統合RFマイクロコントローラを使用して小型、低電力のBluetoothアクセサリを短期間で開発

著者 Bill Giovino

DigiKeyの北米担当編集者の提供

開発者は、小型で信頼性が高く、低電力、低コストの電池駆動式Bluetoothデバイスを、かつてないほど短期の市場投入スケジュールで開発する必要性に迫られています。このエンジニアリングのトレードオフマトリクスはますます難しくなりつつありますが、半導体プロバイダが提供する革新的なソリューションのおかげで、これらの個々の問題にも対応できる状況が整い、トレードオフマトリクスの解決は不可能ではなくなっています。

そのようなソリューションの1つに、制御プロセッサとBluetooth無線の両方が統合された、STMicroelectronicsSTM32WB55RGV6マイクロコントローラがあります。

この記事では、成長し続けるBluetoothアクセサリ市場に求められる設計要件を検討し、続いてSTM32WB55RGV6とその応用方法について紹介します。

Bluetoothアクセサリの需要

一般的に、どのBluetoothアクセサリにも電池寿命とサイズに対する要件が共通してあります。民生用Bluetooth製品の場合、電池寿命の長さは顧客満足度に直結するため、小型で低消費電力の部品を選択する必要があります。初期の設計は、部品の差し替えに対応できるように柔軟に行うべきでしょう。開発プロセスが進む中で、すでに選択した製品より適切な製品が見つかることも珍しくないからです。

通常Bluetoothの設計は、Bluetooth無線、アプリケーションプロセッサとサポート部品、そしてユーザーインターフェース(ボタン、LED、スピーカ)の3つに区分されます。STMicroelectronicsの製品では、制御プロセッサとBluetooth無線を同じマイクロコントローラに統合することで、設計が簡素化されています。STM32WB55RGV6マイクロコントローラは、浮動小数点ユニット(FPU)プロセッサ内蔵の64MHz(メガヘルツ)Arm® Cortex®-M4と完全なBluetooth無線を1つのチップに統合した、STMicroelectronicsのSTM32WBマイクロコントローラファミリ製品の1つです。オンボードメモリには、1MB(メガバイト)のフラッシュメモリと256KB(キロバイト)のSRAMが含まれています。

STM32WB55RGV6には、オンチップの電圧レギュレータが3つ含まれています。メインのレギュレータは、プロセッサが実行モードとスリープモードのとき動作します。低電力実行モードと低電力スリープモードの際には、低電力レギュレータが使用されます。無線周波数(RF)レギュレータは、Bluetooth無線とRFサブシステムへの給電用のみに使用されます。

他のパラメータによっても、STM32WB55RGV6が低電力アプリケーション用に基礎から新規に作成されたことが明らかにわかります。このコントローラには、13nA(ナノアンペア)シャットダウンモードがあり、一部のRAMを除いてチップ全体をオフにします。リアルタイムクロック(RTC)がシャットダウンで実行したままになっても、デバイスが消費するのはわずか315nAです。RTCが動作している状態では、マイクロコントローラはわずか600nAしか消費せずに32KBのRAMを保持できます。

柔軟性の面では、STM32WB55RGV6には2つのシリアルペリフェラルインターフェース(SPI)と2つのI2Cインターフェースを含む、フルレンジのペリフェラルが含まれています(図1)。USB 2.0 Full Speed(FS)ポートを使用して、アプリケーションとPC間でファイルを転送できます。また、データ転送のサポートの有無にかかわらず、Bluetoothアプリケーションのバッテリ充電にも使用できます。STM32WB55は、外付け8 x 40ピクセルLCD用のコントローラも備えています。タッチセンシングコントローラを利用することで、タッチスクリーンインターフェースが可能になります。

STMicroelectronicsが提供するSTM32WB55RGV6マイクロコントローラの図図1:STMicroelectronicsのSTM32WB55RGV6マイクロコントローラは、FPUを含むArm Cortex-M4とBluetooth無線サブシステムを1つのチップに統合しています。(画像提供:STMicroelectronics)

STM32WB55RGV6のBluetooth無線は、最新のBluetooth仕様v5.0に準拠しています。このBluetooth無線は、Bluetooth無線向けの物理層(PHY)とメディアアクセスコントローラ(MAC)を対象とするIEEE 802.15.4-2011仕様にも準拠します。電池駆動式アプリケーションの場合、このBluetooth無線はBluetooth Low Energy(BLE)に準拠しており、安全な接続において1Mビット/sと2Mビット/s(秒あたりメガビット数)データレートをサポートします。

BLEスタックとIEEE 802.15.4 PHYおよびMAC層は、STM32WB上の専用Arm Cortex-M0+ CPU上で動作します。このCortex-M0+はBLEスタック実行専用で、ユーザーアプリケーションコードの実行には使用できません。

STM32WB55RGV6マイクロコントローラシリーズのRFフロントエンドは、外付け部品を最小限にするよう設計されています(図2)。また、RF回路への給電用に、専用スイッチモード電源(SMPS)を備えています。

SMPSは、統合ソリューションによる問題解決の方法を示す良い例です。RF回路との干渉を最小限に抑えるため、SMPSがRFのクロック部分に使用するクロック周波数はCortex-M0+マイクロコントローラと同じ周波数(4または8MHz)になっています。さらに干渉を減らすために、自動ゲイン制御(AGC)によりRFとIFゲインを自動で減らすこともできます。またファームウェアによりAGCの手動トリムも可能です。

STMicroelectronicsのSTM32WB BluetoothコントローラのRFフロントエンドの図図2:STM32WB BluetoothマイクロコントローラのRFフロントエンドには、Cortex-M0+ BLEコントローラ、ノイズ低減用AGC、3つの電圧レギュレータが含まれています。(画像提供:STMicroelectronics)

RF部分には外付け部品がほとんど必要ありません。これを実現するために、RFフロントエンドにはユーザープログラム可能なオンチップのコンデンサが含まれているので、外付け32MHz水晶振動子には外付けのトリマコンデンサは不要です。またRFフロントエンドは、アンテナピン(RF1)付近に見られるフルバンドパスバランを含めることで、部品点数も削減しています(図2)。

RF1ピンは、ローパスマッチングネットワークをともなうフィルタを介して、互換Bluetooth 2.4GHz(ギガヘルツ)アンテナに接続する必要があります。最後に、RF部分の電源とグランドの間にデカップリングコンデンサが必要です。推奨値は、並列接続による100nF(ナノファラッド)と100pF(ピコファラッド)です。

あらゆる無線アプリケーションと同様に、RFの設計と部品の選択はBluetooth無線の性能に直接影響します。高精度な部品を使用すれば、Bluetooth無線の信頼性が向上します。設計者にとっては、RF部分の作業の大半はすでに済んでいる状態です。外部Bluetoothアンテナおよびペアになるデバイス間の経路を妨げないようにシステムを設計することは、開発者の義務になります。

STM32WB55RGV6を使用した開発を進めやすいように、STMicroelectronicsではP-NUCLEO-WB55 Nucleo開発ボードを提供しています(図3)。このボードには、STM32WBマイクロコントローラを搭載したUSBドングルも付属しています。

STMicroelectronicsが提供するSTM32WBファミリ向けNucleoボードの図図3:STM32WBファミリ用のSTMicroelectronics Nucleoボードには、STM32WBベースのプロジェクト開発をサポートするBluetoothドングルとのインターフェースがあります。(画像提供:STMicroelectronics)

NucleoボードにはArduino™拡張コネクタがあり、開発者はArduino Uno互換シールドを使用してプロジェクトを拡充できます。開発者は、Nucleoボードを中心にハードウェアのプロトタイプをすばやく組み立てることができます。Nucleoアプリケーションは、PCをボード上のUSBコネクタに接続することでプログラムおよびデバッグします。プログラムしたNucleoボードは、付属のBluetoothドングルまたはBluetooth対応PCとの通信が可能です。

アプリケーションのセキュリティ

ワイヤレスアプリケーションのセキュリティは、開発者にとって大きな懸念事項となっています。企業は、社内のデータやファームウェアを攻撃や不正な偽造から保護しなければなりません。STN32WB55RGV6のAES-256ハードウェア暗号化ブロックを利用すれば、Bluetoothでのデータ伝送を暗号化、復号化できます。これにより、悪意のある行為者がBluetoothでのデータ伝送を盗み見たりデータを横取りするのを防止できます。

アプリケーションでは、Bluetooth経由によるアップデートもよく行われます。しかし、これはハッカーに偽のファームウェアアップデートをインストールさせる隙を与えることにもなりかねません。STM32WB55RGV6は、セキュアファームウェアインストール(SFI)プロセスにより、偽のファームウェアのインストールを防止します。これは公開鍵/秘密鍵システムで、暗号化されたファームウェアファイルをSTM32WB55RGV6に送信します。STM32WB55RGV6は、安全なストレージブロック内に格納されている秘密鍵と、STMicroelectronicsによる署名済みの読み取り可能な公開鍵を使用して、ファームウェアファイルを復号化します。これにより、承認された認証情報を持つシステムのみがファームウェアを更新できるようになります。

すべてのSTM32WB55RGV6には、一意の96ビットIDと一意の64ビットIDもあります。これらを使用することで、異なるSTM32WB55RGV6マイクロコントローラを識別してセキュリティを強化し、さらにはフィールド内の異なるシステムに対してファームウェアで異なる機能を有効にすることもできます。

結論

Bluetoothデバイスの開発では、電源、サイズ、コスト、信頼性を手堅く制御する必要があります。STM32WB55RGV6などの高集積化コンポーネントを選択することで、設計者のトレードオフマトリックスが大幅に解決しやすくなり、開発時間も最短に短縮できます。

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著者について

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Bill Giovino

Bill Giovino氏は、シラキュース大学のBSEEを持つエレクトロニクスエンジニアであり、設計エンジニアからフィールドアプリケーションエンジニア、そしてテクノロジマーケティングへの飛躍に成功した数少ない人の1人です。

Billは25年以上にわたり、STMicroelectronics、Intel、Maxim Integratedなどの多くの企業のために技術的および非技術的な聴衆の前で新技術の普及を楽しんできました。STMicroelectronicsでは、マイクロコントローラ業界での初期の成功を支えました。InfineonでBillは、同社初のマイクロコントローラ設計が米国の自動車業界で勝利するように周到に準備しました。Billは、CPU Technologiesのマーケティングコンサルタントとして、多くの企業が成果の低い製品を成功事例に変えるのを手助けしてきました。

Billは、最初のフルTCP/IPスタックをマイクロコントローラに搭載するなど、モノのインターネットの早期採用者でした。Billは「教育を通じての販売」というメッセージと、オンラインで製品を宣伝するための明確でよく書かれたコミュニケーションの重要性の高まりに専心しています。彼は人気のあるLinkedIn Semiconductorのセールスアンドマーケティンググループのモデレータであり、B2Eに対する知識が豊富です。

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