省スペース設計のDINレールAC/DC電源と電子ヒューズを活用し産業用DC電源を確実に供給する方法
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2026-03-03
産業、工場、ビル、プロセスオートメーション、発電・配電、インフラ、データ通信・電気通信アプリケーション向けのAC/DC電源の設計者や仕様策定者は、電気的、物理的、導入、メンテナンス、安全性、コンプライアンスに関する数多くの課題に直面しています。これらの課題は、これらのアプリケーション向けに特別に設計された、容易に入手可能なDINレール電源と、ヒューズを慎重に選択することで解決できます。
本記事では、これらの電源を導入する際に直面する課題について、簡潔に説明します。続いて、RECOM PowerのDINレールAC/DCおよびDC/DC電源ならびに対応ヒューズの製品ラインを紹介します。これらは産業用グレードのDC電源を確実かつ安全に供給します。
産業用電源の課題
産業用アプリケーション向けの電源は、小型で、幅広い3相ACまたは高電圧DC入力に対応し、高効率で、数多くの規制要件を満たし、冗長性のための並列運転をサポートし、そして堅牢なユーザーおよびシステム保護を提供することが求められます。さらに、パッシブ冷却のみを使用しながら広い温度範囲にわたって性能仕様を満たし、高い平均故障間隔(MTBF)による総合的な堅牢性を示し、導入およびメンテナンスにおいてコスト効率に優れていることも求められます。
これらのアプリケーション要件は、カスタム設計や特殊なフォームファクタを排除し、DINレール取り付け電源とヒューズを好ましい選択肢としています。課題は、用途に最適化するための慎重な選定へと移行しています。
電源:パッケージングから始める
電源は、システムの完全性における重要な役割を担っているにもかかわらず、しばしば過小評価されています。その設計は、パッケージングから始まります。パッケージングは、産業環境における電気的、機械的、熱的性能に影響を与えます。そのため、ほとんどの場合、産業用電源は標準的なDINレール取り付け用に設計されています(図1)。
図1:DINレールにさまざまなタイプのモジュールが取り付けられた産業用キャビネットは、前面からのモジュールの取り付けや取り外しが容易で、配線にもすぐにアクセスできます。(画像提供:Hackaday)
このレールは、機器キャビネットまたはエンクロージャのリアパネルに取り付けられています。モータドライブ、ループコントローラ、電源、信号インターフェース、安全サブシステム、通信インターフェースなどのすべての電気モジュールはこのレールに取り付けられ、すべての電源および信号接続に前面からアクセスできます。
DINレール方式は、モジュールの接続を前面と背面で行われる19インチラックとは大きく異なります。このラックは、実験室計測器や試験・計測システムで広く使用されています。DINレールはより便利で実用的です。それは収容すべきモジュール数が多いため、キャビネット内のスペース確保は常に大きな課題となっているからです。
産業用アプリケーションの多くのAC/DC電源は、3相、320VAC~575VACのライン入力で動作し、モータコントローラなどの負荷に対して、クリーンで安定した過渡現象に強い24VDCまたは48VDCを供給する必要があります。さらに、現在では430V~815Vの高電圧DC電源からの動作を必要とするアプリケーションも増加しています。DC電源の使用は、マイクログリッドベースのファクトリオートメーションアプリケーションや、バイオガス、太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギーソリューションに適しています。
DINレール取り付けによる産業用アプリケーションの電源供給という難しい要件を満たすために、設計者はRECOM Powerの3相RACPRO1ファミリのAC/DC電源を使用することができます。本製品は高電圧DC入力にも対応しています。
たとえば、RACPRO1-T240/24、RACPRO1-T480/24、RACPRO1-T960/24(図2、左から右)は、それぞれ240W、480W、960Wの電力レベルを24V出力で供給します。48V出力のバージョンも用意されていますが、その他の仕様は同じです。さらに、これらの電源の公称出力電圧は、24V~28V(最大)まで、また48V~56V(最大)まで調節可能です。
図2:小型のRACPRO1-T240/24(左)、RACPRO1-T480/24(中央)、RACPRO1-T960/24(右)のDINレール電源は、それぞれ240W、480W、960Wを供給します。(画像提供:RECOM Power)
これらのモジュールの重要な特長は、その小型フォームファクタです。具体的には、各電源の幅はそれぞれ43mm、52mm、80mm(1.69インチ 、2.05インチ 、3.15インチ )となっています。3つのモジュールすべての高さは135mm(5.31インチ )ですが、奥行きはモデルにより異なり、140mm~156mm(5.51インチ~6.14インチ )の範囲となります。設置業者や技術者にとって重要な特長は、モジュールが工具不要で迅速かつ容易な取り付け、取り外しを可能にするように設計されていることです。具体的には、+25°プッシュインコネクタを備えたプッシュイン式ワイヤケージクランプを採用しています。
RACPRO1シリーズの高い効率性は、運用コストの削減と電源の発熱低減を実現します。そのため、より小型のヒートシンクと、放熱に必要な表面積を少なくすることが可能となります。
これらの電源は、ファンやその他の能動的なシステムによる強制空冷を必要とせず、自然対流のみによる冷却で設計されています。これは、産業環境における利点の1つです。各モジュールには、冷却のための「煙突効果」を最大化するために、2つの独立した空気流チャンネルが組み込まれています。
本シリーズの小型化と高効率は、スマートなレイアウトと部品選定によって実現されています。RACPRO1-T960/24ユニットの効率は96%、RACPRO1-T240/24およびRACPRO1-T480/24の効率はそれぞれ94.1%と95%です。さらに、数百ワットもの電力を供給しながらも、これらの電源は無負荷時で1Wしか消費しません。
これらの電源の効率性と冷却性能により、高い動作温度に対する動作保証が可能となっています。960WのRACPRO1-T960/24電源は、+60°Cまで定格出力電力を供給可能です。240WのRACPRO1-T240/24は、+70°Cまで動作可能温度範囲が若干広がっています。
懸念されるのは高温環境だけでなく、屋外設置の空調機器など、多くのシステムが極寒環境にさらされています。このニーズに対応するため、RACPRO1電源は-40°Cでの動作が保証されています。
電気的性能および特長
産業環境向けの電源は、入力電圧や負荷の範囲にわたって公称値の電圧を供給するだけでは不十分です。その他に要求される特性としては、高い逆起電圧耐性、高いサージ保護性能、パワーブースト機能などがあります。
- モータなどの非抵抗負荷に電源を投入または切断する際に、電源の出力に逆流(バックフィードとも呼ばれます)が発生する可能性があります。逆起電圧耐性は、逆流電圧に耐える能力を指します。RACPRO1電源では、24V出力は35Vまでの逆起電圧耐性を備え、48V出力は63Vまでの逆起電圧耐性を備えています。
- ラインサージに対しては、関連する業界および規制基準で定義されている6kVまでのサージ保護性能を備えています。
- これらの電源は、定格出力電力を一時的に超える負荷に対応するためのパワーブースト機能を提供します。たとえば、高出力のRACPRO1-T960/24は、6秒間(s)にわたり出力を150%までブーストすることができ、過渡的な負荷状態による多くの障害をなくすことができます。
480Wおよび960WのRACPRO1ユニットのもう1つのユーザーフレンドリーな機能は、電源が供給している定格出力電力の割合を示す、シンプルな単一の垂直LEDラインです(図3)。
図3:480Wおよび960WのRACPRO1モジュールには、電源が供給している定格出力電力の割合を示す便利なインジケータが搭載されています。(画像提供:RECOM Power)
解析、設計、評価による信頼性
あらゆるアプリケーションに信頼性が求められます。RACPRO1ユニットでは、高効率化により発熱が抑えられ、部品の信頼性が向上しています。また、RACPRO1シリーズは、熱性能、MTBF、内蔵保護機能といった主要な性能指標に対応し、最高の性能と効率を実現するように設計されています。さらに、過電圧、短絡、サーマルシャットダウン保護などの保護機能が組み込まれているため、耐久性が向上し、過酷な産業環境での継続的な動作が保証されます。
長期的な信頼性を検証するため、RECOMは各モデルに対し、長時間の応力シミュレーション、衝撃・振動試験、高温耐久性評価など、厳しい耐用年数試験を実施しています。モデリング、解析、テストによると、これらの電源の寿命は、最も過酷な条件である全負荷状態において、40°Cで約80,000時間であることが示されています。
しかしながら、内的要因であれ外的要因であれ、まれに発生する故障さえも許容できない用途も存在します。こうした用途において、RACPRO1-T480/24および-T960/24モデルは、冗長性確保または出力容量増強のため、2台以上のユニットを並列接続することができます(図4)。
図4:RACPRO1-T480/24およびRACPRO1-T960/24は、並列使用により、バックアップ冗長性の確保や定格出力の増強が可能です。(画像提供:RECOM Power)
この構成により冗長性が確保されるだけでなく、負荷分散もサポートされ、両電源が均等に電力を分配します。これらの機能により、システムのダウンタイムを防ぎ、生産性や安全性に影響を及ぼす可能性のある産業用オートメーション環境やその他の運用において、安定した電力供給を維持します。さらに、これらの電源の明確に定義された定電圧/定電流(CV/CC)出力特性により、追加のバックアップのためのバッテリ充電が可能となります。
規制要件への対応
電源は、他の電子製品と同様に、数多くの規制要件の対象となっています。その中には、力率(本電源では0.9以上)、電磁妨害(EMI)、異なる電力レベルにおける効率、無負荷時の消費電力など、動作面に関連しています。その他に安全関連の要件もあります。
数多くの電気性能認証の中でも、これらの電源はEN 61000-6-4 Class B(放射ノイズ)およびEN 61000-6-2(耐性)に準拠しています。また、本製品は、安全規格IであるEC/EN/UL 62368-1、IEC/EN/UL 61010-1、ならびにIEC/EN/UL/CSA 61010-2-201にも準拠しています。
万が一に備えたヒューズの追加
本電源には多数の保護機能が備わっているため、過電流に対する「トリップ」動作を行うヒューズは不要と思われるかもしれません。確かにその通りかもしれませんが、設計者は万が一に備えて設置を希望する場合や、より一般的なケースとして、設置時に適用される電気工事規定で義務付けられている可能性があります。
このニーズに対応するため、RACPRO1シリーズはRACPRO1-4SP/24V/5ADINレール電子ヒューズ(eFuse)モジュール(図5)がサポートされています。これは従来の温度ヒューズや回路ブレーカの代替として使用することが完全に認められています。なお、このユニットはRACPRO1ファミリに限らず、あらゆる電源でも使用できることに注意してください。
RACPRO1-4SP/24V/5Aは、110.2mm × 72.0mm × 61.9mm(4.34インチ × 2.83インチ × 2.44インチ)と小型で、メインDCレールに接続される監視素子として機能します。この5Aモジュール(10Aバージョンも提供されています)は、独立した過電流制限制御とリアルタイム出力電流表示を備えた4つの個別に制御される負荷チャンネルに24VDCを分配します。
図5:RACPRO1-4SP/24V/5A DIN レール電子ヒューズモジュールは、各5A定格の独立した電子ヒューズが4つ搭載されています。(画像提供:RECOM Power)
各チャンネルは、事前設定可能な時間遅延により順次通電され、入力突入電流を低減します。システムの過負荷状態では、チャンネルは逆の順序で負荷を切断し、重要な機能を最後まで稼動させます。各チャンネルは動作上連動している場合もありますが、故障診断やメンテナンスを容易にするため、各チャンネルを個別にオン/オフの切り替えを行うことができます。
本電子ヒューズモジュールは、「過電流時開放」という従来型の温度ヒューズを単純に置き換える以上の機能を備えています。内部論理回路により制御され、負荷と電源を保護し優先順位を付けするとともに、過電流、不足電圧、過電圧状態を動的に検知し処理します。
各チャンネルは独立して保護されるため、個々の負荷の過負荷や故障状態がシステム全体の信頼性や機能に影響を与えることはありません。基本の最大チャンネル電流5Aに加え、本モジュールは5秒間150%のパワーブーストを提供し、誤動作防止のため最大100ミリ秒間150%を超える過負荷にも対応可能です。負荷シフト、モータ停止、始動時の電流スパイク、その他の妨害事象が予想され避けられない産業用設備において、これらはすべて重要な考慮事項となります。
追加のトラブルシューティング機能として、各チャンネルには状態表示用のLEDバーが備わっています(図6)。出力電流の状態は、緑色から黄色(電流が制限内)、オレンジ色(電流が制限値に到達)、赤色(過電流または短絡)へと変化させて表示します。
図6:4つの電子ヒューズそれぞれに、チャンネルの状態に関する重要な情報を素早く伝える多色のLEDストリップインジケータが備わっています。(画像提供:RECOM Power)
RACPRO1電源を補助するこれらの電子ヒューズは、+40°Cで80,000時間を超える寿命を持ち、工具不要のプッシュインおよびレバーリリース端子による容易な配線を実現しています。
まとめ
産業用アプリケーションの電源は、高電圧のAC主電源またはDCレールから低電圧DCを、小型のフォームファクタで高信頼性かつ効率的に供給することが求められます。RECOM PowerのDINレール取り付けRACPRO1モジュールは、設置とメンテナンスを簡素化しながら、これらの要件を満たします。補助的な4チャンネル電子ヒューズモジュールは、独立したチャンネルを提供すると同時に、より効果的な操作と故障検出・管理の向上のためにチャンネルを連結させることができます。
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