TeSys VLSディスコネクトスイッチによるパネル設計と安全性の簡素化

著者 Aharon Etengoff

DigiKeyの北米担当編集者の提供

ほとんどの産業インフラでは、電気回路を安全に絶縁するためにディスコネクトスイッチが必要です。メンテナンス、緊急停止、法令遵守など、これらのスイッチはシステムの安全性と保守性を確保する上で重要な役割を果たします。Schneider ElectricTeSys VLSディスコネクトスイッチは、UL 508およびUL 98アプリケーションに対応した25A~125Aまでの定格容量を備えた小型でモジュール式の設計により、これらの要件を満たしています。主な用途には、モータの絶縁、フィーダの断路、電気パネルの保護などがあります。

モータ制御と保護を目的とした幅広いTeSys製品ラインの一部であるVLSシリーズは、マテリアルハンドリング、HVAC、ポンプ、太陽エネルギー、鉱業など、多様なアプリケーションにおける産業用および民生用システムをサポートします。DINレール取り付け型とドア取付け型の両方が用意されており、これらのスイッチは、補助接点ブロック(図1参照)、パドロック付きハンドル、第4極、端子シュラウドなどのアクセサリを組み合わせることで、特定の安全基準や規制要件に対応可能です。

Schneider Electric TeSys VLS補助接点ブロックの画像図1. Schneider ElectricのTeSys VLS補助接点ブロックは、状態表示や安全および制御システムとのインターフェースを提供します。(画像提供:Schneider Electric)

UL、CSA、IEC規格の認証を取得したTeSys VLSシリーズは、一貫した取り付け寸法と拡張可能なオプションにより、パネル設計を簡素化し、コンポーネントのばらつきを低減します。

この記事では、UL 508とUL 98規格の実用上の違いを確認し、HVAC、マテリアルハンドリング、ソーラー、エネルギーなど、さまざまなアプリケーションにおける一般的な使用例を紹介し、TeSys VLSのモジュール式アーキテクチャが柔軟な取り付けと構成をどのように実現しているかを説明します。また、パドロック付きハンドル、補助接点、インターロックなどのアクセサリが、安全機能およびロックアウト/タグアウトプロトコルの準拠にどのように貢献するかも探ります。最後に、標準化されたコンポーネントと一貫したフォームファクタが、パネルビルダやシステムインテグレータにとって、筐体設計の簡素化と在庫の複雑化を軽減する方法についても説明します。

ディスコネクトスイッチと規格:UL 508とUL 98の比較

産業用ディスコネクトスイッチは、電気システムにおける使用目的に応じた規格に適合する必要があります。UL 508は負荷側アプリケーション用のモータコントローラを対象とし、UL 98はフィーダー断路用の汎用スイッチを規定しています。これらの規格は、適用範囲、性能要件、および故障処理能力において異なります。

UL508は、負荷側の断路に使用される手動モータコントローラに適用され、通常、パネル内の特定の処理を行う部分のモータまたは機器を絶縁します。これらのスイッチは、ファンやポンプなどの個々の負荷に一般的に使用され、完全な故障状態での断路が不要な場合に適しています。UL 508規格に準拠したモデルは、5kAの短絡定格と、スペースに制約のあるアプリケーションに最適化された小型の36mmのフォームファクタを特長としています。

UL 98は、フィーダ全体を断路するため、またはパネルの主要な断路手段として機能するように設計された汎用ス イッチに適用されます。これらのモデルは、10kAの故障電流定格や負荷下での高い耐久性など、より厳しい性能基準を満たす必要があります。UL 98スイッチは、通常、より高い電流容量と故障遮断能力をサポートするため、一般的に70mmの大型フォームファクタを採用しています。

UL 508およびUL 98:TeSys VLS技術仕様

Schneider ElectricのTeSys VLSシリーズには、UL 508およびUL 98の両方の認証を取得したオプションが用意されており、一貫した機械的フットプリントを維持しながら設計の柔軟性を確保しています。UL 508規格に準拠したモデルには、TeSys VLS 25Aディスコネクトスイッチ(図2参照)、32Aモデル、および40Aバリアントなどが含まれ、小型なパネルレイアウトと分岐回路保護をサポートします。

Schneider ElectricのTeSys VLSディスコネクトスイッチの画像図2. 25A、3極のSchneider Electric TeSys VLS3P025R1ディスコネクトスイッチは、UL 508認証を取得し、パネルレイアウトにおける小型な負荷側ディスコネクトスイッチとして設計されています。(画像提供:Schneider Electric)

より高容量のモデルには、TeSys VLS 63A UL 98スイッチ125Aモデルなどの電力配電システムにおけるフィーダレベルの断路および主絶縁用にUL 98認証を取得しています。電流範囲、短絡定格、端子容量を含む主要な仕様の比較は、以下の表1に詳細に示されています。

機能 UL 508モデル UL 98モデル
電流範囲 25A~63A 63A~125A
36mm 70mm
短絡定格 5kA 10kA
遮断容量(AC23A 400 V) 320A~360A 1,000A
電気的寿命(AC21A) 100,000サイクル 30,000サイクル
端子容量 0.75mm²~16mm²(AWG18-6) 4mm²~50mm²(AWG12-1)
代表的な使用例 モータ絶縁 フィーダー断路

表1:UL 508およびUL 98 TeSys VLSディスコネクトスイッチ仕様の比較。

TeSys VLSシリーズの特長の1つは、63Aのクロスオーバーポイントで、UL 508とUL 98の認証オプションの両方が利用可能です。システム設計者は、利用可能なパネルスペース、必要な故障遮断容量、適用される規格に応じて、小型のUL 508スイッチとフルサイズのUL 98スイッチから選択できます。この設計の柔軟性により、NEC 430.102やIEC 60947-3などの米国および国際規制への適合が可能です。

産業用および民生用アプリケーション

TeSys VLSディスコネクトスイッチのラインナップは、局所的な機器の絶縁からフィーダレベルの断路まで、産業用および民生用の幅広いアプリケーションに対応しています。VLSシリーズは、以下の要件を満たす、柔軟なフォームファクタ、認証オプション、および動作範囲を提供します。

  • マテリアルハンドリング:スペース制約のある設置向けのコンパクトなTeSys UL 508 VLSモデル、および主断路用のUL 98規格準拠のTeSys VLSスイッチなどのデュアル認証63Aオプションにより、システム設計者は、コンベヤモータ制御パネルを、個々のドライブの絶縁とメイン電源配電の両方に最適化できます。
  • HVACシステム:図3に示すように、屋上ユニットのメインパネル断路や商業ビルのフィーダレベルの絶縁に求められる高い遮断定格と環境耐久性を満たす、UL 98規格の大型モデル(例:TeSys VLS 125Aディスコネクトスイッチ)が利用可能です。

Schneider Electric TeSys VLS3P125D2ボディスイッチの画像図3. Schneider Electric TeSys VLS3P125D2ボディスイッチ、125A、3極UL 98認定断路器は、フィーダ絶縁、およびメインパネルの断路に対応しています。(画像提供:Schneider Electric)

  • ポンプアプリケーション:TeSys VLS 63A UL 98スイッチなどの中間モデルにより、遠心ポンプ、ブースターステーション、水処理システムは、信頼性の高い絶縁が可能になります。UL 98認証は、ダイレクトオンラインモータ始動時の適切な故障保護を提供し、パドロック可能なハンドルは、公共施設におけるメンテナンスロックアウトプロトコルをサポートします。
  • ソーラー設備:小型のUL 508規格準拠のスイッチ(例:TeSys VLS 40Aディスコネクトスイッチ)は、個々の30kWインバータまたはDC/ACコンバータを絶縁し、狭いコンバイナボックスやインバータ筐体内でNEC 690.15の迅速な停止機能を実現します。
  • 鉱業アプリケーション:鉱物加工、コンベヤシステム、換気装置などの過酷な条件下で信頼性の高い動作を実現する重負荷対応UL 98規格準拠モデルには、TeSys VLS 125Aディスコネクトスイッチなどがあります。-25°C~+55°Cの動作範囲と堅牢な端子設計により、アクセス性と絶縁性が重要な地下および地上設備環境でも信頼性の高い動作をサポートします。

モジュール式アーキテクチャおよび効率的なパネル統合

TeSys VLSディスコネクトスイッチは、パネル設計、アセンブリ、およびメンテナンスを簡素化するモジュール式アーキテクチャを採用しています。スイッチは、DINレール取り付け型とドア取り付け型の両方で利用可能で、以下の機能を通じて幅広いエンクロージャ構成に対応しています。

  • 機械的一貫性:UL 508モデル(25A~63A)は幅を36mmで統一し、UL 98モデル(63A~125A)は70mmの標準化された幅で統一しています。この電流定格における一貫性により、取り付けパターンとエンクロージャのレイアウトの再利用が可能になり、複数のアプリケーションにおけるカスタム機械設計の必要性を最小限に抑えることができます。
  • アクセサリと在庫の簡素化:共通のアクセサリインターフェースにより、部品表(BOM)の複雑さを軽減し、在庫管理を効率化します。TeSys VLSのパドロック対応ハンドルはすべての定格電流に適合し、補助接点ブロックと端子配置は各スイッチサイズクラス内で一貫しています。第4極、TeSys VLS補助接点、端子シュラウドなどは、変更なしで取り付け可能です。TeSys VLS機械式インターロックは、共有取り付けインターフェースを使用して複数のスイッチの組み合わせをサポートします。
  • 柔軟な取付けとエンクロージャ設計:ドア取付け型には、エンクロージャ前面でのハンドル操作を可能にするシャフト延長部があり、停止やメンテナンス時の人間工学的で規格準拠なアクセスをサポートします。この設計手法により、パネルメーカーとOEMは、エンクロージャの奥行きを短くし、穴あけテンプレートを統一し、レイアウトの反復を加速できます。これは、多品種少量生産において不可欠です。

電流定格と認証クラスを問わず単一のスイッチファミリを使用することで、エンジニアリングチームは製品開発を効率化でき、生産チームはアセンブリを簡素化でき、電源クラスとパネルタイプ間のばらつきを低減できるという利点があります。

安全、ロックアウト/タグアウト、および設定可能なアクセサリオプション

安全性とコンプライアンスは、あらゆるディスコネクトスイッチにおいて重要な考慮事項です。特に手動による頻繁なアクセス、メンテナンス、停止が必要なシステムでは、その重要性はさらに高まります。TeSys VLSシリーズは、人員保護、規格準拠、およびより広範な安全アーキテクチャへの統合をサポートするモジュール式アクセサリにより、これらの要求に対応しています。これには次のようなものが含まれます。

  • パドロック対応ハンドル:図4に示すように、TeSys VLS のパドロック対応ハンドルは、48 × 48mmの小型なフォームファクタで、単一穴マウントとIP65保護等級を備え、限られたスペースでもフロントパネルに安全に設置できます。赤と黄色の色分けは ISO 13850緊急停止規則に準拠し、統合されたパドロック機能により信頼性の高いロックアウト/タグアウト(LOTO)手順を可能にします。

Schneider Electric TeSys VLSH4S5R回転ハンドルの画像図4. Schneider Electric TeSys VLSH4S5R回転ハンドル(IP65等級、フロントパネル安全アクセス用の統合パドロック対応)。(画像提供:Schneider Electric)

  • ステータスと制御の統合:TeSys VLS補助接点ブロックは、690Vおよび10A定格の1NO+1NC接点を備え、リアルタイムのステータス表示またはPLCおよびセーフティリレーとの統合を可能にします。オプションの早期断路バリエーションは、安全が重要なシステムにおけるシーケンス制御と機器保護の向上をサポートします。
  • 機械式インターロック:TeSys VLSの機械式インターロックは、スイッチの同時操作を防止し、NFPA 79およびIEC 60204-1に準拠した一連の絶縁ルーチンを可能にします。これらのアクセサリは、定格16A~40Aまでの定格スイッチと互換性があり、切り替え制御と協調制御の両方をサポートします。

すべてのTeSys VLSコンポーネントは、-25°C~+55°C(IEC 60947-3に準拠)の範囲で信頼性高く動作し、-40°Cまでの保管温度、690VAC動作を世界市場全域で対応し、3,000mまでの設置高度に対応しています。製品ラインアップ全体で共通のインターフェース寸法と取り付け基準を採用することで、ドキュメント作成が簡素化され、現場でのメンテナンスが効率化され、安全基準に準拠したシステム設計への統合が容易になります。

まとめ

Schneider ElectricのTeSys VLSディスコネクトスイッチは、モジュール式設計、柔軟な取付けオプション、およびUL 508/UL 98の二重認証の組み合わせることで、産業用パネル設計の簡素化と準拠を容易にします。63Aのクロスオーバーポイントによるスペース対容量の最適化、標準化されたアクセサリ、-25°C~+55°Cの動作範囲を備えた、VLSシリーズは、HVAC、ソーラー、ポンプ、マテリアルハンドリングなどのアプリケーションにおいて、安全性、信頼性、在庫削減をサポートします。

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著者について

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Aharon Etengoff

Aharon Etengoff is a technology writer with extensive experience in the semiconductor and telecom sectors. He develops white papers, technical articles, and high-level collateral for leading companies in both industries. His work has appeared in publications such as EE World Online, EV Engineering, and 5G Technology World. Aharon has written about HBM and GDDR memory, interface and security IP, AI-powered EDA tools, chiplets, 3DIC, and 5G wireless networks. Earlier in his career, he was the managing editor of TG Daily, where he led a team covering emerging tech trends.

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