DAQを活用して産業用モーション制御の高速・高精度を実現

著者 Kenton Williston氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

ロボティクスや自動コンベアなどの現代の産業システムは、性能を最適化し、効率を高め、予知保全を促進するために、高速で同期化されたデータに依存しています。 しかし、ミリ秒レベルの精度で位置とモーションデータを取得し、調整することは重要な課題となっています。 標準的なデータ収集(DAQ)システムは、リアルタイムでエンコーダやタイマと正確にインターフェースするために必要な特殊機能を備えていないことが多く、これによりシステムの信頼性を損ない、性能のボトルネックを引き起こす可能性があります。

この記事では、要求の厳しい産業用アプリケーションに高速位置・タイミング測定を実装するための要件を説明します。 次に、Advantechのエンコーダカウンタ/タイマモジュールを取り上げ、その複数のエンコーダモードと4つの高速チャンネルを、ロボティクスやモーション制御アプリケーションにおける複雑な同期課題の解決にどのように活用できるかをご紹介します。一般的なシステムのセットアップと、互換性のあるソフトウェアツールを組み合わせることで、統合のための明確な道筋が提供されます。

産業プロセスにおける正確な動きとタイミングの重要性

現代の産業システムは、複雑で連続した動きに依存しており、そこでの連携が非常に重要です。 たとえば、動くコンベアから部品をピッキングするロボットアームを考えてみましょう。 このシステムが機能するためには、ロボットの動きがコンベアの速度と位置に同期していなければなりません。 そのためには、複数のソースからミリ秒レベルの精度でデータを取得し、調整する必要があり、これは難しい技術要件です。

DAQシステムは、この課題の解決に中心的な役割を果たします。このシステムは、コンベアの駆動モータとロボットアームの関節からエンコーダデータを取得し、これらの測定値を複数のチャンネルで同期させることで、部品をピッキングする正確な瞬間を計算することができます。

コンベアの速度を上げてスループットを向上させる際、DAQシステムは位置とタイミングのデータを迅速にサンプリングする必要があります。これにより、エラーを回避できます。センサ読み取りの遅延や見逃しが起こると、機械部品の動作タイミングがずれたり、衝突が発生したりする可能性があります。これにより、予定外のダウンタイムが発生し、生産性が低下する可能性があります。

高精度DAQシステムは、予知保全にも対応しています。たとえば、速度異常や位置エラーは、ベアリングの摩耗やベルトのスリップなどの問題を示している可能性があります。 これらの信号を分析することで、設計者は運用に支障をきたす前に潜在的な不具合を特定できます。

高速DAQ要件

この種のアプリケーションに対応するためには、DAQシステムはいくつかの厳しい性能特性を満たさなければなりません。

  • 高速・高分解能サンプリング: サブミリメートル単位の位置変化など、微細な動きの詳細を捉えるには、高いサンプリングレートと高精度な分解能が必要です。メガヘルツ(MHz)レンジでのサンプリングにより、高速環境でも重要なイベントが見逃されないようにします。
  • 同時マルチチャンネルサンプリング: ロボットアームとコンベアを協調させるためには、それぞれの位置とタイミングデータを、順次ではなく同時に取得する必要があります。順次取得されたデータストリームを関連付けようとすると、間違った品目がピッキングされたり、品目が完全に見逃されたりして、エラーにつながる可能性があります。
  • 柔軟なエンコーダサポート: 産業用システムでは、異なるベンダーのコンポーネントが使用されることが多く、その結果、エンコーダ信号の種類が混在することになります。 DAQシステムは、追加のインターフェースロジックを必要としないよう、幅広いエンコーダモードをサポートする必要があります。
  • 堅牢化:産業環境では、電子機器は電磁妨害、振動、熱にさらされます。DAQハードウェアは、システムの不具合を防ぐために、このような条件下でも信頼できる動作ができるように仕様規定されなければなりません。
  • スケーラビリティ:DAQシステムはモジュール式である必要があります。モジュール式であれば、設計者は、チャンネルを増やしたり、異なる入力タイプを追加したりすることで、DAQシステムを簡単に拡張できます。 これは、自動化施設が拡大する中で、新しいロボット、センサ、生産ラインの統合をサポートします。

このような多様な要件を満たすことは、設計上の大きな課題となっています。多くのDAQシステムは汎用的なデータキャプチャに好適ですが、高速で同期した動きを伴うアプリケーションには特殊なハードウェアが必要となります。

モーション制御システムにおける高度な位置・タイミング測定

AdvantechのiDAQ-784高精度エンコーダカウンタ/タイマモジュール(図1)は、これらの要件を満たすように特別に設計されています。このモジュールは、産業用システム全体の同期位置およびタイミング測定をサポートする、4つの汎用32ビットエンコーダチャンネルを搭載しています。エンコーダ信号の正確なタイミングを実現するため、最大入力周波数10MHzに対応しています。

画像:AdvantechのiDAQ-784エンコーダカウンタ/タイマモジュール図1:iDAQ-784エンコーダカウンタ/タイマモジュールは、複雑な産業用モーションアプリケーション向けに、4つの32ビットチャンネルで同時にデータを収集することができます。(画像提供:Advantech)

内蔵のデジタル信号フィルタリングにより、iDAQ-784は信号の明瞭さと測定精度を向上させます。これにより、産業用ロボティクス、モーション制御、高速コンベアシステムなどの高度な自動化アプリケーションにおいて、高精度なシステム特性評価が可能になります。

エンコーダの入力、測定、出力モード

iDAQ-784はさまざまな入力信号タイプと測定モードをサポートし、産業用モーション制御の多様な要件に対応します。 4つのカウンタチャンネルは、それぞれシングルエンド入力と差動入力の両方に対応し、コモンモード範囲は±15ボルトDC(VDC)です。 このモジュールは、位置測定用に3種類の業界標準エンコーダをサポートしています。

  • 直交(A/B相):位相差を持つ2つのチャンネル(AとB)を使用して、位置と方向の両方を決定します。特定のエンコーディング(X1、X2、X4)は、立ち上がりエッジや立ち下がりエッジをカウントすることで分解能を決定し、X4はX1の4倍の分解能を提供します。
  • 2パルス(CW/CCW):時計回り(CW)と反時計回り(CCW)のパルスには、別々の入力ラインが使用されます。カウンタはCWパルスでインクリメントし、CCWパルスでデクリメントします。
  • パルス方向(符号付きパルス):1つの信号がパルスに使用され、2つ目の信号が方向を示します。カウンタは、方向信号の状態に基づいてインクリメントまたはデクリメントします。

各エンコーダ入力は、シングルエンドまたは差動で配線可能です。また、位置リセット用のZ信号入力が利用できます。各カウンタチャンネルは、タイミングおよびパルス生成用の複数の機能モードもサポートしています。

  • イベントカウント:入力信号の立ち上がりエッジまたは立ち下がりエッジをカウントします。オプションでゲート設定が可能です。
  • 周波数測定:信号の周波数を、周期反転法またはパルス計数法を使用して測定します。
  • パルス幅測定:デジタル信号のHigh状態とLow状態の持続時間を測定します。
  • 位置測定:上記の対応入力モードを使用してエンコーダの位置を追跡します。
  • 比較を継続(位置比較):位置閾値に達した際に、出力パルスまたは割り込みをトリガします。
  • ワンショット(遅延パルス生成):ゲートトリガ後と、指定された遅延後に、単一のパルスを出力します。
  • タイマ/パルス生成:割り込み対応の連続パルス列を出力します。
  • パルス幅変調(PWM):プログラム可能なHighとLowの持続時間を持つ波形を出力します。有限または連続生成をサポートします。

これらの多様な機能モードにより、産業システムで一般的に使用されるさまざまなデバイスとの互換性が確保されています。

産業環境向けの設計

iDAQ-784とその周辺のエコシステムは、要求の厳しい産業環境において信頼性の高い性能を提供するように設計されています。 このモジュールは、-40°F~158°Fの広い動作温度範囲と、最大90% の相対湿度(結露なし)に対応しています。

このモジュールはまた、工場環境で一般的に発生する電磁ノイズに対抗するように設計されており、信号の明瞭度を高める内蔵デジタル信号フィルタリングを備えています。各チャンネルは差動信号入力をサポートし、優れたコモンモードノイズ除去性能を実現しています。

この設計理念は、エコシステムアクセサリにも反映されています。これらのアクセサリは、産業用キャビネット内に確実に設置できるよう、DINレール規格に準拠した堅牢な設計となっています。環境耐性、ノイズ耐性、堅牢な物理的統合性を兼ね備えたこの組み合わせにより、高度な自動化アプリケーション向けに高精度のシステム特性評価が可能になります。

高速・高精度DAQシステムの構築

DAQシステムを構築する最初のステップは、センサを物理的に接続することです。このプロセスは、センサのリード線を端子ブロックに接続することから始まります。AdvantechのADAM-3937-BEインターフェースモジュール(図2)は、この目的のために設計された既製ソリューションです。この37ポジションブロックはDINレール取り付け用に設計されており、寸法は87.2mm x 112.5mm x 51mmで、標準のDB37互換産業用インフラとの統合を容易にします。

画像:AdvantechのADAM-3937-BE DINレール配線ボード図2:ADAM-3937-BE DINレール配線ボードは、DB37互換ハードウェア向けの汎用インターフェースソリューションを提供します。(画像提供:Advantech)

この端子ブロックから、PCL-10137-1E(図3)などのケーブルアセンブリを介して、iDAQ-784に信号をルーティングできます。この3.28フィート、37ピンのD-Subケーブルは、堅牢な接続を実現するつまみネジを採用しています。アルミ/マイラー箔と編組銅の二重シールド構造は、産業用モーションアプリケーションで一般的に発生する電磁ノイズの環境において、シグナルインテグリティをサポートします。 より長いバージョンも用意されています。

画像:AdvantechのPCL-10137-1Eケーブルアセンブリ図3:PCL-10137-1Eケーブルアセンブリは、iDAQ-784とのインターフェース用にオス37ピンD-Subコネクタを採用しています。(画像提供:Advantech)

iDAQモジュール式エコシステムには、多様な特殊I/Oモジュールと端子ブロックが含まれており、設計者は特定の要件に合わせた堅牢で拡張性の高いDAQシステムを構築することができます。

iDAQソフトウェアツール

ハードウェアの組み立てが完了すると、iDAQシステムはDAQNaviソフトウェア開発キット(図4)という無料の開発環境を使用してプログラミングされます。DAQNaviにはAdvantech Navigatorというユーティリティが搭載されており、設計者はプログラミングなしでiDAQデバイスの構成や機能テストを行うことができます。また、このユーティリティを使用してデバイスをシミュレートすることも可能で、設計者は物理的なDAQデバイスなしでアプリケーションをプログラミングし実行することができ、柔軟なシステム開発を実現できます。

画像:AdvantechのDAQNaviソフトウェア環境(クリックして拡大)図4:無料のDAQNaviソフトウェア環境は、iDAQシステムと組み合わせて使用されます。(画像提供:Advantech)

DAQNaviは、32ビットおよび64ビットのWindowsオペレーティングシステム、およびいくつかの一般的なLinuxディストリビューションを実行するホストシステムをサポートしています。 API機能は両プラットフォームで同じであるため、移行にプログラムの変更は必要なく、将来性のある統合をサポートします。DAQNaviは、C#、C++、Visual Basic、Java、MATLAB、LabVIEWなど、一般的に使用されている多くのプログラミング言語に対応しているため、ユーザーによる導入が容易です。

まとめ

正確なタイミングと同期は、高度なロボット操作や産業用オペレーションにとって非常に重要であり、機器の稼働時間と生産効率を最大化しながらプロセスの最適化を可能にします。 AdvantechのiDAQ-784モジュールは、完全なiDAQエコシステムとともに、これらの高性能要件を満たす堅牢でスケーラブルなソリューションを提供します。

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著者について

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Kenton Williston氏

Kenton Williston氏は2000年に電気工学の学士号を取得し、プロセッサベンチマークアナリストとしてキャリアをスタートさせました。その後、EE Timesグループの編集者として、エレクトロニクス業界を対象とした複数の出版物やカンファレンスの立ち上げや指導に携わりました。

出版者について

DigiKeyの北米担当編集者