Vishay Daleの巻線型抵抗器のパルス処理能力

著者 Vishay Intertechnology, Inc.

電力巻線型抵抗器では、装置が到達できる最高温度を示すのに定常状態の定格電力と定格電圧が使用されます。5秒以下の短い持続時間であれば、この定格で十分です。しかし、抵抗器はごく短時間(クロスオーバーポイント未満)であれば、それよりはるかに高いレベルの電力や電圧を扱うことができます。たとえば、室温でのRS005の連続定格は5Wですが、1ミリ秒では24,500W、1マイクロ秒では24,500,000Wを処理できます。このように一見高い電力処理力を持つ理由は、電力だけではなく、電力と時間の積であるエネルギーが熱を生み出すからです。Vishay Daleは、図2に示す情報があれば、アプリケーション向けのソリューションを提供できます。

Vishay Daleが提供する多種多様な巻線型抵抗器の画像図1:Vishay Daleは、さまざまな種類の巻線型抵抗器を提供しています。(画像提供:Vishay Dale)

短パルス(クロスオーバーポイントの時間幅よりも短い)

短パルスの場合は、抵抗器にかかるエネルギーを判断する必要があります。クロスオーバーポイント未満のパルスについては、Vishay Daleのエンジニアリング部門では、パルスエネルギーのすべてが抵抗素子(ワイヤ)で放散すると仮定しています。Vishay Daleでは、抵抗器の性能特性を製品寿命まで維持するため、コア、コーティング、リードへの熱損失がない状態で抵抗素子を+350°Cまで上昇させるために必要なエネルギー量に基づいて分析と推奨を行っています。クロスオーバーポイントとは、ワイヤだけでなく、コアやリード、封止材にも大きなエネルギーが放散され始める時間のことです。これは、もはや短パルスとはみなされず、長パルスとみなされるポイントです。

パルス処理能力は、抵抗素子の質量と比熱に基づいているため、抵抗器のモデルや値ごとに異なります。電力とエネルギーが定義されると、Vishay Daleはアプリケーションに最適な抵抗器を決定できます。

クロスオーバーポイント

以下は、室温でのRS005 500Ω抵抗器の例です。

以下が必要な情報です。

ER = 所与のモデル、抵抗値、および周囲温度の定格エネルギー。Vishay Daleの提供は、ER = 6.33J。

PO = 1秒における部品の過負荷耐量。RS005の1秒間の過負荷耐量は、10 x 5W x 5秒 = 250Ws/1秒 = 250W。

クロスオーバーポイント(秒)= ER(J)/PO(W)

6.33J/250W = 0.0253秒

室温でのRS005 500Ω抵抗器のクロスオーバーポイントは約 25.3ミリ秒です。

長パルス(クロスオーバーポイントから5秒)

長パルスの場合、熱の多くはコア、リード、封止材に放散されます。そのため、短パルスでの計算は非常に控えめになります。長パルスのアプリケーションでは、データシートに記載されている短時間過負荷の定格値を使用します。なお、短時間の過負荷からなるパルスの繰り返しは非常にストレスが大きく、抵抗器の種類によっては故障の原因になることがあります。

  • 5秒間のパルスに対する過負荷電力を求めるには、データシートに記載されているとおり、定格電力に5または10を乗じてください。
  • 1秒から5秒までの過負荷耐量を求めるには、過負荷電力に5秒を乗じてエネルギーに変換し、次にパルス幅(秒)で割って電力に戻します。
  • クロスオーバーポイントから1秒までのパルス持続時間では、1秒で計算された過負荷電力を使用します。

  1. RS005抵抗器の過負荷電力は?

    データシートによると、RS005の定格電力は5Wで、定格電力の10倍の電力を5秒間耐久:10 x 5W = 50W

  2. RS005の5秒間のエネルギー処理能力は?

    5秒の場合のエネルギー処理能力:50W x 5秒 = 250WsまたはJ

  3. RS005の1秒間の過負荷耐量は?

    1秒の場合の過負荷耐量:250Ws/1秒 = 250W

  4. RS005の0.5秒間のエネルギー処理能力は?

    0.5秒の場合のエネルギー処理能力:250W x 0.5秒 = 125WsまたはJ

パルス処理能力の判断に必要な情報

パルス処理能力に関する質問を示す画像(アプリケーションソリューションを決める際に役立ちます)図2:パルス処理能力に関するこれらの質問の答えを導き出すことで、アプリケーションソリューションを決定しやすくなります。(画像提供:Vishay Dale)

パルスアプリケーションは、多くの場合、矩形波、容量性充放電、指数関数的減衰の3つのカテゴリのいずれかに分類されます。それぞれのパルスエネルギーの計算例を以下に示します。

矩形波

抵抗器に一定の電圧または電流が所与のパルス持続時間で印加されます。

振幅100VDCの矩形波が10Ωの抵抗器を通じて1ミリ秒の間に発生させるパルスエネルギーの計算の画像図3:振幅100VDCの矩形波が10Ωの抵抗器を通じて1ミリ秒の間に発生させるパルスエネルギーの計算例。(画像提供:Vishay Dale)

容量性充放電

コンデンサを所与の電圧まで充電し、巻線型抵抗器を介して放電させます。

容量性充放電アプリケーションにおけるパルスエネルギー計算例の画像図4:容量性充放電アプリケーションのパルスエネルギー計算例。(画像提供:Vishay Dale)

指数関数的減衰/雷サージ

アプリケーションはピーク電圧に達し、その値に比例した速度で減衰します。これは一般的にDO-160E WF4やIEC 6100-4-5でモデル化され、雷サージを表します。

雷サージインシデントのパルスエネルギー計算例の画像図5:雷サージインシデントのパルスエネルギー計算例。(画像提供:Vishay Dale)

等間隔の繰り返しパルス

反復パルスに対するパルス処理能力を計算する際には、個々のパルスエネルギーだけでなく、平均電力も考慮する必要があります。これは、平均電力が部品の平均的な熱上昇を確立し、部品のエネルギー処理能力の一定のパーセンテージを使用するためです。平均電力に使われなかった分で、瞬間的なパルスエネルギーを処理することができます。2つのパーセンテージ(定格電力に対する平均電力、パルス処理能力に対するパルスエネルギー)を足した場合に、部品全体の定格の100%を超えてはなりません。

ここでは、等間隔で繰り返される矩形波パルスを例に挙げて説明します。

等間隔で繰り返される矩形波パルスに基づく例の画像図6:この例では、等間隔で繰り返される矩形波のパルスを使用しています。(画像提供:Vishay Dale)

  1. パルスパワー(P = V2/RまたはI2R)は、単一のパルスに対して計算されます
  2. 平均電力は次のように計算されます:PAvg = Pt/T
  3. パルスエネルギーを算出します:E = Pt
  4. 定格電力(PR)に対する平均電力のパーセンテージを算出します:パーセンテージ(電力)= 100 x PAVG/PR
  5. 抵抗器のモデル、抵抗値、および周囲温度を所与として、Vishay Daleのエンジニアリング部門はパルス処理能力(ER)を提供できます
  6. パルス処理能力に対するパルスエネルギーのパーセンテージを算出します:パーセンテージ(エネルギー)= 100 X E/ER
  7. (4)と(6)のパーセンテージを足します。パーセンテージが100%未満であれば、選択した抵抗器は問題ありません。パーセンテージが100%を超える場合は、より高い定格電力やパルス処理能力を持つ抵抗器を選択する必要があります。お客様のアプリケーションに最適な抵抗器の選択については、Vishay Daleのエンジニアリング部門にお問い合わせください。

振幅200VDC、パルス幅20ミリ秒,サイクルタイム20秒の等間隔の矩形波パルスを周囲温度25°Cの環境下でRS007 100Ω抵抗器に印加します。

  1. パルスパワー:P = V2/R =(200 V)2/100Ω = 400W
  2. 平均電力:PAVG = Pt/T =(400W x 0.02秒)/20秒 = 0.4W
  3. パルスエネルギーを算出します:E = Pt = 400W x 0.02秒 = 8.0 Ws、またはJ
  4. RS007抵抗器の定格電力(PR)は7Wで、定格電力に対する平均電力のパーセンテージを計算します:PAVG/PR x 100 =((0.4W)/(7.0W))x 100 = 5.7%
  5. Vishay Daleエンジニアリング部門が提供する周囲温度25°Cでのパルス処理能力(ER)は、15.3Jです
  6. パルス処理能力に対するパルスエネルギーのパーセンテージを算出します:

    100 x E/ER = 100 x((8.0J)/(15.3J))= 52.3%

  7. (4)と(6)で算出したパーセンテージを足します:5.7% + 52.3% = 58%

このパーセンテージは、定格全体の100%未満なので、RS007型抵抗器で十分にパルスを処理することができます。

無誘導抵抗器

無誘導電力抵抗器は2つの巻線で構成されており、それぞれの巻線は完成品の抵抗値の2倍になっています。そのため、エネルギー能力はほとんどの場合、標準的な巻線型抵抗器よりも大きくなります。無誘導型に必要なエネルギー能力を計算するには、エネルギーを抵抗値の4倍で割って、1Ωあたりのエネルギー(J/Ω)を計算します。

500Ωの抵抗器に印加される0.2Jのパルスを処理するために必要なパルス処理能力(1Ωあたりのエネルギー)は?

必要な1Ωあたりのエネルギー:E/4R =(0.2J)/(4 x 500Ω)= 100 x 10-6J/Ω

この情報をVishay Daleのエンジニアリング部門に提供することで、アプリケーションに最適な製品を見つけることができます。

電圧制限

短パルス - 短い期間のパルスにおいて、巻線型抵抗器の過負荷電圧定格は確立されていません。Sandia Corporationは、20マイクロ秒のパルスを用いてNS抵抗器とRS抵抗器の調査を行いました。この調査によると、このタイプの抵抗器は、パルス処理能力を超えない限り、1インチあたり約20kVの電圧に耐えます。

長パルス - クロスオーバーポイントから5秒までの間のパルスについては、4W以上のサイズでは最大動作電圧の√10倍、4W未満のサイズでは最大動作電圧の√5倍の過負荷を推奨しています。

ヒューズ抵抗器

アプリケーションの目的が、特定の条件下で溶断する抵抗器である場合、Vishay Daleのヒューズ抵抗器を使用できます。一般的なRSヒューズ抵抗器タイプについては、7ページを参照してください。また、次のリンクをクリックすると、RSヒューズのデータシート全体が表示されます。

高速動作、モールドスタイル、特定のアプリケーションのためのカスタム設計

Vishay Daleでは、さまざまな種類の巻線型抵抗器を用意しています。また、特定のアプリケーションのために、カスタムメイド、モールドスタイル、高速動作の抵抗器を提供することもできます。DigiKeyではこれらの抵抗器のいくつかを在庫として持っていますが、他にも文字どおり何百もの可能性があります。図7は、モデルの例と、特定のアプリケーションに向けに抵抗器をカスタマイズする際に使用される品番表を示しています。

上部の図の抵抗器の例は、何百もの可能なバリエーションのうちの代表例を示しています図7:上部に示されている抵抗器の例は、何百もの可能なバリエーションのうちの代表例です。特定のアプリケーション向けのカスタムメイドの抵抗器については、下部の品番表を使用することができます。(画像提供:Vishay Dale)

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