静圧式レベルセンサによる淡水処理の効率化

著者 Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

清潔で新鮮な水は不可欠です。飲料水処理プラントは、ほぼいたるところで見られます。これらのプラントを効率的に稼働させるには、井戸、貯蔵タンク、河川、貯水池、その他の場所の水位を監視する必要があります。

用途や稼働状況に応じて、フロートなどの機械式装置や、静圧式レベルセンサなどのソリッドステートデバイスを使用して水位を監視することができます。特定のレベル閾値を監視し、流出を防止するポイントレベルのアプリケーションに適した技術もあります。一方、プロセス制御や在庫管理システムにおける連続的なレベル測定に適した技術もあります。

この記事では、ポイントレベルと継続レベルの監視アプリケーションの概要から始めます。次に、静圧式レベルセンサの動作原理を説明し、飲料水処理プラントにおけるこれらのセンサの用途について紹介します。

また、米国環境保護庁(EPA)が「abstraction register(取水登録)」を使用して淡水の消費量を追跡している方法についても簡単に説明し、その後、Endress+Hauserの静圧式レベルセンサのいくつかの製品を紹介します。最後に、飲料水処理施設のような重要なインフラ設備にセンサを統合する際の適用例を紹介します。

フロートレベルセンサはシンプルな機械装置です。フロートは水位に合わせて上下します。この動きにより機械スイッチが開閉し、特定の水位に達したことを示します。これらのセンサは、タンクが満杯になりすぎて水がこぼれたり、水が減りすぎてポンプやその他の機器が損傷したりするのを防ぐためによく使用されます。

静圧式レベルセンサは、水位の連続測定を行います。淡水処理プラントの貯蔵・処理タンクや容器に一般的に使用されています。容器が満水または排水されると、静圧式レベルセンサ上部の水の重量が変化し、センサは高さに依存した出力を生成します(図1)。そのため、プロセス制御アプリケーションに特に役立ちます。

画像:上下に動くフロートセンサ図1:フロートセンサは上下に動き(左)、タンク内の特定のレベルを監視できます。一方、静圧式センサは静止しており、連続的なレベル監視を行います(右)。(画像提供:Endress+ Hauser)

静圧式レベルセンサは、センサ底部のダイアフラムより上の水柱の圧力を測定します。非圧縮性の油圧オイルがダイアフラムからセンサ機構に圧力を伝達します。油圧オイルと水の界面は比較的大きく、センサ機構に達する水柱はより小さくなり、圧力が集中します。センシング機構は、基板がたわむと抵抗値が変化するホイートストンブリッジで構成されています(図2)。

画像:一般的な静圧式レベルセンサの内部構造図2:一般的な静圧式レベルセンサの内部構造(左)と、たわみが生じているホイートストンブリッジのセンシング機構(右)。(画像提供:Endress+ Hauser)

静圧式レベルセンサは、高い信頼性と非常に低い設置コストを兼ね備えています。そのアプリケーションは、効率的な運転を保証する淡水処理プラントから、長期的な水の利用可能性を保証するための地域の水生態系のモニタリングまで、多岐にわたります。

淡水処理

水の抽出(取水、抽出)は、飲料水の供給における最初のステップです。これは、あらゆる水源から水を採取するプロセスです。利用可能な水量は、静圧式レベルセンサなどの装置を使用して厳密に監視されます。

淡水処理のその他の詳細は、地域の規制によって異なりますが、プラント全体で水位の監視が必要です。一般的なステップには以下のようなものがあります(図3)。

  • 凝集は、水に正の電荷を持つ化学物質を加え、汚れやその他の溶解粒子の負の電荷を中和することで実施されます。
  • フロキュレーションは、凝集粒子がフロックと呼ばれるより大きな粒子を形成する第2の化学的プロセスを伴います。
  • 沈殿は、フロックが水底に沈み、汚泥が除去されるプロセスです。
  • ろ過は、さまざまなフィルタで残りの溶解粒子や細菌を除去するプロセスです。
  • 消毒では、塩素またはクロラミンを使用して寄生虫、バクテリア、ウイルス、細菌を殺します。
  • 貯蔵と分配。淡水処理は連続的なプロセスですが、ほとんどの都市では朝と夕方に水の使用量がピークに達するため、淡水の供給量を需要に合わせるためには大規模な貯蔵施設が必要です。

図:飲料水処理(クリックして拡大)図3:飲料水処理には、水質と法規制の順守を確保するために、厳重に監視しなければならない多くのプロセスが含まれる場合があります。(画像提供:Endress+Hauser)

取水登録

効率的な淡水処理のためには、十分な水の確保が必要です。環境に関する法律では、地域の水バランスを損なわないよう、自然水源からの原水取水を規制しています。

ヨーロッパでは、適切な水位と水量を維持することが、自然水資源の量的および質的な管理に重点を置く水枠組み指令によって定められています。米国では、EPAが同様の目標を掲げ、取水を厳しく監視しています。

EPAは、過剰取水のリスクを評価するために、取水量に関する情報を、排水量に関する情報とともに収集しています。このデータは、年次取水登録で報告されます。静圧式レベルセンサは、地域の水生態系の健全性を監視する上で重要なツールです。

静圧式レベルセンサ

静圧式レベルセンサは非常に汎用性の高い装置です。一般的なアプリケーションを下記に挙げます。

  • 河川、湖、計測所、貯水池の水位の監視
  • 給水塔と貯蔵タンクにおける飲料水の確保
  • 井戸の水位測定

Endress+Hauserの浸水型静圧式レベルセンサWaterpilot FMX11は直径わずか22mmのコンパクトサイズで、簡単に組み込むことができます。このセンサは、データロガー、パネルメータ、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)などのプロセス制御機器と互換性のある4~20mAの出力信号を提供します。

Waterpilot FMX11静圧式レベルセンサは、米国のNSF-61(National Sanitation Foundation 61)、フランスのACS(Attestation de Conformité Sanitaire)、ドイツのTZW:DVGW - Technologiezentrum Wasserなど、複数の飲料水認証を取得しています。

ハウジングは316合金ステンレス鋼製で、米国食品医薬品局(FDA)により飲料水用途での使用が承認されています。シールド付き延長ケーブルには、耐摩耗性・耐紫外線性熱可塑性エラストマ(TPE)ジャケットのテフロンフィルタ付き大気圧補償チューブが含まれています。TPEとテフロンも飲料水用途としてFDAの承認を受けています(図4)。

画像:Endress+HauserのWaterpilot静圧式レベルセンサ図4:Waterpilot静圧式レベルセンサは、飲料水用途として複数の国際認証を取得しており、FDA承認の素材を使用して製造されています。(画像提供:DigiKey)

一般仕様:

  • 動作温度範囲:-10°C~+70°C
  • IP68保護等級
  • 精度:≤ ±0.35%(センサ測定範囲が400mbar以上の場合)
  • 精度:≤ ±0.50%(センサ測定範囲が400mbar未満の場合)
  • cULus認証

入手可能なモデル:

  • FMX11-CA11DS06:センシング範囲0~0.2bar(6.7水柱フィート)、ケーブル長6m
  • FMX11-CA11FS10:センシング範囲0~0.4bar(13.4水柱フィート)、ケーブル長10m
  • FMX11-CA11GS20:センシング範囲0~0.6bar(20.1水柱フィート)、ケーブル長10m
  • FMX11-CA11HS20:センシング範囲0~1bar(33.5水柱フィート)、ケーブル長20m
  • FMX11-CA11KS30:センシング範囲0~2bar(66.9水柱フィート)、ケーブル長30m

水処理プラントの可用性を最大化

飲料水処理プラントは重要なインフラであり、高い信頼性が求められます。Waterpilot FMX11センサは、電力サージへの耐性をテストするための要件と方法を定義する、EN 1000-4-5 / IEC 61000-4-5の電磁両立性(EMC)ガイドラインに従ってテストされています。

しかし、基本的なEMC試験では、主電源ラインでは2kV、信号ラインでは1kVまでのサージしかカバーしていません。間接的な雷やスイッチング操作でも、マイクロ秒以内に最大10kVのサージが発生する可能性がある重要なインフラでは、これでは不十分な場合があります。

Endress+Hauserは、プラントの可用性を確保するため、サージアレスタの使用を推奨しています。サージアレスタは、制御キャビネットのDINレール取り付け用、およびフィールドハウジングへの直接取り付け用が用意されています。

  • 制御キャビネットの電源および通信ラインを保護するHAW562サージアレスタ(例:HAW562-AAD
  • プロセスフィールド計装用HAW569サージアレスタ(図5)(例:電源および信号ケーブル用HAW569-CB2C、信号ケーブル用HAW569-DA2B

画像:Endress+Hauser HAW569-CB2C(電源・信号ケーブル用)およびHAW569-DA2B(信号ケーブル用)図5:電源および信号ケーブル用のHAW569-CB2C(上)と信号ケーブル用のHAW569-DA2B(下)。(画像提供:Endress+Hauser)

最大限の可用性を得るために推奨される設置方法は以下の通りです(図6)。

  1. Waterpilot FMX11静圧式レベルセンサ
  2. HAWサージアレスタ
  3. 4~20mAセンサ信号入力付き表示・評価ユニット
  4. 電源

画像:Endress+Hauser Waterpilot FMXの設置ブロック図図6:2つのサージアレスタ(2)の位置を示すWaterpilot FMXの設置ブロック図。(画像提供:Endress+ Hauser)

電源電圧範囲は8VDC~28VDC、消費電流は最大22mA、最小2mAです。屋外で使用する場合は、電源はIP66/IP67定格の端子ボックスに収納する必要があります。IEC 61010の要件を満たす回路ブレーカの使用を強くおすすめします。

Waterpilot FMX11静圧式レベルセンサには逆極性保護機能が内蔵されており、電源ケーブルが不適切に接続されても損傷することはありません。逆極性の接続の場合、このセンサは動作しません。

安全度水準と爆発性雰囲気

静圧式レベルセンサは、爆発性雰囲気の中でも安全に動作する必要があります。IEC 61508は安全度水準(SIL)を定義しており、IEC 61511はIEC 61508をプロセス産業向けに特定用途に適合させたものです。HAW569ユニットはフィールド計装用に設計されており、SIL2要件に適合しています。HAW562サージアレスタは、機器キャビネット内の危険度の低いアプリケーションでの使用を想定しており、オプションでSIL2にも対応しています。

この状況は、爆発性(Ex)雰囲気で使用される場合と類似しています。HAW562サージアレスタは、オプションでEx本質安全認証にも対応しています。一般的なEx認証には、Ex iaとEx dの2種類があります。

Ex ia認証は、本質的に安全な保護を提供し、故障が発生した場合でも、機器および配線の最大内部エネルギーが発火に必要なエネルギーレベルを下回ることを保証します。これは、爆発性ガス混合物が長時間または継続的に存在し、重大な危険をもたらす場所での使用を想定しています。

Ex d認証機器は、内部爆発に耐え、損傷を受けないように設計されています。これらの機器は、通常運転中に爆発性ガス混合物が発生する可能性が高く、断続的に危険な状態が生じるような重要な場所での使用を想定しています。

信号ケーブルの保護用に設計されたHAW569ユニットは、オプションでEx ia認証にも対応しています。一方、信号および電源ケーブルの同時保護用に設計されたユニットでは、Ex d認証がオプションとして用意されています。HAW562サージアレスタは、オプションでEx本質安全認証にも対応しています。

まとめ

静圧式レベルセンサには、飲料水処理プラントにおけるプロセス制御や在庫管理、水の利用可能性と持続可能性を確保するための井戸、河川、湖、貯水池などの水源の監視など、いくつかのアプリケーションがあります。飲料水処理プラントは重要なインフラであり、継続的な操業を確保するために適切に保護する必要があります。

Waterpilot FMX11静圧式レベルセンサは、飲料水用途向けにFDA承認の素材を使用して製造されており、関連する国際的な認証も取得しています。また、Endress+Hauserは、サージアレスタの使用を推奨しており、Waterpilot FMX11センサ向けにSIL2性能とEx iaおよびEx d認証のモデルを提供しています。

DigiKey logo

免責条項:このウェブサイト上で、さまざまな著者および/またはフォーラム参加者によって表明された意見、信念や視点は、DigiKeyの意見、信念および視点またはDigiKeyの公式な方針を必ずしも反映するものではありません。

著者について

Image of Jeff Shepard

Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

ジェフ氏は、パワーエレクトロニクス、電子部品、その他の技術トピックについて30年以上にわたり執筆活動を続けています。彼は当初、EETimes誌のシニアエディターとしてパワーエレクトロニクスについて執筆を始めました。その後、パワーエレクトロニクスの設計雑誌であるPowertechniquesを立ち上げ、その後、世界的なパワーエレクトロニクスの研究グループ兼出版社であるDarnell Groupを設立しました。Darnell Groupは、数々の活動のひとつとしてPowerPulse.netを立ち上げましたが、これはパワーエレクトロニクスを専門とするグローバルなエンジニアリングコミュニティで、毎日のニュースを提供しました。また彼は、教育出版社Prentice HallのReston部門から発行されたスイッチモード電源の教科書『Power Supplies』の著者でもあります。

ジェフはまた、後にComputer Products社に買収された高ワット数のスイッチング電源のメーカーであるJeta Power Systems社を共同創設しました。ジェフは発明家でもあり、熱環境発電と光学メタマテリアルの分野で17の米国特許を取得しています。このように彼は、パワーエレクトロニクスの世界的トレンドに関する業界の情報源であり、あちこちで頻繁に講演を行っています。彼は、定量的研究と数学でカリフォルニア大学から修士号を取得しています。

出版者について

DigiKeyの北米担当編集者