ディスプレイの輝度を低電力でリアルタイムに最適化する方法

著者 Bonnie Baker(ボニー・ベイカー)氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

液晶ディスプレイ(LCD)は、サーモスタット、医療用ハンドヘルド端末、自動車のメータクラスタ、タブレット、ノートブックコンピュータなど、あらゆる用途に使われています。これらの用途では、設計者はディスプレイを眼に負担をかけないできる限り見やすいものにする方法も見つけ出しつつ、同時にできるだけ消費電力を抑える必要があります。

これらの要件に対応するために、最初に周囲光センサ(ALS)で周囲光の輝度を検知してディスプレイ輝度を決定することができます。ALSはディスプレイ画面の背後に取り付ける必要があります。取り付けたら、周囲光レベルを使用して、消費電力も最小化する許容可能なディスプレイ輝度を決定します。

この記事では、3つのALS技術の機能を評価し、エネルギーを節約し、適切な量の画面輝度を実現するLDC画面の強度と電力の調整に関する課題を解決します。

視覚周波数帯の正確な測定

LCD照明の最適化の最初のステップは、ALSを使って周囲光を正確に検知することです。人間が可視できる光波長範囲はおよそ400ナノメーター(nm)~750nmです(図1)。ソリッドステートデバイスであるフォトダイオードは、この用途において最も論理的な周囲光条件検知デバイスです。フォトダイオードは光を電流に変換します。

可視光が電磁スペクトルのほんの一部であることを示す図

図1:電磁スペクトラムのほんの一部(400nm~750nm)の可視光。(画像提供:ECN)

シリコン製のフォトダイオードの光感度範囲(およそ300nm~1100nm)は人間の視覚範囲と一致しませんが、有効なオーバーラップ領域があります(図2)。

シリコン製フォトダイオードのスペクトル反応と人間の目のスペクトル反応を比較したグラフ

図2:有効なオーバーラップ領域を示すシリコン製フォトダイオードのスペクトル反応と人間の目のスペクトル反応の比較。(画像提供:Texas Instruments

この設計の1つ目の課題は、フォトダイオードの信号から人間の目のスペクトル範囲を捉えることです。

人間のスペクトル反応への変換

人は、すべてのマシンと機器が可視要件に対応していることを期待しています。ALSはデバイスのディスプレイの照度を測定します。光学フィルタリングを行わないと、この測定に可視光に加え、紫外線(UV)とIRが含まれてしまいます。UVとIRの信号が合わさると、周囲の可視光が明るく見えます。その結果、ディスプレイのバックライトコントローラ出力によって、明所視、または人間の周囲光条件下のディスプレイに対する反応が不快なものになります。

正確なマッピングを行うには、設計者がフォトダイオード、光学フィルタ、アンプ、コンバータを使って周囲光を変更する必要があります。この作業は、これらの要素を1つのALSデバイスに統合することで簡単に行えるようになりました。ALSの目標は、センサの出力からIRおよびUV要素を除去し、人間の目のスペクトル反応を提供すると同時に、全体的なLCD輝度を快適なレベルに維持することです(図3)。

入力周囲信号を人間の目のスペクトル反応にマッピングするTexas Instruments OPT3001 ALSの図

図3:光学フィルタリングと他の内部要素および計算によって入力周囲信号を人間の目のスペクトル反応に変換できるOPT3001 ALS。(画像提供:Texas Instruments)

これらの改良された半導体特性によって新しい用途に対応できるようになり、デバイスには個々の赤、緑、青(RGB)のカラーセンシングを可能にするカラーフィルタが含まれるようになりました。

特化したUVおよびIR光学フィルタ

赤、緑、青およびクリア光学フィルタ(クリアフィルタはフォトダイオードにフィルタリングされていない光を入力)を利用することで、ALSデバイスは4つの異なるフォトダイオードで4つの光スペクトルを検知します。4つのフィルタリングされたフォトダイオード信号を使って、ALSは3つのプライマリカラー(RGB)、周囲反応を表す4番目、赤外線をブロックする5番目(IRCUT)のデジタルの戻り信号を生成します。高感度、広いダイナミックレンジ、および5つのフィルタを備えるALSは、さまざまな照明条件下での使用に最適なカラーセンサソリューションです。

ROHM Semiconductorams、Texas Instruments、ON Semiconductor、 OSRAM Opto Semiconductors, Inc、 Vishay Semiconductor/Opto DivisionなどさまざまなベンダがALSソリューションを製造しています。ROHM Semiconductor、ams、およびTexas Instruments ALSデバイスを評価していきます。

IRCUTフィルタを使用するROHM SemiconductorのALSデバイス

ROHM SemiconductorのBH1745NUC-E2のデジタル16ビット出力タイプカラーセンサICの対象となる用途は、テレビ、携帯電話、タブレットPCのLCDバックライトを調整するALSです。

BH1745NUC-E2は、クリアフィルタを使ってUVおよびIR光を検知し、赤、緑、青より前にIRCUTフィルタを使用します(図4)。

ROHM BH1745NUC-E2のデジタル16ビットシリアル出力タイプカラーセンサICの図

図4:IRCUTフィルタ外にクリアフィルタを備えるROHM BH1745NUC-E2のデジタル16ビットシリアル出力タイプカラーセンサIC。(画像提供:ROHM)

BH1745NUC-E2では、IRCUTフィルタが赤、緑、青の光学フィルタの前に実行されて、人間のスペクトル反応がアナログ〜デジタルコンバータ(ADC)にパススルーされます。IRCUTフィルタでは可視光は渡されますが、赤外線はブロックされます。クリアフィルタは、人間から見て現実的な、自然でしかも電力消費の低い調光アルゴリズムを生成するのに役立ちます。各16ビットADCのゲインは、視覚体験に対する最も正確なマッピングを生成するよう事前にプログラミングされています。

ROHM BH1745NUC-E2の赤、緑、青、クリア(RGBC) スペクトル反応の図

図5:BH1745NUC-E2の赤、緑、青、クリア(RGBC) スペクトル反応の図。(画像提供:ROHM)

BH1745NUC-E2の幅広いダイナミックレンジ(0.005~40kルクス)と優れたIRCUT特性により、周囲光の照度と色温度を適切に取得することができます。

amsのALS IRフィルタは他のすべてのフィルタに対して事前フィルタを実行

amsのTCS34727FNのIRフィルタ付きカラー光〜デジタルコンバータの対象用途は、テレビ、モバイルハンドセット、タブレット、コンピュータ、およびモニタです。現在のTCS34727FN ALS戦略では、5つの光学フィルタの異なる設定を使用しています。TCS34727FNのフィルタ設定では、最初に4つ(赤、緑、青、クリア)のすべてのカラーフィルタにIRブロッキングフィルタを使用します(図6)。

amsのTCS34727FN 16ビットALSデバイスの図

図6:他の4つのフィルタをブロックしているIRフィルタスクリーンがあるTCS34727FN 16ビットALSデバイス。(画像提供:ams)

TCS34727FNデバイスには4つの統合ADCがあり、これらは増幅されたフォトダイオード電流を16ビットのデジタル値に同時に変換します。IRブロッキングフィルタは入射光の赤外線スペクトル要素を最小化し、これにより正確なカラー測定を可能にしています。高感度、広いダイナミックレンジ、およびIRブロッキングィルタを備えたALSは、さまざまな照明条件下での使用に最適なカラーセンサソリューションです(図7)。

amsのTCS34727FN RGBCスペクトル反応の図

図7:各光フィルタの特性と各ADCのゲインを示すTCS34727FN RGBCスペクトル反応。(画像提供:ams)

TCS34727FNの用途は、携帯電話、ノートブック、TVなどのディスプレイベースの製品内で照明環境を検知することです。このデバイスは、最適な表示と節電のための自動ディスプレイ輝度を効果的に可能にします。TCS3472は、光検知測定の合間に低電力待機状態にして、平均消費電力をさらに削減することができます。

IR光の99%を除去するTexas InstrumentsのALS

Texas InstrumentsのOPT3001DNPT ALSの対象用途は、ディスプレイバックライト制御、照明制御システム、タブレットやノートブックコンピュータです。このデバイスは、人間の目の反応に厳密に適合するセンサスペクトル反応で可視光の強度を測定します(図8)。これを実現するために、検知した光を統合ADCに渡す前に赤外線を99%除去するフロントエンドの光学フィルタを備えています。

Texas InstrumentsのOPT3001システムブロック図

図8:検知した信号を統合ADCに渡す前にIRを99%除去する機能を備えた光学フィルタを示すTexas InstrumentsのOPT3001のシステムブロック図。(画像提供:Texas Instruments)

ADCでは、自動ゲイン調節により、23ビットの実効ダイナミックレンジを実現します。この単一チップのルクスメータは赤外線信号を除去すると同時に、可視光の強度も測定します。光源に関係なく、OPT3001の精密なスペクトル反応と強力なIR除去により、デバイスは人間の目に見えるとおり正確に光の強度を測定します。

強力なIR除去は、産業設計が美的感覚のためにセンサを暗いガラスで覆って実装することを必要とする場合に、高精度を維持するのに役立ちます。

バックライトディスプレイでは、光入力と光源が異なると光の測定値が変わるという興味深い問題が発生することがあります。たとえば、暗いガラスは赤外線信号を通します。白色光には赤外線波長が多く含まれており、ガラスの透過性率により、センサに達します。IR除去率99%のOPT3001は、可視領域内にあるもののみ測定し、人間の目の反応を4つの集合体のADC反応にマッピングします(図9)。

可視光スペクトルをキャプチャするTexas InstrumentsのOPT3001の図

図9:可視光スペクトルに加え人間の目の反応(左) をキャプチャし、人間の目の反応を4つの集合体のADC反応(右)にマッピングするOPT3001。(画像提供:Texas Instruments)

人間の目の反応を実現するために、OPT3001には入力光レベルに自動で反応する自動ゲイン設定機能があります。デバイスは、適切な分解能と範囲間の厳密な精度で最適な範囲を維持します。ゲイン範囲間の相対精度は0.2%です。

結論

ALSは、最小の消費電力で見やすいLCDディスプレイをユーザーに提供する可視光の強度を測定するために使用できます。各メーカーの目標は、大幅な赤外線除去を含め、これらのセンサのスペクトル反応を人間の目の反応に厳密に一致させると同時に、光源または用途に関係なく最小の電力を維持することです。

しかし、この記事で取り上げた各ALSは、光学フィルタリングのスタイル、ビジュアルカラーアンプ、およびADC分解能および満足度の度合いがそれぞれ異なるため、これは主観的な判断となります。そのため、ALSデバイスの効果は、1人の人があるソリューションの外観やサウンドを受け入れても、2人目はそれを完全に拒絶する可能性があるオーディオ業界の課題と似ています。このため、LCD設計の創造性と差別化において設計者にはある程度の自由が与えられています。

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著者について

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Bonnie Baker(ボニー・ベイカー)氏

Bonnie Baker氏は、アナログ、ミックスドシグナル、シグナルチェーンの経験豊富な専門家であり、電子技術者です。Baker氏は、業界の出版物で技術記事、EDNコラム、製品特集など、数百本の署名記事や著書を執筆してきました。『A Baker's Dozen: Real Analog Solutions for Digital Designers』(ベイカーの12の教え:デジタル設計者のためのリアルアナログソリューション)を執筆し、他にも数冊の書籍を共著する傍ら、Burr-Brown、Microchip Technology、Texas Instruments、Maxim Integratedで設計者、モデリングエンジニア、戦略マーケティングエンジニアとして働いてきました。Baker氏は、アリゾナ大学ツーソン校で電気工学の修士号を取得し、北アリゾナ大学(アリゾナ州フラッグスタッフ在)で音楽教育の学士号を取得しています。彼女はまた、ADC、DAC、オペアンプ、計装アンプ、SPICE、IBISモデリングなど、様々なエンジニアリングトピックに関するオンラインコースの企画・執筆・発表に携わってきました。

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