グリーン水素のための効率的で安定した直流電流を確保する方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2024-07-30
グリーン水素へのシフトは、温室効果ガスの削減を約束します。水力発電、風力発電、太陽光発電のような再生可能エネルギー源からのエネルギーは、地域で発電されたものであれ、送電網を通じて送電されたものであれ、水を電気分解するために効率的に直流(DC)に変換されなければなりません。システム設計者にとって、高調波歪みが少なく、電流密度が高く、良好な力率(PF)を持つ、高くて安定したDCレベルを提供することが課題です。
この記事では、グリーン水素の原理について説明します。次に、Infineon Technologiesのパワーコンポーネントを紹介し、環境に優しいエネルギー源からの入力を、グリーン水素の生成に必要な特性を持つ安定した電力出力に変換するために、どのように使用できるかを示します。
水の電気分解による水素発生
水素は電気分解の過程で水から分離することができます。このプロセスの副産物は酸素です。電気分解プロセスには、安定した高レベルの直流を印加する必要があります。このプロセスは、通常、陽極(プラス電極)と陰極(マイナス電極)を含む電気分解セルまたは電解槽で行われ、そこで電気化学反応が起こります。液体または固体の電解質が電極を囲み、電極間でイオンを伝導します。使用するプロセスによっては、反応速度を上げるために触媒が必要になることもあります。セルには、安定した高レベルの直流源または電源から供給されます(図1)。
図1:水を水素と酸素に分離する基本的な電気分解セル。(画像提供:Art Pini氏)
このセルには、電極で生成された水素と酸素が混ざらないようにするためのセパレータ(この図には示されていない)も含まれています。
このプロセスには高レベルの直流が必要です。エネルギー損失がない理想的な条件下では、1キログラム(kg)の水素を生成するのに十分な水分子を電気分解するために、最低32.9キロワット時(kWh)の電気エネルギーが必要です。これは、使用される電解プロセスの効率によって異なります。
現在、アルカリ電解(AEL)、プロトン交換膜(PEM)、固体酸化物電解の3つの異なるプロセスが使用されています。
最も確立された電解槽はAEL電解槽で、金属電極間に水酸化カリウムなどのアルカリ溶液を使用します。他のタイプの電解槽に比べると効率は低いです。
PEM電解槽は、貴金属触媒で強化された固体ポリマー電解質を使用します。より高い効率、より速い応答時間、コンパクトな設計が特徴です。
固体酸化物電解槽セル(SOEC)は、電解質として固体のセラミック材料を使用します。高効率ですが、高い動作温度を必要とします。応答時間はPEM電解槽よりも遅くなります。
3つの手法の特性の比較を図2に示します。
図2:AEL、PEM、SOECプロセスの特性を比較すると、新しい電解槽の効率が向上していることがわかります。(画像提供:Infineon Technologies)
現在、グリーン水素の製造コストは、化石燃料からの水素よりも高くなります。これは、電解槽や電力システムなどの個別コンポーネントの効率を改善し、変換プラントをスケールアップすることで逆転できます。
グリッド電源およびグリーン電源の電力系統構成
現在、ほとんどの水素生成プラントは電力網から切り離されて稼働しています。電解槽の電源は、変圧器から供給される交流から直流への整流器です。グリッドから電力を供給される電解プラントは、ユニティPFを達成し、低高調波歪みの維持など、すべてのグリッド規格やコードを満たさなければなりません。グリーン電源が水素分離プロセスに組み込まれるにつれて、さまざまな電源システムが必要になります(図3)。
図3:電解プラントは、電源からの電力を電解セル用の直流に変換しなければなりません。(画像提供:Infineon Technologies)
パワーグリッドと同様、風力ベースの電源は交流であり、そこから電解セルに電力を供給するには、交流を直流に変換する整流器が必要です。太陽エネルギーとバッテリーを使ったハイブリッド電源は、電解セルを駆動する直流レベルを制御するためにDC/DCコンバータを利用しています。電解槽は、電源に関係なく、ローカルDC/DCコンバータを用いることもできます。電解槽は一定の直流負荷になります。電解槽セル内の経年劣化を考慮すると、セルの寿命が延びるにつれて印加電圧は上昇する必要があるため、電力変換システム(PCS)はそのプロセスに対応できなければなりません。PCSは、AC電源とDC電源のどちらに接続されていても、いくつかの共通仕様があります。
その出力電圧は400VDCから1,500VDCの範囲でなければなりません。アルカリ電池の最大電圧範囲は約800Vです。PEMセルはそれほど制限されておらず、損失を減らしてコストを削減するために、電圧範囲は、上限の方向に向かっています。出力電力は20キロワット(kW)から30メガワット(MW)の範囲で可能です。PCSからの電流リップルは5%以下でなければなりませんが、この仕様はセルの寿命と効率への影響についてまだ研究中です。パワーグリッド電源用のPCS整流器の設計、特に高出力負荷用は、電力会社の大負荷およびPF要件に準拠する必要があります。
AC電源の電力変換
交流電源の水素プラントには、電解セルを直接駆動する整流器、あるいは複数のセルに接続されたDCグリッドを駆動する整流器が必要です。
マルチパルス整流器が一般的に選択されます(図4)。サイリスタベースのこの整流器設計は、高効率で信頼性が高く、高電流密度をサポートし、低コストの半導体を使用します。
図4:サイリスタに基づくマルチパルス整流器は、高効率で信頼性が高く、高電流密度をサポートし、低コストの半導体を使用します。表示されているのは、12パルスのものです。(画像提供:Infineon Technologies)
マルチパルスのサイリスタベースコンバータは、確立され、そしてよく知られた技術です。図4に示す12パルスサイリスタ整流器は、2 つの低電圧2次巻線を持つワイ-デルタ-ワイ電源周波数変圧器で構成されています。二次巻線は、出力が並列に接続された2つの6パルスサイリスタ整流器を駆動します。この整流器が電解槽を直接駆動する場合、サイリスタの点弧角が出力電圧とそこに流れる電流を制御します。点弧角は、電解槽のセルが古くなり、セルスタックに必要な電圧が上昇しても、システム内の電流を維持するために使用することもできます。変圧器には、負荷時タップ切換器(OLTC)も備わっています。OLTCは、整流器に供給される電圧を上下させるために、巻線の1つにある複数のアクセスポイントまたはタップを切り替えることによって、変圧器の巻数比を変更します。
Infineon Technologiesは、PCS設計者に幅広い半導体部品の選択肢を提供しています。サイリスタ整流器は、このようなAC電源アプリケーションによく使用されます。たとえば、T3800N18TOFVTXPSA1は、シャーシ実装TO-200AEディスクパッケージのディスクリートサイリスタで、定格電圧1800V、二乗平均平方根(Arms)5970アンペアのオン状態電流に対応します。ディスクパッケージは、両面冷却設計により電力密度が向上しています。
基本的な整流器の設計は、整流器出力に整流後のチョッパーとして降圧コンバータを追加することで改善できます。チョッパー段を追加すると、サイリスタの点弧角ではなくチョッパーのデューティサイクルを調整すること で、プロセスの制御が強化されます(図5)。これにより、サイリスタに必要なダイナミックレンジが小さくなり、プロセスの最適化が可能になります。
図5:整流後のチョッパーは電流歪みを低減し、PFを改善します。(画像提供:Infineon Technologies)
絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)を使用した整流後チョッパーを適用することで、OLTCトランスが不要になり、電流歪みが減少し、PFが改善されます。
Infineon TechnologieのFD450R12KE4PHOSA1は、このようなアプリケーション向けのIGBTチョッパーモジュールです。最大電圧1200V、最大コレクタ電流450Aの定格を持ち、標準62ミリメートル(mm)のCシリーズ モジュールに搭載されています。
より高度な整流回路には、IGBTベースのアクティブ整流器があります。アクティブ整流器は、ダイオードやサイリスタをIGBTに置き換え、ゲートドライバを介してコントローラが適切なタイミングでオンまたはオフします(図6)。
図6:アクティブ整流器は、整流回路のダイオードまたはサイリスタをIGBTに置き換え、ゲートドライバコントローラでスイッチングします。(画像提供:Infineon Technologies)
非正弦波ライン電流を生成する従来の整流器とは異なり、アクティブ整流器はIGBTと直列にインダクタを持ち、ライン電流を正弦波に保ち、高調波を低減します。IGBTの導通時のインピーダンスは非常に低いため、標準的な整流器と比べて導通損失が減少し、効率が向上します。アクティブ整流器コントローラはユニティPFを維持するので、外部力率補正(PFC)デバイスは不要です。また、より高いスイッチング周波数で動作するため、受動部品やフィルタを小型化できます。
FF1700XTR17IE5DBPSA1は、ハーフブリッジ構成のデュアルIGBTをPrimePACK 3+モジュールパッケージに搭載しています。定格電圧は1700V、最大コレクタ電流は1700Aです。図6に示す回路では、このようなモジュールを3つ使用することになります。
1ED3124MU12HXUMA1のようなIGBTゲートドライバは、単一のIGBTペアをオンまたはオフします。ゲートドライバは、コアレストランス技術の使用によりガルバニック絶縁されています。定格電圧600から2300VのIGBTと互換性があり、ソースピンとシンクピンを分離することで、標準出力電流は14Aになります。入力ロジックピンは、CMOSの閾値レベルを使用して3から15Vの広い入力電圧範囲で動作し、3.3Vマイクロコントローラをサポートします。
DC電源の電力変換
太陽光発電やバッテリベースのハイブリッドシステムなどの直流電源を使って水素を分離するには、DC/DCコンバータが必要です。先に述べたように、これらのコンバータはダイオードまたはサイリスタ整流器の性能を向上させることができます。また、プラントの柔軟性を高めるために、地域のDCグリッドを最適化することもできます。
インターリーブ型降圧コンバータは、ハーフブリッジチョッパーモジュールを並列に使用し、入力から出力へDCレベルを変化させます(図7)。
図7:インターリーブ型降圧コンバータは、入力DCレベルVDC1を出力レベルVDC2に下げます。(画像提供:Infineon Technologies)
適切なインターリーブ制御により、このDC/DCコンバータトポロジは、インダクタのサイズやスイッチング周波数を増加させることなく、DCリップルを大幅に低減します。実装の各段階は、適切なモジュールで実現できます。FF800R12KE7HPSA1は、降圧トポロジのDC/DCコンバータに適したハーフブリッジIGBT 62mmモジュールです。定格電圧は1200V、最大コレクタ電流は800Aです。
デュアルアクティブブリッジ(DAB)コンバータは、降圧コンバータに代わるものです(図8)。
図8:DABコンバータは電圧の降圧を行い、入力と出力をガルバニック絶縁します。(画像提供:Infineon Technologies)
DABコンバータは、高周波トランスを使用して入力と出力のフルブリッジ回路を結合し、ガルバニック絶縁を実現しています。このような絶縁は、電解槽のタンクや電極の腐食を最小限に抑えるのに役立つことが多いです。同一のフルブリッジ回路を相補的な矩形波で駆動します。一次側と二次側の間の駆動信号の位相は、電力の流れの方向を決定します。さらに、DABコンバータは、IGBTのゼロボルトスイッチングを使用することで、スイッチング損失を最小限に抑えています。この回路は、ハーフブリッジIGBTまたはSIC(シリコンカーバイド)MOSFETモジュールで製作できます。
まとめ
クリーンなエネルギー源に対する世界的な需要が増加し続ける中、再生可能エネルギー源をベースとしたグリーン水素分離の重要性は高まるでしょう。このような電源は、効率的で信頼性が高く、安定性の高い直流電源を必要とします。設計者は、必要な電力変換コンポーネントのために、Infineon Technologiesの幅広い高電圧および高電流半導体製品ラインアップを利用することができます。
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