IoTの要件を満たすBluetooth 4.1、4.2、および5対応Bluetooth Low Energy SoCおよびツール(第1部)

Digi-Keyの北米担当編集者 の提供

Bluetooth 4.1、4.2、および5で採用されたBluetooth Low Energy RFプロトコルソフトウェア(「スタック」)の大幅なアップグレードにより、特にモノのインターネット(IoT)関連のアプリケーションなど、従来の消費者向け用途を超えた広範囲にわたるアプリケーションでの実用性が飛躍的に向上しました。

しかし、テクノロジの急速な進化と、Bluetooth Low Energyと従来の(「クラシック」)Bluetoothの機能と相互運用性が明確に理解されていないために、若干混乱が見られます。設計者および開発者がBluetoothの機能をフルに利用しながら設計を最適化するには、開発するアプリケーションにどの形式のBluetoothが最適であるかを十分に理解する必要があります。

第1部と第2部からなるこの記事は、まずBluetooth Low Energyの定義を明確にすることで、この混乱を解消します。次に、Bluetooth 4.1、4.2、および5で導入された機能強化について説明します。この機能強化により、Bluetoothの用途は本来対象ではなかったアプリケーションにも広がりました。これには超低消費電力、通信範囲の拡大、スループットの向上、および広告拡張機能の追加が含まれます。この記事では、Bluetooth仕様の最新バージョンに完全に準拠したBluetooth Low Energyシステムオンチップ(SoC)の例も示します。

第2部では、RFの経験がほとんどない設計者が、さまざまなベンダが提供するSoC、モジュール、ファームウェア、およびハードウェア/ソフトウェア開発キット(SDK)を使用して、どのようにBluetooth Low Energyワイヤレス製品を設計できるかについて説明します。

低消費電力に最適化

Bluetooth Low Energyは、2010年のBluetooth 4.0の採用とともに、相互運用性の高い超低消費電力のBluetooth短距離無線通信技術として導入されました。この技術は、ウェアラブルなどの小容量バッテリ搭載アプリケーションへとBluetoothエコシステムを拡大しました。Bluetooth Low Energyは、ターゲットアプリケーション内でマイクロアンペア単位の平均消費電流で動作し、クラシックBluetoothを補完します。Bluetooth Low Energyのオリジナル仕様には次のような主な特長があります。

  • 軽量のプロトコルスタック
  • Bluetooth 4.0以上との相互運用性
  • 1Mbpsの生データレート
  • 約10mの通信範囲
  • 他の2.4GHz電波源に対する高度な耐ノイズ性

この技術は、完全な非同期通信が使用できる、コンパクトなワイヤレスセンサやその他のペリフェラルからのデータ送信に適しています。これらのデバイスは、数バイトの少量データを低い頻度で送信します。デューティサイクルは、通常は毎秒数回~1分ごとに1回、あるいはより長いサイクルです。

Bluetooth 4.0のコア仕様では、軽量のBluetooth Low Energyスタックに、物理層(PHY)(ビットデータの送信)、リンク層(LL)(パケットの構造と制御の定義)、ホストコントローラインターフェース (HCI)が含まれます。これらの3つの層は、まとめてBluetooth Low Energyリンクコントローラ(「コントローラ」)と呼ばれます。コントローラの上位レベルのホスト層には、アプリケーションおよびサービスに対してチャンネルベースの抽象化を提供するLogical Link Control and Adaptation Protocol(L2CAP)が含まれます。このプロトコルは、共有論理リンク上でアプリケーションデータのフラグメンテーションおよびデフラグメンテーションと複数チャンネルの多重化および非多重化を実行します。

ホスト層には、Security Manager Protocol(SMP)およびAttribute Protocol(ATT)も含まれます。SMPは、固定されたL2CAPチャンネルを使用してデバイス間のセキュリティ機能を実現します。ATTは、固定されたL2CAPチャンネル上で少量データの通信手段を提供します。ATTは、デバイスがほかのデバイスのサービスと機能を確認する際にも使用されます。Generic Attribute Profile(GATT)は、プロファイルデータが交換される構造を指定します。この構造は、アプリケーションで使用される(サービスや特性などの)基本要素を定義します。最後に、Generic Access Profile(GAP)は、Bluetoothデバイスの基本要件を定義します。アプリケーションソフトウェアは、このスタック上で動作します(図1)。

Bluetooth Low Energyプロトコルスタックの画像

図1:コントローラ、ホスト、およびアプリケーションを示すBluetooth Low Energyプロトコルスタック。Generic Attribute Profile(GATT)はBluetoothデバイスの基本要件を定義します。(画像提供:『Bluetooth Low Energy:開発者向けハンドブック(Bluetooth Low Energy: The Developer’s Handbook)』、Robin Heydon)

開発者が陥りがちな混乱の原因は、Bluetoothコア仕様のバージョン4.0が次の2種類のチップを定義していることです。

  • 上記のBluetooth Low Energyチップおよびスタック
  • 修正されたスタックと旧バージョンのBasic Rate(BR)/Enhanced Data Rate(EDR)PHYおよびLow Energy(LE) PHYの組み合わせ(「BR/EDR + LE」)を搭載し、Bluetoothのすべてのバージョンおよびチップとの相互運用性を確保したBluetoothチップ

この記事(および第2部)では、主にBluetooth Low Energyデバイスに焦点を合わせます。Bluetooth Low Energyデバイスは、多くの消費者向けアプリケーションでBluetoothチップとの組み合わせで動作していますが、Bluetooth 4.1、4.2、および5で導入された機能強化により、IoTアプリケーション向けのスタンドアロンデバイスとしての採用が進んでいます。

Bluetooth Low Energyチップには、他のBluetooth Low EnergyチップおよびBluetooth 4.0以上に準拠した、Bluetoothチップとの相互運用性があります。なお、Bluetoothチップは、消費電力よりも帯域幅が重視されるスマートフォン、タブレットコンピュータ、およびPCなどのアプリケーションで使用されます。ただし、Bluetoothチップは、Bluetooth 3.0およびそれ以前に準拠したBluetoothチップとも相互運用性があります(図2)。

Bluetoothチップ(BR/EDR + LE PHY)およびBluetooth Low Energyチップ(LE PHY)の画像

図2:Bluetooth 4.0は、Bluetoothチップ(BR/EDR + LE PHY)およびBluetooth Low Energyチップ(LE PHY)の2種類のデバイス(画像の中央および右側)をベースにしています。これらのデバイスには相互運用性があります。Bluetoothチップは、Bluetooth 3.0およびそれ以前に準拠したクラシックBluetoothチップ(左側)とも相互運用性があります。(画像提供:Nordic Semiconductor

Bluetooth Low Energyは、スタンバイ時間の最大化、高速接続の使用、および送信/受信時のピーク電力の低減により、消費電力を削減します。Bluetooth Low Energyの超低消費電力のカギとなるのは、クラシックBluetoothが固定された接続間隔を持つ「接続指向」の無線通信であるのに対して、Bluetooth Low Energyは通常は消費電力の少ない「非接続」状態であるという事実です。この状態では、リンクの両端は互いを認識していますが、必要時にはできるだけ短時間に限って接続します。

Bluetooth Low Energyは、3つの広告チャンネルを使用してほかのデバイスの検索または自分自身の存在の通知を実行します(Bluetoothは32チャンネル)。Bluetooth Low Energyは0.6~1.2msの間アクティブ化してほかのデバイスをスキャンします。一方、Bluetoothは32チャンネルをスキャンするのに22.5msかかり、最大20倍の電力を消費します。

接続後、Bluetooth Low Energyは37のデータチャンネルのうち1チャンネルに切り替えます。それ以降は(79チャンネルを使用する)Bluetoothオリジナル仕様で導入されたAdaptive Frequency Hopping(AFH)技術を使用してチャンネルを切り替え、疑似ランダムパターン内の干渉を回避します。Bluetoothは接続の完了まで数百ミリ秒かかるのに対して、Bluetooth Low Energyは接続(スキャン、リンク、データ送信、認証、および終了)を3msで完了するため、ここでも消費電力が削減されます。

またBluetooth Low Energy技術は、Bluetoothよりも「緩和された」RFパラメータを使用することにより、消費電力を削減します。どちらの技術もガウス周波数偏移変調(GFSK)を使用しますが、クラシックBluetoothが変調指数0.35を使用するのに対して、Bluetooth Smartは0.5を使用するため、電力要件が軽減されます。変調指数の低減は、通信範囲の拡大と堅牢性の向上にも貢献します。

最後に、Bluetooth Low EnergyはBluetoothよりも短いパケットを使用します。このことはチップの過熱防止に役立ちます。また、大きな電力を消費する再較正手順と閉ループアーキテクチャの使用が不要になります。

IoTへの対応

消費者向けアプリケーションでは、通常はスマートフォンが、Bluetooth Low Energyデバイスのデータがクラウドに到達するための「ゲートウェイ」として機能します。この方式は、フィットネスバンドなどの人が主体のアプリケーションでは上手く機能しますが、ホームオートメーションや産業用オートメーションなど、スマートフォンが常に利用できるとは限らないアプリケーションには不十分です。Bluetooth 4.1の目的の1つは、IoTアプリケーション用にBluetoothテクノロジを実装する場合のこうした弱点に対処することでした。

Bluetooth 4.1では、1つのデバイスが同時にBluetooth Low Energyの「ペリフェラル」と「ハブ」として動作できる機能が追加されました。たとえばスマートウォッチは、Bluetooth Low Energy心拍数モニタから情報を収集するハブとして動作すると同時に、スマートフォンのペリフェラルとしてハンドセットからの新しいメッセージ通知を表示できるようになりました。第2に、Bluetooth 4.1には、IPv6(インターネット通信プロトコルの最新バージョン)用に使用できる専用チャンネルを作成する標準的な手段が追加されました。

Bluetooth 4.1で導入されたその他の機能強化として、Bluetooth Low EnergyとセルラLTEの共存の改善、開発者が再接続の時間間隔を変更できるようにして接続性を向上、バルクデータ転送などが挙げられます。

一方、Internet Engineering Task Force(IETF)は、IPv6にLow Power Wireless Personal Area Network(6LoWPAN)仕様を追加しました。IPv4の32ビットアドレス指定を拡張したIPv6の128ビットアドレス指定により、IoTに追加される数十億個の小型センサすべてに一意のIPアドレスを割り当てることができます。これで各センサはネットワーク上のほかのデバイスに直接接続できます。これにより、Bluetooth Low Energyでは、各センサがゲートウェイのサービスを使用せずにIP接続および変換を実行できます。スマートフォンは広く使用されているゲートウェイの典型的な例です。

IETFが開発した仕様とBluetooth 4.1で導入された専用チャンネルの組み合わせにより、Bluetooth 4.2では、Bluetooth Low EnergyスタックにInternet Protocol Support Profile(IPSP)が追加されました。IPSPにより、各デバイスは、Bluetooth Low Energyトランスポート層上でIPv6パケットを使用して、IPSPをサポートするほかのデバイスの検出と通信を実行できます。Bluetooth Low Energyチップの大手ベンダの大半は、現在このようなトランスポート層をスタックに組み込んでいます。

IPSPが追加されたことで、Bluetooth Low Energyデバイスは、簡単な低価格のルータまたはゲートウェイを介してほかの任意のIPv6対応デバイスと通信できるようになりました(図3)。このようなルータは、分析や操作を何も実行せずにIPv6パケットを中継する中立的なデバイスとして動作します。したがって、すでに稼働している、従来はBluetooth Low Energyとの互換性がなかった数百万台のデバイス(セットトップボックス(STB)やWi-Fiルータなど)を、低コストでルータとして動作させることができます。

Bluetooth 4.2で導入されたInternet Protocol Support Profile(IPSP)の画像

図3:Bluetooth 4.2ではBluetooth Low Energy(以前の名称は「Bluetooth Smart」) にInternet Protocol Support Profile(IPSP)が導入され、各デバイスが簡単で低価格のルータを使用したインターネット接続を介してほかの任意のIPv6対応デバイスに接続できるようになりました。スマートフォンが利用できる場合は、スマートフォンゲートウェイを介したインターネットアクセスも可能です。(画像提供:Nordic Semiconductor)

Bluetooth 4.2のセキュリティ機能

Bluetooth 4.2では、スマートライトなどのBluetooth Low Energyデバイスが人の介入なしでインターネットに定期的に接続する際のハッキングの危険性に対応して、いくつかのセキュリティ要素が導入されました。

その1つはLow Energy(LE)セキュアコネクションです。Bluetooth 4.2以前は、Bluetoothのセキュリティ機能の基本的なビルディングブロックはセキュアシンプルペアリングであり、複数の暗号化キーの生成および配布後にデバイス間の接続が行われていました。暗号化キーは、1つのShort Term Key(STK)と、リンク層暗号化および認証用(LTK)、接続シグネチャ変換用(CSRK)、およびID変換用(IRK)の3つのLong Term Keyです。

Bluetooth 4.2では、はるかに強度の高いセキュリティ機能が導入されました。Bluetooth 4.2仕様では、キーの管理のために、米国連邦情報処理標準(FIPS)推奨の楕円曲線を使用した非対称楕円曲線暗号(ECC)が追加されました。また、メッセージの暗号化には、FIPS承認済みのAdvanced Encryption Standard-Counter with CBC-MAC(AES-CCM)暗号を採用しました。その結果、受動的盗聴や中間者(MITM)攻撃などの脅威からワイヤレスリンクを保護する、隣接デバイス間のリンク層セキュリティの強度が向上しました。

Bluetooth 4.2に追加された第2のセキュリティ機能は、LEプライバシーです。この機能は、コントローラレベルでプライベートアドレスのホワイトリストをサポートしながら、コントローラデバイスおよびホストデバイス内のプライベートアドレス変換を管理します。

さらに、Bluetooth 4.2では、Power Class 1の最大送信パワーモードが+10dBから+20dBに引き上げられました。これにより、外部電源アダプタが不要になり、スペースとコストを削減できます。Bluetooth 4.2では、パケット容量がBluetooth 4.1の27バイトから251バイトに、データ範囲が最大2.5倍に拡張されました。こうした改善により、インターネットを介したデバイス間の通信および接続の効率が向上し、アップロードの高速化とファームウェアのオーバーザエア(OTA)アップデートの高頻度化が可能となります。

アップグレードへの迅速な対応

Bluetooth Low Energyのオープン規格と市場での成功により、Bluetooth 4.0、4.1、および4.2の採用後、短期間で多数のベンダと製品が市場に登場しています。一般的に、これらのソリューションはSoCを利用してきました。その格好の例は、2012年に発売された Nordic Semiconductorの nRF51シリーズです。この製品はARM Cortex-M0プロセッサをベースにして、Bluetooth Low Energyトランシーバ、フラッシュメモリおよびRAMメモリ、オンボード電源管理、および少数のI/Oを搭載しています。

Dialog SemiconductorDA14680 SoCも同じような構成です。このチップはBluetooth 4.2準拠デバイスで、ARM Cortex-M0プロセッサ、Bluetooth Low Energy無線、8MBフラッシュ、64KB OTP ROM、128KBデータSRAM、128KB ROM、オンチップ電源管理、その他いくつかのペリフェラルを搭載しています(図4)。

Dialog SemiconductorのDA14680の図

図4:Dialog SemiconductorのDA14680は、Bluetooth 4.2に準拠したBLE SoCの標準的な例で、ARM組み込みプロセッサ、高感度2.4GHz無線、フラッシュ、RAM、およびROMをベースにしています。(画像提供:Dialog Semiconductor)

NordicおよびDialog以外にも、多くのBluetooth 4.1および4.2 ICベンダが開発者向けソリューションを提供しています。その中でもTexas Instruments(TI)とCypress Semiconductorが有名です。

Bluetooth 5の通信範囲と帯域幅の拡張

2016年12月に発表されたBluetooth技術の最新バージョンであるBluetooth 5(予想に反して「5.0」ではない)では、Bluetooth Low EnergyがIoT向けの基盤技術に一歩近づきました。機能が大幅に強化され、通信範囲と帯域幅が拡張されています。

帯域幅の拡張は、Bluetooth Low Energyの旧バージョンで使用されていた1Mbps PHYから2Mbps PHYへの拡張によって実現されます。Bluetooth 5のパケット構造には固定されたオーバーヘッドが存在するため、2倍のPHY帯域幅がそのまま2倍のデータ送信レートを意味するわけではありません。しかし、Bluetooth 4.2の1 Mbps PHYのデータ送信レートが800kbpsであったのに対して、Bluetooth 5では約1.4Mbpsを達成できそうです(図5)。

Bluetooth 5のペイロードはBluetooth 4.2と同じ251バイトであることを示す図

図5:Bluetooth 5のペイロードはBluetooth 4.2と同じ251バイトですが、2Mbps PHYによって送信時間が短縮され、帯域幅が拡張されます。Bluetooth 4.2が1Mbps PHYを使用して800kbpsを達成したのに対して、2Mbps PHYを使用するBluetooth 5の帯域幅は1.4Mbpsに達します。Bluetooth 5の通信範囲拡張機能を利用すると、帯域幅の利点は失われます。(画像提供:Bluetooth.com)

スループットの高速化は多くのアプリケーションで利点となりますが、IoT向けの主な利点は、OTAアップデートの迅速化です。このことは、機能の向上とセキュリティ強化のために定期的な機能強化を必要とするIoTセンサには重要な要件です。さらに、2Mbps PHYの使用により、一定量のデータを送信するために無線通信機能がアクティブになる時間が1Mbpsデバイスよりも短くなるため、消費電力が削減されます。また、ディープスリープモードの時間が長くなるため、さらに消費電力が削減されます。

Bluetooth 5は、Bluetooth 4.2の最大4倍の通信範囲を提供します。このことは多くのIoTアプリケーションで有利です。たとえば通信範囲の拡大により、家中のすべてのスマートライトが、低消費電力ワイヤレス技術の通信範囲を拡大するために実装される複雑なメッシュネットワークを使用せずに、スター型トポロジを介して中央のハブと通信できます。通信範囲の拡大は、レシーバ側で通信エラーを検出して訂正するフォワードエラー訂正(FEC)の使用によって実現されます。重要なのは、Bluetooth技術の超低消費電力を継承して、送信時の消費電力を増大させずに通信範囲を拡大したことです。

技術者および開発者にとって、「通信範囲」は、受信信号からデータを正しく抽出できる最大距離として定義されます。通信範囲の拡大につれて、信号対ノイズ比(SNR)が上昇し、デコードエラーが発生し始めます。Bluetoothレシーバは、最大ビットエラーレート(BER)が0.1%を超えると通信を遮断します。トランスミッタのパワーを増大させる代わりに、レシーバの感度を上げて、最大BERに達する通信距離を大幅に延長しました。

Bluetooth 4.2は、巡回冗長検査(CRC)を使用してパケットエラーをチェックします。レシーバはCRCを再計算し、得られた値とトランスミッタがパケットに付加した値を比較します。CRC値が一致しない場合は、エラーが発生したことを示します。ただし、Bluetooth 4.2には、レシーバ側でエラーを訂正するメカニズムは含まれていません。代わりに、レシーバは通常はパケットの再送信を要求します。そのため、全体的なスループットが低速になります。

Bluetooth 5のFECにより、レシーバの感度がハードウェアの変更なしで向上します。この機能の欠点は、エラー訂正を容易にするためにパケットに冗長ビットが追加されることです。これにより、実効データレートは、利用可能な2つの符号化方式のどちらが適用されるかによって500kbpsまたは125kbpsに低下します。残念なことに、2Mbps PHYはFECをサポートしていないため、2Mbps PHYを使用して冗長ビットによる実効スループットの低下を補償することはできません。

FECによって実効スループットが低下するため、(4倍の)長通信距離動作を使用して一定量のデータを送信する場合、Bluetooth無線はハイパワー状態の時間が長くなります。標準的なBluetooth Low Energyパケットのペイロードを送信する場合、符号化方式によっては、未符号化データを送信する場合に比べて最大13倍の時間がかかります。ピーク消費電力は影響を受けませんが、平均消費電力が大幅に増加するため、バッテリ持続時間が短くなります。

Bluetooth 5には、広告拡張機能をはじめとするその他の利点もあります。広告拡張機能は、ペイロードのサイズを27バイトから251バイトに拡張し、より効率的なデータ転送を可能にします。この機能が役立つ用途としては、小売業者が消費者のスマートフォンへのアドバタイジングパケット内でより多くの情報を送信できるビーコンアプリケーションが挙げられます。最新バージョンでは、データチャンネルをブロードキャスト用に使える機能が追加されています。

Bluetooth 5準拠の商用BLEチップが登場し始めています。TIのCC2640R2F SimpleLink Bluetooth Low Energy SoCがその1つです。 このBluetooth 5チップは、ARM Cortex-M3プロセッサ、Bluetooth 4.2および5準拠の2.4GHz無線(感度-97dBm)、オンチップDC/DCコンバータ、適切に選択されたI/Oおよびペリフェラルを統合したソリューションです。このSoCは、広範囲にわたるTIのSDK、リファレンスデザイン、その他のソフトウェアツールによってサポートされます。

Bluetooth 5は、現時点ではZigBeeやANT+などの競合テクノロジのメッシュネットワーク機能をサポートしていません。Qualcommの一部門となったCSRをはじめとするいくつかのメーカーが、Bluetooth Low Energyをベースにした独自のメッシュ技術を実装しています。メッシュはIoTアプリケーションの主要な要件となる可能性が高いため、当然、Bluetooth SIGはメッシュの実装に取り組んでいます。2017年後半に予定されているBluetooth規格の次の更新では、メッシュネットワーキングをサポートすることが予想されます。

結論

Bluetooth 4.1、4.2、および5で採用されたBluetooth Low Energy RFプロトコルソフトウェア(「スタック」)に多くの重要なアップグレードが行われたことで、消費電力の低減、通信範囲の拡大、スループットの向上が要求されるアプリケーションで、Bluetooth Low Energyインターフェースがより利用しやすくなりました。ただし、この変更は若干の混乱を招いています。開発者が自社のアプリケーション用にBluetoothの最適なバージョンをフルに利用するには、Bluetooth規格の更新内容とその意味を十分に理解する必要があります。

すでに説明したように、Bluetoothの以前のバージョン向けの製品ソリューションが広く普及している一方、Bluetooth 5の採用が急速に拡大しています。これらのソリューションでは、任意のセンサ、製品、またはアプライアンスが、スマートフォンのような複雑なゲートウェイを使用せずに、簡単で低価格のルータを介してIoTに接続されます。このような接続により、現代の最も日常的な製品にも大幅に強化された機能を提供できるようになり、デバイスの寿命全体を通してその機能を頻繁に更新できるようになります。

第2部の概要:第2部では、第1部の内容を踏まえて、広範囲にわたるBluetooth 4.2および5準拠のSoCおよびモジュールを使用した製品の設計について説明します。

これらのコンポーネントと、定評あるスタック、オープンソースのアプリケーションソフトウェア、リファレンスデザイン、工場から供給される開発ツールを組み合わせることで、面倒なRFエンジニアリングの大半は不要になります。この記事では、Bluetooth Low Energyワイヤレス製品の開発は依然として簡単な作業とは言えませんが、どのようにすれば設計上の落とし穴を避けながら、規制機関の承認、Bluetooth規格への準拠、顧客満足度の基準を満たす設計を完成できるかを説明します。

リファレンス:

  1. Bluetooth Low Energy入門(Getting Started with Bluetooth Low Energy)』、Kevin Townsend、Carles Cufí、Akiba、Robert Davidson、O’Reilly
  2. Bluetooth Low Energy: 開発者向けハンドブック(Bluetooth Low Energy: The Developer’s Handbook)』、Robin Heydon
  3. Bluetooth 5の研究 - 長距離通信の実現(Exploring Bluetooth 5 - Going the Distance)』、Martin Woolley、Bluetooth.com
  4. 『Bluetooth v4.2 for Low Energy製品の概要(A look in to Bluetooth v4.2 for Low Energy Products)』

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出版者について

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