包括的なインダストリ4.0コネクティビティをサポートする統合されたサイバーセキュアプラットフォームの使用
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2024-04-30
統合されたサイバーセキュアなインダストリ4.0の展開には、複数レベルのコネクティビティが必要です。コネクティビティの第1レベルは、機械やロボット、センサ、トレーサビリティのソリューションなど、各デバイスの制御を備えた工場現場で始まります。コネクティビティの第2レベルは、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)やマシン間通信を備えた中間レベルのオートメーションにまで広がります。最高レベルのコネクティビティは、企業の情報技術(IT)やオペレーション技術(OT)のシステムとリンクし、ロジスティクス全体を調整して効率性と生産性を最大化します。
多様なコネクティビティのニーズを満たすには、EtherCAT、Safety over EtherCAT(FailSafe over EtherCATまたはFSoEとも呼ばれる)、EtherNet/IP(EtherNet Industrial Protocol)、CIP(共通産業プロトコル) Safetyおよび、機械、機械制御、センサ、ビジョンシステム、安全装置、HMIを接続するためのIO-Linkなど、複数のオープンプロトコルをサポートするオートメーションプラットフォームが必要です。
OPC UA(Open Platform Communications Unified Architecture)プロトコルは、企業全体のデータ統合、共有、安全な可視性をサポートするために必要です。最後に、構成、プログラミング、シミュレーション、監視を直感的なインターフェースで統合し、エンジニアがプロセス制御、モーション、セーフティ、ビジョン、ロボティクスを1つのシステムで管理できるソフトウェアプラットフォームが必要となります。
この記事では、まずインダストリ4.0オートメーションシステムにおけるコネクティビティレベルの図を示します(図1)。次に、Omron Automationの製品例を使用し、IO-Linkやインテリジェントセンシングから、ビジョンシステムやリアルタイム機械制御用のEtherCAT、ファクトリオートメーションネットワーク用のEtherNet/IP、そしてOPC UAがMQTT(Message Queuing Telemetry Transport)や他の標準プロトコルを使用して工場をより高度な企業ネットワークやクラウドにリンクする方法に至るまで、オートメーションのさまざまなレベルについて説明します。最後に、OmronのSysmac Studioソフトウェアでそれらを統合する方法を紹介します。
図1:工場現場のIO-Linkから、より高度な企業システムやクラウドに達するMQTTやOPC UAまで、インダストリ4.0オートメーションシステムで使用されるコネクティビティのレベル。(画像提供:Omron Automation)
セーフティ、センサ、サーボ
工場現場に最も近いオートメーションネットワークレベルでは、センサ、セーフティコントローラ、モータドライブ、サーボなどが見られ、特定のコネクティビティ要件があります。IO-Linkはインテリジェントセンシングをサポートし、EtherCATはモーション、I/O、セーフティ、ビジョンのさまざまなサブシステムをリアルタイムマシンネットワークにリンクします。
I/Oユニット
インダストリ4.0ファクトリの多様なセンサをサポートするには、幅広いI/Oユニットが必要です。OmronのSysmac NX I/Oユニットには120以上のモデルがあり、センサに接続するためのIO-Linkや、モーション、セーフティ、ビジョン、その他のコントローラとリンクするためのEtherCATやEtherNet/IPなど、幅広いプロトコルをサポートします。これらのI/Oユニットは、FSoEおよびCIP Safetyのプロトコルもサポートしています。
セーフティコントローラ
ファクトリオートメーションで作業する場合、安全性は極めて重要な考慮事項です。Omronは、FSoE接続に加え、EN 13849-1に準拠したPLeおよびIEC 61508に準拠したSIL3を満たす堅牢なセーフティシステムをサポートするNX統合型セーフティコントローラを提供しています。さらに、NX-EIC202などのEtherNet/IPカプラユニットにより、NX統合型セーフティコントローラをEtherNet/IPマルチベンダネットワーク、NXシリーズ I/Oユニット、その他のセーフティユニットとリンクできます。
セーフティCPUは、最大128のセーフティI/Oユニットを制御することができます。セーフティユニットは、標準的なNX I/Oユニットと組み合わせて使用できます。展開のスピードと柔軟性をさらに向上させるため、設計と運用向けにIEC 61131で定義されたプログラム構成単位(POU)を使用して、セーフティプログラムを標準化し、効率的に再利用することができます。
AIベースのビジョン
AI(人工知能)ベースの自動ビジョンシステムは、ロボット誘導、コードの読み取りと検証、カラー検査、計数、欠陥識別、光学式文字認識(OCR)、光学式文字検証(OCV)、有無検出など、幅広いインダストリ4.0アプリケーションの生産性を高めることができます。
AIベースのビジョンシステムの開発と展開は、複雑で時間のかかる作業です。OmronのFHシリーズには、さまざまなAIベースのビジョンアプリケーションを迅速に実装するために必要なハードウェアとソフトウェアが含まれています。
たとえば、モデルFH-2050は2台のカメラに対応しています。さらに、FHシリーズの他のモデルと同様に、EtherCAT、EtherNet/IP、Ethernet TCP/IP、PROFINET、シリアルRS-232C、USB(ユニバーサルシリアルバス)などの幅広いコネクティビティオプションを備え、インダストリ4.0ファクトリの多くの場所にシームレスに適合することができます。
インダストリ4.0の生産ラインの特徴であるマスカスタマイゼーションの場合、自動外観検査の実装は困難になる可能性があります。最近まで、製品の欠陥を特定するためには、経験を積んだ人間の検査員が必要でした。今日、AIは人間の検査員と同じように、汚れから擦り傷まで、対象物の特徴や欠陥を認識できるレベルに達しています。さらに、AIには継続的な改善と新たな要件への適応をサポートするための機械学習を含めることもできます。
サーボ
サーボとドライブは、インダストリ4.0ファクトリに不可欠な要素です。Omronの1Sサーボ技術は、50W~15kWのユニットをサポートします。たとえば、モデルR88D-1SN15H-ECTは、200~240VACの単相および三相入力電力に定格された1.5kWサーボドライブです。これは、定格出力1.5kW、回転数3,000rpm、トルク4.77NmのR88M-1L1K530T-BS2サーボと互換性があります。他の1Sサーボと同様、このユニットの特長は以下の通りです。
- 高分解能マルチターン23ビットエンコーダ
- 組み込みリレーによるダイレクトモータブレーキ制御
- 内蔵安全機能
- EN ISO 13849-1に準拠したPLeおよびIEC 61508に準拠したSIL3を満たすハードワイヤード安全トルクオフ
- EN ISO 13849-1に準拠したPLdおよびIEC 61508に準拠したSIL2を満たすFSoE安全トルクオフ
ハードワイヤード安全トルクオフとFSoE安全トルクオフの両方がEN61800-5-2(STO)に適合しています。ハードワイヤードソリューションは、主電源を切ることでラインを停止させます。FSoEはより微妙な応答をサポートしており、安全運転停止のコマンドを送信し、影響を受けたエリアのモータだけを減速させます。必要に応じて、FSoEは安全停止のコマンドを送信し、モータを停止させることもできます。
マシンコントローラ
OmronのNX1P2シリーズのようなマシンコントローラは、2つの機能を実現できます。これらのコントローラは、EtherCATレベルのリアルタイム機械制御でさまざまなサーボや他の機械を直接制御するために使用できます。また、EtherNet/IPファクトリオートメーションレベルへのリンクを提供することも可能です。
これらのコントローラは、統合シーケンスとモーション制御をサポートし、EtherCATを使用して最大8つの制御軸に接続します(図2)。また、EtherCAT制御ネットワークのサポートや、ファクトリオートメーションコントローラにリンクするためのEtherNet/IPコネクティビティも備えています。さらに、シリアル通信やアナログI/Oなど、コネクティビティを拡張するオプションボード2枚用のスロットを備えています。これらのコントローラは、IEC 61131-3プログラミング標準に完全に準拠しており、コミッショニングを簡素化して迅速化します。
図2:NX1PコントローラはEtherCATコネクティビティを使用して、8台の1S ACサーボドライブのように最大8軸のモーションをサポートします。(画像提供:Omron Automation)
OmronのNX1Pは、高度なモーション、ビジョン、セーフティI/O、ネットワーキング、IoTコネクティビティを管理できる不可欠なオールインワンコントローラです。最大254のCIP安全接続、最大62軸のモーション、256のEtherCATノード、1GbpsのEtherNet/IPポート、OPC UAの恩恵を受けられる複雑な機械制御アプリケーションでは、ネットワーク設計者はSysmac NX502コントローラを利用できます。
高度な機械制御
NX502コントローラは、EtherCATおよびEtherNet/IPのネットワークレベルでの使用に適しており、企業のITおよびOTシステムやクラウドに接続するためのMQTT、OPC UA、SQL(構造化クエリ言語)機能を備えています。
NX502コントローラは、最大4枚のEtherNet/IP(EIP)拡張カード用のスロットを備えており、データ転送速度は最大1Gbpsです。各EIPカードはサブネットを作成し、制御可能な機械の数を増やし、機械レベルのネットワークをデータベースネットワークや工場レベルのネットワークからセグメント化します。ネットワークセグメンテーションは、異なるサブネットへのアクセスを制限することで、サイバー攻撃のリスクも低減します。
これらのコントローラはネットワークアーキテクチャの頂点に位置し、以下のようなさまざまな制御、情報、安全機能をサポートします(図3)。
- 制御
- 最大32軸のモーション、サイクルタイム250μs
- 最大64軸のサーボ制御
- 80MBのプログラムストレージ
- 260MBの可変ストレージ
- 情報
- OPC UAにより、製造実行システム(MES)および企業資源計画(ERP)システムに安全なコネクティビティを提供
- SQL機能により、データベースへの高速かつ信頼性の高い直接アクセスと生産データの通信をサポート
- MQTTは、クラウドへの直接接続と安全なデータ収集をサポート
- 1GbpsのEtherNet/IPポートを最大10ポート装備し、拡張ユニットによる高速大容量通信を実現
- 安全
- 最大8つのCIP Safetyネットワークにより、生産ライン全体のネットワークモジュール化と安全制御を実現
- 最大254のFSoE接続により、大規模生産ラインにおける高速かつ信頼の高い安全性を実現
図3:NX502コントローラ(中央)により、インダストリ4.0オートメーションネットワークの実装に必要なすべての機能を組み合わせることができます。(画像提供:Omron Automation)
ヒューマンマシンインターフェース
NAシリーズのアドバンスドプログラム可能ターミナル/HMIは、Sysmacのオートメーションデバイスやネットワークへの信頼性の高い便利なアクセスをオペレータやネットワークエンジニアに提供します。これらのワイドスクリーン端末は2つのEthernetポートを備え、制御装置への同時アクセスや保守作業をサポートします。また、プログラム可能なため、カスタムユーザーインターフェースを簡単に実装できます。
これらのHMIは、7インチ、9インチ、12インチ、15インチのサイズがあり、幅広いアプリケーションニーズに対応します。12インチと15インチのモデルは1,280×800ピクセル、7インチと9インチのモデルは800×480ピクセルを備えています。手袋をはめたオペレータも抵抗膜式タッチスクリーンを使用でき、必要に応じて防水仕様にすることも可能です。ファンクションキーは、ユーザーの操作を簡略化するようにプログラムできます(図4)。
図4:これらのプログラム可能HMIは、2つのEthernetポートを備え、防水仕様にすることができます。(画像提供:Omron Automation)
サイバーセキュアソフトウェア
Sysmac Studioには、産業用ネットワークの設計、検証、運用のための包括的でサイバーセキュアなソフトウェアツールが含まれています。これにより、ネットワーク設計者は、ロジック、モーション、ドライブ、ロボティクス、セーフティ、視覚化、センシング、情報技術を統合することができます。設計と検証における主な機能は以下の通りです(図5)。
- 安全装置の入力、出力、停止条件を含む真理値表に基づく自動プログラミング
- 入出力条件やプログラム機能を説明するヘルプファイルをサポートするユーザー定義の機能ブロック (FB)(不正な変更から保護するためのさまざまなセキュリティレベルに対応可能)
- 実際のハードウェアを接続することなく、別のコンピュータ上で実施できるオフラインシミュレーション
- 統合された安全機能のオンライン機能テスト(テスト結果はレポートとして出力可能)
図5:Sysmac Studioソフトウェアは、インダストリ4.0オートメーションネットワークの設計、検証、運用を包括的にサポートします。(画像提供:Omron Automation)
Sysmac Studioソフトウェアは、継続的な運用と保守もサポートします。ロギング設定と安全データロギングを含むSDメモリカードを使用して、ダウンタイムを最小限に抑えます。このデータにより、ネットワーク技術者は予期せぬシステム停止の原因を効率的に特定し、適切な予防・是正措置を講じることができます。
セーフティユニットは、メンテナンスの手間を省くため、自動構成再起動を復元します。
- 復元プログラムと設定は、セーフティユニット内のSDカードに保存されます。セーフティコントローラユニットを交換する場合は、保存されたプログラムと設定を新しいユニットにすばやくコピーできます。
- セーフティI/Oユニットを交換すると、自動構成再起動により設定データが自動的に新しいユニットにダウンロードされます。
まとめ
OmronのSysmacオートメーションデバイスとソフトウェアは、インダストリ4.0ファクトリオートメーションネットワークの完全なコネクティビティニーズをサポートします。その機能は、センサに接続するためのIO-Linkから、モーション、セーフティ、ビジョン、その他のコントローラにリンクするためのEtherCATやEtherNet/IPにまで及びます。FSoEとCIP Safetyのプロトコルもサポートしています。OPC UA、SQL、MQTTを使用する強力なコントローラとソフトウェアにより、工場ネットワークを企業のITおよびOTシステム、ならびにクラウドにリンクさせることができます。

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