アメリカにおけるフォトニクス人材の獲得
1970年代の暗黒時代に学位取得を目前にしていた私は、面白い就職面接を受けました。採用担当者は、私と面接してくれた理由を、「赤外線(IR)技術の科目を取った学部生に出会ったことがなかったから」と言ってくれました。
当時のIR技術の主な用途は、ミサイル誘導システムでした。IR技術に関連する光学は通常、大学院の科目であり、工学部卒でこの分野にある程度詳しい人は珍しかったようなのです。
今日、光学と光処理は、自律走行車からバーチャルリアリティに至るさまざまな分野でホットなトピックとなっています。しかし、フォトニクスの経歴を持つ人材を見つけるのは、まだまだ大変なようです。時代の兆しは、アリゾナ大学ワイアントカレッジオブオプティカルサイエンス(光学系大学)から見てとれるようです。つまり、「先日開催された採用イベントでは参加した同大学の学生数を求人数が上回った」という報告があったのです。しかし、フォトニクスは依然として主に大学院で専攻するテーマのようです。実際、ワイアントが授与する光学および光科学の学位の3分の2は通常、大学院の学位です。
(画像提供:Adafruit)
STEM人材の不足が叫ばれて久しいですが、フォトニクス分野は知名度が低いためこの問題が特に深刻化しています。有利な就職先がある分野を見つけるには、米国労働統計局(BLS)のウェブサイトが便利です。同ウェブサイトには、約800の職種の雇用と賃金の推定値が州、市区町村、職位で任される実質的権限などに分けて毎年掲載されます。しかし、BLSのデータから光学技術者に関する統計を見つけるのは難しいと思われます。この分野が、独自のカテゴリを築くにはまだ小さすぎるからです。このため、光学技術者に関する統計は「技術者、その他すべて」の分類にまとめられています。
技術者にとって最も有利な分野を見つけたい方は、BLSのサイトで答えを手に入れることができます。同サイトを見ると、石油技術者が最も高収入で、彼らの給与の中央値が130,850ドルであることがわかります。石油技術者の中央値は、第2位の技術分野であるコンピュータハードウェア技術者(128,170ドル)より数パーセント多くなっています。
消えようとしているように見える分野の技術者が、なぜこれほどまでに経済的に恵まれているのか、不思議に思われるかもしれません。その理由の一つは、石油工学が高度に専門化した分野であるためです。BLSのデータによると、この分野の技術者は2020年では28,500人程度しかいなかったそうです。そして、今年は、石油工学の学位を、ピーク時の2017年の2,300人より大幅に少ない約400人しか取得しませんでした。また、経験豊富な石油技術者の業界賃金が非常に高いため、学校では石油工学の教員を集めるのに苦労しているようです。
石油分野の給料が高いもう一つの理由は、この業界で既に働いている技術者たちが述べているように、労働条件が厳しいためです。石油技術者としての最初の数年間は、1日に12~18時間、週に6~7日の労働が続くことになります。この経験は決してワクワクするものではありません。そのため、より良い労働条件を求める人々を引き止めるためには、割増賃金が必要なわけです。
もちろん、STEM分野から職業を選ぶ際の検討ポイントは、給与だけではありません。他のファクターの数値によって仕事を探すには、Scholaroo.comというサイトがあります。このサイトは、学生が奨学金を見つけられるようにすることを主目的としていますが、103種類の大学学位を比較し、就職率と給与、仕事の安定性、キャリヤ構築コストなどのランキングも掲載しています。Scholarooでは、初任給の中央値からその分野の失業率まで、12の主要指標を考慮に入れています。興味深いことに、石油工学は、大学専攻分野としてScholarooで第3位につけています。しかし、上位2位は保険数理科学とコンピュータ工学が占めました。
保険数理科学は保険業界以外の人にはほとんど知られていないという点で、それを専攻分野として選択するのは興味深いものがあります。保険数理科学とは基本的に、数学、確率論、統計学を用いてリスクを定量化する分野です。これは石油工学と同様に比較的小さな分野であり、2020年には27,700人しか雇用されていません。また、給料も悪くなく、給料の中央値は134,400ドルです。また、優れた数値計算能力を必要とするもう一つの分野である応用数学も、Scholarooの専攻分野のトップ10にランクインしました。
数学を使用するこのような分野の儲け話から得られる教訓の一つは、このトレンドが、「Q:大きなピザと数学博士号の違いは何か。A:大きなピザなら家族4人が食べられるが、数学博士号は食べられない」という古いジョークに死を告げるものかもしれないということです。
そこで、フォトニクス工学という比較的地味な分野に話が戻ってきます。特にSTEM志向の強い10代の若者においてフォトニクス工学の地位を高めるよう、取り組みが行われています。たとえば、国防総省はAmerican Center for Optics Manufacturing(米国光学製造業センター) に、子供たちを光学分野に引き込むための取り組みを強化するよう要請しています。
現在、光学技術業界の給与の中央値は99,000ドル程度と思われます。しかし、110℃のテキサスの暑さの中で油まみれになるよりも光学研究室で一日を過ごす方が高い給与を得られるようになったときこそが、フォトニクス工学に焦点を当てた取り組みが成功したと分かるときでしょう。
Have questions or comments? Continue the conversation on TechForum, Digi-Key's online community and technical resource.
Visit TechForum