。
フィルタ
ルーバー型フィルタファンキットに付属の標準フィルタは、ナイロン繊維と合成樹脂製で、最小8ミクロンまでの物質をフィルタリングします。
洗浄や石油掘削装置などの過酷な環境での用途向けに、新たに再利用可能な特殊フィルタも登場しています。再利用可能な特殊フィルタは3種類あり、クリーニング可能な恒久型フィルタを使うのが最も相応しい機器を対象にしています。これらのフィルタは、浮遊塵埃をろ過する能力に加えて、高密度、耐水性、または難燃性の保護が必要な特定のアプリケーション向けに作られています。ルーバー型フィルタファンキットと組み合わせることで、産業機器、産業用コンピューティング、HVAC、空気処理などのアプリケーションに、優れたフィルタリングソリューションとして活用できます。現在これらの特殊フィルタは、120mm~280mmのルーバー型フィルタファンキットとガードで利用できます。
図5:用途に応じて3種類のフィルタがあります。(画像提供:Orion Fans)
高密度フィルタは発泡エアフィルタで、圧力降下を抑えて、産業用エンクロージャアプリケーションで大量の浮遊粉塵を捕捉できる能力があります。高密度発泡エアフィルタは幅広い気孔率(PPI)で使用でき、個別のフィルタリング性能要件に対応します。標準の気孔率は45PPIです(一般的なフィルタ媒体の5倍の保護機能)。素材は通気性に優れ特別に開発されたポリウレタン発泡剤で、耐カビ性があり、UV保護と加水分解安定性の両方の特性を備えています。このようなフィルタは気流抵抗が小さいため、産業条件や屋外条件など幅広い用途に適します。これらのフィルタは、産業、医療、通信、発電、および軍事用エアフィルタアプリケーションの電子機器を対象にしたUL 94 HF-1自消性難燃安全規格に準拠しています。
耐水性フィルタは疎水性のメッシュエアフィルタで、撥水性を持ち圧力降下を抑える媒体を備えることにより、浮遊するミストなどの液体が過酷な環境に置かれたエンクロージャ内に侵入するのを抑えます。このフィルタは、価格が高く気流を制限するメンブレン媒体に代わる、コスト効率の良い代替品として利用できます。疎水性フィルタ媒体は、耐久性、洗浄可能、耐湿性などの特性を備え、ミストを排除するゾーンを必要とする屋内外用キャビネットやプロセス機器向けのソリューションとして活用できます。また疎水性メッシュにより、MIL-STD、NEMA、IP定格など各種のエンクロージャレベルの規格に準拠できます。
難燃性フィルタはPyroCideエアフィルタで、厳しい難燃性安全規格が求められる産業用や電子機器のエンクロージャアプリケーションに適しています。このフィルタは、熱応答性の発泡性防炎塗料で処理されたアルミニウム製ハニカム断熱材で作られており、電子機器エンクロージャ内の火災封じ込めに対応します。フィルタは断面の薄い設計で、気流への抵抗が低いアルミニウムハニカム構造を持ちます。
まとめ
重要な電子機器の動作寿命を延ばすには、最適な熱管理ソリューションとなる適切なファンとフィルタを指定する必要があります。ファンは幅広いアプリケーションの要件を満たす必要があり、産業現場でのさまざまな要因や環境的な危険から最大限保護してくれるフィルタファンキットを選ぶことは、システムの性能維持に非常に重要です。ルーバー型フィルタファンキットは、さまざまな要因からの優れた保護を可能にするだけでなく、さらに大量の汚染物質や、水分、火災に対応する特殊フィルタが加わったことで、キャビネットやエンクロージャ内のシステムまたは構成部品を保護してそれらの寿命を延ばすとともに、簡単な設置、メンテナンスの低減、総運用コストの削減も可能にします。
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