安全性とメンテナンス性を考慮した制御パネルの設計
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2025-06-04
産業用オートメーションシステムがますます複雑化する中で、制御パネルの設計にはより慎重なアプローチが求められています。人間工学に細心の注意を払わなければ、パネルは乱雑で分かりにくくなり、その結果、安全上の危険や操作ミス、メンテナンスの遅延を引き起こす可能性があります。こうした問題を避けるため、設計者はヒューマンファクターを優先し、パネルが直感的に操作でき、メンテナンスが容易であることを確保する必要があります。
この記事では、制御パネルの設計に関連する課題を簡単にご紹介します。そして、Panduitの一連のソリューションを取り上げ、これらのソリューションがどのように連携して、信頼性の高いシステム性能をサポートする、安全でメンテナンスが容易な制御パネルを実現するかについてご紹介します。
ケーブル管理システムが重要な理由
制御パネル内のユーザビリティに関する課題の多くは、配線の問題に起因しています。よくある問題には、コンポーネントラベルの不明瞭さ、配線の絡まり、重要な領域へのアクセス不良などが挙げられます。
これらの問題は、Panduitが提供するような包括的なケーブル管理システムを使用した総合的なアプローチで対処するのが最善です。ラベル、ワイヤダクト、ケーブルタイ、ケーブルマウントなど、連動するように設計されたさまざまなコンポーネントにより、これらのシステムは、スムーズな設置と信頼性の高い動作をサポートする、クリーンで確実なケーブル管理を実現します。
配線ダクトによるケーブルの整理と保護
配線ダクトは、よく整理された制御パネルの基礎となる要素です。ケーブルの配線と保護のための構造化された方法を提供し、技術者がレイアウト全体を理解し、不慮の切断のリスクを低減するのに役立ちます。
これらの利点は、PanductタイプF配線ダクトファミリに顕著に表れています。この製品ラインは「フィンガー & スロット」設計を特長としており、ダクト側壁に沿ってソリッドセクション(フィンガー)とオープンスペース(スロット)が交互に配置されています。スロットの間隔は0.5インチ(in.)で、高密度の端子台や密集したコンポーネントへの整然とした配線を容易にします。
このファミリのスロットは、幅がわずか0.2インチで、配線ダクトから出るケーブルにぴったりとフィットし、フィンガーの中間にワイヤを保持しやすくする突起があります。この二重制限設計により、ケーブルタイや配線ダクトカバーの必要性が低減し、設置やメンテナンスが簡単になります。より大きなケーブル出口が必要な場合、個々のフィンガーや大きな側壁部分は、統合されたスコアラインにより、簡単に取り外すことができます。
この製品群のサイズは、1.25 x 3.13インチのF1X3LG6(図1)から、4.25 x 5.1インチの F4X5LG6まであります。これらのオプションにより、スペースが限られたコンパクトな制御パネルや、複雑なケーブル束の管理を必要とする大規模な設置にも対応できます。
図1:タイプF配線ダクトファミリのF1X3LG6のサイズは、1.25 x 3.13インチです。(画像提供:Panduit)
4インチ幅のC4LG6(図2)などのマッチングカバーは、使用頻度が低いケーブルを隠して保護し、偶発的な障害のリスクを低減するのに役立ちます。
図2:タイプF配線ダクトファミリ用C4LG6カバーは、幅が4インチです。(画像提供:Panduit)
PanductタイプFダクトはすべて鉛フリーのPVC製で、RoHS、UL、CE、CSAの各要件を満たしています。これらの製品はUL94V-0の難燃性定格を有しており、全ラインアップで一貫した安全性と性能を提供します。
ケーブルタイを使用したケーブル束の固定と整理
ケーブルの結束は、安全で直感的な制御パネルのレイアウトを維持するために非常に重要です。適切な結束は、視覚的な明瞭さを高めるだけでなく、不慮の切断、摩耗、機械的な負担のリスクを軽減します。
ケーブルタイを選択する場合、設計者は、環境暴露、引張強度要件、および他のパネルコンポーネントとの材料適合性などの要因を考慮する必要があります。ケーブル管理システムに関するUL 62275などの業界標準への準拠も、長期的な信頼性と安全性を確保する上で重要な役割を果たします。
Panduitは、さまざまな要件に合わせて多種多様なケーブルタイを提供しています。Pan-Ty PLTシリーズとDome-Top Barb Ty BTシリーズは、入手可能なオプションの幅広さを示しています。両ファミリは、複数のサイズと材質で提供されており、異なるバンドル径や環境暴露に対応します。両ファミリの主な違いはロック機構にあります。
Pan-Tyケーブルタイは、多くの設置作業者に馴染みのある一体型プラスチックロックヘッドを使用しています。その1例がPLT2I-Mです(図3)。屋内用に設計されたPLT2I-Mは、ナイロン6.6製で、先端がカーブしているため、取り扱いが簡単で素早く取り付けられます。最大2.0インチまでのバンドル径に対応し、コンパクトでスペースに制約のある制御パネルレイアウトに適しています。
図3:PLT2I-Mは、一体型プラスチックロックヘッドを採用しています。(画像提供:Panduit)
より高い強度を必要とするアプリケーションには、Dome-Topケーブルタイが利用可能です。BT4S-M0(図4)を含むこれらのタイは、無限の調整性と優れた保持強度を提供するステンレス鋼のロッキングバーブを備えています。BT4S-M0は、UV耐性と耐候性に優れた黒色ナイロン6.6製で、屋外環境に適しています。最大4.0インチまでのバンドル径に対応し、ケーブルを保護し、設置作業者の快適性を向上させる滑らかで丸みを帯びたエッジを採用しています。
図4:BT4S-M0ケーブルタイは、ステンレス鋼のロッキングバーブを備えています。(画像提供:Panduit)
大型のタイの設置を効率化し、一貫した張力を確保するため、PanduitはGTH-Eケーブルタイガン(図5)を推奨しています。この製品は、タイを平坦に切断し、隣接するケーブル束を損傷する可能性のある鋭利なエッジを排除することで、設置品質を向上させます。また、作業者の疲労を最小限に抑え、作業時間を短縮する人間工学的な設計となっています。
図5:GTH-Eケーブルタイガンは、設置プロセスを効率化します。(画像提供:Panduit)
ケーブルタイマウントによるケーブル束の固定
ケーブルマウントは、ケーブルタイ用の確実なアンカーポイントを提供し、ケーブル束をしっかりと固定します。特に、ケーブルがダクトを出て最終接続ポイントまで配線する必要がある場合に便利で、レイアウトの整理や長期的な信頼性の維持に役立ちます。
適切なケーブルマウントを選択するには、パネル環境、予想される機械的ストレス、および設置の好みを評価する必要があります。粘着剤付きマウントは、穴あけが不可能なレトロフィットや、スペースに制約のある場所に最適です。一方、ネジマウントのオプションは耐荷重と耐振動性に優れています。
Panduitは、多様な機械的および環境的要件に対応する、さまざまなサイズ、素材、および固定方法のケーブルタイマウントを提供しています。代表的なオプションとしてABMM-A-Cがあります(図6)。ABSプラスチック製で、ケーブルタイの位置決めと設置を簡素化する4方向のエントリが特長です。このマウントは軽い荷重用に設計されており、取り付けにはゴム系粘着剤を使用しているため、穴あけや機械的な固定が実用的でない用途に適しています。
図6:ABMM-A-Cケーブルタイマウントは、柔軟な取り付けが可能な4つの開口部を備えています。(画像提供:Panduit)
より高い荷重要件や最大安定性が不可欠な領域では、設計者は、TM3S10-C(図7)など、機械式固定の製品を選択することができます。このマウントは#10(M5)ネジで固定され、耐久性に優れたナイロン6.6製のため、より厳しい環境にも適しています。
図7:TM3S10-Cケーブルタイマウントは、ネジで固定することができ、堅牢な設置を実現します。(画像提供:Panduit)
明確なラベリングによる安全性とコンプライアンスの問題への対応
制御パネルの安全な操作と効率的なメンテナンスを確保するためには、明確で耐久性のあるラベリングが不可欠です。ワイヤとコンポーネントを適切に識別することで、エラーのリスクを低減し、業界標準への準拠をサポートし、メンテナンス時のトラブルシューティングを迅速化することができます。
多くの業界において、明確なラベリングはベストプラクティスであるだけでなく、規制上の要件でもあります。NFPA 79などの規格では、事故を防止し、安全な操作を確保するために、制御回路の適切な識別が義務付けられており、耐久性があり、読みやすいラベルの必要性が強調されています。
Panduitは、制御パネル環境特有の課題に対応するために特別に設計されたさまざまなラベリングソリューションを提供しています。R100X150V1Tを含むTurn-Tellラベリングシステム(図8)は、汎用性の高いオプションの1つです。これらのラベルは、ワイヤやケーブルの周りを回転するように設計されており、密集したレイアウトやスペースに制約のあるレイアウトでも、最適な視認性を得るために位置を変更することができます。また、セルフラミネート設計で耐久性を向上させており、印刷情報を摩耗や湿気、その他の環境要因から保護します。
図8:Turn-Tellラベルはケーブルの周りを回転可能で、視認性の向上を実現しています。(画像提供:Panduit)
固定位置ラベルが望ましい用途には、S100X150VATY(図9)熱転写ラベルが信頼できるオプションとなります。このラベルはセルフラミネート設計で、印刷可能な白色領域と、ケーブルに巻き付けて印刷領域を密封・保護する透明なテールを備えています。サイズ1.0 x 1.5インチのS100X150VATYは、中径のワイヤやケーブルに適しています。そのビニール素材は、油、水、穏やかな溶剤に強い耐性を持ち、過酷な産業環境においても、重要な識別情報が長期間読みやすい状態を保つことを保証します。
図9:S100X150VATY熱転写ラベルは、過酷な条件にも耐える耐久性に優れたビニール製です。(画像提供:Panduit)
ラベルの作成と設置を効率化するため、Panduitは、包括的な熱転写印刷ソリューションであるTDP43ME-KITを提供しています(図10)。このキットには、TDP43MEプリンタ、Panduit Easy-Mark Plusラベリングソフトウェア、黒色ハイブリッドリボン(RMEH4BL)、ロールスタンド、保護ケース、S100X150VATYラベルのスターターロールなどの必須アクセサリが含まれています。このシステムにより、技術者は高品質で耐久性のあるラベルをオンデマンドで作成することができ、設備全体の一貫性と正確性が保証されます。
図10:Panduit TDP43MEプリンタキットは、ソフトウェア、リボン、アクセサリを含む完全なラベリングソリューションを提供します。(画像提供:Panduit)
まとめ
ユーザー中心の設計は、現代の制御パネルの安全性とメンテナンス性において重要な役割を果たします。視認性の高いラベリング、汎用性の高い配線ダクト、確実なケーブルタイとマウント、人間工学に基づいた設置ツールを含むPanduitの統合システムは、これらのニーズに直接対応します。これらのソリューションを導入することで、安全性と信頼性が向上するだけでなく、設置とメンテナンスも大幅に容易化・迅速化した制御パネルを実現できます。
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