ブレッドボードとプロトタイプボードを理解してプロジェクトを円滑に始める

コンピュータや回路シミュレーションソフトウェアが普及する前の時代に、電子機器設計者は、回路の性能を評価する手段として、既に製図版からブレッドボードへと移行していました。Spiceシミュレーションやその亜種がある現在でも、試作しなければならない回路は存在しています。たとえば、オーディオ回路の音はSpiceでは分からないので、ブレッドボードで作る必要があります。

私の若い頃は、ブレッドボードというと、文字通りの板、それも台所にあるまな板のようなものを指していました(図1)。

図1:往年のブレッドボード試作の一例。木製の板に部品をネジ止めし、接続部の代わりに釘を使用していました。(画像提供:Bud Industries)

幸いなことに今日では、お母さん方が使うまな板ではなく、無はんだブレッドボードやプロトタイププリント回路基板(プリント基板)を使用することができます。無はんだブレッドボード端子ストリップの良い例は、Bud IndustriesBB-32621で、サイズは3.2インチ x 2.08インチです(図2)。

図2:BB-32621は、小型の無はんだブレッドボード用端子ストリップの一例です。(画像提供:Bud Industries)

ボードは、電源(+)と負電源またはグランド(-)を分配するために、ボードの長さ方向に4つの、横方向の電源ストリップが配置されています。縦方向には、短いストリップがボード幅全体に並んでいます。これらは、コンポーネントのタイポイントです。タイポイントバスは、多くのスルーホールICに適した幅の中央チャンネルで分離されています(図3)。

図3:電源ストリップ導体とタイポイント導体の配置を示す、BB-32621の内部図(画像提供:Bud Industries)

ブレッドボード上のホールの間隔は、0.1インチ(2.54mm)であり、多くのスルーホールICの場合と一致しています。無はんだ端子ストリップには、合計400個のタイポイントを持つことが可能です。部品タイポイント接続用が300個、配電接続用が100個です。ICは中央のチャンネルの上に横方向に配置されています(図4)。

図4:シンプルな555タイマ回路とそれに対応するブレッドボードレイアウト(画像提供:Bud Industries)

スルーホールICがなくなり、面実装デバイス(SMD)が主流になりつつある現在、SMDと無はんだブレッドボードを嵌合するためにソケットアダプタが必要になる場合が増えています。Logical Systems Inc.PA-SOD3SM18-16は、面実装-DIPパッケージ変換アダプタの一例です(図5)。

図5:PA-SOD3SM18-16は、SOIC ICを、無はんだブレッドボードに適したピン間隔0.1インチの16ピンDIPパッケージに適合させます。(画像提供:Logical Systems Inc.)

より大きなプロジェクトには、Digilent Inc.340-002-1のような無はんだブレッドボードを使用することができます。これは9.06インチ x 6.89インチ(230 x 175mm)のフレームマウント型ブレッドボードです(図6)。

図6:340-002-1は、スチールフレームにマウントされた、より大きなプロジェクト用の大型無はんだブレッドボードです。(画像提供:Digilent Inc.)

340-002-1は、630タイポイント端子ストリップ3個と100ポイント配電ストリップ5個をスチールのバッキングプレートに取り付けた複合型ブレッドボードです。電源とグランドの接続用に4つのバインディングポストを備えています。

このブレッドボードは、教育プロジェクトや低周波回路に最適な無はんだブレッドボードです。また、使用する導体が大きいため寄生インダクタンス/静電容量が大きく、高周波回路や遷移時間が短いデジタル回路には向いていません。このようなプロジェクトは、Bud IndustriesのEXN-23404-PCBのようなプロトタイププリント基板(図7)で製作することをお勧めします。

図7:プリント回路プロトタイプボードの典型例で、格子状に並んだホールに部品がはんだ付けされています。(画像提供:Bud Industries)

このプロトタイププリント基板は4.02インチ x 3.87インチ(102.1 x 98.3mm)であり、厚さ0.063インチ(1.6mm)のFR4エポキシガラスで製作されています。そのメッキスルーホールグリッドアレイでは、直径0.051インチ(1.3mm)のホールが0.1インチ(2.54 mm)間隔で配置されています。このタイプのプロトタイプボードは、浮遊リアクタンスを最小限に抑え、ホール同士が近いため配線も非常に短くすることができます。グランドプレーンは、プリント基板の特定の場所に銅箔をはんだ付けすることで作成できます。面実装ICは、無はんだブレッドボードの場合と同様に、0.1インチのホールパターンに嵌め込むアダプタを使って追加することが可能です。

まとめ

本稿では、回路を試作する際の簡単かつ一般的な方法を紹介しました。この方法は、プリント基板レイアウトを作成・製作するのに比べれば間違いなく使いやすく、回路を理解する上でも非常に役立ちます。ただし、限界もあることは認識しておいてください。

著者について

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Arthur(Art)PiniはDigiKeyの寄稿者です。ニューヨーク市立大学の電気工学学士号、ニューヨーク市立総合大学の電気工学修士号を取得しています。エレクトロニクス分野で50年以上の経験を持ち、Teledyne LeCroy、Summation、Wavetek、およびNicolet Scientificで重要なエンジニアリングとマーケティングの役割を担当してきました。オシロスコープ、スペクトラムアナライザ、任意波形発生器、デジタイザや、パワーメータなどの測定技術興味があり、豊富な経験を持っています。

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