産業用オートメーション向けカスタムケーブル

著者 Lisa Eitel(リサ・アイテル)氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

オートメーションにより、労働力、エネルギー、資材を節約できると同時に、精度と品質が高まります。しかし、システムがかつてないほど複雑化している現在の産業機械や運用には、潜在的な弱点が1つあります。それは、電力、制御、そして運用データの送信が、安定した接続に著しく依存しているということです。接続に何らかの問題が発生すると、処理量が大幅に低下したり、高価な機械や最終製品が損傷したりする可能性があります。

そのため、あらゆる自動化システムのコントロール、センサ、アクチュエータに接続される産業用ケーブルソリューションの信頼性が、予定外のメンテナンスを最小限にし、自動化された運用の信頼性を維持するために必要不可欠なのです。

Lapp USAのÖLFLEX CONNECTカスタムケーブルソリューションの画像図1:自動化された装置の産業用ケーブルは、電力の分配や、制御信号およびデータの送信(データ収集や動作のモニタリングを目的とした)に使用されます。こうした機能を連結するケーブルアセンブリ(Lapp USAÖLFLEX CONNECTカスタムケーブルソリューションなど)の需要が高まっています。(画像提供:Lapp USA)

信頼性の高いケーブルでは、堅牢な接地、伝導撚り線、そしてコネクタなどが必要であり、他にも多数の考慮事項があります。たとえば、信頼性のある制御およびデータ送信のためには、電磁妨害(EMI)に対する遮蔽が必要不可欠です。軸が動作する場合、ケーブルには数千回の屈曲サイクルに耐える柔軟性も必要です。また、各伝導撚り線の周囲の絶縁は、堅牢で耐摩耗性を備えている必要があります。

そのため、特に要件が厳しい産業用オートメーションアプリケーションでは、カスタムケーブルの使用が一般的になりつつあります。遮蔽、絶縁、被膜の耐久性、およびフォームファクタの新たな選択肢は、技術者がアプリケーションに対する完全な最適化を考慮してケーブルを調整するのに役立ちます。

産業用オートメーション環境におけるモジュラーケーブル

モジュラーケーブルおよびコネクタは工場組み立て済みの製品であり、標準化されたサブコンポーネントのセットを使用しています。高速で非常に信頼性の高い運用を目的に、これらはクリップ式やクランプ式であることがよくあります。モジュール式のサブコンポーネントを基盤とするカスタマイズされたケーブルアセンブリが、産業用オートメーションや、建設のようなその他の産業で一般的に使用されるようになっていることには相応の理由があります。

従来のケーブルセットと比較して、モジュラーケーブルは現場での設置作業を60%~70%低減できる場合があります。これは主に、モジュラーケーブルアセンブリでは、電気コンダクタを物理的に接続したり、現場での試験やトラブルシューティングを実施したりする工場の人員やインテグレータ技術者を必要としないためです。実際に、大抵の従来型ケーブル設置プロセスでは、電気技術者がケーブルを必要な長さに切断し、被膜を剥がし、接続のツイストを手作業で行う必要があります。モジュラーケーブルではこうした負荷の高い作業の必要がない上に、信頼性が向上します。これもやはり、カスタマイズ、切断、接続、そして最終仕上げが、繰り返し可能な工場プロセスによって実施されているためです。さらに、カスタムアセンブリを販売しているサプライヤから供給されるケーブルに対しては通常、出荷前に自動化された試験が実施されています。特定の用途専用のケーブルでは設計段階で仕様が完全に指定されており、現地での設置で必要な作業は、これらのケーブルを機械コンポーネントに接続することだけです。

カスタムケーブルアセンブリが、電気技師による現場での配線や試験の必要性を解消することを示す画像図2:カスタムケーブルアセンブリを使用することで、電気技師は現地でこの画像のような配線や試験を行わずに済むようになります。

送信の質を保護するための遮蔽

次第に複雑化したシステムには電力、制御、データなど信号送信が関係していることから、現在の産業環境は電気的なノイズが多い状態になっています。そのため、高感度の装置や信号を電磁干渉(EMI)から保護しなければなりません。こうした電気回路の乱れは、電磁誘導、静電結合、伝導が原因で発生します。実際、電気的ノイズが多い装置ではケーブルを電磁干渉(EMI)から保護するために遮蔽する必要があります。その理由は以下のとおりです。

  • ケーブルは、あらゆる場所から発生するEMIが原因でかく乱される可能性がある。
  • 産業ケーブル自体がEMIの発生源となる場合がある。
  • ケーブルが放射ノイズに対するアンテナとなる場合もある。

モータ、発電機、トランス、誘導加熱、および電源ケーブルはすべて、高レベルのEMIの発生源となる可能性があります。制御およびデータ用のケーブルをこうした発生源の近くに配置する場合は、遮蔽が必要です。非常に高感度の信号の場合は、EMIの発生源からある程度距離がある場合でも遮蔽が必要です。

実際、遮蔽は自動化された操作全体を取り囲むケージの形態を取る場合や、ケーブル周囲の金属キャビネットやコンジットの場合、ケーブルに直接組み込まれる場合(この記事で詳しく説明)があります。

ケーブル本体でのEMIの遮蔽には、ファラデーシールド(ケーブルのコンダクタ周辺の伝導材料を継続的に覆う)またはファラデーケージ(ケーブルコンダクタ周辺の導電性メッシュ)などが使用できます。通常、ファラデーシールドは金属箔で、ファラデーケージは編組ワイヤで構成されています。

金属箔のシールドは、低コストで柔軟な遮蔽を継続的に実現するために薄いアルミで構成されていることが多くあります。ただし、この場合は接地が困難です。

編組ワイヤは銅線のメッシュを編んだもので、グランドへの接続は簡単ですが、遮蔽が完全ではない場合があります。小さな隙間があるため、周波数の高い信号が通過する可能性があるためです。そのため、ファラデーケージが効果を上げるためには、メッシュの穴や隙間をすべて、ブロック対象である放射線の波長よりも大幅に小さくする必要があります。一部の製造業者は、編組シールドワイヤを錫めっきすることによって、EMIからの保護を強化しています。また、非常にノイズが多い環境の中で、複数レイヤのシールド(各ペアの間に加えて、ケーブル周辺全体など)を使用して、信号が影響を受けないようにしている製造業者もあります。このようなシールドは費用が高額で、他の選択肢より柔軟性に欠ける場合があります。

ケージとシールドはどちらも電磁放射を反射して、その放射がケーブルの伝導撚り線の内部に到達しないようにします。ケーブル内のシールドは通常、伝導ワイヤ周囲の絶縁レイヤ間に配置されます。このシールドは通常、グランドに接続されて、電磁エネルギーが効率的に消失するようにします。

Lapp USAのÖLFLEX CONNECT SERVOケーブルの画像図3:Lapp USAのÖLFLEX CONNECT SERVOケーブルには、電力およびデータへの接続能力に加えて、Siemens、Rockwell/AB、Indramat、Lenze、SEWのドライブおよびサーボモータを簡単に使用できるようにするためのコネクタが組み込まれています。こうしたケーブル内でのEMCの遮蔽は、自動的なプロセスで製造業者によって実施されます。このプロセスは、ケーブルの被膜を除去し、シールドがコネクタに360°接触するようにします。(画像提供:Lapp USA)

産業用ケーブルの絶縁についての選択肢

絶縁は、電気伝導体ワイヤを囲む非導電金属です。絶縁は、ワイヤ間またはグランドへの伝導を防ぐだけでなく、摩耗や流体の侵入の防止策としての役割を果たすことも多くあります。絶縁単体では、磁場があるEMIや、直接通過する放射線を防止できないことに注意しなければなりません。以下は一般的な絶縁材料です。

ポリ塩化ビニル(PVC)は安価であり、絶縁として一般的に使用されています。温度範囲は約-55°~+105°Cで、一般的な溶剤や燃料への耐性があります。静電容量と減衰が原因で、若干の電力損失が発生します。

半硬質PVC(SR-PVC)は、他の選択肢に比べて耐摩耗性が強力です。類似したプレナムポリ塩化ビニル(プレナムPVC)の材料も耐炎性に優れています。

ポリエチレン(PE)は静電容量が低く、高速データ送信に適しています。PEは柔軟性が高く可燃性があり、温度範囲は-65°~+80°Cです。

塩素処理ポリエチレン(CPE)は熱および火への耐性が優れており、産業向けの電力および制御ケーブルに使用されることが多くあります。

シリコーンは熱への耐性が非常に高く(180°Cまで)、難燃性と柔軟性を備えています。

繊維ガラスは一般に、ファウンドリや金属処理など、非常に強力な熱耐性が必要な用途で使用されます。繊維ガラスは、最高480°Cの温度が持続する場合に使用できます。

このような稼働環境は、あくまでも目安であることに注意してください。設計技術者は、ケーブルを具体的なアプリケーションで使用する前に、必ずケーブル製造業者の仕様を参照すべきです。

産業ケーブルの被膜とジャケット

ケーブルの中には、電気的絶縁機能と外部保護機能が分かれており、各機能に対して最適な材料が使用されているものがあります。この場合は、電気的絶縁を実現する内部レイヤが絶縁と呼ばれ、保護を実現する外部レイヤはジャケットと呼ばれます。この構造により、耐性と柔軟性がどちらも向上します。

摩耗、液体、熱、化学物質、微生物などの危険性を対象とした特殊な保護を実現するために、さまざまなジャケット材料が使用されます。一般的なジャケットの材料には、以下のようなものがあります。

ポリウレタン(PUR)は非常に頑丈かつ柔軟であると同時に、化学物質、水、摩耗への耐性があります。ただし、ポリウレタンは可燃性です。電気的特性に問題があるということは、絶縁としての使用には適していないということです。

ナイロンは極めて丈夫で柔軟性があり、摩耗と化学物質への耐性があります。

ネオプレンは合成の熱硬化性ゴムであり、摩耗、切断、油、溶剤への耐性が優れています。この材料は耐用年数が長く、軍事用途によく使用されます。

スチレンブタジエンゴム(SBR)は熱硬化性材料であり、摩耗、油、溶剤への耐性が優れています。この材料は、Mil-C-55668ケーブルで使用されています。

産業ケーブルにおける撚り線の配列

ケーブル内の撚り線は、それぞれの屈曲特性を実現するために、さまざまな方法で配列することができます。

単線は、1本の太いワイヤであり、低コストですが、固く、堅牢性が劣ります。

束ねられた撚り線は比較的単純な構造で、すべての撚り線が同じ方向にねじり合わされていますが、単線より堅牢です。

同心撚り線は中心にある1本のワイヤの周囲にねじられたワイヤのレイヤが配置され、隣り合うレイヤのワイヤはそれぞれ反対の方向にねじられています。この構造により、オートメーション用途での使用に適したスムーズなケーブルができあがります。

ロープ撚り線では、その他のさまざまな方法で撚られたケーブルがまとめられています。この設計は、柔軟なケーブルの製造を目的としています。

産業ケーブル用のコネクタに関する確認事項

産業用オートメーション向けのケーブルコネクタは、ケーブル自体と同様にカスタマイズ可能です。このトピックについては、他の記事で取り上げています。これらの記事では、こうしたコネクタの配置について(そしてグランドやグリップの選択肢についても)説明しています。ただし、コネクタが、前述したサーボモータケーブルなど、特定のコンポーネント向けに専門化されつつあることには注目する必要があります。

さらに、現在のケーブルコネクタの設計は、環境条件への耐性を維持するために、高度に専門化されています。コネクタの侵入に対する抵抗は、エンクロージャと同様に、侵入保護(IP)コードを使用して評価されます。これらのコードは2桁で構成されています。最初の桁は異物や粉塵に対する保護のレベルを、2番目の桁は液体に対する保護のレベルを示しています。最初の桁の範囲は、保護なしの0から防塵密閉の6までです。2番目の桁の範囲は、保護なしの0から深さ1mでの継続的な浸水に対する継続的な保護を表す8までです。

その他の場合についても、ケーブルコネクタの標準化されたジオメトリによって、仕様が単純化されるようになっています。たとえば、モジュラーのRJコネクタは、データ送信に使用されるケーブルとして一般的になりつつあります。この場合、RJという用語はレジスタードジャック(Registered Jack)の略で、元々は電話システムに使用されていた登録済みの配列を指すものでした。しかし理論的には、現在のモジュラーコネクタはRJコネクタとはまったく異なります。これらのコネクタは、専用の圧着ツールを使用して、ケーブル終端に素早く確実に取り付けることができます。こうした圧着ツールにより、1回の作業でコネクタを取り付けて、電気的接触を実現することができます。これにより、現場でのケーブルのアセンブリを効率的かつ簡単に行うことができるようになりますが、信頼性が高いのは、工場でアセンブリされたケーブルの方です。このタイプのコネクタプラグは通常、ソケットでコネクタをしっかりと保持するためのタブを備えており、内部での接触状況を視覚的に検査できるようにするために、本体には透明なプラスチックが使用されていることがよくあります。

2番目および3番目のケーブルコネクタはRJコネクタであることを示す画像図4:ここに表示されている2番目および3番目のケーブルコネクタは、RJコネクタです。(画像提供:Lapp USA)

このトピックに関する詳細については、DigiKeyの記事である「産業用アプリケーションに適したケーブル:成功する設計のための選択と使用方法」をぜひご参照ください。この記事では、産業用ケーブルの選択について案内しています。

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著者について

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Lisa Eitel(リサ・アイテル)氏

Lisa Eitel氏は、2001年からモーション制御業界で働いています。彼女が注力する分野には、モータ、ドライブ、モーション制御、動力伝達、リニアモーション、センシングおよびフィードバックテクノロジが含まれます。彼女は機械工学の理学士号を取得しています。Tau Beta Pi工学名誉協会(全米最古の工学名誉協会)の新参会員であるほか、女性エンジニア協会会員、FIRST Robotics Buckeye Regionalsの審査員を務めています。motioncontroltips.comへの寄稿に加え、Lisaは業界誌Design Worldで四半期ごとにモーション制御問題の制作も指揮しています。

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