メーカーとエンジニアのために:IoTデータの高精度キャプチャのために計装アンプを理解する
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2018-06-19
検出はモノのインターネット(IoT)とスマートホームの出発点です。それは、DIY愛好者やメーカー、そしてプロの設計者さえもが、最初の問題に直面する場でもあります。多くの安価なトランスデューサ(例:加速度計、力センサ、ひずみゲージ、圧力トランスデューサ)は抵抗性ホイートストンブリッジに基づいて設計されています。そのため、これらの出力はミリボルト(mV)領域の差動電圧になっています。
ここで、これらの低レベル信号は、マイクロプロセッサのアナログ/デジタルコンバータ(ADC)に入力できる電圧レベルに変換するために、DCオフセットとノイズを取り込まないで正確にキャプチャおよび増幅する必要があることに注意します。同様に、ハイサイド電流シャントを使った電流の検出には、グラウンド参照入力を持たず大きなコモンモード電圧に耐えるアンプが必要です。
データを正確にキャプチャするため、メーカーとDIY愛好者は計装アンプ(INA)をよく理解する必要があります。計装アンプは、簡単に制御可能な利得、低オフセットドリフト、ノイズ除去特性を備えた平衡型差動増幅器です。ホームコントロールアプリケーションの低コストトランスデューサには通常INAを接続します。また、グラウンドを基準にしない2つの高インピーダンス入力を持っているため、全てのタイプのフローティング差動計測にも理想的です。
この記事では、センサからプロセッサへの信号チェーンと、アンプ段での同相ノイズ除去、精度、安定性の必要性について説明します。また、適したセンサとINA、それらの使い方を紹介します。
ピエゾ抵抗型トランスデューサ
最も安価なトランスデューサファミリの1つはピエゾ抵抗素子を使ったものです。これらを使って、たとえばひずみ、力、加速度、圧力を計測します。
小さなピエゾ抵抗素子を、トランスデューサの機構部品に取り付けます。これらの機構部品の形式には、バー、プレート、スプリング、ダイヤフラムがあります。これらの機械構造を変形させることで目的のパラメータを検出します。ピエゾ抵抗素子は、検出パラメータに起因するひずみに比例して素子の電気抵抗を変化させます。
ピエゾ抵抗素子の抵抗は通常ホイートストンブリッジ回路の一部を構成しています(図1)。ブリッジへの入力電圧が固定であり、4つの抵抗が全て同じ値である場合、そのブリッジは平衡しているといわれ、その出力電圧VOUTはゼロになります。

図1:ホイートストンブリッジでは、通常4つの抵抗性素子の1つをトランスデューサにします。圧力またはその他の力に起因してその抵抗値が変化するにつれて、出力電圧は比例して変化します。(画像提供:DigiKey)
図1で、R4はトランスデューサを表します。圧力またはその他の計測パラメータの変化は機械構造とピエゾ抵抗素子を変形させ、ピエゾ抵抗素子の電気抵抗を変化させます。これにより、トランスデューサの抵抗は、加えた圧力に比例して公称値から変化します。次に、ブリッジの出力VOUTは、抵抗変化(すなわちセンサ素子の圧力)に比例した電圧になります。
VOUTはVINの半分の電位になることに注意します。これがコモンモード信号電圧です。50mVのフルスケール電圧スパンを持つトランスデューサの場合、1%の電圧の増分は0.5mVです。このトランスデューサのコモンモードレベルが2ボルトである場合、電圧変化をキャプチャするための同相ノイズ除去比(CMRR)は72dB必要です。
NXP SemiconductorsのモデルMPX2050DPは、50kパスカル(7.5psi)、40mVフルスケールスパン出力信号レベルのデュアルポート圧力トランスデューサです(図2)。デュアルポート構成であるため、差動またはゲージ(大気を基準とした)圧力の計測が可能です。

図2:NXP SemiconductorsのモデルMPX2050DPは、40mVフルスケールスパン出力信号の7.5psiピエゾ抵抗デュアルポート圧力トランスデューサです。(画像提供:NXP Semiconductors)
目的のパラメータにのみ反応し、また、環境に影響されないように、市販のトランスデューサには温度補償回路が内蔵されています。
TE ConnectivityのモデルFX1901-0001-0050-Lは22.68kgf(50lbf)レンジのピエゾ抵抗圧縮力センサです。このセンサは圧力ではなく力を計測しますが、圧力トランスデューサと同様のホイートストンブリッジ計測トポロジを使っています。このセンサは20mV/Vの感度を持っているため、5ボルト電源の場合、フルスケール負荷感度は100mVになります。
これらのトランスデューサの共通の特徴は、差動出力レベルがミリボルトレンジであることです。そのため、ADCに入力するにはトランスデューサの出力を増幅する必要があります。これが計装アンプ(INA)の役割です。
計装アンプ
INAは演算増幅器(オペアンプ)技術に基づく差動アンプです。INAは差動入力とシングルエンド出力を備えています。INAは差動アンプであるため、コモンモード信号を減衰させることができます。コモンモード信号を減衰させる度合いを決定するのが、前述のCMRRと呼ばれる仕様です。この特性によりINAは、大きなコモンモード信号またはオフセットが存在する状況での微小信号の増幅に理想的なものになります。また、INAは、簡単に調節できる安定した正確なゲイン、高い入力インピーダンス、低い出力インピーダンスという特性を備えています。
INAに使われる一般的な回路トポロジは2つあります。最も普及しているのは3オペアンプ設計です(図3参照)。この回路構成では、アンプU1およびU2は非反転入力バッファとなっています。これらの出力は差動アンプU3に入力されます。このINAのゲインはおもに抵抗RGで設定されます。参照入力(使わない場合は通常接地します)を使って出力オフセット電圧レベルを制御します。検出入力を使うと、出力差動アンプのゲインを変化させることができます。検出入力を使わない場合、差動段の出力に接続します。

図3:通常、3オペアンプ構成のINAは、2オペアンプバージョンより高いAC CMRRを持っています。ゲインはRGで決まります。(画像提供:DigiKey)
2オペアンプトポロジを使うと、必要なオペアンプの数を減らすことができます(図4参照)。

図4:2オペアンプ構成のINAを使うと、コストと消費電力を節約できます。(画像提供:DigiKey)
この回路トポロジはオペアンプを2つしか使わないため、コストと消費電力を節約できます。2オペアンプ回路の非対称構成は、回路の有用性を制限する複数の問題を生じさせることがあります。中でも注目すべきは、3オペアンプ設計と比べAC CMRRが低くなる可能性があることです。
集積化されたINA
Texas InstrumentsのモデルINA333AIDRGTは3オペアンプ構成に基づくINAの一例です。このINAはゼロドリフト回路を備えており、極めて優れたDC仕様を実現しています。ゲインは、1本の外付け抵抗を使って1~10,000に設定できます。ゲインが100より大きい場合、CMRRは100dBです。このINAは、3.3~5ボルトの産業用アプリケーション向けに設計されています。帯域幅はゲインで決まり、ユニティゲインでの最大帯域幅は150kHzです。
一方、Texas InstrumentsのモデルINA332AIDGKRは、追加ゲイン段を備えた修正2オペアンプモデルに基づく広帯域INAです。このINAのゲインは、1本の外付け抵抗の値に基づいて5~1000に調整できます。CMRRは73dB(標準)です。このINAは、2MHzという非常に広い帯域幅を備えています。
INAをモノリシックICに統合すると、能動および受動素子の精密なマッチングが可能になり、ゲインとCMRRを良好に制御できます(図5)。
図5:Texas InstrumentsのINA333およびINA332計装アンプの簡略化された回路図の比較(2および3オペアンプINAトポロジの商業的な実施例)(画像提供:Texas Instruments)
Texas InstrumentsのINA333リファレンスデザイン(図6)は、ホイートストンブリッジトランスデューサをサポートするための計装アンプの簡単な使い方を紹介しています。このデザインでは、120Ωひずみゲージの能動トランスデューサ素子としての使い方を検証できます。この回路は全てのタイプのホイートストンブリッジセンサまたはトランスデューサに適用でき、TINA TI SPICEシミュレータでシミュレーションされたものです。

図6:Texas InstrumentsのINA333を使ったひずみゲージアンプのTINA TIシミュレーション、ひずみゲージ(Rsg)の公称抵抗値=120Ω、Rsgの10Ωスイングに対する計測値レンジ=4.47ボルト(画像提供:DigiKey)
ひずみゲージ(図のRsg)の公称抵抗値は120Ω(ばらつきは115Ω~125Ω)です。このリファレンスデザインの目的は、このひずみゲージを0~5ボルトの入力レンジを持つADCと組み合わせて使うことです。
この目的で、2.5ボルトの参照電圧を使い、アンプのゲインを1,001に設定します。このDC伝達特性は、ひずみゲージの抵抗の変化の関数としてINAの出力電圧を描きます。シミュレーションの図のカーソル計測値は、ひずみゲージの抵抗値の変動幅(10Ω)に対応する出力レンジ(4.47ボルト)を示しています。
ハイサイド電流センシング
電流を計測するための最も一般的な手法の1つは電流シャントとして小さい値の抵抗を使うことです。数アンペアのオーダーの電源を測定する場合、10ミリオーム(mΩ)の抵抗は1アンペアあたり10mVの電圧降下を生じさせます(図7)。

図7:ハイサイド電流センシングへのINAの適用。電源と負荷の間にシャント抵抗(RSENSE)を接続します。(画像提供:DigiKey)
シャント抵抗が負荷とグラウンドの間に接続されている場合、ローサイド電流センシングと呼ばれます。シャント抵抗が電源と負荷の間に接続されている場合、ハイサイド電流センシングと呼ばれます。ハイサイドセンシングにはグラウンドの干渉を除去できるという利点があります。負荷のグラウンド障害の検出も可能です。
ハイサイド電流センシングでは、後述するとおり、計装アンプに印加されるコモンモード電圧を十分考慮する必要があります。
RSENSEが10mΩの場合、5アンペアの電流変化は抵抗両端で50ミリボルトの電圧変化を生じさせます。INAのゲインを100に調整すると、出力スイングは5ボルトになります。
INAのよくある問題の回避
INAのコモンモード電圧範囲を慎重に検討することは重要です。図6のひずみゲージ計測について検討します。このINAは、電力の分配を簡単にするため5ボルトの単一電源で動作しています。2電源動作の大半がそうであるように、参照入力が接地されている場合、出力スイングの中心は0ボルトに設定されます。INAの入力はどちらも約2.3ボルトであるため、出力は約0ボルトになり、0ボルトのリファレンスより下がることはできません。検出入力を2.5ボルトに上げると、出力電圧の中心は約2.5ボルトに調整され、出力電圧が上下にスイングできるようになります。
高ゲインで動作した際に内部バッファアンプが飽和しないことを確認することも重要です。INAへの入力が5mVでゲインが1000の場合に何が起こるかを検討します。この場合、入力バッファの出力間に5ボルトの電位差が生じます。INAが5ボルト電源で動作している場合、バッファの1つが飽和します。幸い、Texas InstrumentsなどのINAメーカーは計装アンプのコモンモードレンジをチェックするアプリケーションプログラム(「VCM vs VOUT Calculator for Instrumentation Amplifiers」など)を提供しています。
最後の注意は、INA入力のためのグラウンドのリターンの供給に関する問題です。入力がAC結合である場合、またはフローティングデバイス(熱電対など)である場合、アンプの入力バイアス電流を引き抜くため、入力からグラウンドに高抵抗を接続する必要があります。
結論
DIY愛好者とプロのエンジニアがすぐ気付くように、IoTにセンサを接続するには、ADCを使ってデジタル領域に変換する前に、ホイートストンブリッジからの低レベル信号をキャプチャおよび増幅する方法をよく理解する必要があります。
INAは差動信号の増幅に理想的です。INAは高いゲイン、高い同相ノイズ除去比、高いインピーダンスを備えています。これらのINAは各種の構成で提供されているため、INAの動作原理、おもな仕様、使用上の注意事項を理解することが重要です。
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