熱電冷却用の高度なペルチェモジュールの選択と使用

著者 Jeff Smootは、Same Skyでアプリケーションエンジニアリングおよびモーションコントロール担当副社長を務めています。

さまざまな種類の電子機器において、熱電冷却は急速に現実的な課題になりました。現在市場で見られるデバイスはコンパクトで高効率です。高度な内部構造を備えることで、過去にこの種のデバイスの採用の機会を狭めていた信頼性の課題を克服しています。

レーザーダイオードやイメージセンサなどの電子部品を一定の温度に保つことは、高出力レーザー、研究所内基準標準器、分光器、暗視装置などの機器が正常に機能するために重要です。場合によっては周囲の温度よりも低い冷却が必要になります。ヒートシンクと強制空気冷却の組み合わせによる単純な受動冷却では、このような需要を満たすことが困難な場合があります。熱負荷の変化に対する反応が遅かったり不正確だったりするためです。また、周囲の温度よりも高い熱源温度の温度勾配に依存しています。

一般的に使用されている受動冷却手法に代わる熱電冷却には、多くの利点があります。正確な温度制御と早い反応、ファンを使用しない運用の可能性(ヒートシンクの性能による)、ノイズの抑制、空間の削減、消費電力の削減、部品を周囲の温度よりも低い温度に冷却する能力などが得られます。

ペルチェ素子:原理と構造

ペルチェ素子の内部構造は、N型とP型のテルル化ビスマス素材から作られた半導体ペレットで構成されています。このペレットの配列は電気的には直列に接続されていますが、モジュールの高温と低温のセラミック表面の間の熱移動を最大化するために、熱に関しては並列に配置されています(図1)。

Same Skyの一般的なペルチェ素子の画像

図1:一般的なペルチェ素子の内部構造(画像提供:Same Sky

熱電冷却はペルチェ効果を利用しています。この効果は、電流が流れると2種類の異なる導体の接合部の間で熱が吸収または放出される現象として観測されます。熱電モジュールは、熱伝導性の高い2つのセラミックプレートの間に挟まれたペルチェ素子で構成され、電源を備えており、デバイスの一方のセラミックプレートからもう一方のプレートへ熱を効率的に移動させることができます。また、電流の向きを逆にすることで簡単に熱の流れる方向を変えることができます。

直流電圧を加えることで、正および負の電荷が運ばれます。これによって一方の基板表面から熱が吸収されて運ばれ、反対側の基板に放出されます。このため、エネルギーが吸収される表面は冷たくなり、エネルギーが放出される反対側の表面は熱くなります。

冷却ユニットの構成

実用的な熱電冷却ユニットを作成するために、ペルチェモジュールはシステムに組み込まれます。通常このシステムはアルミニウム合金などの熱伝導性の高い金属ブロックとフィンを備えたヒートシンクで構成されます(図2)。金属ブロックは、冷却するデバイス(レーザーダイオードやイメージセンサなど)を冷却素子の低温側に接触させるために使用されます。ブロックの厚さは平坦さを維持するように選択され、ペルチェ素子の冷却板との安定した熱的接触を実現します。厚すぎると望ましくない熱慣性が生じることに注意します。ヒートシンクはペルチェ素子の反対側または熱板に取り付けられ、取り出された熱が周囲の環境に放出されます。放熱グリスなどの熱伝導材料(TIM)の薄い層がそれぞれの表面に使用されます。

Same Skyによって組み立てられたペルチェ素子、アルミニウムブロック、ヒートシンクの図

図2:ペルチェ素子、アルミニウムブロック、ヒートシンクが組み合わされて冷却システムが作られます。(画像提要:Same Sky)

モジュールとコントローラの選択

すべてを備えた熱電冷却システムは、ペルチェ素子とヒートシンクの組み合わせ、熱板と冷却板をモニタする温度センサ、およびモジュール全体の望ましい温度差を維持する正しい電流を供給するためのコントローラで構成されます。

コントローラとペルチェモジュールは、ペルチェモジュールのデータシートで示された最大熱容量(Qmax)または最大温度差(ΔTmax)を超えることなく、冷却されるコンポーネントからの熱と供給電流のジュール加熱効果による熱を放出できるように選択します。選択したペルチェモジュールが適切な電流で動作しているときに望ましい温度差を維持できるように、最大温度差と最大電流についても考慮する必要があります。これは通常最大定格電流の70%よりも小さくする必要があります。ジュール熱が制御可能な範囲内に収まるように、またシステムが熱暴走を起こさずに冷却板の温度の短期的な上昇に対応できるようにするためです。

電流と熱吸収の計算

望ましい温度差と電源の動作電圧が既知の場合、データシートに書かれている機能ダイアグラムを使用して熱放散と動作電流をモジュールから計算できます。

たとえば、図3に示す機能ダイアグラムを使用して、移動する熱と供給される電流を求めることができます。熱板の温度(Th)を50°C、冷却板の温度を10°C、供給電圧を12Vとします。

データシートの機能ダイアグラムを使用した設定の計算のグラフ

図3:データシートの機能ダイアグラムを使用した設定の計算(画像提供:Same Sky)

動作電流と熱吸収を求めるには次のようにします。

  1. ΔTを求めます。

    ΔT = Th – Tc – 50°C – 10°C = 40°C

  2. Th = 50°Cの機能ダイアグラムを使用して、供給電圧でΔT = 40°Cを維持する電流を求めます。

    ダイアグラムから、I = 3.77A

  3. 機能ダイアグラムから、I = 3.77AおよびΔT = 40°Cで移動する熱を求めます。

    ダイアグラムから、Qc = 20.75W

ペルチェモジュールの熱疲労

熱電冷却システムは熱疲労の影響を受ける場合があります。従来の手法で製造されたユニットでは、電気的な相互接続(銅)とP/N半導体素子の間は通常のはんだ付けが行われています。また、電気的な相互接続とセラミック基板の間ははんだ付けまたは焼結が行われています(図4)。これらのボンディング技術は通常強固な機械的、熱的、および電気的な結合を形成しますが、これらには柔軟性がなく、通常のペルチェモジュールの一般的な動作である加熱と冷却のサイクルの繰り返しによって劣化し、やがて故障する可能性があります。

従来のペルチェモジュールのはんだ付けと焼結の図

図4:従来のペルチェモジュールのはんだ付けと焼結(画像提供:Same Sky)

Same Skyでは熱疲労の影響を克服するためにペルチェモジュールのarcTEC™構造を考案しました。arcTEC構造では、銅による電気的な相互接続とモジュールの冷却サイドのセラミック基板の間の従来のはんだ付けを、熱伝導性の高い樹脂で置き換えます。この樹脂によってモジュール内部で弾力性のある結合が行われ、繰り返される熱サイクルの間に生じる膨張と収縮に対応できるようになります。この樹脂の弾力性によってモジュール内のストレスが軽減される一方で、より優れた熱的な結合と機械的な結合が得られます。時間の経過に伴う性能の著しい低下も見られません。

また、P/N半導体素子と銅の相互接続の間に通常使用されているBiSn(ビスマス-スズ)はんだを特殊なSbSn(アンチモン-スズ)はんだに置き換えています(図5)。SbSnはんだはBiSnの138°Cの融点よりも高い235°Cの融点を持つため、より優れた熱疲労性能とせん断強度を備えています。

信頼性と熱性能を大幅に高めるarcTEC構造強化の図

図5:信頼性と熱性能を大幅に高めるarcTEC構造強化(画像提供:Same Sky)

信頼性と熱性能の向上

信頼性をさらに高めるために、arcTEC構造のモジュールのP/N素子はプレミアムシリコンで作られており、他のモジュールで採用されているものよりも最大2.7倍広くなっています。これによってより均一な冷却性能が得られ、動作寿命が短くなるリスクに関わるむらのある温度を避けることができます。図6は、従来のペルチェモジュール(上)とarcTEC構造のモジュール(下)の赤外線画像を比較することによって、温度分布の効果を示しています。arcTEC構造のモジュールの優れたP/N素子は、冷却時間も50%以上改善します。

arcTEC構造のモジュールの向上した温度分布の画像

図6:従来のモジュール(上)と比較したarcTEC構造のモジュール(下)の向上した温度分布(画像提供:Same Sky)

arcTEC構造のモジュールにおける寿命の伸びの予測は、熱サイクルにさらしたペルチェモジュールの内部抵抗の変化を解析することによって示すことができます。ペルチェモジュール内の抵抗の変化は結合部の障害と密接にリンクしているため、この傾向を分析することによって有益な寿命の指標が得られます。図7に示した結果は、arcTEC構造によっ可能となった寿命予測の大幅な改善を明示しています。

抵抗の変化のモニタリングによる信頼性評価のグラフ

図7:抵抗の変化のモニタリングによる信頼性評価(画像提供:Same Sky)

まとめ

熱電冷却の物理現象は何世代もの間知られていましたが、ペルチェモジュールの登場により、商用の電子製品向けに開発する準備が整ったのは比較的最近のことです。熱電冷却には、すばやい反応、温度の安定性の向上、およびIC、レーザーダイオード、センサなどの重要なデバイスの温度管理の柔軟性などの多くの利点があります。設計者がペルチェモジュールを使用した製品やその設計手法に慣れるに従って、その新しい革新的な適用が広がると期待されています。

ペルチェモジュールが温度限界内で適切に動作するためには、ペルチェモジュールの選択や制御回路の設計に注意が必要です。現在最も進んだペルチェモジュールは、柔軟な内部相互接続や高純度のP/Nペレットを使用して設計されており、熱応答や信頼性に関して大幅に改善されています。

リソース

  1. Same Skyのペルチェモジュールの全製品を閲覧
  2. Same SkyのペルチェモジュールPTMによる熱電冷却についての詳細
  3. Same SkyのarcTEC構造の詳細を表示
 

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Jeff Smootは、Same Skyでアプリケーションエンジニアリングおよびモーションコントロール担当副社長を務めています。

Same SkyのJeff Smootによって提供された記事です。