ケーブルバンドルに最適なケーブルタイの選び方・付け方

著者 Art Pini

DigiKeyの北米担当編集者の提供

電気・電子部品/サブシステムがますます使われるようになってきているものの、ケーブルの適切な固定はシステム設計において見過ごされがちな重要な要素です。デバイス内であれ、システム間であれ、ケーブルを安全かつ効率的に配線することは、特に高振動で過酷な環境での用途における設計の成功と長寿命化にとって非常に重要です。

設計者にとっての課題は、ケーブルの絶縁体や内部構造の完全性を過剰にしたり減じたりしないままで、用途で求められる引張強度、寿命、柔軟性、化学物質、振動、紫外線(UV)耐性を満たすケーブルタイを見つけることです。

そのためには、間違ったケーブルタイを選択すると購入に費やした金額よりもはるかに多くの費用がかかってしまう可能性もあることを懸念した上で、現在利用可能なさまざまなタイプと材料のケーブルタイを分析・識別する必要があります。

このような懸念を払拭するために、設計者はケーブルタイ間の差異を理解し、用途の要件に合うケーブルタイを選択する必要があります。本稿では、Panduit Corporationの実例を基に、ケーブルタイの考慮ポイントの一覧、各タイプのメリット、効果的な適用方法について説明します。

ケーブルタイの仕様

ケーブルタイは、しばしば結束バンドまたはタイラップと呼ばれ、さまざまな長さ、幅、材料、および色のものが市販されています。ケーブルバンドルを結ぶときは、タイのストラップまたはテープ部分をケーブルバンドルに合わせ、緩い方の端を固定(ロック)用機構に完全に通し、ストラップの固定用のくぼみがしっかりとかみ合うまで締め付けます(図1)。

ケーブルバンドルを固定するための主な部品を示した典型的なケーブルタイの図図1:典型的なケーブルタイ(ケーブルバンドルを固定するための主な部品を示したもの)(画像提供:Panduit Corporation)

ケーブルタイは、固定用バーブを固定用機構の一部として成形したワンピースとして製造することもできます。これに対し、高品質のタイはツーピース構造を使用しています。ツーピース構造の設計では、耐腐食性のステンレス製バーブをロッキングヘッドに埋め込むことで、比較的滑らかなタイの表面をグリップできます。バーブを固定用のくぼみに嵌める必要がないため最高度に調節した確実な固定が可能となるように設計されています。

最大の直径指定は、タイに収容できるケーブルバンドルの最大直径を示します。バンドルは、締めすぎてケーブルの絶縁体を切断したりすり減らしたりしない程度の強さで固定する必要があります。先バラを固定用機構に噛み合わせるため、使用するタイの長さは少し余裕を持たせてください。

ラップの強度は、ポンド数として測定されるループ引張強度(LTS)で定義されます。LTSは、固定用機構に先バラを噛み合わせるときに加えることができる最大限の力のことです。一般的なタイでは、18ポンド~250ポンドです。

LTSは、タイの寸法や使用材料によって異なります。どのような材料を選択すべきかは、ケーブルタイを使用する環境的な動作条件に大きく影響されます。考慮ポイントは以下の通りです。

  • 室内用か、室外用か?
  • 想定される温度範囲は?
  • 水、油、化学物質、または振動にさらされるか?

たとえば、PanduitのPAN-TY@PLTシリーズ ケーブルタイの一つであるPLT1.5M-M10タイを例に考えましょう。このケーブルタイファミリは、多くの色、材料、および構造タイプを擁する、同社の最大かつ最も包括的な製品です。PLT1.M-M10は、公称長さが5.6in.(インチ)、公称最大直径が1.25in.、引張強度が18ポンドです。タイストラップは、断面積によってサブミニチュア、ミニチュア、それらの中間サイズの等級で分類されます。PLT1.M-M10はミニチュアタイで、ワンピース構造で設計されています。ナイロン6.6で作られており、屋内使用を想定しています。

前述したように、一般的なケーブルタイの設計はツーピースであり、ワンピース設計の成形ナイロンバーブの代わりにステンレス製バーブを使用したものです(図2)。

画像:ワンピース構造とツーピース構造図2:成形した固定用バーブを用いたワンピース構造(a)と、成形後に挿入するステンレス製バーブを用いたツーピース構造(b)を示しています。(画像提供:Panduit Corporation)

図2左のアクアブルーのケーブルタイは、PanduitのPAN-TY@PLTシリーズのバリエーションの一つ、PLT3S-C76です。エチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)製で、耐薬品性、難燃性、耐放射線性が求められる用途を想定しています。図2右のケーブルタイはPanduitのBT4S-M0です。バーブが別売りのDOME-TOP BARB-TY BTシリーズに属します。さらに、このシリーズのタイは、ケーブル絶縁体の摩耗を最小限に抑えるために、ストラップのエッジとヘッドを丸めたのが特長です。黒色の方は、ナイロンにカーボンブラックを着色したもので、紫外線に対する耐性が向上するため、屋外用途で最も多く使用されています。

ケーブルタイは、想定される用途の環境に応じたさまざまな材料で製造されます。ベーシックタイはナイロン6.6で成形されています。ナイロン6.6は、高い機械的強度、剛性、良好な耐熱性、適度な耐薬品性を有しています。中には耐候性、熱安定性、難燃性を持つバリアントもあります。

他にも、特定の耐性を実現するために、さまざまな材料が使用されています。たとえば、DT8EH-Q0は、高い強度に加え、衝撃、薬品、紫外線、天候への耐性を考慮した設計になっています。デルリン(Delrin®)をはじめとする材料ファミリであるアセタール(ポリオキシメチレン、POM)を使用しています。長さは2.25ft(フィート。68.6cm)、引張強度は250lb(ポンド。113kg)です。これらのケーブルタイは、電力および通信業界の過酷な屋外用途向けに設計されています。

温度範囲

ケーブルタイが耐えられる温度範囲の主な決定要因は、その構造に使用されている材料です。ナイロン6.6は、-76°F(-60℃)から+185°F(85℃)までの温度範囲で動作することが認定されています。熱安定化ナイロン6.6は、温度範囲の上限を212°F(100℃)まで引き上げます。PEEKは最も高い温度耐性を持ち、上限温度は500°F(260℃)です。

特別な機能

Panduit CBR1M-Mは、Contour-Tyシリーズの一つで、ケーブル絶縁体やケーブルジャケットにダメージを与えないような独自の設計になっています。つまり、鋭利な刃の露出を抑え、引っかかりを少なくするために、平行進入方式による薄型のヘッドを採用し、ストラップの外側に固定用のくぼみを設けています(図3)。

図:Panduit Contour-Tyシリーズ図3:Contour-Tyシリーズは、ストラップ部分に対して直角に設定された固定用機構により平行な挿入を行うことができ、また、外側に固定用のくぼみを設けることで絶縁体の破損を防止しています。(画像提供:Panduit Corporation)

HV9150-C0インラインケーブルタイは、耐候性のあるナイロン6.6を使用しています。機構的には、永続的固定とフレキシブル固定の両方を可能にするツー・ウェッジ設計の固定用機構を採用しています(図4)。

画像:インライン設計を採用しているPanduit HV9150-C0図4:HV9150-C0はケーブル束の低背化を実現するため、インライン設計により固定用機構への平行な挿入を可能にしています。(画像提供:Panduit Corporation)

また、ヘッド部は取り外し可能なので、最終的な固定前に一時的に束ねることも可能です。ストラップの両側にくぼみを成形することで、固定強度を高めるとともに、柔軟性を高めています。長さ1.721ft.(52.46cm)、バンドルの直径5.92in.(15.04cm)、引張強度160lb(73kg)です。

ケーブルタイSST1.51-Mは、長さ5.3in.(13.5cm)、引張強度40lb(18kg)です(図5)。通常の束ね用途とパネル越し用途の両方に対応できるよう、ヘッド高を小さく設計しています。Panduitによると、ツーピース設計により業界最小の捩じり力を実現しています。また、ワンピース設計より14%軽量化されています。さらに、タイは最終的なテンションをかけるまで取り外し可能です。

図:Panduit SST1.51-Mのツーピース設計図5:SST1.51-Mのツーピース設計は、浮動カラーを使用して、歯付きウェッジに対してストラップを固定します。最終的に固定する前に、カラーを後ろに引いてウェッジをストラップから放れるように曲げることで、タイを取り外すことができます。(画像提供:Panduit Corporation)

伸縮性の低いケーブルタイが多い中で、PanduitのERT2M-C20は本体が柔軟に設計されています(図6)。

画像:Panduitのエラストマ製ケーブルタイERT2M-C20図6:エラストマ製ケーブルタイERT2M-C20は、柔軟なストラップを備えており、締め過ぎを防ぐことができます。(画像提供:Panduit Corporation)

このタイプのタイは、ケーブルバンドルまたは光ケーブルバンドルに沿うように設計されており、締め過ぎを防ぐことができます。また、摩擦係数が高く、ケーブルをグリップすることで横方向の動きを抑えます。このタイは取り外し可能で、長さ8.5in.(21.6cm)、引張強度18lb(8kg)です。また、他のシリーズと同様にUL94V-0の難燃性を認定されており(通信機器の厳しい可燃性要件に適合)、ハロゲンフリーで毒性もありません。

SG100M-M0は、メンテナンス・修理・オーバーホール環境や建設業などで手荒に設置されることを想定して設計されています(図7)。

画像:PanduitのSGM100M-M0タイは、低く設置できるヘッド高が特長です。図7:SGM100M-M0は、低く設置できるヘッド高、広がったネック、ねじ込みやすいテーパ付きの先端が特長です。(画像提供:Panduit Corporation)

耐候性の高いナイロン6.6を使用しており、強い紫外線にさらされる用途に最適です。長さ4.2in(10.7cm)、定格引張強度18lb(8kg)で、細く広いストラップは、ケーブルバンドルをしっかりグリップしてケーブルの横方向の動きを抑えるために柔軟性を重視して設計されています。

まとめ

ケーブルタイは当たり前のように使われていますが、設計者は、用途に応じた最適なタイを使用するために、多くの選択肢を慎重に検討する必要があります。これまで見てきたように、ケーブルタイは数インチ~数フィート(数センチメートル~数メートル)までの長さが用意されており、幅広い環境に対応し、さまざまな用途のニーズに応える多くの特長を備えています。

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著者について

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Art Pini

Arthur(Art)PiniはDigiKeyの寄稿者です。ニューヨーク市立大学の電気工学学士号、ニューヨーク市立総合大学の電気工学修士号を取得しています。エレクトロニクス分野で50年以上の経験を持ち、Teledyne LeCroy、Summation、Wavetek、およびNicolet Scientificで重要なエンジニアリングとマーケティングの役割を担当してきました。オシロスコープ、スペクトラムアナライザ、任意波形発生器、デジタイザや、パワーメータなどの測定技術興味があり、豊富な経験を持っています。

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