アプリケーション要件に合った適切なソリッドステートリレーの選択方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2025-04-29
ソリッドステートリレー(SSR)は、プラスチック、パッケージング、食品・飲料、HVAC、半導体、再生可能・従来型エネルギー、石油・ガス、輸送、印刷、研究室、窯・オーブン、照明、医療、モーション制御など、ますます広範で多様な産業で使用されています。SSRは可動部品がなく長寿命であるため、電磁リレー(EMR)の代わりに頻繁に使用されます。また、接点表面でのアーク放電による接点消耗や電気的干渉の影響を受けません。
SSRは、さまざまな種類の負荷に対応する複数の構成があるため、設計者は使用目的に合ったSSRの選択方法を理解する必要があります。これは、誘導負荷を持つモータ、ポンプ、ファンの制御といった産業用アプリケーションで特に当てはまります。これらのデバイスは、抵抗負荷を持つ暖房や照明アプリケーションとは異なるリレータイプを必要とします。
この記事では、SSRが産業用およびファクトリオートメーションに適した選択肢である理由について簡単に説明します。また、その使用方法、特性、およびCarlo Gavazziのデバイス例を使用したアプリケーションへの選択方法についてもご紹介します。
SSRを使用する理由
産業用およびファクトリオートメーションシステムには、低コスト、信頼性、接点バウンスやアーク放電のない高速作動時間、最小限の電磁妨害(EMI)、過酷な環境への耐性、機械的衝撃と振動に対する高い耐性を特徴とするスイッチングデバイスが必要です。SSRは、機械式リレーのアーマチュアと接点に代わって半導体デバイスをスイッチング動作に使用することで、これらの要件を満たすことができます。SSRは完全に密閉されているため、衝撃、振動、湿度、腐食性化学物質、埃にも耐性があります。これにより、長寿命で高信頼性のデバイスが実現します。
アプリケーションに適したSSRを選択するには、制御される負荷とSSRの本質的な特性を理解し、アプリケーションのニーズとリレーの仕様を一致させる必要があります。
SSR制御と負荷仕様
SSRはACまたはDC制御電圧で制御できます。DC制御は、通常4V~32Vの低電圧を使用します。また、4mA~20mAの電流ループや、1VDC~10VDCのアナログ入力も使用できます。AC制御では、24VAC~275VACの範囲の電圧を使用します。
SSRの負荷は、ACまたはDCのいずれかです。最大AC負荷電圧690VAC、AC電流定格125AのSSRが利用可能です。DC定格は500VDCおよび100Aです。
電気負荷の種類
電気負荷は、その主な電気的特性によって分類されます。モータ、ファン、ポンプは誘導負荷に分類されます。負荷電流と電圧は位相がずれており、電流は電圧に遅れて流れます。誘導負荷は、逆起電力(EMF)と呼ばれる逆電圧電位を発生させることにより、負荷電流の変化に抵抗します。誘導負荷とともに使用されるSSRは、これらの電圧に対応できる必要があります。
ヒータ、オーブン、電気ストーブ、ドライヤ、ランプなどの機器は抵抗負荷の例です。抵抗負荷の電圧と電流は同位相です。
容量性負荷は、負荷電圧の変化に抵抗します。容量性負荷の電流と電圧は位相がずれており、電流が電圧に先行して流れます。ほとんどのスイッチング電源や、除細動器のような一部の医療機器には容量性負荷があります。容量性負荷に最初に電圧が印加されると、非常に低いインピーダンスを示し、高い突入電流が発生します。
それぞれの種類の負荷特性によって、負荷制御に必要なSSRの種類が決まります。
SSRの種類
SSRには、一般的に使用される5つの種類があります(図1)。ゼロスイッチングまたはゼロクロス、インスタントオンまたはランダムスイッチング、DCスイッチング、ピークスイッチング、位相角またはアナログスイッチングです。
図1:SSRの種類は、SSRがライン電圧に対していつ切り替わるかによって決まります。(画像提供:Carlo Gavazzi Inc.)
SSRの種類は、ライン電圧の位相に対してデバイスが切り替わるタイミングに基づいています。ゼロスイッチングSSRは、制御信号の印加後、ライン電圧の最初のゼロクロスで負荷をスイッチングするACリレーです。SSRのスイッチング時間は、最大でもライン周波数の半周期であり、ライン周波数が60ヘルツ(Hz)の場合、8.3ミリ秒(ms)です。ゼロスイッチングSSRは、スイッチング時の高サージ電流を制限するため、主に抵抗負荷で使用されます。負荷が接続されるとライン電圧はゼロになるので、抵抗負荷に流れる電流もゼロになります。この種類のリレーは、ほとんどの誘導負荷および容量性負荷にも適しています。
ランダムスイッチングまたはインスタントオンSSRは、ACリレーでもあり、制御電圧を印加すると直ちに負荷に電力を供給します。ライン電圧のどの位相でもオンになります。標準応答遅延は1ms未満です。ランダムスイッチングリレーは誘導負荷に使用されます。
DCスイッチングSSRは、DC抵抗および誘導アプリケーション用です。ランダムスイッチングリレーと同様に、制御信号を適用すると直ちに負荷を接続します。応答時間は100マイクロ秒未満です。
ピークスイッチングSSRは、制御電圧印加後、次のライン電圧のピークでスイッチングします。これらのリレーは、トランスなどの重い誘導負荷に使用されます。
位相角またはアナログスイッチングSSRは、アナログ制御信号の電圧を読み取ります。制御電圧の振幅に比例してリレー出力の導通期間を変化させます。このタイプのSSRは、閉ループシステムや、突入電流を制限するためにソフトスタートが使用されるアプリケーションで使用されます。
上記で言及されていない他のSSRタイプは、特殊な用途のニーズにはあまり使用されません。
極数
SSRは単投デバイスで、極をオンにもオフにもできます。極数とは、制御できるライン電圧の数を指します。単相ACラインまたはDCラインには単極SSRが必要です。220V単相ラインには、コンポーネントの110V電源それぞれに対応する2極が必要です。3相アプリケーションには3極リレーが必要です。
リレーは単極単投(SPST)、2極単投(DPST)、3極単投(3PST)に分類されます。
SSRの設計
SSRの機能ブロック図は、AC用途かDC用途かによって異なります。Carlo GavazziのRK2A60D50P DPSTゼロスイッチングリレー(図2)などのバイポーラACアプリケーション用SSRは、制御デバイスとしてサイリスタを使用します。
図2:ACアプリケーション用のRK2A60D50P DPST SSRの機能ブロック図を示しています。(画像提供:Carlo Gavazzi Inc.)
RK2A60D50Pは、660Vの出力電圧と、最大50Aの出力電流を処理するように定格されています。このファミリの他のSSRは、最大75Aの出力電流を処理することができます。4VDC~32VDCの制御電圧が必要です。すべてのSSRと同様、オプトカプラを使用し、制御電圧源と4,000VRMSのライン間の電気的絶縁を確保しています。このリレーは両出力に共通の制御入力を備えています。製品ファミリの他のバージョンでは、各出力に対して個別の制御入力が用意されています。制御電圧がアサートされるとゼロクロス検出器が起動し、両極のラインのゼロクロスで逆並列サイリスタが起動します。
DCアプリケーションはユニポーラであるため、主要なスイッチングデバイスとしてトランジスタを使用します。これは、Carlo Gavazzi RM1D060D50 SPST DC SSRの機能ブロック図に示されています(図3)。
図3:RM1D060D50 DC SPST SSRの機能ブロック図を示しています。DC SSRは、主要なスイッチングデバイスとしてトランジスタを使用します。(画像提供:Carlo Gavazzi Inc.)
このデバイスは、1VDC~60VDCの出力電圧と、50Aの出力電流を処理します。このシリーズのSSRは、500VDCと100Aの電流を処理できるリレーを備えています。ラインはユニポーラDCであるため、主要なスイッチとしてMOSFETが使用されます。この結果、リレーのターンオンとターンオフの応答時間はそれぞれ100ms未満となります。 このリレーは1,000Hzのスイッチング速度で動作可能で、4VDC~32VDCのDC制御電圧範囲を使用します。この製品ファミリの他のデバイスは、最大280VのAC制御電圧を提供します。制御電圧も3750VRMS絶縁でラインから光学的に絶縁されています。
制御ラインと負荷間のガルバニック絶縁は、トランスカップリングを使用して実現することもできます。このタイプの絶縁は、Carlo Gavazzi RP1D060D8のブロック図(図4)に示すように、RFトランスを介して結合された変調RFソースを使用して、入力と出力間のガルバニック絶縁を実現します。
図4:RP1D060D8のトランスカップリングがガルバニック絶縁を実現します。(画像提供:Carlo Gavazzi Inc.)
このDCスイッチングSSRは、350VDCと8Aを処理するように定格されています。4.25VDC~32VDCの範囲のDC制御電圧を使用します。4本のスルーホールピンが0.1インチの倍数間隔で配置された4-SIPパッケージに収められています。引用した他のSSRとの違いは、より小型であることと、入力と出力を絶縁するためにトランスカップリングを使用していることです。絶縁仕様は4,000VRMSで、スイッチング応答時間は閉回路時に100ms未満、開回路時に250ms未満です。
動作温度範囲
SSRは最大660Vの電圧と最大100Aの電流をスイッチングし、かなりの熱を発生する可能性があります。リレーを流れる電流とリレーの電圧がゼロでない場合、スイッチング時に電力が消費されます。この熱は、ヒートシンクを使用してリレーから取り除く必要があります。周囲温度はSSRの最大電流定格に影響するため、高い場合はディレーティングする必要があります。通常、SSRは出力電流が5A以下の場合、ヒートシンクなしで動作させることができます。リレーが金属表面に実装されている場合、この制限は8Aに増加します。Carlo Gavazziは、特定のSSRモデルに適合するヒートシンクを提供しており、これらのヒートシンクはあらゆる熱環境下で最適な性能を確保します。
実装タイプ
SSRは、用途に合わせてさまざまなパッケージスタイル(図5)で提供されています。ほとんどの実装タイプでは、デバイスの温度を制御するために、リレーを熱伝導面またはヒートシンクに固定する必要があります。
図5:SSRの一般的な実装構成例を示します。(画像提供:Carlo Gavazzi Inc.)
Carlo GavazziのRZ3A60D55(左)は、AC、ゼロスイッチング、3PST SSRで、出力定格は660Vおよび55Aです。この出力は、4VDC~32VDCの入力信号で制御されます。モジュラーシャーシ実装システムを採用し、3つのスイッチングデバイスはすべて共通のベースプレートに実装されます。ベースプレートは、サーマルパッドまたはヒートシンクコンパウンドを使用して、熱伝導面に実装されます。
ホッケーパックSSRは、その厚みのある形状と高密度の構造からこの名前が付けられました。このパッケージの強固な構造により、衝撃や振動に対する耐性が向上し、過酷な産業環境での信頼性が向上します。前述のRM1D060D50(図5、左から2番目)は、ホッケーパックパッケージを使用したSSRの例です。
システムインパッケージ(SIP)モジュールは、完全な電子サブシステム用のプリント回路基板実装エンクロージャです。前述のRP1D060D8 DC SSR(図5、左から3番目)は、4-SIP(4ピン)パッケージに実装されています。このSSRは8A以下の出力電流を制御し、サーマルシンクを必要とせずにプリント基板に実装できます。
DINレールは、回路ブレーカ、電源、SSRなどの電気デバイスを実装するためにエンクロージャ内で使用される金属製のレールです。Carlo Gavazzi RGS1A60D50KKEは、DINレール実装を使用するSPST、AC、ゼロスイッチングSSRで、図5の右端に示されています。出力で660Vと50Aをスイッチングできます。4VDC~32VDCのDC制御ラインを使用します。DINモジュールの幅はわずか17.5mmで、コンパクトに設置できます。実装レールはある程度の冷却を提供しますが、DINレールに対応したヒートシンクも用意されています。
まとめ
可動部品がなく、接点表面でのアーク放電による接点消耗や電気的干渉がないSSRは、産業およびファクトリオートメーションに必要な信頼性を備えています。Carlo Gavazziなど、幅広いSSR製品を提供するサプライヤを利用することで、適切なデバイスの選択が簡単になります。SSRの動作、特性、アプリケーションをある程度理解することで、設計者は設計要件に合った適切なリレーを確実に見つけることができます。
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