スマートグリッドでの環境発電
DigiKeyのヨーロッパ担当編集者の提供
2015-09-09
欧州全体にわたってネットワークの導入が広がるにつれ、スマートグリッドは次第に現実のものとなりつつあります。 欧州連合は、2020年までに電力計の80%以上をスマートメータに置き換えて、エミッションを10%近く削減し、また家庭での年間消費エネルギーも同様の割合で削減することを目標としています。
2020年には、欧州全体で2億台近くの電力スマートメータと、4,500万台のガスメータの導入が広がり、全消費者の70%以上が使用することになると予測されます。 スマートメータを設置するコストは平均で€200~€250なので、これは€450億の投資となりますが、これだけに留まりません。 初期投資(capex)は高額ですが、スマートグリッドで重要なデータすべてを確実に配信するための運用経費(opex)も高額になります。
スマートグリッドの推進目的の一つは、太陽光発電や風力発電などの再生可能な資源をより有効的に使用することです。 欧州全体に設置される風力発電ファームや太陽熱発電所の数が増えるにつれて、これらの再生可能な資源を最大限に活用するため、家庭、オフィス、工場での電力使用に関するより正確なデータを得ることが、ますます重要になっていきます。 このために、家庭へ送られる電力を監視するスマートメータのネットワークや、電力使用に関するより詳細なデータを提供できるワイヤレスセンサのネットワークが形成されています。 また、この理由からゲートウェイデバイスの導入も促進されています。これらは多くの場合、ローカルのサブステーション内に設置され、データを照合して電力プロバイダへリアルタイムで送信します。この送信には多くの場合、電力ライン自体とパワーラインコントローラが使用されます。
これらはすべて、グリッドの電子機器システム内で環境発電が行われることも意味しています。 スマートグリッドネットワークの主要なコストの1つは、ネットワーク内のメータやセンサの電池の保守と交換です。 家庭用メータと産業向けのサブステーションの両方で環境発電技術を使用すると、スマートグリッドを運用する継続的なコストを劇的に削減できます。
この場合、太陽電池によりワイヤレスセンサネットワークへ電力を供給したり、熱発電機を使用して温度差を電力へ変換してサブステーションへ供給するなど、いくつかの種類の環境発電技術を使用できます。
太陽光発電は、各センサ用の小型のセルから、ネットワーク全体のデータを収集するゲートウェイへ電力を供給する大型のアレイまで、各種の方法で使用可能です。
Parallax製のソーラーパネルアレイは、屋根の上に設置して34Wまでの電力を生成し、ネットワーク機器へ供給できます。 十分に堅牢なため、(屋根への設置も含めて)恒久的に電力を生成でき、多くの携帯アプリケーションにも使用可能です。 12個の125mm(~5")、2.85Wの単結晶太陽電池を使用し、UV安定化されたポリカーボネートベースの上に設置され、屋外での耐久性を確保するカバーパネルを付けた状態で約18.5%の効率を達成しています。 カスタム加工されたベースパネルを使用すると組み立てが簡単になり、太陽電池が保護され、最大出力は5.4Aで6.3VDCになります。センサネットワークゲートウェイでの必要に応じて、複数のユニットをデイジーチェーン接続し、さらに高い電圧、電流、または電力を供給することもできます。
図1: Parallax製のソーラーパネルアレイは、34Wの電力を提供できます
ネットワークゲートウェイ用の電力を変換するため、Texas Instruments製のeZ430-RF2500-SEHなどの太陽光発電開発キットを使用できます。 システムは追加のエネルギーを管理し、一対の薄膜充電式電池に保存します。この電池は、暗黒時でも400を超える送信に十分な電力を供給可能です。 これらはエネルギーバッファとして機能し、アプリケーションがスリープ中で、発電に利用できる周囲光がある間にエネルギーを保存します。 電池の自己放電は非常に少ないため、環境発電システムに最適です。 ボードは完全なUSBベースのMSP430ワイヤレス開発ツールで、MSP430F2274マイクロコントローラとCC2500 2.4GHzワイヤレストランシーバを使用するために必要な、すべてのハードウェアとソフトウェアを提供します。 USBデバッグインターフェースが含まれており、リアルタイムでシステム内の16MHz低消費電力MSP430マイクロコントローラのデバッグおよびプログラミングが可能です。このインターフェースは、ワイヤレスシステムからPCへデータを転送するためにも使用できます。 温度およびRF信号強度のインジケータが統合されており、これらを使用して環境を監視できます。さらに、多くの外部センサを使用して追加データを収集可能です。
図2: TI eZ430環境発電開発ボードは、スマートグリッド内の太陽電池または熱電式発電機をサポートできます
このボードは、6ピンコネクタによりLaird Technologies製のWPG-1熱環境発電機とも簡単にリンクできます。 WPG-1は自己完結型の薄膜熱電式発電機で、ワイヤレスセンサネットワークにも、サブステーション内のゲートウェイにも使用可能です。 1.5mWまでの出力が使用可能で、広い範囲の負荷抵抗に対応できます。
発電機は超低電圧の昇圧コンバータを使用して、20°Kより低い温度差で使用可能な出力電力を提供するため、建物の内部と外部との温度差を利用するために適しています。 出力電力をレギュレートして 3.3V、4.1V、5.0Vの3つの電圧設定ポイントを適用でき、集積回路基板には出力電圧を設定するためのDIPスイッチが搭載されています。 電気的接続はオンボードの2ピンまたは6ピンコネクタを使用し、eZ430開発ボードもこのコネクタを使用して接続できます。
図3: Laird Technologies製のWPG-1は、約20°Kの温度差から電力を生成できます
もう一つの方法は、各種の環境発電源を処理できる、専用の電源管理システムを構築することです。 Texas Instruments製のbq25570は、太陽電池や熱電式発電機(TEG)など、出力インピーダンスの高いDC電源から生成されるマイクロワットからミリワットの範囲で、それらの電力源に大きなストレスをかけず、効率的に動作するよう特別に設計されています。 デバイスのバッテリ管理機能により、この抽出された電力によって充電式電池が過充電されず、システム負荷によって安全限界を超える過電圧や減衰が発生しないことが保証されます。 高効率の昇圧付き充電器に加えて、bq25570には高効率のナノパワー降圧コンバータが搭載されており、ワイヤレスセンサネットワーク(WSN)など継続的な電圧源を必要とするシステム向けに、2番目の電力レールを提供します。
また、bq25570にはデバイスへの電力の転送を最適化するため、プログラム可能な最大電力点追従(MTTP)サンプリングネットワークも実装されています。 オープン回路電圧のうち、サンプリングされ保持される部分は、ピンをHighまたはLow(それぞれ80%または50%)へプルするか、外付け抵抗を使用して制御できます。 サンプリングされる電圧は、内部のサンプリング回路により維持され、外部コンデンサを使用して保持されます。 たとえば、太陽電池は一般に、最大電力ポイント(MPP)である、オープン回路電圧の80%で動作するため、MPPTしきい値を80%に設定すると、デバイスが太陽電池の電圧をレギュレートし、VIN_DC電圧が設定された電圧よりも低下しないようにすることができます。 外部リファレンス電圧を使用して、さらに複雑なMPPTアルゴリズムを外部のマイクロコントローラに実装することもできます。
図4: TI製のbq25570を使用して、最大電力点追従アルゴリズムをサポートする、最適化された電力管理コントローラを構築し、効率的な電力マッチングを実現できます
環境発電で得られるエネルギーは多くの場合、散発的または時間とともに変動するため、bq25570は各種のエネルギー保存要素をサポートできるよう柔軟に設計されています。 システムには一般に、安定して信頼性が高い電力をシステムへ供給し、ピーク電流を処理するために、充電式電池やスーパーキャパシタなど、何らかの種類のエネルギー保存要素が必要です。 この保存要素へのダメージを防止するため、最大電圧と最小電圧の両方を、内部的に設定された不足電圧、およびユーザーがプログラム可能な過電圧のレベルと比較して監視し、エネルギーを保存する電池やキャパシタの電圧が設定済みの致命的なレベルよりも低下する状況にフラグを設定できます。 これによって、負荷電流が低減し、システムが電圧不足の状況に陥ることが防止されます。
これらの機能はすべて、フットプリントが小さい20リードの3.5mm x 3.5mm QFNパッケージ(RGR)に搭載されているため、電力管理要素を環境発電源とともに簡単に設置できます。
結論
システムサプライヤと電力会社は、環境発電源を使用してスマートグリッドの各種の要素へ電力を供給することにより大きな利点を得られます。 ワイヤレスセンサネットワークの電池を交換する必要が大幅に減少、または完全に不要になるため、運用コストを大幅に削減できます。 太陽電池や熱電式発電機の大規模なアレイからの環境発電を、適切な電力管理およびエネルギー保存機器と組み合わせることで、スマートグリッドの重要なデータを収集するネットワークと、データを照合してオペレータへ配信するゲートウェイの両方へ、メンテナンス不要の電力を供給できるようになります。

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