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スペクトラムアナライザ:その正体と各種タイプ

あなたが電気技術者なら…スペクトラムアナライザ(スペアナ)を使用したことがありますか?

ほとんど(願わくはすべて!)の電気技術者、そして電気以外の分野でも多くの技術者は、オシロスコープが何かをご存じで、使用されたことがあるでしょう。おそらく、大半の電気技術者の方々は、大学1年生のときにはオシロスコープと向き合う機会があったはずです。ところが、スペクトラムアナライザとなると話は別で、活躍中の電気技術者の方でも、それが何かご存じでなく、まして使ったことなどないかも知れません。

スペクトラムアナライザとは何か?

多くの電気技術者にとって、スペクトラムアナライザはオシロスコープのように見えますが、実際にはグラフィックスを含めてさらに多機能です。オシロスコープとスペクトラムアナライザは両方とも信号の振幅を縦軸に示しますが、横軸には両者の違いが現れます。オシロスコープは時間を示し、一方でスペクトラムアナライザは周波数を示します。次の図に、RigolのDSA815-TGスペクトラムアナライザに表示されている複数の周波数測定値を示します。

図1:スペクトラムアナライザは、横軸に周波数測定値を表示します。(画像提供:Rigol Technologies[1])

Keysight Technologiesによると、スペクトラムアナライザ(スペアナ)は、「その全周波数範囲内で周波数に対する入力信号の強度を測定し、その主な用途は、既知の信号と未知の信号のスペクトラムのパワーを測定すること」です。[2]言い換えれば、スペクトラムアナライザを使うことで「スペクトルを分析」できるのです。ここではスペクトルを、正弦波がまとまって時間領域信号を生成するものと定義します。

例として、オシロスコープの信号を見てみましょう(図2)。

図2:オシロスコープに表示される信号(画像提供:Agilent Technologies[3])

この信号は明らかに純粋な正弦波ではありませんが、スペクトラムアナライザではこの信号を構成するそれぞれの正弦波を測定します。そして、スペクトラムアナライザはこれらの波形を特定すると、個々の波形の振幅と周波数を縦軸と横軸にプロットします。図3に示すように、図2の信号は2つの正弦波のみで構成されています。

図3:時間領域信号(オシロスコープに表示される)と周波数領域信号(スペクトラムアナライザに表示される)の関係(画像提供:Agilent Technologies[3])

スペクトラムアナライザのタイプ:技術タイプとフォームファクタ

スペクトラムアナライザには、掃引同調アナライザとリアルタイムアナライザ(またはリアルタイムスペクトラムアナライザ、RTSA)という2つの主要なカテゴリがあります。両タイプとも長年使用されており、縦軸に振幅、横軸に周波数を表示しますが、「スペクトラムの分析」をどのように行うかに両タイプの違いが表れます。

掃引同調タイプのスペクトラムアナライザが「自動的に同調(掃引)される周波数範囲での周波数選択性を持つ電圧計にすぎない」[4]とするなら、これらの従来タイプのアナライザが「無線受信機から派生したもの」と考えても驚くにはあたりません。[4]そして掃引同調スペクトラムアナライザは「特定のスパンですべての周波数を同時に測定できない」ので[4]、主に定常状態または繰り返しの信号を測定するために使用されます。これらのアナライザは、数十年にわたりコンプライアンスエンジニアリングのコミュニティ(プリコンプライアンス試験や電磁両立性(EMC)/電磁干渉(EMI)試験に関係する)でその役割を果たしてきました。

掃引同調タイプのスペクトラムアナライザとは異なり、リアルタイムスペクトラムアナライザはすべての周波数を同時に測定できます。リアルタイムスペクトラムアナライザの動作は、最初に時間領域でデータを取得し、次にそのデータを周波数領域に変換しますが、この変換には高速フーリエ変換(FFT)を使用します。

スペクトラムアナライザには、ベンチトップ型(図4)、ハンドヘルド型(図5)、ポータブル型など、さまざまなフォームファクタがあります。

図4:Teledyne LeCroyのT3SA3200ベンチトップスペクトラムアナライザは、9kHz~3.2GHzの周波数範囲に対応します。(画像提供:Teledyne LeCroy[5])

図5:Seeed TechnologyのRF Explorerモデル2.4Gは、2.35GHz~2.55GHzに対応するハンドヘルドスペクトラムアナライザです。(画像提供:Seeed Technology)

通常、ベンチトップモデルはハンドヘルドタイプよりも性能が優れますが、価格はより高額になります。ハンドヘルドスペクトラムアナライザは手ごろな価格でより小型ですが、ベンチトップアナライザに比べて機能は限定的です。ポータブルアナライザは、バッテリパックを搭載するため作業現場への持ち込みが可能なアナライザ(一部ベンチトップタイプを含む)です。

結論

すべての(と願う!)電気技術者はオシロスコープが何かをご存じで、使いこなすこともできるでしょう。一方、スペクトラムアナライザの使用経験があるのは一部の電気技術者に限られるかもしれません。オシロスコープと一部のスペクトラムアナライザ(ベンチトップタイプ)は、フォームファクタとディスプレイがよく似た外見ですが、中身はまったく異なります。スペクトラムアナライザは、測定したデータを振幅対周波数の形式で表示し、オシロスコープは測定した情報を振幅対時間で表示します。しかし、ニーズと予算に応じて各種のスペクトラムアナライザ製品が提供されているのは、オシロスコープと同様です。

 

参照資料:

1 – Rigol Technologies、“DSA800 Spectrum Analyzer Datasheet”(3ページ)

2 – Keysight Technologies、“What is a Spectrum Analyzer?”

3 – Agilent Technologies、“Agilent Spectrum Analysis Basics”(4~5ページ)

4 – Keysight Technologies、“Different Types of Analyzers”

5 – Teledyne LeCroy、“T3SA3100/T3SA3200 Data Sheet”(2ページ)

著者について

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Nick Davis氏はアイダホ大学(アイダホ州の美しいモスコー市所在)で電気工学の理学士号を取得しています。氏は、従業員50人未満のから30,000人以上の会社まで、大小さまざまな企業で仕事をしてきました。エンジニアリング分野で18年以上の経験を持つ氏は、設計エンジニア、システムエンジニア、製造エンジニア、テストおよび検証エンジニアなど、多様な職責を果たしてきました。氏の現在の関心は、マイクロコントローラベースのエレクトロメカニカルシステムの開発、PCB回路図およびレイアウト設計ファイルの作成、3D CADモデリング、および起業家精神などにあります。

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