産業用センサとアクチュエータをより早く安全・確実に構成するセンサアクチュエータボックス

著者 Bill Giovino

DigiKeyの北米担当編集者の提供

最新の産業用オートメーション(IA)機器の設計者は、施設内の何百平方フィートにも及ぶスペースに自分たちがケーブルを張り巡らすのにどれだけ多くの時間がかかるかを痛いほどよく知っています。制御コンピュータと、プロセスエリアにある近接センサやメカニカルアームとの間に複数のケーブルを配線すると、施設の床が乱雑になり、機器の構成に時間がかかります。また、既存のセンサやアクチュエータを交換したり再構成したりする際には、プロセスの現場と制御コンピュータの間に別のケーブルを通す必要が生じるので、メンテナンスに時間がかかります。この問題は、より多くのシステムをモノのインターネット(IoT)に接続してクラウドによりリモートのダッシュボードで追跡しようとすると、さらに拡大します。

このような接続上の問題を解決するために、産業用システムの設計者は、センサアクチュエータボックス(別称:ジャンクションボックスや配電ボックス)を使用することができます。これらのデバイスを使用すると、制御コンピュータから1本のマスターラインをプロセスの現場にある多数のコネクタで終端するボックスに通すことで、多くのセンサやアクチュエータを接続することができ、フロアの配線が簡素化されます。

この記事では、IA接続に関する問題に手短に触れます。その上で、MolexAlpha WirePhoenix Contactの3つのセンサアクチュエータボックスの実例により、産業環境での配線を簡素化し、メンテナンスや構成を容易にする方法を紹介します。

制御コンピュータとセンサやアクチュエータの接続

産業オートメーション環境における制御コンピュータの多くは、接続しやすいように、制御対象となる機器の近くに配置されています。コンピュータからセンサーやアクチュエータまでのケーブルは比較的短く、通常1〜2メートル程度です。しかし、一部の産業施設では、制御コンピュータが何フィートも離れた場所に設置されていることがあり、その場合は2つの場所の間に複数のケーブルを配線する必要があります。これは、組立工場のロボットやベルトコンベアの設備、さらにはトラックや航空機などの大型産業車両によく見られます。状況によっては、プロセスエリアが、有害な化学物質や極端な温度にさらされる危険な場所になることもあります。この種の機械では、安定性を最大限に高めるために、制御コンピュータは通常、保護が可能な、安全な距離に置かれます。

従来では、制御コンピュータから各センサやアクチュエータに複数のケーブルを配線する必要がありました。これは必ずしも簡単な作業ではありません。センサやアクチュエータのケーブルの両端には、適切なケーブル終端コネクタを使用する必要があります。多くの危険な環境では、ケーブルを安全に正しく配線するのに、予想以上に時間がかかることがあります。最後に付け加えると、各センサやアクチュエータのケーブルを構成、接続するのに時間がかかるため、展開作業が遅くなり、コストがかさみます。複数のセンサやアクチュエータを交換、構成するために設備を停止する必要がある場合は、ダウンタイムが増えるため、さらにコストが増大しますが、設備によってはその増大ぶりが劇的になる可能性もあります。

センサアクチュエータボックス

IA施設にとっては、センサアクチュエータボックスを使用するのが、安全で費用対効果の高いソリューションです。センサアクチュエータボックスは、制御コンピュータから出ているセンサ用とアクチュエータ用の全ケーブルを1本のマスターケーブルにまとめ、プロセスエリアに通すもので、ホームランケーブルと呼ばれることもあります。このケーブルを終端するのは、プロセスエリアの近くにある1つの頑丈なコネクタボックスです。このボックスは、通常8個以上のM12コネクタのレセプタクルを備えています。センサアクチュエータボックスは、ジャンクションボックス、配電ボックス、IOまたはI/Oボックスとも呼ばれます。M12レセプタクルが取り付けられているコネクタボックスは、IP67以上の防水・配線済みユニットです。

どのセンサとアクチュエータのホームランケーブルも、配線して配置する必要があるのは一度だけです。これには、技術者が狭い場所でケーブルを配線する際に、狭い場所に入り込んだり回り込んだりするのに余分な時間を費やす必要がないという利点があります。

センサアクチュエータボックスがあれば、技術者は、制御コンピュータとプロセスエリアの間に各センサやアクチュエータの長いケーブルを通して機器を接続するのでなく、短いケーブルの一端を近くのセンサアクチュエータボックスに接続し、もう一端を機器に接続するだけで済みます。この作業はせいぜい数秒で完了するため、設置者がプロセスエリアで過ごす時間を最短に抑えることができます。これにより、メンテナンスが容易になり、時間の短縮やエラーの減少にもつながるので、安全性が向上します。

センサアクチュエータボックスの選定と使用

センサアクチュエータボックスには様々な設計方法がありますが、検討要素としては一部を挙げるだけでも、視認性、堅牢性、素材の種類、重量、フォームファクタ、レセプタクルの数、電流処理能力、取り付け方法、防塵・防湿・防ガスなどのIP定格などがあります。

たとえば、産業用トラックや倉庫など、機器に強い衝撃が加わるような特に厳しい環境向けに、MolexではBrad Safetyマルチポート相互接続システム(MPIS)配電ボックスファミリを用意しています。この頑丈な箱は、軽量で強度のあるポリブチレンテレフタレート(PBT)を使用しており、重機からの強い衝撃や移動中の車両からの衝撃にも耐えることができます。

Molexのラインナップのうち、1202480510 MPIS 8ポート配電ボックスは、1ポートあたり最大4アンペア(A)をサポートしますが、8ポートすべてを使用した場合は最大12Aをサポートします(図1)。各ポートには、相互接続の際に役立つように、ABS樹脂製のスナップインラベルのための凹部が設けられています。紙のラベルに比べて丈夫で破れないのが特徴です。

Molex 1202480510 MPISセンサアクチュエータボックスの画像図1:Molex 1202480510 MPISは、8つのM12レセプタクルを備えたセンサアクチュエータボックスです。また、各ポートには頑丈なABS樹脂製のスナップインラベルを採用し、相互接続を容易にしています(画像提供:Molex)。

Molex 1202480510は、視認性の高い明るいオレンジ色で、IP67に準拠しているため汚れ、ほこり、湿気の多い環境での使用に適しており、温度範囲-25℃~85℃(代表値)で動作します。ホームランケーブルの長さは5mで、カスタムケーブルの終端に対応しています。通常はM23コネクタですが、アプリケーションに必要なコネクタであれば何でも構いません。埋め込み型のM12レセプタクルは、業界標準の8ピン構成です。各ポートに付いている琥珀色のLEDが点灯した場合は、ポートに電源が入っていることを示します。これにより、ポートがアクティブであることを素早く確認できるので、構成時や接続の問題を診断する際に役立ちます。

Molexのセンサアクチュエータボックスには、M4取り付けネジ用に2つのスロット穴があります。これにより、本ボックスを機器に取り付けたり、壁にしっかりと固定することができます。本ボックスは、8つのM12レセプタクルにアクセスしやすい場所に取り付ける必要があります。また、M12コネクタをレセプタクルに押し込む力で本ボックスがずれないように、本ボックスを十分に固定しておく必要があります。

軽量センサアクチュエータボックスアプリケーション

航空機や一部の産業車両のように重量が懸念事項となるアプリケーション向けに、Alpha Wireでは901-10M NC032 8ポートセンサアクチュエータボックスを含む、Alpha Connectパッシブ配電ボックスファミリを用意しています(図2)。このAlpha Connectボックスは、軽量な亜鉛合金製で、航空機や小型トラックに適しているほか、1オンスの違いでも大きい小型土木作業車やフォークリフトなどのバッテリ駆動車両に適しています。2点間の最短距離が直線ではなく、曲がりくねった経路であることが多い航空機や車両に適した10mのホームランケーブルを採用しています。このボックスはパッシブ型で、ポートインジケータLEDはありません。本ユニットの色は、中間色のベージュなので、様々な環境に溶け込むことができます。

本ユニットには2つのダストカバーが付属しており、使用していない2つのレセプタクルを汚れから守ることができます。センサアクチュエータボックスと嵌合コネクタは、IP67に準拠しています。嵌合されていないレセプタクルはIP65に準拠しているため、IP67の保護を確実にするにはダストカバーを取り付けておく必要があります。

Alpha Wire 901-10M NC032センサアクチュエータボックスの画像図2:Alpha Wire 901-10M NC032センサーアクチュエーターボックスは、軽量な亜鉛合金製です。8個のM12レセプタクルはハウジングの上に突き出ているため、コネクタは簡単迅速に嵌合できます。右手前には付属のダストカバーが2つあり、使用していないレセプタクルを清潔に保ちます(画像提供:Alpha Wire)。

M12レセプタクルごとに5つのピンがあります。初期構成時の設置を容易にするために、標準的なM12ケーブルのカラーコードと各ピンの機能がセンサアクチュエータボックスの側面に印刷されています。8個のM12レセプタクルは埋め込み式ではなく、亜鉛合金製のハウジングの上に突き出ています。これにより、多忙な産業環境で重要となる、迅速簡単な接続が可能になります。

Alpha Wire 901-10M NC032センサアクチュエータボックスは、-40℃~+80℃で動作でき、航空機や一部の車両を操縦・運転しなければならない非常に寒い産業環境に適しています。

小型センサアクチュエータボックス

Phoenix Contactでは、スペースに制約のある小型アプリケーション向けに、1692404 4ポート・センサアクチュエータボックスを設計しました(図3)。このボックスにはホームランケーブルがなく、制御コンピュータとの接続には別途M23ケーブルアセンブリが必要となるため、簡単に再配置することができます。また、ホームランケーブルが破損した場合でも、簡単にメンテナンス・交換できます。

Phoenix Contact 1692404センサアクチュエータボックスの画像図3:Phoenix Contact 1692404センサアクチュエータボックスには4ピンのM12ポートが4つあります。制御コンピュータとの接続には、外付けのM23ケーブルアセンブリが必要です(画像提供:Phoenix Contact)。

1692404の素材であるポリアミドは、ガソリンやモータオイル、エンジン付近に通常存在する溶剤に対して高い耐性を持っています。また、ポリアミドは非常に高い引張り強度を持っており、非衝撃応力や非衝撃曲げにも他の素材よりもよく耐えられます。本ユニットはIP67に準拠し、動作温度は-20℃~75℃で、倉庫やオフィスビルのほか、化学薬品を扱う作業者が多い場所での過酷な使用に適しています。

4つのM12コネクタはそれぞれ最大4Aまで流すことができますが、合計での最大定格電流は12Aです。4つのM12ポートにそれぞれ付いている黄色のLEDが点灯した場合は、ポートが正しく嵌合して動作していることを示します。M23ポートに付いている緑色のLEDが点灯した場合は、ホームランケーブルが正しく嵌合され、ボックスに電源が供給されていることを示します。これは、セットアップや構成時の診断に役立ちます。4つのM12レセプタクルに接続されたすべてのセンサとアクチュエータは、1つのM23コネクタを取り外すことで簡単に取り外すことができます。これにより、安全性が向上し、メンテナンスや再構成時のダウンタイムが減少します。

まとめ

センサアクチュエータボックスは、制御コンピュータとセンサ/アクチュエータ間の接続を安定させることで、メンテナンスやセットアップの時間を短縮することができます。多くのセンサやアクチュエータを、制御コンピュータまで個別に配線することなく、近くのプロセスエリアで簡単に接続することができます。本ボックスは、素材が適切に選定されているため、対象となる産業環境で安定的に動作することが保証されています。

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著者について

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Bill Giovino

Bill Giovino氏は、シラキュース大学のBSEEを持つエレクトロニクスエンジニアであり、設計エンジニアからフィールドアプリケーションエンジニア、そしてテクノロジマーケティングへの飛躍に成功した数少ない人の1人です。

Billは25年以上にわたり、STMicroelectronics、Intel、Maxim Integratedなどの多くの企業のために技術的および非技術的な聴衆の前で新技術の普及を楽しんできました。STMicroelectronicsでは、マイクロコントローラ業界での初期の成功を支えました。InfineonでBillは、同社初のマイクロコントローラ設計が米国の自動車業界で勝利するように周到に準備しました。Billは、CPU Technologiesのマーケティングコンサルタントとして、多くの企業が成果の低い製品を成功事例に変えるのを手助けしてきました。

Billは、最初のフルTCP/IPスタックをマイクロコントローラに搭載するなど、モノのインターネットの早期採用者でした。Billは「教育を通じての販売」というメッセージと、オンラインで製品を宣伝するための明確でよく書かれたコミュニケーションの重要性の高まりに専心しています。彼は人気のあるLinkedIn Semiconductorのセールスアンドマーケティンググループのモデレータであり、B2Eに対する知識が豊富です。

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