HARTINGのモジュラー式コネクタによる製造イノベーションの推進

製造技術者は、モータコントローラの故障で生産ラインが停止するにもかかわらず、そのアクセスに何十本もの配線接続を分解する必要があるという苛立ちを実感しています。本来数分で済む作業が数時間にも及ぶことがあります。技術者はケーブルの束から回路をたどり、何百本もある似たような配線の中から正しい配線を特定できることを願います。この状況は、産業環境における電気接続の課題を浮き彫りにしています。ハードワイヤードシステムは、当初はコスト効率が優れているように見えますが、装置のライフサイクルを通じて蓄積される隠れた非効率性を生み出す可能性があり、その問題はハードワイヤード接続の固い性質にあります。幸いなことに、モジュラー式コネクタソリューション（図1）があり、産業用グレードの信頼性を維持しながら、変化する要件に適応することが可能です。

図1：Han-Modular®コネクタシステム。（画像提供：HARTING）

標準化された産業用接続技術の起源

1945年、Wilhelm HARTING氏の先見の明は、戦後の産業成長には既存の設計とは根本的に異なる接続ソリューションが必要であることを認識していました。ドイツのミンデンで小規模な修理事業から始まったHARTING社は、後にヘビーデューティコネクタ（HDC）として知られる製品を開発し、今日の産業用接続設計に影響を与え続ける原則を確立しました。

画期的な進歩は、当初、軍事および航空宇宙分野で主流だった丸型設計とは対照的な、長方形のコネクタを開発したことにありました。長方形構造は、産業用制御パネルにおいて優れた空間利用率を実現し、標準化された設置面積内で高密度な接点を達成しました。1960年代の産業ブーム以前に登場したHanコネクタシリーズは、標準化された堅牢な接続が、過酷な工場環境に耐えつつ複数のメディアタイプに対応できることを実証しました。

この歴史的な基盤が重要なのは、Han-Modular技術が実証済みの原理を直接基盤としているためです。基本概念を刷新するのではなく、実績ある設計と最新の材料、製造技術、統合能力を融合させています。

モジュラー式接続システム設計の分解

HARTINGのHan-Modular技術は、ビルディングブロック方式を採用しています。技術者が特定のメディア（電源、信号、データ、圧縮空気など）の要件に基づいて個々のモジュールを選択し、特定の環境向けに設計された保護ハウジング内でこれらの要素を組み合わせることができます。

Han-Modularモジュールは、コネクタアセンブリ内で特定のメディアタイプに対応します。たとえば、ヘビーデューティアプリケーション向けの16～200Aの電流に対応する電源モジュール、低電圧制御回路をサポートする信号モジュール、Ethernet、フィールドバス、または光ファイバ接続用の通信モジュールなどです。技術者は、これらの異なるモジュールタイプを同じアセンブリフレームワーク内で組み合わせることができるため、メディアごとに個別のコネクタを用意する必要がありません。保護ハウジングは、モジュールの組み合わせに対して機械的サポートと環境密閉を提供し、小型のHan 6B構成から、ヘビーデューティ/マルチメディア要件に適したHan 48B（図2）まで、標準化されたエンクロージャが用意されています。

図2：Han 48Bバルクヘッド取り付けハウジングの例。（画像提供：HARTING）

環境保護には、アプリケーションの厳しさに基づいて段階的に設計された密閉型構造を採用しています。基本的なIP65定格は、ほとんどの製造施設で、一般的な粉塵の侵入や水の浸入から保護します。一方、食品加工や医薬品製造に必要とされる高圧洗浄手順に耐えるHan-Modularコネクタの強化されたIP69K仕様もあります。

Han-Modularコネクタは、接続不良を無くすための複数のセキュリティ機能を組み込んでいます。メカニカルキーイングシステムは形状が異なるガイドエレメントを利用し、正しく一致したオスとメスのコネクタの半身のみが接続できる仕組みになっています。この物理的設計により、技術者が互換性のないコネクタを接続する（ハードワイヤード接続で頻発する誤配線）ことを防ぐことができます。時間の経過とともに不明瞭になる可能性のある配線ラベルや回路図に頼るのではなく、キーイングシステムにより、誤った接続を物理的に不可能にします。

HARTINGとDigiKeyの提携：Han Configurator

コネクタ仕様は、エンジニアリングワークフローに課題をもたらします。技術者は、複数のデータシートにまたがる部品仕様を手作業で照合し、環境定格を確認し、各コネクタタイプの互換性要件を検証しなければなりません。これは時間を要するプロセスであり、選択ミスを招くと同時にプロジェクトのスケジュールに影響を与えます。

DigiKeyとHARTINGの提携は、検証と部品選定を自動化する統合設計ツールにより、これらの問題を解決します。Han Configurator®では、技術者がシステム要件（メディアタイプ、定格電流、環境仕様など）を入力すると、部品の互換性と在庫状況に関するフィードバックをリアルタイムで得ることができます。コンフィギュレータは、ルールベースの選択ロジックを採用しており、互換性のない組み合わせを防止し、選択内容に矛盾が生じた場合には代替案を提案します。また、構成されたアセンブリを複数の角度から表示できるため、技術者は購入前に機械的な適合性やケーブル配線の要件を確認することができます。

さらにHan Configuratorは、現在の価格と在庫状況を含む部品表などの完全なドキュメントも作成します。DigiKeyの調達システムとの直接連携により、手作業による部品リストの作成や発注作業の手間を省くことができます。技術者は、ポスト比較ツールを活用し、モジュール式とハードワイヤリングの代替案を評価したり、複数業界にまたがる共通アプリケーションの出発点として事前設定済みライブラリを利用できます。

製造チームにとっての実用的な利点

HARTINGのHan-Modularコネクタは、ハードワイヤリング方式と比較して、取り付け時間の改善が実感できます。組み立て済みコネクタセットにより、現場での個々のワイヤ終端処理という時間のかかるプロセスが不要になり、メカニカルキーイングシステムにより、配線設置で頻発する接続不良が回避されます。小型Han 6B（図3）から複雑なアプリケーション向けのHan 48Bアセンブリまで、標準化されたハウジング設計により、さまざまなシステム要件にわたって一貫した取り付けが可能になります。

図3：Han 6Bバルクヘッド取り付けハウジングの例。（画像提供：HARTING）

モジュラー式設計により、複雑な回路トレースや再配線作業を、簡単なコネクタの脱着に置き換えることで、メンテナンス手順を簡素化します。部品の交換が必要な場合や、技術者がトラブルシューティングを行う必要がある場合、問題を用意に特定し、切り分けることができます。また、レバー作動式ロック機構により、メンテナンス作業員は専門的な工具を使用せずに迅速に作業を行うことができます。

もう一つの重要な利点は、管理された条件下でコネクタアセンブリ全体を試験できることです。これにより、現場で終端接続による信頼性の問題を引き起こすあらゆる不確実な要因を取り除くことができます。製造施設では、現場での取り付け時には不可能な方法で、導体の準備品質、コンタクト挿入力、密閉の完全性を管理することができます。また、環境試験により、納入前にアセンブリが規定のIP65またはIP69Kの定格を満たしていることも保証されます。

全体として、モジュラー設計では変更がはるかに容易です。標準インターフェースにより、技術者は個々のモジュールを交換するだけで、電力処理能力のアップグレード、通信チャンネルの増設、さらには新しい部品の統合さえ可能になります。

重要な製造部門における検証

自動車アセンブリライン（図4）は、接続において最も要求の厳しいアプリケーションの1つです。たとえば、ロボット溶接セルでは、大電流の溶接電力（通常600Aを超える）、ロボットの位置決め用のサーボ制御信号、リアルタイム動作調整用の高速Ethernet通信を同時に伝送する必要があります。これは接続障害が生産ライン全体を停止させる可能性があることを意味し、信頼性が不可欠です。Han-Modularコネクタは、ロボットの動きによる継続的な機械的ストレスに耐え、過酷な環境条件下でも電気的完全性と長期的な信頼性を維持するように設計されています。

図4：標準的な自動車アセンブリライン。（画像提供：Adobe Stock）

同様に、遠隔地に設置される発電設備は、極寒環境から灼熱環境に至るまで、極端な温度条件下でも確実に動作する必要がありますが、多くの場合、長期間にわたって最小限のメンテナンスしか行うことができません。これらのアプリケーションでは、単一アセンブリ内で高電流の主電源配電と高感度制御回路を同時に扱うことができるコネクタが必要です。発電施設に取り付けられたHan-Modularコネクタは、メンテナンスなしで何年も稼動し続け、最も過酷な条件下での設計手法を実証しています。

鉱山および建設機械は、極端な粉塵暴露、油圧作動油の汚染、機械的衝撃など、過酷な環境でも稼働しています。Han-Modularコネクタは、従来の接続ソリューションが急速に劣化してしまう条件下でも、密閉保護と電気的導通を維持することができます。これは、ほとんどの産業仕様を上回る性能です。

化学プラントは、おそらく最も厳しい検証環境であり、コネクタは防爆要件を満たしながら化学物質への暴露に耐えなければなりません。Han-Modular設計により、危険区域への導入前に、管理された実験室条件下でのアセンブリ試験が可能となり、生産停止を超えた安全上の懸念につながる可能性のある故障を防止します。

まとめ

モジュラー式接続技術は、技術者がシステム設計に取り組む方法を根本的に変えました。個々の部品を最適化するのではなく、要求事項と将来の技術革新の両方を支える堅牢な接続インフラの設計に重点を置いています。長期的なシステム性能の最適化を目指す技術者にとって、モジュラー式接続技術は、技術変更管理に不可欠な適応性を提供し、幅広い産業用アプリケーションにおいて高い運用信頼性を維持します。技術上の決定では、接続技術を将来のシステム変更を可能にするかあるいは制約するかのインフラとして評価すべきです。