高密度で柔軟な相互接続を使用して、小型で高性能な患者モニタリング機器を設計

著者 Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

DigiKeyの北米担当編集者の提供

多くの慢性疾患や病状の患者モニタリングは、急速に拡大しています。患者モニタリングは、治癒の促進、合併症の回避、最適な健康状態の維持に極めて重要な場合があります。一般的な患者モニタリング機器の相互接続システムは、機器内や機器からのデータ、電力、制御信号を伝送します。また、データ、電力、制御信号を機器へ伝送します。データには、高解像度の画像が含まれることがあります。これらのシステムの設計者は、フォームファクタの小型化、機能セットの増加、高いシグナルインテグリティ(SI)とスムーズなデータ転送を必要とするデータレートの高速化など、数多くの、そしてしばしば相反する課題に取り組まなければなりません。

同時に、機器は患者にとって快適であり、医療従事者と患者にとって使いやすいことが求められます。モニタには複雑な機能が内在しており、その機能が重要であるにもかかわらず、快適性と使いやすさが重視されるのです。嵩張って不適切な、あるいは設計不良のコネクタや相互接続を使用すると、これらの目標が損なわれ、不必要なコストがかかります。

このようなアプリケーションの要件を満たすために、設計者はますます多くの洗練されたコネクタや相互接続の中から選択することができます。たとえば、特定のアプリケーション要件に応じて、設計者は、低コストの自動組み立てを可能にするフラットフレックス(FFC)高密度コネクタを選択できます。ワイヤ対基板ソリューションが現実的でない場合は、センターラインの間隔が小さいフレキシブルプリントケーブル(FPC)が選択可能です。コンパクトで使いやすい高速接続を実現するUSB Type-C®コネクタを選択することもできます。

この記事では、患者モニタリング機器の相互接続の必要性についてご紹介します。機器内の接続、機器と外界との間の接続についても取り上げます。そして、MolexのFFC、FPC、USB Type-Cコネクタの例を挙げ、主な特長や利点、正しい用途を説明します。

基板対基板の相互接続の必要性

FFCとFPCを組み合わせることで、設計者のニーズに応えることができます。設計者は、患者モニタリング機器に高密度で高速な基板対基板相互接続システムを求めています。これらのコネクタの中には、手動とロボットの両方の組み立て作業に使用できるものがあります。また、自動ロック機構によるシングルステップの嵌合が可能です(図1)。

画像:FFCとFPC図1:FFCとFPCは、手動とロボットの両方の組み立て作業に使用できます。また、自動ロック機構によるシングルステップの嵌合が可能です(図1)。(画像提供:DigiKey)

FFC基板対基板コネクタは、最大40GHzのデータレートに対応します。直角や垂直などの複数の薄型構成で最大80の接続が可能なため、柔軟な設計オプションを提供します。接続ピッチを1mm未満にして、タイトなパッケージ設計に対応できます。ZIF(Zero Insertion Force)、Non-ZIFなど、用途に応じた設計が可能です。

FFCの中には、150°Cまでの温度に対応したものもあります。汎用FFCケーブル、ロック式FFCケーブル、カスタムFFCケーブルなど、様々なケーブルオプションと一緒に使用できるように設計されています。これらのコネクタは、多くの場合、標準またはシールドFFCに対応しています。グランド端子は、LVDS(Low-Voltage Differential Signaling)などの高速プロトコルのニーズに対応します。性能を最大限に発揮させるために、シールドケーブルは、端子が接地されたコネクタに使用してください。

患者用モニタを外界に接続する

患者のモニタリングは、治療に対する身体の反応を介護者が理解するために非常に重要です。治療により、病気やその他の身体的疾患の影響を軽減または修復します。患者のモニタリングには、多くの場合、モニタされたデータを、モニタリングデバイスから離れた機器に転送することが必要になります。

USB Type-Cコネクタは、患者モニタリング機器を外部機器に接続する際に最適な選択肢となる場合があります。外部機器には、HDMIモニタやデータストレージシステムなどがあります。これらのコネクタは、対称的でリバーシブルなピン配列を採用しています。どちらの向きでも接続できるため、使いやすく、柔軟性があります(図2)。

図:対称的でリバーシブルなUSB Type-Cコネクタのピン配列図2:USB Type-Cコネクタは、対称的でリバーシブルなピン配列を採用しているため、使いやすく、柔軟性があります。(画像提供:DigiKey)

最新のUSB4プロトコルを実装するためには、USB Type-Cコネクタが必要です。USB4は、Thunderbolt 3インターフェースをベースにしています。DisplayPort、PCI Express(PCIe)データのトンネリングを可能にします。20ギガビット/秒(Gbit/s)の公称データレートをサポートし、最大40Gbit/sまで拡張できます。USB4では、複数のエンドデバイスが1つの高速リンクを動的に共有することができます。この高速リンクは、種類や用途に応じてデータ転送を最適化します。その結果、トンネリングを採用した場合、公称20Gbit/sのデータレートでは、USB 3.2と比較して、混合データを送信する際の実効スループットが高くなることがあります。

USB Power Delivery(PD)プロトコルは、最大20V、5A、100Wを供給し、充電やデータ転送機能の拡張などの用途に使用できます。USB Type-C PDは、マイクロUSB 2.0の1.8Aの充電容量と比較して、バッテリの充電時間を40%~64%短縮することができます。USB PDは、インテリジェントで柔軟なシステムレベルの電源管理を提供します。また、リアルタイムに方向を切り替えられる双方向性の電源をサポートしています。これらの機能により、DisplayPort、HDMI、PCIeなどの他の規格にType-Cコネクタを使用することができます。

Fast Role Swap(FRS)は、最新版のUSB Type-C PD仕様の機能拡張です。FRSを使用することで、ハブやドックから電源ケーブルが突然外れた場合でも、患者モニタリング機器などのUSBペリフェラルでデータ損失のリスクを低減できます。さらにSIを維持することも可能です。FRSは150μs以内に実行され、バッテリがソース、他のデバイスがシンクとなり、途切れることなく動作します。電力供給の方向が逆になっても、データ通信が途切れることなく一方向に継続されるため、システムの動作を維持し、不具合を防ぐことができます。

USB4でUSB PD性能を強化する機能がもう1つあります。それはPPS(Programmable Power Supply)です。PPSは、電圧や電流の小さなステップ変化を可能にします。パワーシンクがPPS対応の電源に接続されている場合、その電源から供給される電力の変更をリクエストできます。PPSは、リチウムイオン電池の高速充電を実現し、システム全体の電力効率を向上させます。これにより、熱負荷を軽減し、システムパッケージ密度を高めることができます。

医療用モニタリング機器の基板対基板コネクタ

前述のように、FFCとFPCを組み合わせることで、設計者は、患者モニタリング機器の要件を満たすことができます。手動またはロボットによる組み立てに対応した高密度で高速な基板対基板相互接続システムを実現できるのです。その好例が、MolexのEasy-On FFC/FPCコネクタラインのモデル0541324062です。このコネクタは40極、0.50mmピッチで、金メッキが施されています(図3)。

画像:Molexのモデル0541324062 Easy-On FFC/FPCコネクタ図3:Molexのモデル0541324062は、Easy-On FFC/FPCコネクタです。40極、0.50mmピッチで、金メッキが施されています。(画像提供:Molex)

モデル0541324062は、最大10Gbit/sのデータレートをサポートします。ポジティブ慣性ロックにより、ケーブルの完全挿入と確実な嵌合を実現します。20ニュートン(N)のケーブル保持力により、耐衝撃性と耐振動性を確保しています。堅牢なはんだタブにより、プリント回路基板の保持とストレインリリーフを実現しています。

Molexのモデル0151660431は、Premo-Flex FFCジャンパラインの製品です。Easy-On FFC/FPCコネクタのモデル541324062と組み合わせて使用されます。コネクタの40極と0.50mmピッチにマッチし、長さは102.00mmです(図4)。これは基板対基板相互接続システムです。スペースが限られたアプリケーションや届きにくいアプリケーションの課題を解決するのに役立ちます。

画像:Molexの0.50mmピッチPremo-Flex FFCジャンパ0151660431図4:Molexの0151660431は、0.50mmピッチのPremo-Flex FFCジャンパです。40極で、長さは102.00mmです。(画像提供:Molex)

Molexは、様々なケーブル長、回路サイズ、ピッチ、厚さのPremo-Flexジャンパを提供しています。これらのケーブルは105°Cの定格で、耐久性に優れ、極めて柔軟です。標準的なジャンパが6,000サイクルであるのに対し、900,000サイクルの屈曲寿命を実現しています。

なお、FFCジャンパをEasy-On FFC/FPCコネクタに着脱する際には、接点を損傷するようなスパークを避けるために、すべての電源がオフになっていることを必ず確認してください。また、ロック用アクチュエータを開閉する際には、アクチュエータの両側に力を加える必要があります。片側だけに力を加えると、コネクタが破損することがあります。最後に、フレックスケーブルをコネクタに挿入する際には、ケーブルに引っ張り力や張力がかからないようにしてください。そうしないと、アクチュエータが正しくロックされなかったり、ケーブルが損傷したり、トレースが切断されたりする可能性があります。

高速外部接続

Molexの1054500101は、USB Type-Cラインのコネクタです。このようなコネクタは、デバイスに電力を供給しながら、患者モニタリングのシームレスなデータ転送や高SIをサポートします(図5)。Molexは、USB Type-Cコネクタに3つのインサート成形プロセスを採用することで、嵌合舌部を単一部品にし、水の浸入を最小限に抑えています。また、3つのインサート成形プロセスを追加することで、端子の浮き上がりや曲がりのリスクを最小限に抑え、高い機械的耐久性と電気的信頼性を実現しています。これらのコネクタは、10,000回の嵌合/抜去サイクルを実現し、耐久性に優れたソリューションです。不適切な嵌合や過酷な使用にも耐えることができます。

画像:Molexの1054500101 USB Type-Cコネクタ図5:1054500101などのUSB Type-Cコネクタは、シームレスなデータ転送をサポートし、医療用モニタリング機器に電力を供給することができます。(画像提供:Molex)

これらの高性能コネクタには、次のような特長があります。

  • 高速ネットワークアプリケーションをサポートする最大40Gbit/sのデータレート
  • 4K解像度の高画質ディスプレイに対応
  • EMI/RFI保護を提供するシールド
  • ハウジングとシェルの間にマイラープラグを使用することで、嵌合時の電気的短絡を防止
  • 安定した電気的性能により、高い電流容量に対応し、温度上昇を最小化

USB Type-Cコネクタでは、電力容量が増加し、ピン間隔が非常に狭いため、設計者は、熱暴走が発生した場合の安全性や火災の危険性に注意する必要があります。通常の状況下では、USB PDの電源ルールにより安全な動作が保証されます。しかし、コネクタやケーブルが損傷していると、安全領域外での動作につながる可能性があります。USB Type-Cコネクタやケーブルの設計には、多くの場合、過電流保護デバイスや過温度保護デバイスが含まれています。これにより、熱暴走の可能性を低減できます。

USB Type-CケーブルのSuperSpeed伝送の差動ペアは、差動インピーダンスが90Ωです。また、代替モードを使用する設計は、90Ωに対応していなければなりません。

まとめ

患者モニタリングの必要性が高まる中、患者モニタリングシステムの設計者は、高性能なコネクタと関連する相互接続ケーブル、ジャンパを必要としています。こうしたコネクタ、ケーブル、ジャンパは、複数の種類の高速データ、電力、制御信号を確実に患者へ伝送できます。もちろん、患者からのデータ、電力、制御信号の伝送も可能です。接続は、多くの場合、限られたスペースで、コストを最小限に抑えて行われる必要があります。また、患者の快適性への影響を最小限に抑えながら、使いやすさを維持しなければなりません。

前述のように、FFC、FPC、USB Type-Cコネクタは、これらの課題を解決するために登場しました。効率的な組み立て、高いSIを実現し、使いやすさを向上しています。これらのコネクタと相互接続を適切に組み合わせることで、設計者は電気的性能から治療の質に至るまで、患者モニタリング特有の複雑な問題に対処することができます。

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著者について

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Jeff Shepard(ジェフ・シェパード)氏

ジェフ氏は、パワーエレクトロニクス、電子部品、その他の技術トピックについて30年以上にわたり執筆活動を続けています。彼は当初、EETimes誌のシニアエディターとしてパワーエレクトロニクスについて執筆を始めました。その後、パワーエレクトロニクスの設計雑誌であるPowertechniquesを立ち上げ、その後、世界的なパワーエレクトロニクスの研究グループ兼出版社であるDarnell Groupを設立しました。Darnell Groupは、数々の活動のひとつとしてPowerPulse.netを立ち上げましたが、これはパワーエレクトロニクスを専門とするグローバルなエンジニアリングコミュニティで、毎日のニュースを提供しました。また彼は、教育出版社Prentice HallのReston部門から発行されたスイッチモード電源の教科書『Power Supplies』の著者でもあります。

ジェフはまた、後にComputer Products社に買収された高ワット数のスイッチング電源のメーカーであるJeta Power Systems社を共同創設しました。ジェフは発明家でもあり、熱環境発電と光学メタマテリアルの分野で17の米国特許を取得しています。このように彼は、パワーエレクトロニクスの世界的トレンドに関する業界の情報源であり、あちこちで頻繁に講演を行っています。彼は、定量的研究と数学でカリフォルニア大学から修士号を取得しています。

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