VFDとVSDの使用効果を最大化するために必要なサポート製品とは?- 第2部

著者 Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

この記事シリーズの第1部では、モータ接続ケーブル、出力リアクトル、ブレーキ抵抗器、ラインリアクトル、ラインフィルタを選択する際に考慮すべき点について見てきました。第2部では、VSD/VFDとサーボドライブの違いを取り上げ、ACおよびDCロータリ・リニアサーボモータの用途について検討します。また、ソフトスタートストップユニットがどのような産業活動に適しているかを考察し、DCコンバータがセンサ、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)、安全装置などの周辺機器に電力を供給するためにどのように使用されているかを見ていきます。

可変速ドライブと可変周波数ドライブ(VSD/VFD)は、産業活動の効率と持続可能性を最大化するために不可欠ですが、利用できるツールはそれだけではありません。究極の性能を得るために、VSD/VFDは多くの場合、サーボドライブやモータ、ソフトスタートストップユニット、直流(DC)コンバータ、直流(DC)入力無停電電源装置(UPS)などの他の装置で補完する必要があります。これにより、最適な産業用オートメーションアーキテクチャを構築することができます。

ACおよびDCサーボモータとドライブは、1軸または2軸のシンプルなタスクから256軸以上の複雑なタスクまで、さまざまな用途に適しています。サーボモータ制御のアクチュエータは、産業機械に精密で再現性のある動きを提供し、回転運動と直線運動の構成で利用できます。

コンベア、ポンプ、天井クレーンなどの定速アプリケーションでは、多くの場合、VSD/VFDの代わりにソフトスタートストップユニットを使用することで利点を得ることができます。

設計者は、アプリケーションの要件に応じて、米国電気工事規定(NEC)で定義されたクラス2電源である冗長DC電源、またはDC UPSのいずれかを選択し、予測不可能な主電源を扱ってシステムの信頼性を向上させることができます。

この記事では、最初にVSD/VFDとサーボドライブの違いを取り上げ、ACおよびDCロータリ・リニアサーボモータの用途について検討します。また、ソフトスタートストップユニットがどのような産業活動に適しているかを考察します。さらに、DCコンバータがセンサ、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)、安全装置などの周辺機器に電力を供給するためにどのように使用されているかを見ていきます。これらの機器に電力を供給するために、冗長DCアーキテクチャとDC UPSのどちらを使うべきか、またバッテリとスーパーキャパシタのエネルギー貯蔵のどちらを選ぶべきかについても検討します。Schneider ElectricOmronLin EngineeringSiemensの代表的な機器を各事例で紹介します。

サーボモータシステムは、産業用オートメーションアーキテクチャにおいてVSD/VFDを補完することができます。サーボモータシステムは、複雑でダイナミックなモーションシステム用に設計されており、精密な位置決めをサポートすることができます。サーボドライブは、閉ループ制御のために永久磁石モータとエンコーダとともに使用されます。急加速・急減速に対応するように設計されており、直線的または非直線的な運動プロファイルをサポートすることができます。

多くのVSD/VFDは開ループ制御でモータ速度を管理しています。サーボモータシステムで得られる精度や応答性はサポートされていません。さらに、開ループのモータ制御は、負荷が変化したりモータがストールした場合に、VSD/VFDが必ずしも補正するわけではないことを意味します。サーボモータシステムが非常にダイナミックなアプリケーションで使用されるのに対し、VSD/VFDは、長期間にわたって一定の速度、または比較的少ない速度変化を維持するアプリケーションで使用されます。

サーボモータシステムは、VSD/VFDドライブよりも小型である傾向があり、標準出力レベルは40~5,000Wです。最高5,000回転/分(rpm)の高速回転、低ノイズ、低振動、高トルクが特徴です。サーボモータは、180mm以上のさまざまなフレームサイズに対応しています。たとえば、Lin EngineeringのSBL40D1-04は、40mm、60WのブラシレスDC(BLDC)サーボモータで、定格電圧は36VDCです。

サーボモータはしばしばドライブと組み合わされます。Schneider Electricは、750W定格のLXM28AU07M3XドライブとBCH2LF0733CA5C 5,000rpmサーボモータを提供しています(図1)。このドライブは、CANopenおよびCANmotion通信インターフェースを内蔵しており、単相または3相電源で動作します。適合する80mmモータはIP65定格で、-20°C~+40°Cまで動作可能です。

画像:Schneider Electric 750WサーボドライブとIP65定格モータ図1:適合する750WサーボドライブとIP65定格モータ。(画像提供:Schneider Electric)

直線運動と直交運動

直線運動は、コーティング材料や3Dプリントから検査システムまで、さまざまな産業プロセスで使用されており、いくつかの実施形態で利用できます。ロータリステッピングモータをベースにしたものもあれば、リニアモータを使った設計もあります。ロータリステッピングモータは、ネジ山付きシャフトを使用して直線運動を生み出します。外部ナットと内部ナットの2つの基本設計があり、ノンキャプティブと呼ばれることもあります。

ナットは、外部ナットリニアアクチュエータのネジ山付きシャフトに取り付けられています。シャフトは両端が固定されています。ステッピングモータが回転すると、ナットがシャフトに沿って前後に動き、移動させる物体(ペイロード)を運びます。ノンキャプティブ設計では、ペイロードはモータに取り付けられています。シャフトは両端で固定されており、ペイロードを搭載したモータがシャフトに沿って移動します。

高効率鉄芯リニアモータ、マグネットトラック、アブソリュートエンコーダテクノロジーを搭載した直線運動ステージは、繰り返し可能なサブミクロン精度と5G加速を提供します。これらのモータは、高速産業アプリケーション向けに最大5m/sで移動できます。ネジ山付きシャフト設計とは異なり、リニアモータは高い位置決め精度と高速移動を実現できます。

直線運動ステージの機械部品は、環境保護のために高度に密閉された構造にパッケージすることができます。Omronは、有効磁石幅30mm、コイル数3個から有効磁石幅110mm、コイル数15個までの鉄芯モータをベースとした直線運動ステージを提供しています。定格荷重は48ニュートン(N)から760Nです。

R88L-EA-AF-0303-0686リニアアクチュエータモータには、230Vと400Vのモデルがあります。定格力は48N、ピーク力は105Nです。産業用ネットワークに統合するためのEtherCAT通信機能を備えたR88D-KN02H-ECTサーボドライバで駆動できます。2つの直線運動ステージを積み重ねることで、直交座標系での運動を提供することができます(図2)。

画像:2つの直線運動ステージを積み重ねて、直交運動をサポート可能図2:2つの直線運動ステージを積み重ねて、直交運動をサポートすることができます。(画像提供:Omron)

ソフトスタートストップユニット

VFD/VSDとサーボドライブが走行中のモータの速度とトルクを制御するのに対して、ソフトスタートストップユニットは、モータを保護し、速度とトルクのスムーズな上昇を提供するために、モータが始動するときの突入電流を制限します。モータの停止時にはスムーズな減速を行います。また、始動時や停止時の有害なトルクスパイクからシステム内の機械部品を保護します。

モータソフトスタートストップユニットは、コンベア、ポンプ、ファン、天井走行クレーン、自動ドアなど、高レベルの始動トルクを必要とせず、一定速度で動作するアプリケーションに役立ちます。制御された予測可能な速度変化も、作業者の安全性を向上させます。

モータの始動と停止速度は、モータへの電圧と電流を制御するシリコン制御整流器(SCR)のようなソリッドステートデバイスを使って導かれます。モータが完全に始動すると、SCRはコンタクタを使ってバイパスされ、運転効率が向上します。

Schneider ElectricのAlistart 22ファミリのようなソフトスタートストップユニットは、4kW~400kWまでの幅広い3相非同期モータを扱うことができます。クラス10のモータ過負荷・熱保護機能を備え、8~10秒の高速トリップ時間を実現します。ソフトスタートストップユニットの定格電力は、多くの場合、モータの動作電圧に依存します。たとえば、Schneider ElectricのATS22D17S6Uユニットは、208V電源で3hp、230V電源で5hp、460V電源で10hp、575V電源で15hpの定格のモータを扱うことができます(図3)。制御回路には50/60Hzで110VACの電源が必要です。

画像:ソフトスタートストップユニットは15hpまでのモータに対応図3:このソフトスタートストップユニットは15hpまでのモータに対応します。(画像提供:DigiKey)

冗長電源

産業用システムでは、センサ、HMI、安全装置などさまざまな機能に24VDC電源が使用されています。基本的な冗長電源は、産業設備の信頼性を向上させることができます。冗長電源は、負荷に電力を供給するために並列に接続された2つの電源を使用します。各電源は、一方の電源が故障した場合でも、負荷全体に十分な電力を供給できます。2つの電源を使用する場合は、1+1冗長と呼ばれます。両方の電源が故障してはじめてシステムの電源が故障したということになります。

N+1構成でより多くの電源を使用することで、電力供給システム全体の信頼性を高めることができます。3+1冗長電源アーキテクチャは、4つの電源を使用し、そのうちの任意の3つが負荷全体に電力を供給できます。

冗長モジュールは通常、ダイオード絶縁を使用して電源を接続し、いずれかの電源の故障が他の電源の動作に影響しないようにします。さらに高い信頼性を必要とするアプリケーションでは、複数の冗長モジュールを採用することで、単一故障点の可能性を排除することができます(図4)。たとえば、OmronのAC/DC電源S8VK-C12024は、最大120Wで24V負荷に対応できます。S8VK-R10冗長モジュールを使用して、これらの電源を2台接続し、120Wの1+1冗長電源システムを構築することができます。

図:複数の冗長モジュールは、単一故障点を排除することが可能図4:複数の冗長モジュール(右)を使用することで、単一故障点を排除し、信頼性を高めることができます。(画像提供:Siemens)

クラス2と冗長

クラス2の電力は、産業設備において重要な安全要素になり得ます。米国NECで定義されているように、クラス2電源装置は、出力が100VA未満に制限されています。米国外の一部の産業用機器では、クラス2電源も必要または推奨されています。

電力を制限することで、感電や火災の危険性を減らすことができます。その結果、クラス2の設備では、電源ケーブルを電線管やダクトに通す必要がないため、設置が簡素化され、コストが削減されます。また、クラス2の設備では検査が簡素化されるため、さらにコスト削減が可能になります。

クラス2の電力定格を達成するには2つの方法があります。内部で出力電力を100VA未満に制限する電源が利用できます。または、Siemensの480W(24VDC、20A)6EP15663AA00のような高ワット電源は、出力電力を制限し、複数の負荷に冗長性を提供するSiemensの6EP19622BA00のような冗長モジュールと一緒に使用することができます(図5)。

図:1+1冗長電源図5:クラス2冗長モジュールを介して4つの負荷に接続された1+1冗長電源(左)。(画像提供:Siemens)

無停電電源

冗長電源は便利ですが、重要なアプリケーションには十分ではありません。トレーサビリティとデータ収集が必須である場合、安全性が懸念される場合、または無停電運転が求められる場合、Siemensの6EP41363AB002AY0 SITOP UPSのようなUPSが必要になります。このUPSは24VDC出力を提供し、最大20Aを供給することができます。

UPSを選択する際の重要な質問の1つは、エネルギー貯蔵技術です。ウルトラキャパシタは二重層キャパシタとも呼ばれ、プロセスデータの保存、産業用PCやその他のデバイスの秩序あるシャットダウンなど、短期的なバックアップ電力ニーズに適しています。寿命が長く、最大20キロワット秒(kWs)のバックアップ電力を供給できます。たとえば、Siemensのモデル6EP19332EC41キャパシタ蓄電ユニットは、最大2.5kWsのバックアップ電力を供給できます。

鉛蓄電池やさまざまなリチウムイオンケミストリは、重要な通信やプロセス運転に数時間かかるような、より長時間のバックアップ電力ニーズに有用です(図6)。最大38Ahの基本的なDC UPSバッテリモジュールが利用可能です。複数のバッテリモジュールを使用することで、数時間のバックアップが可能です。Siemensの6EP19356MD31 DC UPSバッテリモジュールは、メンテナンスフリーの密閉型鉛蓄電池を使用し、2.5Ahの蓄電容量で最大15Aを供給します。

図:ウルトラキャパシタは短期間のバックアップ電力を供給可能(クリックして拡大)図6:ウルトラキャパシタ(UPS5005とUPS501S)は短期間のバックアップ電力を提供できますが(左)、バッテリ(UPS16090とBAT1600)はより長時間のバックアップ電力運転をサポートできます(右)。(画像提供:Siemens)

まとめ

VSD/VFDは、多くの場合、産業用オートメーションの主力機器と見なされます。しかし、包括的な産業用オートメーションアーキテクチャには、サーボドライブ、モータ、ソフトスタートストップユニットなど、さらに多くの機器が必要です。産業用オートメーションシステムの設計者は、稼働時間と信頼性を最適化する際に、数多くのDC電源アーキテクチャから選択することもできます。

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著者について

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Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

ジェフ氏は、パワーエレクトロニクス、電子部品、その他の技術トピックについて30年以上にわたり執筆活動を続けています。彼は当初、EETimes誌のシニアエディターとしてパワーエレクトロニクスについて執筆を始めました。その後、パワーエレクトロニクスの設計雑誌であるPowertechniquesを立ち上げ、その後、世界的なパワーエレクトロニクスの研究グループ兼出版社であるDarnell Groupを設立しました。Darnell Groupは、数々の活動のひとつとしてPowerPulse.netを立ち上げましたが、これはパワーエレクトロニクスを専門とするグローバルなエンジニアリングコミュニティで、毎日のニュースを提供しました。また彼は、教育出版社Prentice HallのReston部門から発行されたスイッチモード電源の教科書『Power Supplies』の著者でもあります。

ジェフはまた、後にComputer Products社に買収された高ワット数のスイッチング電源のメーカーであるJeta Power Systems社を共同創設しました。ジェフは発明家でもあり、熱環境発電と光学メタマテリアルの分野で17の米国特許を取得しています。このように彼は、パワーエレクトロニクスの世界的トレンドに関する業界の情報源であり、あちこちで頻繁に講演を行っています。彼は、定量的研究と数学でカリフォルニア大学から修士号を取得しています。

出版者について

DigiKeyの北米担当編集者