評価キットを使用した、制御された環境でのUSB Type-C™およびUSB PD製品の開発とテスト

著者 Steven Keeping(スティーブン・キーピング)

DigiKeyの北米担当編集者の提供

最新のUSBコネクタまたはケーブル、電力供給(PD)、およびプロトコル仕様(それぞれUSB Type-C、USB PD 3.0、およびUSB 3.2)により、コネクタが使いやすくなっており、USBのデータスループットと電力供給機能が向上しています。ただし、新しい仕様の利用に意欲的な設計者は、実装に数多くの課題があることに気付いているでしょう。特に、高電圧と高電流のサポートにより、互換性のない周辺機器が破損したり、ケーブル、コネクタ、およびポートがオーバーヒートしたりするおそれがあります。

USB Type-CとUSB PDに慣れていない開発者に必要なものは、制御された環境で適切なソフトウェアインターフェースを使用して新技術を試す手段です。これに対応するために、USBシリコンベンダーは、電源、PCへのUSB接続、および最新世代のUSBチップを含む基板とソフトウェアを搭載した評価キット(EK)を導入しています。このEKを使用すると、開発者は、ユーザーフレンドリーなインターフェースを備えた実績ある設計を使用してUSB Type-CとUSB PDを構成してみることができます。また、EKを開発者のプロトタイプのリファレンス設計として使用することもできます。

この記事では、最新のUSB Type-C仕様の主要な特性と、実装の複雑さについて説明します。また、ON SemiconductorSTMicroelectronics、およびTexas Instrumentsが提供するキットを紹介し、これらのキットを使用して新しいUSB技術の機能を安全に試す方法を示します。評価キットおよび基板のベースとなっている内蔵部品を新しい製品に設計し直して、性能の向上を活用しながらスペースを節約して部品数を減らすことができます。

最新のUSB仕様にアップグレードする理由

製品を最新のUSB仕様に更新する主な理由は次のとおりです。

  • 利便性の向上:USB Type-Cは、消費者にとって扱いやすい小型のリバーシブルプラグコネクタをベースにしており、最新の民生用電子機器のフォームファクタにより適しています。
  • 高スループット:USB 3.2(2017年に導入され、現在は以前のすべてのUSB 3.x仕様を吸収している)では、データ速度が1秒あたり最大20ギガビット(ギガビット/秒)です。
  • 高出力:USB PD 3.0は、タブレットやポータブルコンピュータを最大100W(5A x 20V)で急速充電できます。

USB Type-CコネクタはUSB 3.2 Gen 2x2に必須で、この規格の今後のバージョンはこのコネクタとのみ互換性を持ちます(Type-AおよびType-Bコネクタとの互換性はありません)。仕様には、4つの+5Vグランドのペアを提供する24ピンコネクタ、USB 2.0データバスの2つの差動ペア、SuperSpeedデータバスの4つのペア、2つの「Sideband Use」ピン、アクティブケーブル用のVCONN +5V電力、および接続のケーブル方向検出と管理用のチャンネル構成(CC)ピンが含まれます。特定の用途で使用されるピンは、採用されている通信プロトコルと電力供給要件によって変わることに注意してください(図1)。

USB Type-Cの24ピンコネクタの図図1:USB Type-Cの24ピンコネクタは、接続のケーブル方向検出と管理に使用されるCCピンとリバーシブルです。(画像提供:Texas Instruments)

「十分な機能を備えた」USB Type-Cコネクタおよびケーブルでは、最速のUSBデータ速度をサポートできます。たとえば、USB Type-Cでは、設計者はUSB 3.2 Gen 1(SuperSpeed 5ギガビット/秒)、USB 3.2 Gen 2(SuperSpeed 10ギガビット/秒)、またはUSB 3.2 Gen 2x2(SuperSpeed 20ギガビット/秒)プロトコルを選択できます。最新の仕様の機能をサポートできない、「十分な機能を備えていない」USB Type-Cコネクタおよびケーブルの組み合わせがあることに注意してください。この記事の以降の部分では、十分な機能を備えたUSB Type-Cハードウェアのみを使用する設計について検討します。

USB Type-Cを使用すると、設計者は、USB PD 2.0または3.0電力プロトコルで利用可能な最大限のUSB PD電圧および電流を活用することもできます。USB PD 2.0以降の仕様では、5V、9V、15V、および20Vの4つの電圧レベルが定義されています。また、元のUSB PD規格の6つの固定レベルの代わりに、電源で0.5~100Wの最大出力をサポートできます。15Wを超える電源では5Vと9Vの電圧、27Wを超える電源では5V、9V、および15V、45Wを超える電源では5V、9V、15V、および20Vが供給されます。このような電圧と電流のさまざまな組み合わせは「電力プロファイル」と呼ばれます。

柔軟性の高い電力レベルには多くの利点がありますが、複雑さが増すほか、技術により高電圧と高電流がサポートされるため、設計上の興味深い課題が生じます。たとえば、USB PDには、USB PD電力プロファイルをネゴシエートして実装するためのポートコントローラという追加の部品が必要です。USB Type-Aの設計に慣れている設計者は、このような違いにすぐに慣れることができないため、最適でない設計や破損の可能性がある設計を決断するリスクが高まります。

たとえば、USB PDを搭載したUSB Type-Cシステムを、A~CケーブルでUSB Type-Aポートに接続できます。USB Type-AポートのVBUSは約5Vで維持されていますが、USB PDを搭載したUSB Type-Cポートは5Aで最大20Vを供給できます。VBUS電圧の高いポートから他方のポートに電流が流れ、多くのUSB Type-Aポートのパワースイッチは逆電流保護を備えていないため、高電圧により破損するおそれがあります(USB Type-CとUSB PDの設計の詳細については、DigiKeyの記事「USB Type-CとUSB PD給電規格を利用した急速充電の実現」を参照してください)。

USB Type-Cの複雑さの管理

USB Type-CとUSB PDによる多用途性は、構成可能なケーブル、ポート、および電源設定によって実現します。USB Type-Cコネクタは、CCを使用して接続を電子的に検出し構成します。USB Type-Cポートは、ホスト専用ポート、デバイス専用ポート(従来のUSBのホストとデバイスのロールで機能)、またはデュアルロールポート(DRP)にすることができます。ホストは下向きポート(DFP)で、デバイスは上向きポート(UFP)です。

USB Type-Cのその他の利点は次のとおりです。

  • デュアルロールポートを再構成できます。たとえば、ポータブルコンピュータは、ミニファンへの電力供給時にモニタまたはDFPによって充電される場合にUFPとして機能します。
  • VBUSでUSB Type-C規格電源とUSB PDのどちらが使用されているかを電子的に判別し、必要に応じてVCONNを構成することができます。
  • オプションのオルタネイトモードとアクセサリモードがサポートされます。

ポートコントローラはPDコントローラと連携して電力の要件と方向をネゴシエートし、たとえば、スマートフォンのようなバッテリ容量の少ないデバイスがポータブルコンピュータのような高出力要件を持つデバイスに電力を供給しようとしないようにします。多くの場合、ポートコントローラにはマイクロコントローラが組み込まれているため、外部デバイスが電力トランザクションを監督する必要はありません。

複雑さを管理して適切な設計を実現できるように、USBチップサプライヤは評価キットを導入しています。評価キットでは、設計者は最適化され保護された回路を試用して、用途に最適なUSB Type-CおよびUSB PDの構成を評価できます。たとえば、ON SemiconductorのSTR-USBC-4PORT-200W-EVKは、USB Type-Cの4つのポートを搭載した200WのEKです。このキットを使用すると、開発者は、5V、9V、15V、および20Vの電圧出力と最大5Aの電流で、ポートあたりの最大出力が100WのUSB PD 3.0の機能を試すことができます。電源の制限により、このEKは4つのポート全体で合計最大出力が200Wに限定されています。

STR-USBC-4PORT-200w-EVKは、USB PDポートコントローラ、高電圧保護スイッチ、および降圧電源コントローラで構成されています。90~265Vの入力で動作するAC/DC電源を搭載しています。過電流保護と熱保護が組み込まれています。このEKにはON SemiconductorのStrataソフトウェアが付属しており、電力プロファイルのテスト、さまざまな障害およびフォールドバック機能の実験、接続デバイスに可変充電負荷を与えた際のシステムテレメトリの監視を行う構成ツールを使用できます(図2)。

ON SemiconductorのUSB Type-C EKの図(クリックして拡大)図2:ON SemiconductorのUSB Type-C EKは、200WのAC/DCフロントエンドと4ポートのUSB PD出力を備えています。(画像提供:ON Semiconductor)

このEKのポートコントローラはON SemiconductorのFUSB307Bで、USB PD機能を搭載したUSB Type−Cポートコントローラ(TCPC)を実装するように設計されています。チップは、USB Type-Cポートマネージャ(TCPM)の標準化されたインターフェースを備えたTCPCとしてUSB PDインターフェース仕様に準拠しており、手動による脱着を検出できるUSB Type-C検出回路が組み込まれています。チップのタイムクリティカルなPD機能は自律的に処理されるため、システムマイクロコントローラまたはTCPMを使用する必要はありません。

STMicroelectronicsはSTEVAL-ISC004V1 USB PD EKを提供しています。このEKは、同社のSTUSB4710A USB PDコントローラをベースにしたすぐに使えるUSB PDソースで、固定電圧のDC電源入力をUSB PD可変電圧出力に変換する方法をデモンストレーションします。USB PDコントローラはUSB Type-C CCを介して通信し、接続デバイスに供給する所定量の電力をネゴシエートします。マイクロコントローラのサポートなしでDFPまたはUFPへの接続を処理できます。

Texas Instruments(TI)も、USB Type-CドッキングステーションインターフェースEKのUSB-CTM-MINIDK-EVMを提供しています(図3)。このEKは、USB PD、オーディオ、USBデータ、電源、およびビデオを含むUSB Type-Cドックのリファレンスソリューションです。USB Type-Cの1次PDポートでソースとシンクの両方の電源機能をサポートします。外部USB Type-C充電器から電力が供給されると、ドックは3Aで5V、5Aで12~20Vを調達できます。

このEKには以下が組み込まれています。

  • TUSB8041:DFPとUFPの両方を介して最大でSuperSpeedのUSBを提供できる、4ポートのUSB 3.0ハブコントローラ。
  • TUSB321:ポートの脱着、ケーブル方向、およびロール検出を判別するためのTCPC。チップはDFP、UFP、またはDRPとして構成できます。
  • TPS65982:USB PDのネゴシエーションとパワーパスの有効化を行うUSB Type-Cコントローラ。

Texas InstrumentsのUSB-CTM-MINIDK-EVM USB Type-CインターフェースEKの図図3:TIのUSB-CTM-MINIDK-EVM USB Type-CインターフェースEKは、USBデータ、USB PD、オーディオ、およびビデオを含むUSB Type-Cドックのリファレンスソリューションです。(画像提供:Texas Instruments)

ON Semiconductor、TI、およびSTMicroelectronicsのEKを使用すると、技術者はUSB PDを搭載したUSB Type-C設計のセットアップと構成のプロセスを把握できます。

ON Semiconductor EKでの開発は、同社のStrata Developer Studioを使用して行います。開発者はまず、EKにAC電圧を加えてUSB Mini-BケーブルでPCに接続し、ログインして、PCがEKを検出して関連コンテンツをダウンロードできるようにする必要があります。

開発者はシステムの基本設定を行うことができます。この設定には、最大システム電力(30~200W)、4つのポートからの合計PD「コントラクト」がAC電源からの合計電力を超えないようにする設定、ポート1に割り当てられた量の電力が常に供給され、その他のポートで残りの電力を共有する「保証電力」設定などがあります。また、フォールト状態を示す温度閾値を特定するフォールト保護設定もあります。

その後、開発者は次のような個々のポート設定を試すことができます。

  • 最大ポート電力:設定すると、上限を超えるコントラクトが提供されなくなります。
  • 電流の制限:0~6A。
  • ケーブル補償:高電流の調達時にシンクデバイスでの電圧降下を低減します。
  • アドバタイズ済みプロファイル:デバイスを接続すると、シンクデバイスに提供されているプロファイルのリストが表示されます。

ブラウザにアクセスすると、USBポートへの合計入力電圧および電力や、プロファイル(ボルト)、PDコントラクト(ワット)、出力電圧および電力、温度、効率などの各ポートの性能に関する情報を詳しく確認できます。EKをオシロスコープに接続すると、VBUSトランジションなどのさらに詳細な性能情報を表示できます(図4)。

ON SemiconductorのUSB Type-C EKの動作特性のグラフ(クリックして拡大)図4:ON SemiconductorのUSB Type-C EKをオシロスコープに接続すると、チップの動作特性の詳細な分析を表示できます。(画像提供:ON Semiconductor)

STMicroelectronicsのEKは、ON SemiconductorのEKと同様に機能します。22V(最小)のDC電源およびUSB Type-Cコネクタを備えた周辺機器に接続すると、EKに搭載されたUSB PDコントローラの設定を、PCへのI2Cインターフェースを介して不揮発性メモリから読み取ることができます。開発者はPCインターフェースで、最大5つのPD電圧および電流出力、ピーク電流、および不足電圧と過電圧のロックアウトを再構成できます。PCで設定したこれらのプロファイルは、USB PDコントローラのメモリにプログラムして、接続された周辺機器への電力供給に使用できます。

TIのEKは、同社のUSB Type-Cイネーブラボードと併用する必要があります。イネーブラボードを、USB Type-AとUSB Type-B間のケーブルおよびDisplayPortケーブルでPCに接続します。次に、EKをUSB Type-CケーブルでUSB Type-Cイネーブラボードに接続します。開発者は、USB 3.0ハブ、TCPC、およびUSB Type-Cコントローラの構成をPCから直接試すことができます。

まとめ

USB Type-CとUSB PDを利用すると、接続された周辺機器への電力の供給またはそのバッテリの充電について、消費者の利便性、スループット、および電力供給が向上します。ただし、複雑さも増すため、USB Type-Aシステムにしか慣れていない開発者にとって実装は困難になります。

前述のように、USB Type-CとUSB PDに慣れていない開発者は、主要なUSBシリコンプロバイダが提供する評価キットを活用して、制御下で使いやすいユーザーインターフェースを介して技術を試すことができるようになりました。また、EKを開発者のプロトタイプのリファレンス設計として使用することもできます。

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著者について

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Steven Keeping(スティーブン・キーピング)

スティーブン・キーピング氏はDigiKeyウェブサイトの執筆協力者です。同氏は、英国ボーンマス大学で応用物理学の高等二級技術検定合格証を、ブライトン大学で工学士(優等学位)を取得した後、Eurotherm社とBOC社でエレクトロニクスの製造技術者として7年間のキャリアを積みました。この20年間、同氏はテクノロジー関連のジャーナリスト、編集者、出版者として活躍してきました。2001年にシドニーに移住したのは、1年中ロードバイクやマウンテンバイクを楽しめるようにするためと、『Australian Electronics Engineering』誌の編集者として働くためです。2006年にフリーランスのジャーナリストとなりました。専門分野はRF、LED、電源管理などです。

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