柔軟な開発プラットフォームによるMCUおよびMPUプロジェクトの加速
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2025-12-11
組込みシステムとその応用分野は急速に多様化しており、それに対応するプロセッサも同様に多様化しています。これに対応するため、組み込みプロセッサはますます高度化しており、技術者には機能面で重複するケースも多い選択肢が、ますます増え続けています。選択肢が増えることは常に歓迎されますが、その可能性を探る作業には膨大な時間を要する可能性があります。このような変化の激しい環境で成功するためには、開発者は、マイクロコントローラユニット(MCU)からマイクロプロセッサユニット(MPU)に至るまで、複数のシリコンオプションを迅速に評価する手段を必要とし、同時に試作プロセスを効率化することが求められます。
設計者を支援する1つの方法は、ハードウェアに対してビルディングブロック方式を採用することです。簡素化された開発ボードと、豊富な拡張モジュールライブラリおよびサポートソフトウェアを組み合わせることで、設計者は必要に応じて自由に組み合わせることができます。
本記事では、組込みシステムの設計要件がどのように変化しているか、そしてそれらの変化がプロセッサ選定にどのような意味を持つのかを説明します。その後、NXPのプラットフォームが、低消費電力MCUから高度に統合されたLinuxクラスのMPUおよびアプリケーションプロセッサまで、複数のプロセッサクラスを探索することを設計者にどのように可能にするかを示します。
曖昧になる組込み設計の境界
最近まで、ほとんどの組み込みアプリケーションは、明確に定義された境界を持つカテゴリに分類されていました。単純なI/Oおよび制御ロジックは8ビットMCUの領域であり、32ビットMCUは複雑なリアルタイムタスクを処理していました。完全なオペレーティングシステム(OS)やグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を必要とするアプリケーションは、MPUの領域として確立されていました。
今日、これらの境界は曖昧になっています。従来はスタンドアロンアプリケーションであったものが、高度なコネクティビティ機能を備えるようになったことで、多くの従来の8ビットアプリケーションが32ビットの領域へと移行しています。複雑なソフトウェアスタックが、リアルタイムアプリケーション全体に普及し、MCUおよびMPUアプリケーションの要求が融合しています。同時に、人工知能(AI)と機械学習(ML)がますます幅広いアプリケーションに統合されつつあります。
プロセッサクラスの区別も曖昧になってきています。高性能MCUには、かつてはハイエンドMPUにのみ搭載されていたグラフィックスアクセラレータやAI/ML機能が、今や搭載されるようになりました。MPUには、以前はMCUでしか利用できなかったリアルタイム機能が追加されています。さらに複雑さを増しているのは、ハイエンドグラフィックスやAI、その他の高度な機能への需要が高まったことで、携帯電話からアーキテクチャを借用したアプリケーションプロセッサが登場したことです。
こうした変化は、イノベーションが加速し続ける中で起こっています。設計サイクルの開始から製品発売までの間に、市場の動向がプロジェクトの要件を大きく変える可能性があります。たとえば、ヘッドレスのMCUベース設計に突然タッチスクリーンが追加されることで、MPUへの移行が必要になるケースも考えられます。逆に、製品マーケティングチームが最終段階で、ハイエンド製品にはエントリレベルバージョンを併せて提供すべきだと判断し、低価格のプロセッサを急いで探す必要が生じることもあります。
こうした動向と変化により、設計者がさまざまな選択肢を容易に検討できるプロセッサ評価エコシステムが必要とされています。従来の評価ボードでは、この需要に応えるのは困難でした。多くの場合、プロセッサファミリの主要機能をすべて実証することを目的とする場合が多く、限られた用途向けに最適化された複雑な設計を使用する傾向があったためです。その結果、あるボードに投入した労力を別のボードに転用できることはほとんどありませんでした。
柔軟なプラットフォームにより、プロセッサ評価の迅速化が可能に
組込みシステム設計者のニーズに対応するため、NXPはこの問題を新たな視点で捉え直し、FRDM開発プラットフォーム(図1)を開発しました。FRDMボードは、あらゆる機能を詰め込むのではなく、プロセッサ、メモリ、基本I/Oといった必要な要素のみを搭載しています。アプリケーション固有の機能は、Arduino(Arduino)、Pmod(Digilent)、mikroBUS(MikroElektronika)といった拡張ヘッダの広範なエコシステムを活用することで追加可能です。NXPはこのモジュール式を、ディスプレイ、センサ、通信インターフェースなどのオプションを提供する拡張ボードハブでサポートしています。
図1:FRDMボードには必要最小限だけの機能のみを搭載し、ディスプレイやI/Oなどの機能は標準ベースの拡張ボードに任せています。(画像提供:NXP)
このビルディングブロック方式により、機能拡張やプロジェクト横断的なハードウェアの再利用が容易になります。拡張モジュールは業界標準インターフェースを共有するため、同一の周辺機器ボードを異なるプロセッサで評価することができます。たとえば、設計者はエントリレベルのMCUプラットフォームでセンサモジュールを検証した後、試作品を再設計することなく、そのハードウェアをそのまま高性能MPUで再利用することができます。
この柔軟性を強力なものにしているのは、FRDMプラットフォームがサポートするArmベースのプロセッサの幅広さです。ラインナップは、超低消費電力のエントリレベルMCUから始まり、モータ制御、グラフィックス、ワイヤレスコネクティビティ向けに最適化されたオプションを含む、豊富な機能を備えた幅広いデバイスへと広がっています。ハイエンドでは、ギガヘルツ(GHz)クラスの性能とAIアクセラレータなどの高度な機能を備えたMPUやアプリケーションプロセッサが網羅されています。
エントリレベルMCU開発ボードでの導入方法
FRDM-MCXC444(図2)は、FRDMプラットフォームの利点を示しています。このエントリレベルのボードは、コスト重視の組み込みアプリケーション向けに、MCXC444VLHMCUを搭載した超低消費電力の基盤を提供します。このMCUはNXPのMCX Cシリーズの一部で、電力効率と低コストが最優先されるアプリケーション向けに設計されています。
図2:FRDM-MCXC444エントリレベルボードは、低消費電力のMCXC444VLH MCX CシリーズMCU、小型LCD、USBポートを搭載しています。(画像提供:NXP)
MCXC444VLHは、最大48メガヘルツ(MHz)で動作するArm Cortex-M0+コアを中核として構築されています。超低消費電力動作モードでは4マイクロアンペア/MHz(μA/MHz)、ディープスリープモードではわずか1.96μAしか消費しません。この低消費電流により、バッテリ駆動のアプリケーションに特に適しています。
MCXC444VLHのもう1つの特長は、セグメントLCDコントローラを内蔵していることです。外部ドライバを必要とせず、最大24 × 8または28 × 4セグメントの表示をサポートします。また、外付け水晶振動子を必要としないフルスピードUSB 2.0機能を搭載しており、これにより部品表(BOM)コストと基板の複雑さを軽減します。
FRDM-MCXC444ボードは、内蔵LCDとUSBによりこれらの機能を実現しています。その他の注目すべき機能として、加速度センサと光センサを搭載しており、センサ駆動設計の試作を可能にしています。本ボードは、シンプルなユーザーインターフェースと定期的な接続を必要とするバッテリ駆動デバイスにとって出発点となります。
主流のMCU開発ボードでモータ制御を迅速に開始
中級モデルであるFRDM-MCXA346(図3)は、FRDMプラットフォームがより高度な制御タスクをサポートする方法を示しています。このボードはモータ制御をターゲットとしており、NXPのMCX Aシリーズの一部であるMCXA346VLQ MCUを搭載しています。このMCUは、高度な統合を必要とする主流アプリケーション向けに設計されています。
図3:FRDM-MCXA346評価ボードは、MCXA346VLA MCX AシリーズMCUをベースとしており、CAN FDを含む産業制御向けの豊富な機能を提供します。(画像提供:NXP)
MCXA346VLQは、180MHzで動作するArm Cortex-M33コアを中核としてします。1メガバイト(Mバイト)のフラッシュメモリと256キロバイト(Kバイト)のスタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)を搭載し、アプリケーションコードやデータのための十分なストレージを提供します。このプロセッサの浮動小数点ユニット(FPU)とデジタル信号処理(DSP)の拡張機能により、複雑な制御アルゴリズムに最適です。
モータ制御アプリケーション向けに、MCXA346VLQは包括的なハードウェアサポートを提供します。2つのFlexPWMモジュール(各モジュールに4つのサブモジュールを内蔵)により、ブラシレスDC(BLDC)および永久磁石同期モータ(PMSM)を駆動するための最大16個の相補パルス幅変調(PWM)出力を提供します。4つの16ビットA/Dコンバータ(ADC)は、1秒当たり最大3.2メガサンプル(Mサンプル/秒)のサンプリング速度を実現し、複数のモータ相にわたる精密な監視を可能にします。2つの直交エンコーダ/デコーダ(eQDC)モジュールがローター位置フィードバックを処理し、2つの論理演算(論理積/論理和/論理否定)(AOI)モジュールが複雑な制御シーケンスのためのハードウェアロジックを提供します。
FRDM-MCXA346ボードは、産業用ネットワークアプリケーション向けのフルスピードUSBおよびCAN FDを含む主要I/Oへの直接アクセスを提供します。本ボードは、パラレルディスプレイとカメラインターフェースをサポートしており、外部ハードウェアを必要とせずにGUI開発が可能です。これらの特長により、このボードはヒューマンマシンインターフェース(HMI)を必要とする産業用機器の開発に最適です。
高性能MPU開発ボードでエッジAIを実現
FRDMの最上位モデルであるFRDM-IMX8MPLUS(図4)は、このプラットフォームがMCUを超えて完全なアプリケーションプロセッサ設計を包含する方法を実証しています。本ボードはNXPのi.MX 8M Plusファミリに属するMIMX8ML8DVNLZABをベースとしており、マルチコアGHz-plusプロセッサとAIアクセラレータを搭載しています。
図4:FRDM-IMX8MPLUS開発ボードは、i.MX 8M PlusファミリのMIMX8ML8DVNLZAB MPUをベースにしており、豊富なマルチメディアインターフェースとAIアクセラレータを備えています。(画像提供:NXP)
具体的には、FRDM-IMX8MPLUSは、最大1.8GHzで動作する4つのArm Cortex-A53コアと、800メガヘルツ(MHz)で動作する専用のCortex-M7リアルタイムコア、および2.3テラオペレーション/秒(TOPS)を実現するニューラルプロセッシングユニット(NPU)を組み合わせています。このヘテロジニアスアーキテクチャは、コンピュータビジョン、音声認識、その他のAIアプリケーションのための堅牢な基盤を提供すると同時に、リアルタイム制御もサポートします。
マルチメディアおよびコネクティビティに関しては、ボードは包括的なインターフェースセットを提供します。HDMI 2.0、MIPI-DSI、デュアル低電圧差動信号伝送(LVDS)出力はディスプレイ開発をサポートし、デュアルMIPI-CSI入力はビジョンアプリケーション向けのカメラ統合を可能にします。ネットワークと拡張性も同様に多機能で、デュアルギガビットEthernet、USB 3.0、オンボードWi-Fi 6/Bluetooth 5.4/802.15.4のトライラジオモジュールを搭載しています。
包括的なソフトウェアサポートで開発を加速
FRDMプラットフォームのハードウェアの柔軟性は、全プロセッサにわたる開発を効率化するために設計された包括的なソフトウェアリソースによって補完されています。NXPは、リアルタイムMCU向けと高性能MPU向けの2つのソフトウェア開発パスを提供することでこれをサポートしています。
MCU開発向けに、NXPはソフトウェアおよびツールのMCUXpressoスイートを提供しています。これは、Cortex-Mプロセッサ(MCX CやMCX Aなど)向けの包括的なスイートであり、MCUXpresso統合開発環境(IDE)、VS Code拡張機能、設定ツール、および高品質のソフトウェア開発キット(SDK)が含まれています。このパスはリアルタイムアプリケーション向けに設計されており、IAR SystemsのEmbedded WorkbenchやKeil MDKなど、使い慣れた組込みIDEをサポートしています。
NXP は、i.MX 8M PlusなどのプロセッサにおけるMPU開発については、Yocto ProjectおよびDebian向けのボードサポートパッケージ(BSP)など、組み込みLinuxに対する強力なサポートを提供しています。迅速な開発のため、NXPはGoPointを提供しています。これはコンピュータビジョン、AI、マルチメディアなどの高度なアプリケーション向けに、構築済みのLinuxベースのデモとステップバイステップガイドを収めたリポジトリです。
MCU側での試作を加速するため、NXPはMCUXpressoアプリケーションコードハブも提供しています。これは、NXPのエキスパートおよびパートナーにとって開発されたソフトウェアのサンプルやアプリケーションデモを一元管理したリポジトリです。このハブでは、モータ制御、センシング、AIなど、180以上のコードサンプルを提供しています。これらのサンプルは、FRDMボードで直接動作するように設計されており、1つのFRDM MCUボード上で構築したアプリケーションの試作を、最小限の変更で互換MCUのある別のMCUへ移行することができます。
まとめ
組込みシステムの要件が進化し、重複するようになるにつれて、技術者は複数のプロセッサを効率的に試して、アイデアを迅速に試作品にする効率的な方法を必要としています。NXP FRDMプラットフォームのモジュール式ハードウェアと共有ソフトウェアリソースは、この探索を現実的なものとし、低消費電力MCUからミッドレンジ制御、LinuxクラスのAI対応MPUに至るまで、あらゆるものをサポートします。拡張性とコードの再利用を標準化することで、設計の規模拡大に伴う柔軟性を維持しつつ、構想から動作するプロトタイプまでのプロセスを短縮します。
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