大電流コネクタの中核をなす低接触抵抗ソケット

著者 Jessica Shapiro

DigiKeyの北米担当編集者の提供

コネクタを通じて大電流、高電圧の伝送を必要とする用途は増え続けています。これらの用途には、電気自動車(EV)充電、家全体のバックアップ用バッテリ、スマートな発電と蓄電をサポートするバッテリなどが含まれます。また、データセンターという拡大分野でも見られます。ここでは、PDU、無停電電源装置(UPS)、ルータ、パワーシェルフなどが、高電圧で大電流入力を管理しています。製造および工場現場システム、ロボティクス、環境制御システムにおいても、こうした特殊なコネクタが不可欠です。

これらのアプリケーションにおけるコネクタは、不要な損失なく、ますます小さくなるスペースで大電流および高電圧入力をサポートする必要があります。効率的な電力伝送は、過熱につながる電圧降下を防ぐためにも重要です。過熱は機器の損傷や火災の原因となる可能性があります。同時に、これらのコネクタは機器の損傷や手戻りを防ぐため、誤り防止機構を備えながら迅速かつ自動化されたアセンブリをサポートする必要があります。

さまざまな種類のコネクタで機能する大電流、高電圧技術の1つが、MolexのCOEURソケット技術です。これは大電流アプリケーションにおける接触抵抗を最小限に抑えます。COEURソケットを基盤とした製品は、確実な接続を保証し、より多くのデバイスを限られたスペースに収納可能にし、製造工程を効率化します。

大電流、高電圧コネクタの中核

COEURソケットは、円錐形状をしており、高導電性の金で作られた複数の角度のついたコンタクトビームが円形に配置されています(図1)。直径は3.40mm~11.00mmまであり、圧入用に設計されたサイズの銀製ピンと組み合わされています。

COEURソケットコネクタの画像図1:COEURソケットコネクタは、先端が拡がる円錐形状に配置された金製コンタクトビームにより、大電流、高電圧アプリケーション向けに低接触抵抗を実現します(画像提供:Molex)

ピンは円錐部の最も細い箇所でコンタクトビームに接触し、その先ではビームが円錐先端に向かってわずかに拡がっています。角度の付形状により、各バーは挿入されたピンと点接触ではなく楕円形の接触面積を確保します。接触面積が大きくなることで接触抵抗が低減され、コネクタによる電圧降下と発熱が抑制されます。

この低接触抵抗設計のもう1つの利点は、電子部品をより密に配置できるため、スペースを節約できることです。COEURソケットの高さはすべて高さ10.0mmで、ワイヤ対基板、ワイヤ対バルクヘッド、基板対基板、基板対バスバーなど、さまざまな接続シナリオに対応可能です。

高電圧、大電流のコネクタ特性

COEURソケット技術を使用したコネクティビティソリューションは、大電流と高電圧に対応するように設計されています。たとえば、Sentralityピンおよびソケット相互接続システムは、0.20mΩ~0.40mΩの接触抵抗で、最大1,000Vで75A~350Aに対応可能です。これらの特性により、このシステム(図2)は、家庭用エネルギー貯蔵、産業用オートメーション、ネットワーキング、および通信アプリケーションにおいて、プリント回路基板(PCB)同士、あるいはPCBとバスバーを効率的に接続することができます。

MolexのSentralityピンおよびソケット相互接続システムの画像図2:Sentralityピンおよびソケット相互接続システムでは、COEURソケットによりPCBおよびバスバーとの大電流、高電圧接続が可能になります。このシステムは、基板のスタック高さを最小限に抑え、±1.00mmの半径方向のセルフアライメントにより公差スタックを改善します。(画像提供:Molex)

SW1ワイヤ対基板コネクタでは、接触抵抗0.25mΩのCOEURソケットにより、2~4/0 AWG(直径0.258インチ~0.45インチ(約6.6mm~11.4mm)のワイヤサイズで、1,000Vにおいて120A~300Aの安全な伝送を可能にします。ポリブチレンテレフタレート(PBT)被覆コネクタ(図3)は、工場現場、ロボティクス、家庭用エネルギー貯蔵アプリケーションで広く使用されています。

COEURソケットを使用したMolexのSW1相互接続の画像図 3:SW1相互接続は、COEURソケットを使用し、大電流、高電圧ケーブルとPCBおよびバスバーと安全に接続します。片手で操作可能なポジティブロック設計により、90°接続時のケーブルの屈曲も解消されます。(画像提供:Molex)

高電圧および大電流コネクタの最適な選択

COEURソケット技術は、高電圧および大電流接続を実現するために必要なスペースを最小限に抑えます。Sentralityシステムのようなコネクタは、PCBまたはバスバー間のスタック高さを低く保ちます。一方の基板には圧入または面実装技術(SMT)の選択肢がある一方、設計者はもう一方の基板に、スタック高さ1.50mmの圧入、スタック高さ1.75mmのSMT実装、またはスタック高さ4.5mmのネジ止めプションを選択できます。

HyperQubeケーブル対基板またはケーブル対バスバーコネクタ(図4)も、12.3mm × 15.5mmの小型フットプリントを実現しています。COEURソケット技術を採用し、6AWG~2AWGワイヤ(直径0.162インチ~0.258インチ(約4.1mm~6.6mm))の電線に対し、接触抵抗0.20mΩで120Aを処理します。HyperQubeの嵌合寸法は19.5mm × 43.7mm × 17.7mmです。

MolexのHyperQubeコネクタの画像図4:HyperQubeコネクタは、大電流ワイヤやケーブルをPCBやバスバーに接続するコンパクトな方法です。取り外し可能なネジ止め設計、機械的にキーイングされた位置決めピン、および色分けにより、HyperQubeの取り付けが効率化されています。(画像提供:Molex)

基板スペースの効率的な利用に加え、電子機器設計者は、ケーブルの最小曲げ半径の確保にも頭を悩ませています。たとえば、90°設計オプションやアセンブリ時の360°回転など、ケーブルを曲げずに接続できる設計を求めています。COEURソケット対応のHyperQubeおよびSW1コネクタがこれに実現します。UltraWizeコネクタも90°形状を採用し、省スペースの千鳥状の位置決めピン(図5)でワイヤをPCBに接続します。この設計は170A、125Vに対応し、接触抵抗は0.4mΩです。

MolexのUltraWizeコネクタの画像図5:UltraWizeコネクタは、最大170A/125Vのワイヤを効率的に基板に接続するために、千鳥状の位置決めピンを備えています。UL94V-0の難燃性、125VAC耐電圧、および500VDC絶縁抵抗を有しています。(画像提供:Molex)

SentralityシステムやPowerWizeブラインド嵌合インターフェース(BMI)相互接続(図6)などの製品では、半径方向のセルフアライメントも可能であり、公差スタックを軽減するのに役立ちます。PowerWize BMIパネル対基板およびパネル対バスバーコネクタは、75A~185A、接触抵抗0.10mΩ~0.25mΩのアプリケーションにおいて、±2.00mmの半径方向のセルフアライメントと、大まかなアライメント用の内蔵ガイドレールを備えています。

MolexのPowerWize BMIコネクタの画像図6:PowerWize BMIコネクタは、ガイドレールと±2.00mmのセルフアライメント機能を備えたブラインド嵌合に対応しています。ネジ止めおよびはんだ付けタイプのオプションにより、バスバーおよびPCBへの取り付けが可能です。(画像提供:Molex)

大電流および高電圧の電子システムの設計者は、アセンブリ工程の効率化も必要としています。COEURソケット対応コネクタの多くは、テープまたはリール状、あるいは自動アセンブリ用のピックアンドプレーストレイで供給されます。機械的キーイング、色分け、クリック音などの機能により、アセンブリ時の人的ミスを防止します。すべてのCOEURソケット対応コネクタは、EIA-364規格に基づき、最低200回の嵌合、取り外しサイクルに対応しています。

大電流、高電圧環境における安全性の確保

大電流や高電圧を扱うアプリケーションにおいては、安全性は省スペース化や効率的なアセンブリと同じくらい重要です。タッチセーフ設計、難燃性、低毒性材料、広い動作温度範囲など、部品設計者がこれらのコネクタの安全性を高めるために採用した方法の一部です。

COEURソケットを採用し大電流を効率的に流す多くのコネクタは、タッチセーフ設計となっています。これは、通電部品を覆い隠すか、密閉するか、あるいはその他の方法で人が直接触れないように保護していることを意味します。タッチセーフ設計のコネクタには、HyperQube、PowerWize BMI、PowerWizeワイヤ対基板圧着コネクタとアセンブリがあります(図7)。PowerWize圧着コネクタは、8角形の圧着形状を採用し、10AWG~1/0AWG(直径0.120インチ~0.525インチ(約3.1mm~13.3mm))のワイヤをPCBやバスバーに確実に接続します。ネジ止め式の設計には、触れても安全なPBTロッキングヘッダと、可聴フィードバック付きリセプタクルが含まれています。

MolexのPowerWize圧着コネクタの画像図7:PowerWize圧着コネクタは、300V~600Vで120A~175Aを扱う10~1/0 AWGワイヤにおいて接触抵抗を低く保つため8角形の圧着形状を採用しています。ヘッダ、コネクタハウジング、アセンブリはすべてタッチセーフティ設計で、PBT製です。(画像提供:Molex)

PBTは優れた電気絶縁性から、電子機器アプリケーションで広く採用されています。UltraWize、PowerWize、HyperQube、SW1コネクタに採用されています。これらのコネクタは低ハロゲンまたはハロゲンフリー仕様であり、火災が発生時に、部品から発生する煙の毒性が低いことを保証します。

また、PBTはハロゲン系難燃剤を使用しなくても優れた難燃特性を有します。上記すべてにコネクタはUL94V-0難燃等級に適合しています。これは、点火源を除去してから10秒以内に、いかなる炎も自然消火し、かつ燃え落ちることがないことを意味します。

まとめ

COEURソケット技術は複数の角度を持つコンタクトビームにより低接触抵抗を実現し、電圧降下や発熱を最小限に抑えながら大電流を可能にします。これらの特性により、COEURソケットは、大電流および高電圧の通電用に設計された多様なコネクタタイプの中核を成しています。

また、COEURソケットを使用したコネクタは、PCB、バスバー、パネル、バルクヘッド上でのスペース効率とアセンブリの容易さも考慮して設計されています。難燃性でタッチセーフな素材、配慮された機械的キーイングと色分け、多様なアセンブリオプションにより、COEURソケット搭載コネクタは、家庭用エネルギー貯蔵やEV充電から工場現場やデータセンターまで、幅広いアプリケーションに適しています。

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著者について

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Jessica Shapiro

Jessica Shapiro uses her engineering and writing backgrounds to make complex technical topics accessible to engineering and lay audiences. While completing her bachelor's degree in Materials Engineering at Drexel University, Jessica balanced engineering co-ops with her work as a reporter and editor on The Triangle, Drexel's independent student newspaper. After graduation, Jessica developed and tested composite materials for The Boeing Company before becoming an associate editor of Machine Design magazine, covering Mechanical, Fastening and Joining, and Safety. Since 2014, she's created custom media focusing on products and technology for design engineers. Jessica enjoys learning about new-to-her technical topics and molding engaging and educational narratives for engineering audiences.

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