LED、回路保護、エネルギーバックアップ技術の進歩から恩恵を受ける非常照明
DigiKeyのヨーロッパ担当編集者の提供
2013-12-17
LEDベースの非常照明システム市場は、ほぼ間違いなく最も成熟した市場の1つです。 LEDデバイスはシンプルな出口標識に約20年間適していたものの、LEDデバイスが非常照明システムの使用で実行可能となったのは、過去わずか6年の間でした。 ホワイトLEDの効率および色濃度の向上や、価格の低減が変化をもたらしました。
技術の継続的な進化と価格の低減により、LEDはより広範な非常照明システムで着実に適用可能となっています。 さらに、LED技術の利点と組み合わされた革新的な設計は、照明設計者に重要な競争力を提供することができます。 バックアップ動作用の電池/エネルギー貯蔵システムや回路保護デバイス、そしてLED自体における進歩は、新しい機会を生み出しています。
この記事では、新しいコンポーネントの開発に重点を置き、LEDベースの非常照明システムにおける最先端技術について考察します。 たとえば、LEDの効率や冷却動作の向上、低電力化、堅牢性強化により、信頼性の向上と保守コストの削減を実現しています。 一般的なデバイスには、OsramのGolden Dragon PlusおよびDuris P5、Philips LumiledsのLUXEON® Z、およびSeoul SemiconductorのSTW8製品群が含まれます。
回路保護ソリューションは、安全が重要なアプリケーション、とりわけ火災または爆発のリスクがある場合での非常照明に安心感をもたらします。 BournsのLEDシャントプロテクタやTE ConnectivityのPolySwitchサーキットプロテクタなどのデバイスは、ここで人気のあるオプションです。
最後に、電池技術は近年、小型化、高電力化の電池バックアップソリューションを提供するリチウムイオンへの傾向とともに、急速に進化を遂げてきました。 しかし、安全が重要な特定のアプリケーションにおいて、これらは適切に保護されない限り、火災のリスクがあるとみなされています。 代替ソリューション、そして場合によっては補完的ソリューションとなるデバイスは、ウルトラキャパシタです。EatonのPowerStor製品群は、非常照明を含むさまざまなアプリケーションですでに支持を得ています。
安全第一
人々が集まる所はどこでも、建築物内またはその周辺、ショッピングセンター、地下駐車場、航空機および大量輸送システムなどを問わず、非常照明は不可欠な要素です。 効果的な照明は、特に火災の場合での迅速で混乱のない避難を確保するために非常に重要です。 最短の避難経路を示す、適切な照明とスペースを持つ非常出口標識は、人々がすぐに道に迷う際に重要です。 一般的に、人々は建物に入った経路まで戻ろうとするでしょう。しかし、これは最も効率的ではないかもしれません。
蛍光ランプは、古い取付装置で使用され続けると見込まれていますが、ますますLEDランプで置き換えられています。 従来のT8蛍光灯を置き換えるLEDモジュールは、人気のあるレトロフィットユニットになりつつあります。 一般的に、LEDは多くの性能およびコスト優位性を発揮し、こうした優位性は、多くの非常照明アプリケーションでの広範な使用を促進しています。 主要な照明システムがLED技術でアップグレードされているか、または置き換えられている所はどこでも、付属する非常照明取付装置もまたLEDで置き換えられる可能性が大いにあります。
LED技術が持つ利点の増加は、説得力のある主張を展開しています。 LEDランプの寿命と信頼性は非常システムに好適で、サービス間隔や保守コストを低減します。 鉛または水銀を使用しないLEDは、より環境に優しいとみなされています。 それらは本質的に安全であるとみなされているため、採鉱、石油探査、そして他の可能性のある爆発性環境で最適な照明の選択肢となっています。 ガラスを含有しないLEDはより堅牢で、衝撃や振動への耐性が高く、公共の場所に取り付けられる時、破壊行為からの損害を受けにくいといえます。
従来の照明技術と比べて、一般的に低電力動作のLEDは、主電源に障害が発生した場合に作動するバックアップ電池または非常用発電機からの照明システムの実行には理想的です。
点光源としてのLEDランプの本質により、光の焦点を必要な箇所に制御することが簡単になります。それは、高い光効率と相まって、エネルギー使用低減にさらに寄与します。 最もシンプルな形態では、英国のICEL(Industry Committee for Emergency Lighting:非常照明産業委員会)1によれば、推奨された間隔で床上3mに取り付けられた標準60°のビームを持つ2個の1W LED、ドライバ、インバータ、および3.6Vの電池は、床レベルで必要な輝度を達成するのに問題がなく、国際規格に適合します。
見た目の美しさ
特に大規模な照明シナリオにおけるLEDの付加的な利点は、フォームファクタの選択と、非常照明を建築照明と組み合わせる可能性にあります。 照明器具は、実質的にいかなるサイズまたは形状にも構成することができ、そして既存の建築機能内の構造や材料に容易に組み込むことができます。 ライトストリップは階段や廊下には特に有用で、他のモジュールは、床や壁に埋め込むか、または既存の構造機能にレトロフィットすることができます。 非常照明を巧みに隠すか、または非常照明を美しく建築物に組み込む能力は、はるかに高い柔軟性を照明システム設計者や顧客にもたらします。
Osram Semiconductors2が提示したケーススタディは、この分野で何が達成できるかを表しています。 ドイツのミュンヘンにある地下鉄のKarlsplatz Stachus駅(Uバーン/Sバーン)の入り口には、建設上の理由により、全長700mの手すりによってのみ照光可能な階段があります。 この照明は、停電が発生した場合に電池によって駆動される非常照明としての二重の役割を果たしています。 低電力消費を実現するOsramのLEDを取り付ける場合、手すりの照光に必要な電力は手すりの18mあたりわずか100Wです。

非常照明システムに必要とされるLEDのタイプや仕様は、個々のアプリケーションに大いに依存します。 しかし、低電力、冷却動作、そして高発光効率などの最も望ましいいくつかの共通の特長があります。 3000~6500Kの色温度、80以上のCRI、約75~100ルーメン/Wの効率を持つクールホワイトLEDが標準要件です。
考慮すべき他の特長には、アプリケーションに応じて、小型サイズ、耐久性があり堅牢なハウジング、ストリングまたは他の形状を容易にかつ柔軟に作成できるモジュール設計、そして電池バックアップまたは他の一時的な電源から動作できる能力などがあります。
標識灯
Osram Opto SemiconductorsのDuris P5 LED製品群などのデバイスは、非常照明アプリケーションに明らかに適しています。 ニュートラルホワイト(4000K)デバイスであるGW DASPA1.EC-GUHQ-5L7N-1は、階段や出口経路などで使用される非常用標識灯に求められる高効率、中電力、および長寿命性能を提供します。 100mAでの29ルーメンの標準光束、96ルーメン/Wの光効率および80のCRIを持つこのデバイスは、リードレスSMD-2パッケージで提供されます。 標準順方向電圧は3.02V、最大順方向電流は250mA、視野角は130°です。 Duris P5製品群は、よりウォーム(3000K)かつよりクールな(5000K)光出力デバイスで、4000Kバージョンと同様の仕様を備えています。
消費電力が高いにもかかわらず、より高い発光効率を必要とするアプリケーション向けに、OsramはGolden Dragon Plus製品ラインのLUW W5AMシリーズを提供しています。 標準光束は350mAで116ルーメンで、1Aで最大273ルーメンを実現します。非常照明システムでの標識灯向けに特に設計されたこのデバイスは、非常に薄型のパッケージで高い効率の光源を提供します。 光効率は100mAで146ルーメン/W、最大順方向電流は1A、標準順方向電圧は3.2V、および熱抵抗は6.5K/Wで規定されています。

同様の性能を発揮するデバイスは、Philips Lumileds製品群で入手できます。 LUXEON Z 4070は、最大4000Kの色温度と70のCRIを提供します。 標準光束は500mAで138ルーメンです。 標準効率は95ルーメン/Wです。 データシートで規定されている有用な付加的パラメータは、達成可能なデバイスサイズ対光出力で、ミッドレンジLEDで63ルーメン/mm²と規定されています。 これらのデバイスは非カプセル封止型で提供されることが可能で、ストリップまたはモジュールへの組み込みに最適です。

Seoul Semiconductorは、シングルLEDおよびマルチLEDモジュールの広範なAcrich製品群で、対極にあるよりクールホワイトの多くの部品を提供することができます。 6500K STW8Q14BEは、汎用、室内、そして建築照明アプリケーションを対象とするシングルLED製品群の1例にすぎません。 ESD保護を組み込んでいるLED自体は、シリコーンでカプセル封止され、耐熱性のサーモプラスチックボディにアセンブリされています。 電気的仕様には、3.2V(標準)の順方向電圧、160mA(最大)の順方向電流、35ルーメンの光度(3700~7000K)、80のCRI(最小)、および18°C/Wの熱抵抗が含まれます。
回路保護
あらかじめアセンブリされたいくつかのLEDベースの非常照明モジュールは、主電源からバックアップへ、そしてバックアップから主電源へと自動的に切り替える関連回路とともに提供される一方で、堅牢性と信頼性向上に寄与するために、付加的なLEDシャント保護を取り付けることができます。 さらなる保護は、特に、比較的高電圧対応の定電流電源から駆動されることができる複数の直列接続LEDの長いストリングで使用される際の、LEDランプの修理および交換コスト最小化に寄与することができます。
複数のLEDストリング構成には多くの利点があります。 よりシンプルな電源設計は主要な利点となる一方で、高電圧、低電流電源は電源自体の効率向上を実現します。 スケーラビリティ、モジュール性、およびフォームファクタの柔軟性は、他の照明技術を凌ぐLEDストリングの選択に影響を及ぼす重要な要素です。 しかし、マイナス面は、LEDストリング上のオープンLEDが、そのストリング上にあるすべてのデバイスの電源を切ることです。 LED障害は、高温、静電気放電(ESD)、または過電圧および過電流事象によって引き起こされる可能性があります。
低電力LEDストリングは、ツェナーダイオードによって容易に保護されることができます。 (75mAより高い値で動作する)高電力アプリケーション向けに、LEDシャント保護デバイスが推奨され、アクティブモードでの電力消費は、オープンLEDよりも少なくなります。 これらのサイリスタベースのデバイスは、ストリング内の健全なダイオードが照光し続けることを確保するために、作動不能のLED周辺に動作をシャントし、ブリッジを作成することで動作します。
Bournsは、LEDシャント保護デバイスを供給する主要企業です。 同社のLSP0600BJR-Sは6Vで動作します。利用可能な保護レベルを最大化するために、設計者は LED1個あたり1個のデバイスを使用する必要があります。 あるいは、コストを最小限に抑えるために、同製品群の他の部品は9、13および18Vまでの保護を提供し、それぞれ2、3、または4個のLEDのグループを絶縁するのに使用することができます。
Bournsは、有益なホワイトペーパー3を作成しました。そのホワイトペーパーでは、定電流電源のコンプライアンス電圧に関する電源の問題について説明しています。 回路および設計の例が提供され、Bournsが提供するLSPシリーズ デバイスに関わる特定の障害状況における電源要件を強調しています。 LEDストリング向けの適切な電源アーキテクチャに関する助言もまた記載されています。
過電流保護
過電流や熱による損害から非常照明電池やLED照明器具を保護することは、TE Connectivityが提供するRaychem回路保護製品の主要機能です。 LEDは、LEDが置き換える照明技術よりもかなり長寿命であるにもかかわらず、LEDの寿命は接合温度、動作電圧および動作電流などの多くの要素に依存することを同社は指摘しています。
TEの永続的なPolySwitchおよびPolyZen製品群などのリセット可能ポリマー正温度係数(PPTC)デバイスは、LED回路保護での有効性を実証してきました。 一般的なアプリケーションには、パワーライン結合型過渡およびサージからのパワー入力保護、LEDドライバ回路出力保護、そしてLED ESD保護などがあります。 それらは、障害がクリアされ、電源を一旦切って入れ直した後に、それら自身をリセットするため、高信頼性の非常照明で特に効果的です。

同メーカーによると、ほとんどのLEDアプリケーションは、LEDドライバから消費電力を制御するために、電源とインターフェースするパワー変換および制御デバイスを使用します。 これらのインターフェースを過電流および過温度損害から保護することは、PolySwitch製品群などのリセット可能PPTCデバイスの役割です。
通常の操作では、ヒューズは低抵抗値を備えています。 過電流の状態が発生する場合、デバイスは高抵抗状態へと遷移します。 これは、障害状態下で流れ得る電流量を低い定常状態レベルまで下げることで、回路での機器の保護に寄与します。 デバイスは、障害がクリアされるまでラッチ位置を保持します。 回路に対する電源を一旦切って入れ直すと、デバイスがリセットし、電流の流れが再開して、回路は通常の操作に戻ります。 さらなる詳細情報や回路図は、以前のDigiKey TechZone記事4に記載されています。
多くのLEDドライバICには、安定した電流をダイオードに提供するために、保護されたDC入力が必要です。 ツェナーまたは過渡抑制ダイオードなどの並列の電圧制限デバイスとともにLEDドライバICと直列接続されるPolySwitchデバイスは、効果的な保護の提供に寄与します。 PolySwitchコンポーネントは、基板スペースおよびコストを節約する最もコンパクトなアプリケーション向けの小型1608パッケージデバイスを備え、さまざまなサイズで入手可能です。 設計者は、50mA~3Aの電流定格と、6~60Vの電圧定格を選択することができます。
IC保護向けの一般的なデバイスは、6VのnanoSMDC150Fです。この製品は、1.5Aの電流保持、3Aのトリップ定格、そして100Aの最大電流を備えています。トリップまでの時間は0.3sです。
バックアップ電源
スーパーキャパシタは、特定のアプリケーションで、特に、リチウムイオン電池が火災の危険を生む可能性がある場合の安全が重要なシステムで、バックアップ電源としてますます支持を得ています。 電池と比べて、スーパーキャパシタは、10倍を超える電力と、1000倍を超えるサイクル寿命を提供することができます。 それらは、従来の電解コンデンサよりも3桁高いエネルギー密度を提供します。
それらはまた、このようなシステムの性能や寿命を強化するために、従来の電池バックアップ技術とともに良好に動作します。 非常照明アプリケーションでの興味深い特長は、ホールドアップおよびブリッジングパワーシステムでの使用であり、主電源に障害が発生する際も定電力を確保します。 スーパーキャパシタは、電池よりも環境に優しいとみなされており、設計者が電池ニーズを低減し、電池寿命を延ばすのに役立つことができます。
スーパーキャパシタ市場での主力企業は、Eatonです。 同社のXBおよびXVシリーズ 円筒形デバイスはそれぞれ、2.5Vおよび2.7Vの動作電圧を備え、300~400Fの静電容量を提供します。 超低ESRにより高電力密度を実現するこれらのデバイスは、ピーク電流需要中の最小電圧降下を確保します。 それらは、UPSおよびバックアップ電源システムや、非常照明取付装置に特に適しています。
XB製品群での一般的なデバイスは、2.5Vで300Fの静電容量を提供するPowerStor XB3550です。XV製品群のトップはPowerStor XB3560スーパーキャパシタで、400Fの静電容量と2.7V定格を提供します。

要約
非常照明システムは、華やかさが少ないアプリケーションではあるものの、LED自体や、極めて重要な回路保護および電池バックアップ機能向けの付属サブシステムの技術的進歩の恩恵を受けています。 非常照明の設計者には、新しい取付装置やレトロフィットユニットの両方で、同部門で提供する製品を改造し、差別化する機会があります。
リファレンス:
- Industry Committee for Emergency Lighting(非常照明産業委員会)(ICEL)
- Osram Semiconductorsのケーススタディ、ミュンヘンのKarlsplatz照明
- Bournsのホワイトペーパー:新しいオープンLEDシャント保護デバイス
- LED照明向けの調整された回路保護
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