産業用アプリケーションにおけるIO-Linkの活用
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2022-02-08
第4次産業革命およびインダストリー4.0の出現により、包括的でインテリジェントなオートメーションは、高度な制御、監視、診断によって定義されるようになりました。それらの機能を実現するには、産業用コネクティビティが必要です。これにより、制御装置や機械装置を何らかのプラットフォーム(IO-Linkなど)に統合し、継続的にデータを交換します。
図1:IO-Linkは、IO-Linkプライマリを介してフィールドバスやEthernetネットワークに簡単に統合することで、既存のネットワークプロトコルを補完します。IO-LinkプライマリとそのIO-Linkデバイス間の接続は、非シールド/非スクリーンの3線または5線ケーブルを介して行われます。このケーブルは、IO-Linkデバイスに電力を供給することもできます。ここでは、プライマリからの電源は24VDCです。(画像提供:Pepperl+Fuchs)
産業用コネクティビティを支える重要な実現技術は、標準化されたネットワークと、オンボードの通信機能を備えたデバイスです。これらの機能のためのプロトコルは豊富にあります。しかし、すべての産業用プロトコルが、現在のオートメーションに求められるデータ交換やインテリジェンスの要件を満たしているわけではありません。IO-Linkは、これらの幅広い最新アプリケーションに対応するために作成されました。
digikey.comの以前の記事でも紹介しましたが、IO-Linkはデバイス間のスマートな双方向データ通信を促進する、有線のポイントツーポイント通信プロトコルです。IO-Linkプライマリ(ローカルコントローラ)は一般的に、さまざまなIO-Linkデバイスが独立して差し込める複数のIO-Linkポート(チャンネル)を備えています。このようなノード間のエンドポイント接続により、IO-Linkはポイントツーポイントの通信プロトコルとなっています。
2009年に41社のメンバーからなるコンソーシアムによって開始されたIO-Linkは、現在では数百社のメンバー企業を擁し、以下の目的で重要なデータを利用するための通信プロトコルとして広く受け入れられています。
- オペレーションの最適化
- ダウンタイムの削減とメンテナンスの合理化
- 原材料費の削減と戦略的な業務的意思決定の実施
統一されたIO-LinkインターフェースはIEC 61131-9規格で定義されており、Siemens、Omron Corp.、ifm Efector、Balluff、Cinch Connectivity、Banner Engineering、Rockwell Automation、SICK、Pepperl+Fuchsをはじめとする数多くの部品・システムメーカーがサポートしています。組立オートメーション、工作機械、イントラロジスティクスが関係する業務でIO-Link接続が広く活用されているのも不思議ではありません。このような産業界での主な用途としては、ステータス通信、機械制御、デバイスのインテリジェント化の3つが挙げられます。
IO-Linkコントローラのモードと用途の相関性
図2:接続ケーブルに使用するコネクタのタイプは、ポートのタイプに応じて異なります。IO-LinkのクラスAのプライマリポートは、最大4ピンを備えたM8またはM12コネクタ(ここに示すifm efectorのAL1120など)に対応します。クラスBのプライマリポートは、5ピンのM12コネクタ(双方向データ通信用)を備えたデバイスとの接続に対応します。プライマリのポートに割り当てられるモードは、接続されているデバイスや現在の動作によって常に決まります。(画像提供:ifm Efector)
digikey.comの以前の記事で説明したように、IO-Link通信プロトコルでは、IO-Linkのハイレベルプライマリ(コントローラ)の各コネクタポートが4つの通信モードに対応します。これには、完全非アクティブ化モードに加え、IO-Link、デジタル入力(DI)、デジタル出力(DQ)の各動作モードが含まれます。これらのモードは、上記3つの主なIO-Linkの用途と緩やかな相関関係があります。
IO-Linkの動作モードは、フィールドデバイスとの双方向データ通信をサポートしており、通常は、監視、テスト、診断のためのデータ収集時に使用されます。DIモードのプライマリのポートは、デジタル入力を受け入れ、ポートがセンサに接続されているときに動作します。この文脈においては、入力デバイスとして機能します。対照的に、DQモードのポートはデジタル出力として機能します。一般的には、ポートがアクチュエータ(この文脈では事実上の出力デバイス)に接続されている場合や、システムPLCが他のIO-Linkデバイスに直接命令を送るように設定されている場合です。
この記事の範囲を超えますが、IO-Linkプライマリのポートが簡単にモードを切り替えることができるという点は注目に値します。たとえば、センサに接続されたプライマリのポートをDIモードで動作させ、センサからの診断や監視データをプライマリに要求されたときにIO-Link通信モードに切り替えることができます。
IO-Linkのアプリケーション1/3:実用的なステータス通信
図3:IO-Linkは非常に高度な制御システムやオートメーションシステムの構築を容易にします。工作機械産業では、ワークピースのクランプやフライスエンドツールの圧力および位置が適切かどうかを確認するために、IO-Linkセンサを多用しています。(画像提供:Getty Images)
機械の監視は、IO-Linkデバイスを設定してステータスを報告することで可能になります。これにより、必要な調整や修正をシステムに知らせることができます。工作機械産業における用途の1つでは、IO-Linkの圧力センサを使用して、材料除去作業中に損傷を与えずに確実に保持するために、ワークピースが適切な圧力でクランプされていることを確認します。ここでは、不良品を減らすための機械タスクの最適化を、IO-Linkセンサが本質的にサポートしています。
また、IO-Linkデバイスは、実用的なステータス通信により、ダウンタイムを最小限に抑えるための強化されたメンテナンスルーチンをサポートできます。たとえば、組立機に搭載されたIO-Link位置センサは、エンドエフェクタの位置を継続的に報告し、範囲外や位置ずれがないことを確認します。
IO-Linkデバイスから提供される診断データを分析することで、工場の機械技術者はエラーや潜在的な故障を事前に予測し、修正することができます。また、技術者は機械やプラントの弱点を特定し、企業レベルでの運用変更、購買決定、将来的なキャプティブマシンの設計を通知することができます。
IO-Linkのアプリケーション2/3:高度な制御とオートメーション
図4:高度な制御に関わるIO-Linkシステムには、ここに示すOmronのNX-ILM400のようなIO-Linkプライマリ(コントローラ)と、そのプライマリに接続されたIO-Link対応のさまざまなセンサ、電源、メカトロニクスデバイスがあります。このようなアプリケーション向けのIO-Linkシステムは通常、IO-LinkプライマリとデバイスをPLCや他のオートメーションシステムに結合させます。(画像提供:Omron)
制御やオートメーションは、IO-Linkがサポートするその他のアプリケーション機能です。IO-Linkの導入が人の介入なしに実行される機能をサポートする場合、IO-Linkプライマリはホストシステムまたは上位のPLCにしばしば接続されます。これにより、受信したデータが処理され、応答を適切に調整するように設計されたアクチュエータに直接または間接的な指令が与えられます。このような自動制御では、IO-Linkシステムは標準化されたフィールドバス/Ethernetプロトコルとケーブルを介して上位コントローラに接続する必要があります。実際、ほとんどのIO-Linkプライマリは、そのような接続のためのフィールドバス/Ethernetポートを備えています。
IO-Linkシステムが関係する高度な制御アプリケーションのデバイスは、以下3つの方法で統合されます。
- ホストコンピュータやPLCに直接接続
- IO-Linkプライマリに接続し、IO-Linkプロトコルを介して通信
- IO-Link対応の通信を使用し、IO-Linkハブを介してIO-Linkプライマリに接続
後者は基本的に、非IO-Linkデバイスをプライマリに接続するための仲介役として機能します。
IO-LinkシステムがフィールドバスおよびEthernet通信の接続性を備えていることの付加的な利点は、長距離接続が許容可能であることです。これにより、特定のアプリケーションで最も理にかなっている場合、設置者はIO-Linkプライマリを制御キャビネットや最外部のマシン領域に配置できます。
IO-Linkプライマリが、デジタルとアナログ両方の信号を処理できる下位コントローラとして機能することで、高度な組み立てアプリケーションにどのように役立つかを考えてみましょう。ここで、プライマリには以下の機能があります。
- XYステージの軸上のIO-Linkリニアエンコーダが生成するデータを受け入れる
- そのデータをゲートウェイとして処理する
- その処理されたIO-LinkフィールドデバイスのデータをPLCなどのシステムコントローラに送信する
IO-Linkのアプリケーション3/3:デバイスインテリジェンス
図5:IO-Link接続インターフェースは非常に小さく、ほとんどの小型フィールドデバイスに取り付け可能です。ここでは、IO-Link接続を備えたBalluffのBUS004Z近接センサを紹介します。(画像提供:Balluff)
IO-Linkの3つ目のアプリケーションは、デバイスのスマート化です。プログラミングのない(または控えめな)従来のセンサオプションのようなセンサ設計で特に一般的なこれらのIO-Link対応デバイスは、命令を受信し、監視し、セルフテストルーチンを実行し、データを生成することができます。また、IO-Linkにより、デバイスは基本的な2値(イエス/ノーまたは合格/不合格)データ以上のものを提供できるため、正確な値を報告することも可能です。たとえば、プロセスオートメーションのタスクは、高温/低温のステータスを報告するだけでなく、監視対象のゾーンやボリュームの正確な温度値を継続的に報告するIO-Link温度センサの恩恵を受けます。
スマートフィールドデバイス向けのIO-Linkがもたらすもう一つの利点は、物理的接続を小型化する方法です。これは、フィールドマイクロデバイスに搭載するには大きすぎる場合もあるフィールドバス/Ethernetインターフェースの物理的接続とは対照的です。
また、IO-Linkのスマートコンポーネントも高精度で制御できます。たとえば、基本的なオフ/オン制御の代わりに、シナリオが一定の条件を満たすとアクチュエータがオフになるように命令することができます。
RAFIの押しボタンスイッチなどの入力デバイスは、IO-Linkの機能を活用して、色分けされた表示灯などのスマートデバイス機能をサポートします。
スマートデバイスアプリケーションにIO-Linkを使用する際には、いくつかの注意点があります。IO-Linkのワイヤレスタイプが開発中ですが、IO-Linkは依然として有線の通信プロトコルであり、配線に関するすべての制約の対象となります。データの完全性を保つため、IO-Linkのプライマリからデバイスへの配線が20mを超えてはいけません。また、IO-Linkプロトコルは1サイクルあたり最大32バイトのデータしか送信できないため、1分間に何MBものデータを生成するカメラのようなフィールドデバイスで使用するには不十分です。
まとめ
IO-Linkシステムの用途は多岐にわたり、既存のプロトコルを補完することで、実質的に無限の制御システムやデータ収集システムに対応します。IO-Linkシステムは、IO-Linkプライマリ、そのデバイス、コネクタ付きの3線または5線ケーブルだけで構成されており、そのシンプルさが採用に拍車をかけています。プラグアンドプレイで設置でき、費用対効果が高いことも、IO-Linkの利点です。
IO-Linkコンソーシアムのメンバー企業の努力により、さまざまなメーカーのコントローラ、デバイス、アクチュエータの間に幅広い互換性が確保されているため、設計技術者は特定のユースケースに合わせて幅広く装置を選択することができます。

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