スイッチについて知っておくべきこと
2023-08-29
スイッチは私たちの日常生活に欠かせないものであり、種類も豊富で至る所で使用されています。小さなボタンスイッチから巨大な制御スイッチまで、数え切れないほどの形があり、さまざまな機能を網羅しています。この多様性は、機械式か電気式か、手動か電子制御かといった要因に影響され、最終的に美学やユーザーインターフェースにおける個人的な好みによることも多いです。
BJT、MOSFET、IGBT、その他の半導体設計などの技術に根ざした電子スイッチが、低コストと機能の拡張性により注目を集めている一方で、機械的に作動するスイッチは、依然としてスイッチソリューションの主力です。この記事では、特に物理的に操作されるモデルや作動するモデルに焦点を当てながら、スイッチの基本を掘り下げ、それらが形と機能の領域をどのように橋渡ししているのかを理解します。
スイッチの基本
スイッチ選びの出発点として、極と投の概念を把握する必要があります。簡単に言えば、極は1つのスイッチが制御できる回路の数を示し、投はスイッチが選択できるコンタクトの数を示します。この概念は、わかりやすい視覚的表現を用いることで最も効果的に理解できます。
図1:SPSTスイッチ図。(画像提供:Same Sky)
SPSTと呼ばれる単極単投のスイッチの場合、制御できる回路は1つで、スイッチは1つのコンタクトを開閉する機能を持つだけです。ここで、SPDTと呼ばれる単極両投で構成されたスイッチと対比してみましょう。
図2:SPDTスイッチ図。(画像提供:Same Sky)
SPDTスイッチでは、制御回路は1つのままですが、スイッチは2つの異なるコンタクト間を遷移することができます。SPDTでは、スイッチは単なる回路の開閉にとどまらず、むしろ回路の方向そのものを変えます。
図3:DPDTスイッチ図。(画像提供:Same Sky)
2極両投(DPDT)スイッチは、1つのスイッチで2つの回路を制御し、各スイッチは2つのコンタクトの間を移動します。SPST、SPDT、DPST、DPDTは最も一般的なスイッチ構成ですが、スイッチの極数や投数に理論的な制約はありません。極または投が3つ以上ある場合は、「S」または「D」の代わりに数字ラベルが使用されます。たとえば、4極5投のスイッチは、メーカーによって4P5Tスイッチと表示される場合があります。同様に、2極6投はDP6Tと表すことができます。
スイッチ選択の考慮事項
極と投以外にも、選択プロセスで考慮すべきスイッチの仕様がいくつかあります。より一般的な機能を以下にいくつか示しますが、決してすべてを網羅しているわけではありません。
- サイズ:先に述べたように、スイッチにはさまざまな形やサイズがあります。米粒よりも小さなスイッチから、手で動かすには大きすぎるスイッチまであり、通常は、用途によってサイズが決まります。産業環境では大型のスイッチが導入されることが多く、グローブが必要であったり、細かな動きが難しかったりします。一方、小型の組み込み機器では通常、可能な限り小さなスイッチが求められます。
- デフォルトの状態:多くのスイッチには、あらかじめ定義された状態がありません。ただし、モーメンタリスイッチは通常、あらかじめ設定されたノーマリオープン(NO)またはノーマリクローズ(NC)のいずれかの状態を示します。
- ポジション:このパラメータは、1つのユニット内に組み込まれるスイッチの数を決定します。この概念を「投」と同じだと勘違いされる場合がありますが、ポジションは同じユニット内の個々のスイッチを意味し、それぞれが独立した作動が可能であることを認識することが重要です。
- 取り付け:他の電子部品と同様に、スイッチにもさまざまな取り付け構成があります。面実装型と貫通型は通常、PCB上の小型スイッチが連想されますが、パネル実装型とDINレール実装型は大型になる傾向があります。面実装とスルーホールのセットアップの両方で極めて重要な考慮事項は、リードの離間距離を示す「ピッチ」として知られるパラメータです。スルーホールスイッチの場合、適切なピッチによってブレッドボードでの使用が可能になるため、ピッチは特に重要です。
図4:ブレッドボード上でのスルーホールスイッチの使用。(画像提供:Same Sky)
- 作動:手動作動と電子作動の区別に加え、スイッチにはさまざまな作動方法があります。これには、手で操作したり、小さなドライバや工具を使ったりすることも含まれます。しかし、最も一般的なオプションは、アクチュエータを隆起させるか、フラットにするかを選択する作動方法です。
- 電流および電圧定格:スイッチの電圧および電流定格は、1桁台から数百、あるいは数千ボルト/アンペアまで、幅広いスペクトルを示します。想定されるアプリケーションの定格電流と定格電圧の両方に、スイッチが対応できることを常に確認する必要があります。
- 環境要因:これは通常、埃や液体に対するスイッチの保護レベルを示すために使用される侵入保護またはIP定格を指します。ただし、スイッチによっては振動感度を高めるものや、破壊防止機能を備えているものもあります。
機械式スイッチの種類
以下に示すスイッチの種類は、機械的に操作され作動するものであり、小型、ポータブル、または組み込みシステムでよく見られるものです。
- DIPスイッチ:スルーホールまたは面実装パッケージで入手可能なDIPスイッチは、最も一般的なSPSTスイッチの種類です。ブレッドボードや完成品と親和性が高く、半永久的に選択が可能です。ピアノ式、スライド式、回転式があり、特に産業用アプリケーションや開発キットで、機器のオプション設定に使用されます。DIPスイッチはジャンパよりもオプションが多く、ユーザーフレンドリーですが、頻繁な調整には向きません。
図5:DIPスイッチの例。(画像提供:Same Sky)
- ロータリDIPスイッチ:DIPスイッチのサブセットで、個別のオプション(通常は4~16ポジション)を選択できるロータリ形式を備え、フラットなノブまたは隆起したノブのいずれかが採用されています。リニアDIPスイッチと同様に、スルーホールまたは面実装オプションがあります。ただし、リニアDIPスイッチとは異なり、BCDまたは16進数で出力できます。小型でユーザーフレンドリーですが、出力は単一で、連続使用には向いていません。
図6:ロータリDIPスイッチの例。(画像提供:Same Sky)
- スライドスイッチ:一般的にパワースイッチとして認識されているスライドスイッチは、アクチュエータをスライドさせることで操作します。一般的にはSPSTスイッチで、頻繁な使用にも対応できます。極や投が複数あるものもありますが、正確な位置決めが難しくなる可能性があります。DIPスイッチより大容量のうえ、低消費電力で、PCBに面実装またはスルーホール実装されるのが一般的です。時折、民生用電子機器で操作が便利なDIPスイッチとして機能することもありますが、使いやすさと誤作動を避けることのバランスを取るのは難しい場合があります。
図7:スライドスイッチの例。(画像提供:Same Sky)
- タクタイルスイッチ:明確なクリック感で知られるタクタイルスイッチは、低電圧・低電流信号用に設計された小型のモーメンタリボタンです。電子的な機能が控えめな代わりに堅牢で、数十万から数千万という長いライフサイクルを提供します。一般的には単極ですが、多投や高いIP定格を備える場合もあります。ゲームコントローラ、リモコン、ガレージドアなどの民生用電子機器や、さまざまな産業用アプリケーションに広く使用されていることからも、その小ささと耐久性による人気の高さがうかがえます。
図8:タクタイルスイッチの例。(画像提供:Same Sky)
- ロッカスイッチ:ロッカスイッチは中央で旋回し、2つのオプションを切り替えます。通常はモーメンタリではありません。一般的に高電圧回路の電源スイッチとして機能し、スイッチの状態を示すLEDや白熱電球の照光機能を搭載しているものもあります。IP規格を取得しており、過酷な環境に対応できるものもあります。そのわかりやすいインターフェースと作動性により、サイズや機能により若干コストが高くなるにもかかわらず、民生用電子機器で人気があります。産業環境では、トグルスイッチを補完し、誤作動を防止するカバーが付いている場合もあります。
図9:ロッカスイッチの例。(画像提供:Same Sky)
- 押ボタンスイッチ:押ボタンスイッチは、ボタンまたは押ボタンと呼ばれることが多く、単純なインとアウトの作動が備わっています。モーメンタリでさまざまな形状があり、多くの場合、照光用またはスイッチの状態を示すためにLEDが組み込まれています。幅広い電圧と電流に対応し、一般的にはPCBやパネルに実装されます。ユーザーフレンドリーを特長とし、常に利用者がいる公共の場に適しています。押ボタンスイッチは、耐破壊シリーズや高いIP定格を備えた頑丈な設計も可能であるため、エレベータや地下鉄のような過酷な環境に最適です。しかし、そのサイズ、LEDオプション、素材は、シンプルかつ小型の押ボタンスイッチモデルと比較すると、コスト高につながる可能性があります。
図10:押ボタンスイッチの例。(画像提供:Same Sky)
- トグルスイッチ:トグルスイッチは、伸びたレバーが特長のスイッチで、グローブをはめた状態や、細かいモータ制御が制限される場合に適しています。目立つレバーは明確な視覚的フィードバックを提供し、LEDを追加する必要がなく、大きな動作により間違いのない切り替えが可能です。モーメンタリスイッチとして構成されることは少ないですが、備える極数と投数はさまざまです。トグルスイッチは作動が簡単で、フィードバックが速く、安全に統合されているため、産業用や科学用のアプリケーションに適しています。航空機、制御計測器、医療装置などのミッションクリティカルな用途に使用されるため、コストが高くなる傾向があります。
図11:トグルスイッチの例。(画像提供:Same Sky)
まとめ
スイッチは、エレクトロニクスや電気システムにおいて極めて重要な役割を果たす基本的なコンポーネントです。この記事では、スイッチの種類、操作、用途、考慮事項など、スイッチの主要な側面について包括的な概要を説明しました。民生用電子機器の設計であれ、複雑な産業用プロジェクトの作業であれ、適切なスイッチの選択は、システムの機能性と信頼性に大きく影響します。Same Skyは、さまざまなスイッチングニーズに対応するスイッチソリューションを取り揃えています。
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