Raspberry Pi 3のシングルボードコンピュータで、太陽電池を電源として使用する方法

著者 ヨーロッパ人編集者

DigiKeyのヨーロッパ担当編集者の提供

最新のRaspberry Pi 3などの低価格シングルボードコンピュータは、監視用や制御用アプリケーションのヘッドレスな組み込み設計においてますます利用されるようになっています。 基板に統合済みのワイヤレスコネクティビティを備えたLinuxディストリビューションで動作する、高水準言語でアプリケーションの開発を行うことは、イノベーティブなアプリケーションを開発し提供する新たな道を開くものです。

一般的な5V携帯電話充電器により、こうした基板への電源供給は比較的簡単になっています。ただ、環境から取得できる電力の利用に対する関心もますます高まっています。 環境発電により、システム設計者は、パワーラインの配線が難しい場所にも基板を配置する柔軟性を得られます。 太陽電池を通じて供給できる外部電源を抜きにしては、こうした基板の電源要件を満たす充電式電池を実現できません。

スクリーンを必要としないシステムでは、組み込みシングルボードコンピュータに太陽電池を利用することが実用的になってきています。 ボード上のデバイスで消費電力が低下していく一方で、太陽電池と電源管理の両方の効率性が高まっています。このため、太陽電池からボードへの直接充電や、バッテリのサブシステムへのトリクル充電を行う機会が出てきました。 これにより、バッテリはシングルボードコンピュータや通信リンクに数か月あるいは数年にわたって電源を供給できます。

Raspberry PiからRaspberry Pi 3への移行は、この流れの中でも重要です。というのも、Raspberry Pi 3は1.2GHzのクアッドコアARM® Cortex®-A53プロセッサと共に、Wi-FiとBluetooth機能を基板に搭載しているからです。 これにより、消費電力が大きい、USBポートを介したワイヤレスアダプタの利用を回避できます。 この基板は、USBポートの周辺機器をサポートするため、最大2.4Aの電流から動作する仕様です。

基板の消費電力はアイドル時で31mAで、プロセッサとメモリの負荷時には580mAに上がります。 その他の電流負荷にはSMSCLAN9514 USBコントローラがあり、サスペンドモードで74mAを消費します。 Ethernetケーブルから電源が供給できるので、Ethernet接続で594mAを消費するというのは不適切でしょう。

Seeed Technology提供によるRaspberry Pi 3ボードの画像

図1:Raspberry PiによるRaspberry Pi 3ボードはワイヤレスコネクティビティを統合しています。

ワイヤレス接続の消費電力は、設定したデューティサイクルに依存します。ピーク電流の要件が高くなりすぎないようにするため、ワイヤレス接続はメイン基板の後に起動するよう設定すべきです。

これにより、起動時の電源要件は700mA~900mA程度となり、環境発電により給電すべきアイドル電源は150mA程度となります。

必要な電源は、MikroElektronikaMIKROE-651などの各種パネルにより供給できます。 これらパネルは100mAで4Vの出力を供給でき、パネル1枚の寸法は70 x 65mmで、最大9枚のパネルを並列に接続して起動電流を供給できます。 あるいはPanasonicAM-5902を使用することもできます。寸法は150 x 37mmで、最大60mAを供給します。この場合、アイドル電源要件を満たすためには3枚のパネルが必要となります。

PanasonicのAM-5902ソーラーパネルの画像

図2:PanasonicのAM-5902ソーラーパネルの画像です。

これら2つのパネルはアイドル電源を供給できますが、上記は充電式電池と電源管理サブシステムの必要性も示しています。 これらを備えれば、パネルはデータの収集や、ゲートウェイへのデータ送信時に生じる基板のピーク利用時の電源をサポートする、バッテリへのトリクル充電を行うことができます。

充電式電池サブシステムは、Texas Instrumentsbq25504のようなデバイスにより管理できます。 このデバイスは、セルからの電流供給が低下した際にバッテリを充電したり放電を防いだりするために利用します。また、環境発電デバイスのような変動のある電源を管理できます。

シングルボードコンピュータに必要な5Vを給電するには、2つのソーラーパネルを並列で接続し、かつ必要な電流を供給するため1つの充電式電池に接続します。

これには電池に加えて、スイッチング方式の昇圧または降圧コンバータとバッテリチャージャが必要となります。 コンバータは、インダクタを電源に接続し、インダクタに電力を蓄積するインダクタ電流を増大させて、パネルからのエネルギーをバッテリがすべて捕捉できるようにします。 第2周期では、電流経路を変化させることにより、インダクタが蓄積された電力を負荷に供給できるようにします。 負荷電圧は、インダクタの電源に比べて高くなることも低くなることもあります。

Texas Instrumentsのbq25504電源管理チップの図面

図3:bq25504電源管理チップをバッテリおよびソーラーパネルに接続した図。

しかし、インダクタをソーラーパネルに直接接続すると非効率的になるので、コンデンサを使用します。 コンデンサの電圧を監視して、パネル出力がピークに達するとスイッチング方式のコンバータが作動します。 また、出力電圧がコンバータをスタートさせるのに十分高くない場合、コンデンサはセルから電力を集めることにより、すべての電力を収集、蓄積するようにします。

これは、コンデンサに十分に充電されている場合、コンバータがバースト時に動作することを意味します。これにより、バッテリを急速充電できるようになります。 しかし、次にいつ電力のバーストが起こるかを予期することはできないため、急速充電を終了させることは困難な場合があります。

1つのアプローチは、出力電圧を別のコンパレータで監視し、電圧が上限に達するとスイッチングを禁止し、電圧が既定の水準以下になるとスイッチングを許可します。

bq25504は、効率の高いブーストコンバータと充電器を用いて、太陽電池から出力される電圧を効率的に収集し管理できるよう特別に設計されています。 このデバイスは、DC-DCブーストコンバータ/充電器により起動します。このDC-DCブーストコンバータ/充電器の起動に要する電力はセルから供給されるマイクロワット単位のみで、起動後は効率的に電力を抽出できます。

標準的な回路を図3に示します。ソーラーパネルをbq25504とバッテリサブシステムに接続し、電流を集めて基板に電力を供給します。 bq25504は、Raspberry Pi 3ボードの汎用IOピンに接続できるバッテリ監視出力を使用します。 bq25504は、図4に示す評価ボードに実装されており、太陽電池とバッテリをリンクするために用いることができます。

ブーストコンバータが出力を行うと、VSTORが1.8Vに達してコンバータに電力を供給し、主ブーストコンバータは太陽電池からより効率的に電力を引き出すことができるようになります。 ブーストコンバータはVIN_DCが330mV(標準)の低電圧で起動し、VSTORが1.8Vに達すると、VIN_DC≅120mVになるまで電力を取得し続けることができます。 統合されたPFM降圧コンバータもVSTORから給電され、十分な入力電力が得られる場合、VOUTから最大100mAを供給します。

Texas Instruments bq25504評価ボードの画像

図4:bq25504評価ボードは、太陽電池からRaspberry Pi 3ボードに給電するために利用できます。

コンバータの重要な要素の1つは、太陽電池の最大電力点(MPP)を追従することです。 このMPPは、パネル上の光量と温度に応じて変化し、プログラム可能な最大電力点追従(MPPT)サンプリングネットワークの実装によりデバイスへの電力供給を最適化します。 bq25504は、ブーストコンバータを256ミリ秒無効にすることにより、開回路入力電圧を16秒ごとに定期的にサンプリングし、VREF_SAMPの外部リファレンスコンデンサ(C2)で、OC電圧のプログラム済みMPP比を保存します。 通常、太陽電池は出力電圧の約80%に達するとMPPとなり、ユーザ既定の最大電圧(VBAT_OV)よりもバッテリが低い場合、ブースト充電器はVIN_DCがMPP電圧に達するまで太陽電池を充電します。 その後ブースト充電器は、出力がVBAT_OVに達するまでコンバータの入力電圧を調整し、最大限の電力をバッテリに供給します。 そして、ブースト充電器は、ボードに必要な電力を供給するために使用されます。

結論

Raspberry Pi 3のような統合された無線接続を備えた5Vのシングルボードコンピュータを太陽電池に接続するには、必要な定常電流を供給するために中間的なバッテリおよび電源管理のためのサブシステムが必要となります。 bq25504などのデバイスを使用すると、バッテリの充電を最適化するために最大電力点追従を行い、制御線をボードに返すことができます。 これにより、電源が利用できない場所でボードを使用しつつ、データをネットワークに戻すことができます。 

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