マルチカラーLEDの駆動方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2019-03-12
発光ダイオード(LED)の使用は、ステータス情報を示すための簡単でコスト効率の良い方法です。しかしプロジェクトによっては、単色LEDでは十分でなく、しかも複数のLEDを使うことは空間、予算、電力の制約により実用的でない場合があります。このような状況では、マイクロコントローラに適切にインターフェースするという条件の下で、マルチカラーLEDが効果的なソリューションになります。
この記事では、LEDの基本について説明し、マルチカラーLEDの利点について解説した後に、適切なマルチカラーLEDのソリューションをご紹介します。さらに、最大1,600万色を生成できるようにするため、LEDをマイクロコントローラにインターフェースする方法を示します。
ダイオードとしてのLEDの取り扱い
LEDを使用した回路設計では、重要な点として、LEDが白熱電球ではなく、発光するダイオードという半導体デバイスであることを踏まえる必要があります。通常の場合ダイオードとしては、電流がほぼ一方向のみに流れることを許容します(ダイオードは理想的ではないので、逆方向バイアスをかけるとごく微量の電流フローを示します)。
一般的なLEDの発光部分はアセンブリ中央にあり、1つのp-n接合で構成されたシンプルな半導体ダイオードです(図1)。電流が、p型シリコンに接続されているLEDのアノードから、n型シリコンに接続されているLEDのカソードに流れます。一般的なダイオードであれば、通常はp-n接合にゲルマニウム(Ge)またはシリコン(Si)が使われます。ただしLEDの場合、接合には透明なガリウム砒素リン(GaAsP)またはリン化ガリウム(GaP)半導体素材が標準的に使われます。

図1: LEDアセンブリには半導体p-n接合ダイが格納されており、これにより電流がアノードからカソードに流れることができます。レンズ付きの透明なハウジングによって、その発光が外側から簡単にわかります。(画像提供:Wikipedia)
透明なGaAsPまたはGaPを使うことで、p-n接合にかかる順方向の電圧により半導体から光子が放出されます。p-n接合は反射型キャビティに取り付けられており、光子をLEDのレンズに向かって収斂します。LEDのレンズと本体は透明なエポキシ樹脂で構成されており、オプションで発光色に適合する色を付けることができます。
反射型キャビティはアンビルと呼ばれるリードフレームに据え付けられており、カソードはポストと呼ばれるリードフレームにボンドワイヤ接続されています。アンビルとポストは、エポキシ樹脂のLED本体との強固な接続を形成するような形状になっていて、アノードまたはカソードピンがエポキシ樹脂LED本体から引き出されてLEDが壊れることを防いでいます。
単色LED
LEDには、赤、緑、黄、琥珀、シアン、オレンジ、ピンク、紫、そして最近では白や青など、さまざまな色があります。単色LEDにある1つの半導体ダイは、目的の光の波長を生成する素材で構成されており、そのエポキシ樹脂LEDハウジングアセンブリは多くの場合同じ色です。レンズの色を発光色と同じにする必要はありませんが、LEDコンポーネントの色を容易に識別できるように、他のLEDと混同しないようにする必要があります。
マルチカラーLED
空間、コスト、電力に制約があるシステムによっては、複数の色を発光する1つのLEDを使用することによって利点が得られます。通常、そのようなマルチカラーLEDでは、透明エポキシ樹脂のハウジング内部に赤、緑、青(RGB)の3つのLEDが搭載されています。その代表的な例として、Adafruit Industriesの2739 RGB LEDがあります(図2)。このLEDはマルチカラーインジケータライト用に設計されていて、幅2.5mm x 高さ5mmの発光面を持つ角型レンズが使用されています。PC基板上にスルーホール実装するための4本のラジアルリード線が付いています。

図2: Adafruitの2739 RGB LEDには幅2.5mm x 高さ5mmの透明エポキシ樹脂の角型レンズがあります。PC基板へのスルーホール実装のために、ラジアルリード線4本が付いています。(画像提供: Adafruit Industries)
通常の場合、内部にある3つのLEDはいずれかを単独で使用するか相互に組み合わせることによって異なる色を生成することができます。
マルチカラーRGB LEDには一般に3つのピン配列方式があります。
- 全LEDに共通のアノード1つとLEDごとの個別のカソード、合計4本のピン。
- 全LEDに共通のカソード1つとLEDごとの個別のアノード、合計4本のピン。
- LEDごとの個別のアノードとカソードのピン配列、合計6本のピン。
マルチカラーLEDを使用した設計
Adafruitの2739 RGB LEDでは共通アノード1つと、赤、緑、青の各LED用のカソードが個別にピン配列されており、ピンは合計4本です(図3)。共通アノードは正の電源に接続され、赤、緑、青の各LEDはそれらをグランドに接続することでスイッチオンします。

図3: Adafruitの2739 RGB LEDには共通アノード1つと赤、緑、青の各LEDに個別のカソードがあります。(画像提供: Adafruit Industries)
多色の生成
アプリケーションで3つの状態の1つだけを表示する必要がある場合、2739 RGB LEDの最もシンプルな使用方法は、赤、緑、青から1つを選んで一度にそのLEDだけをオンにすることです。
さまざまな色を発光する場合、設計者は2つの色を単に組み合わせて、次の6色のオプションを実現できます。
- 赤
- 緑
- 青
- 黄(赤+緑)
- シアン(緑+青)
- マゼンタ(赤+青)
プロジェクトの関連文書で曖昧な表記をなくすためにも、表示する色は違いがはっきり分かり、認識しやすく、ことばでも判別しやすい必要があります。たとえば、全電流の緑色LEDをLEDデータシート上には「ライム」と記載するとしましょう。ほとんどの消費者や開発者は、点灯したLEDが何色かと問われれば、見た目は「緑」と判別することでしょう。色の実際の名前を問わず、異なる色は見た目でもラベルでも簡単に区別できるべきです。「緑色」と「ライム色」の違いは簡単に区別できるとは限りません。それらを並べた場合、ライム色は「緑」で緑色は「濃い緑」と判別されるかもしれません。
さらに複雑なアプリケーションでは、RGBの組み合わせの輝度を変えて最大1,600万色を生成できます。これを行う確実な方法としては、パルス幅変調(PWM)信号をそれぞれのLEDに適用します。その場合、デューティサイクルが輝度に該当します。人間の目は200ヘルツ(Hz)以下のフリッカを識別できるので、フリッカを避けるために1000Hz以上のPWM周波数を使用する必要があります。
色は、そのRGBカラーコードによって簡単に選択できます。これはRGB加色モデルに基づいており、赤、緑、青の光の輝度を個別に変えながら組み合わせることで、ほぼどのような色でも再現できます。このモデルが光源に応用され、TVやディスプレイの色再現のベースになっています。またウェブページ上での色の表現にも使われています。
RGBカラーコードは(R,G,B)のように簡略表記されます。ここでR、G、Bはそれぞれ赤、緑、青の輝度として10進値(範囲0~255)で示されます。たとえば、青の10進RGBカラーコードは(0,0,255)、紫は(128,0,128)、銀は(192,192,192)となります。色ごとのPWMデューティサイクルを決めるには、これらの値を255で除算します。たとえば青のディーティサイクル値は(0,0,100%)、紫は(50%,0,50%)、銀は(75%,75%,75%)となります。
理論上では、白色光は(255,255,255)で表され、赤、緑、青のLEDを同時にフル輝度でオンにすれば生成できます。しかし実際には、この方法で生成される色は、通常、水色がかった白になります。この薄い水色が生じるのは、生成されるLEDの色が完全な赤、緑、青の正確な波長と厳密には一致しないからです。
必要なPWM信号はマイクロコントローラによって簡単に生成できます。その最適な例として、Microchip TechnologyのATSAMC21J18Aマイクロコントローラがあります(図4)。これはIoTエンドポイント向けの低電力デバイスで、同社のSAM C21マイクロコントローラファミリの一部です。このマイクロコントローラは48MHzのArm® Cortex®-M0+コアを搭載し、I/O用に5Vをサポートします。

図4: ATSAMC21J18Aマイクロコントローラには、3つの同期PWM信号の自動生成機能を備えたタイマ/カウンタユニットがあります。(画像提供:Microchip Technology)
LEDを駆動するために、ATSAMC21J18Aには3つの同期PWM信号の自動生成機能を備えたタイマ/カウンタユニットがあります。SAM C21ファミリには高シンクオプションがあり、4つのI/Oピンそれぞれで最大20ミリアンペア(mA)のシンクが可能になります。
LEDを使用するときは、電流フローを制限するために正しい直列抵抗器を選択することが重要です。抵抗器の値が低すぎるとLEDを破壊する原因となり、抵抗器の値が高すぎると光が暗くなるか光らなくなります。直列抵抗器の値は、各LEDの順方向の電圧と目的の電流フローによって決まります。
LEDは、電流制御型の半導体です。また、素材の物理特性により、発光の波長が低下するとLEDの動作電圧が上昇する点に注意する必要があります。これは複数のLEDを使う場合の重要な考慮点です。
Adafruitの2739 RGB LED用の20mAの順方向電流の場合、同社のチャートに指定された順方向のLED標準電圧は赤が2V、緑と青の両方が3.2Vです。
共通アノードが5Vに接続されている場合は、LEDとI/Oピン間の抵抗値は次の式により求められます。
式1
式の要素の意味は次のとおりです。
VDD = 5V
VOL = ATSAMC21J18Aの出力低電圧 = 0.1 x VDD = 0.5V
VF = 順方向電圧(通常)
I = 順方向電流(単位:アンペア)
R = 抵抗値(単位:オーム(Ω))
この式をI = 20mAに適用すると、RRED (VF = 2V) = 125Ω、およびRGREEN = RBLUE (VF = 3.2V) = 65Ωとなります。
算出される抵抗値を標準的な抵抗器の値として使用できない場合は、次に低い値か、または次に高い値(望ましい)が選択できます。低い値を選ぶ場合は、そのLEDの最大順方向電圧、またはATSAMC21J18AのI/Oポートの最大電流シンク能力を超えないように注意する必要があります。LEDがまだ動作中にこれらの最大値を超えると、LEDの寿命を縮めるか、または時間の経過とともにI/Oポートが劣化するか破壊される可能性があります。オプションとして、アプリケーションで光をさらに暗くできる場合は、順方向の電流を低下させることができます。たとえば、15mAの順方向電流では、Adafruitの2739 RGB LEDの指定された順方向電圧は赤では1.9Vまで、緑と青では3.1Vまで下がります。これにより抵抗器の値はRRED = 173.3Ω、およびRGREEN = RBLUE = 93.3Ωとなります。
ATSAMC21J18Aはグランド接続の制御によってLEDを制御するので、I/Oポートがロジックローのとき個別のLEDがオン、ロジックハイでオフになります。このため、算出されるRGBカラーコードのデューティサイクルは反転させる必要があります。たとえば、色に25%のディーティサイクルが必要な場合は、LEDを特定の期間の25%だけオンにするためにPWMは75%のデューティサイクルを生成する必要があります。また、電源投入時にLEDをオフにする必要がある場合は、マイクロコントローラの起動コードは3本のピンをロジックハイにできる必要があります。
ATSAMC21J18Aには256KBのフラッシュメモリ、32KBのRAM、各種アナログペリフェラルが搭載されています。このマイクロコントローラには6つのシリアル通信モジュール(SERCOM)もあり、それぞれUSART、SPI、LINスレーブ、またはI2Cインターフェースとして機能します。
スマートRGB LED
RGB LEDを使用して複数の色を生成する別の方法には、LEDのプログラミングがあります。スマートLEDという用語は、このタイプのマルチカラーLEDにプログラム可能なシリアルインターフェースが装備されていることを表しています。その適切な例に、American Bright OptoelectronicsのBL-HBGR32L-3-TRB-8があります。これはサイズが5mm四方のRGB LEDで、800キロヘルツ(kHz)I2Cインターフェースを使用してあらゆる色を生成するようにプログラムできます(図5)。

図5: American BrightのBL-HBGR32L-3-TRB-8はサイズが5mm四方の6ピンデジタルRGB LEDで、I2Cパススルーピン配列により複数のデバイスを同じI2Cインターフェース上にデイジーチェーン接続できます。(画像提供: American Bright Optoelectronics Corp.)
I2Cインターフェースの利便性は、基板の空間の節約とマイクロコントローラのコードの簡素化によって、設計が大幅に簡素化される点です。ATSAMC21J18AのSERCOMポートの1つを I2Cシリアルインターフェースとして構成することで、BL-HBGR32L-3-TRB-8に簡単に接続できます。図5に示すように、ATSAMC21J18AマイクロコントローラからのI2Cデータ信号がピン1データ入力(DI)信号に接続され、I2Cクロックがピン2クロック入力(CI)に接続されます。
BL-HBGR32L-3-TRB-8 LEDの色は、グローバル輝度設定とRGBカラーコードを表す4バイトを1つの32ビットワードとして送信することでプログラムされます。このスマートLEDにはピン6にデータ出力パススルー、およびピン5にI2Cクロックパススルーがあります。これにより、各LEDが異なる色を表示するように複数のLEDをまとめてデイジーチェーン接続できます。
結論
マルチカラーRGB LEDは、その駆動方法を理解することで、空間、コスト、電力を節約し、エンドシステム、デバイス、ステータスインジケータまたは照明システムの外観やユーザーインターフェースを向上させることにも貢献します。また開発者は、個々のLEDを完全に制御できる標準的なRGB LEDと、プログラム可能な色制御に対応するスマートLEDのどちらを採用するかを選択できます。さらに、PWM制御信号の生成に一般的に使用されるマイクロコントローラの場合は、多くの低電力/低コストのオプションがあります。
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