CCSコネクタを使用して安全なEV急速充電システムの実装を簡素化
DigiKeyの北米担当編集者の提供
2022-03-23
電気自動車(EV)の使用は、主に「走行距離不安」の継続的な軽減により、農業や自治体から消費者に至るまで、さまざまな用途で増大しています。高度なバッテリ技術によって単位体積あたりのバッテリ容量が大きくなり、走行距離が伸びていますが、バッテリ充電に時間がかかりすぎると、そのような進歩の効果が制限されてしまいます。そのため、自動車メーカーとその部品サプライヤには、急速充電方式を迅速に採用することが求められています。
充電において重要な部品の1つがコネクタです。コネクタは現在、最大1,000V DCで最大500kWに対応する必要があります。また、AC電源にも対応することが求められています。さらに、安全でインテリジェントな急速充電に対するIEC 62196およびSAE J1772規格の要件も満たす必要があります。BEVシステムの設計者は、車載用および非車載用システムのあらゆる需要を満たすために、複合充電システム(CCS)の仕様に適合するコネクタを利用できます。
この記事では、EV充電の基本的なレベルとモードを確認した上で、CCSコネクタの要件について、CCSタイプ1、CCSタイプ2、中国のGB/Tコネクタの比較も含めて解説します。最後に、Phoenix Contact、TE Connectivity、およびAdam TechのCCSコネクタを例にとり、より広い動作温度範囲やより高い侵入保護(IP)定格など、一部のサプライヤが提供している拡張機能について考察します。
EV用複合充電システム
CSS車両用インレットは、ACとDC両方の電源コネクタに対応するよう設計されています。車庫や駐車場に長時間駐車する場合はAC急速充電が効果的で、店舗、休憩所、専用充電ステーションなどで短時間駐車する場合はDC急速充電が利用されます(図1)。
図1:1つのCCS車両用インレットで、ACとDC両方の急速充電に対応できます。(画像提供:Phoenix Contact)
EV充電のレベルとモード
EV充電の分類には、充電レベル、充電モード、配線ケースが含まれ、CCSの場合は充電コネクタのタイプも含まれます。米国では、SAE J1772において3段階の充電レベルが認められています。
- レベル1は、家庭用120VAC電源を使用し、約1.9kWに制限されています。レベル1は低速充電です。
- レベル2の充電では、208/240VACの単相電源を使用します。240VACの電源で最大約19kWの供給が可能です。レベル2は「AC急速充電」で、レベル1の3~7倍の速さで充電します。レベル1とレベル2では、オンボードEV充電器に電力供給します。
- レベル3はDC急速充電で、外部のDC充電器を使用し、400Aで600VDC、合計240kWの電力を供給します。高性能なDC急速充電器は、500kW(500Aで1,000VDC)を供給できます。
欧州では、IEC 61851-1においてEV充電の4つのモードが定義されています。
- モード1の充電は、ACコンセントにケーブルを直接差し込むだけの簡単なものです。低電力で、使用頻度は多くありません。
- モード2でもACコンセントに直接差し込みますが、ケーブル内制御および保護デバイス(IC-CPD)と呼ばれる統合化された保護が追加されています。モード2はモード1よりも安全ですが、三相電源で最大15kW程度の充電しかサポートしていません。
モード3とモード4は、急速充電です。
- モード3では、専用の充電ステーション(EV供給装置またはEVSEとも呼ばれる)を使用し、最大120kWのAC電力を供給します。モード1、2、3では、いずれもEVのオンボード充電器を使用してバッテリ充電を制御します。
- モード4は、DC急速充電を指します。EVのオンボード充電器がバイパスされ、EVSEはDCコネクタを介してバッテリに電力を直接供給します。モード4では、数百kWの電力供給が可能です。モード3でもハイレベル通信プロトコル(HLC)と充電制御を用いたエネルギーフィードバックが可能ですが、モード4ではそれが必須となります。
接続のタイプ、モード、およびケース
CCSは、北米ではSAE J1772(コネクタタイプ1)、欧州ではIEC 62196(コネクタタイプ2)で標準化されています。EVとEVSEの間のHCLインターフェースは、ISO/IEC 15118とDIN SPEC 70121に基づいています。EVと電源の接続には、A、B、Cという3つのケースが想定されています。
ケースAの場合、ケーブルはEVに恒久的に接続され、必要に応じて電源に接続されます。ケースAは、CCSでは使用されません。ケースBとCは、CCSおよび、対応する中国の規格(GB/Tと呼ばれる)で使用されます(図2)。電源ケーブルが両端で取り外し可能な場合は、ケースBとなります。ケーブルがEVSEに恒久的に接続されている場合は、ケースCです。充電モード3では、ケースBまたはケースCのどちらかを使用します。充電モード4では、ケースCのみを使用します。
図2:CCSタイプ1(北米)、タイプ2(欧州)、GB/T(中国)の各コネクタのタイプ、モード、ケースの比較。(画像提供:Phoenix Contact)
温度モニタリングとアクティブ冷却
急速充電システムでは、接点温度のモニタリングが重要となります。IEC 62196によると、接点での温度上昇が50℃を超えてはいけません。温度データの通信には、EVとEVSEの間のHCLインターフェースを使用します。温度が上がりすぎると、EVSEは充電を遅らせたり停止したりします。AC充電用CCSコネクタの場合は、DIN 60738で要求されているように、正温度係数(PTC)サーミスタが温度を監視します。コネクタが熱くなりすぎると、充電が停止します(図3)。DC急速充電の場合、DIN 60751ではPt1000センサを2個(各接点に1個)使用することが求められています。Pt1000センサの抵抗は、温度の上昇に伴い直線的に増加します。
図3:PTC温度センサはAC充電をシャットダウンし、温度が安全レベルを超えないようにします(左)。DC急速充電の場合は、Pt1000センサで温度を継続的に監視できます(右)。(画像提供:Phoenix Contact)
250A以上の充電電流を供給するシステムでは、アクティブ冷却とともに、温度モニタリングが必要となります(図4)。アクティブ冷却設計により、CCSコネクタは最大500kW(1,000VDCで500A)を供給できるようになります。周囲温度が予期せず上昇したり、過負荷状態が発生したりする場合は、温度モニタリングを使用することで、システムが冷却速度を上げたり充電速度を下げたりして、コネクタ接点の温度上昇を+50℃の仕様限界以下に保つことが可能になります。
図4:温度センシングを組み合わせたアクティブ冷却により、500Aのフル充電に対応し、コネクタの温度上昇を+50℃以下に保つことができます。(画像提供:Phoenix Contact(筆者による変更あり))
内蔵のロック機構
CCSのコネクタシステムには、ロック機構が内蔵されています。タイプ1コネクタのロック機構は、手動によるクリップ機構です。タイプ2コネクタでは、電磁力で作動する金属製ボルトを使用してロックします(図5)。ロックは制御され、その状態が別の接続を介してEVSEに伝達されます。
図5:CCS車両用インレットには、高い引き抜き力に耐えられるよう電気機械的に制御されたロックボルト(赤い矢印の横、左上)が装備されています。(画像提供:Phoenix Contact)
タイプ1と2のインレットおよびコネクタ
Phoenix ContactのCHARX CCS充電インレットは、最大95平方ミリメートルのDCケーブル断面を有し、最大500kWの充電速度に対応します。モデル1194398は、通常動作で125kW、ブーストモードで最大250kWの充電を実現します(図6)。このCCSタイプ1インレットは、充電モード2、3、4で使用するように設計されています。また、AC接点にPTCチェーン温度センサ、DC接点にはPt1000センサを搭載しています。
図6:ACまたはDC電源で充電するためのモデル1194398 CCSタイプ1車両用充電インレットは、通常動作で125kW、ブーストモードでは最大250kWを供給します。(画像提供:Phoenix Contact)
より高い電力が必要な場合、Phoenix Contactの1162148車両用充電インレットは、バーストモードで500kW、通常動作でも250kWの充電速度に対応します。ISO/IEC 15118およびDIN SPEC 70121に準拠した電力線通信により、パルス幅変調(PWM)を使用したデジタル信号伝送を実現しています。その周囲動作温度範囲は、-40°C~+60°Cです。
レベル2充電のためにCCSタイプ1のACプラグが必要な用途では、TE Connectivityが提供するAMPコネクタのモデル2267220-3を使用できます(図7)。このコネクタは、240VACおよび32A定格で、3つの電源接点と2つの信号接点を備えています。また、-55°C~+105°Cの拡張動作温度範囲を備え、定格は10,000嵌合サイクルです。
図7:手動ロックシステム(コネクタの左側)が内蔵されたCCSタイプ1のEV充電コネクタ。(画像提供:TE Connectivity)
Adam TechのEV充電器用ケーブルアセンブリには、タイプ1とタイプ2のプラグがあり、ケーブル長は3m(9.84フィート)または5m(16.4フィート)で、IP54またはIP55の侵入保護(IP)定格を備えています。たとえば、CA #EV03AT-004-5Mはタイプ2のコネクタで、5mのケーブルとIP55定格を備えています(図8)。また、5つの電源接点と2つの信号接点を備え、定格は16Aで480VAC、動作温度範囲は-30℃~+50℃です。
図8:CA #EV03AT-004-5M CCSタイプ2コネクタの定格は、16Aで480VACです。(画像提供:Adam Tech)
CCS仕様の考慮事項
CCS車両用の充電インレットとコネクタの全体的な機械的特性と電気的特性は標準化されていますが、これらのデバイスを指定する際に設計者が注意すべき領域がいくつか存在します。
IP定格:この定格は、接続時、カバーなしの取り外し時、カバーありの取り外し時など、いくつかの方法で規定されます。カバーなしプラグの中には、IP20定格のものもあります。これは、タッチプルーフであり、埃や12mmを超える大きさの物体への耐性を有するという意味です。しかし、液体に対する保護はなく、水しぶきがかかるとダメージを受けやすくなります。IP54、IP55、IP65の定格は、CCSプラグのカバー時および接続時に一般的です。IP65のユニットはIP54と比べて防水性能が高くなりますが、IP55のユニットと比較すると防水性能は同じです。IP54とIP55のユニットは、IP65のユニットと比べて防塵性能が劣ります。
動作温度範囲:この仕様に対する規格はありません。-30℃~+50℃、-40℃~+60°Cなどの範囲が一般的ですが、-55℃~+105°Cのような拡張範囲も使用可能です(上記のTE Connectivityの2267220-3を参照)。
温度測定用部品:これは、PTCデバイスを使用するAC接点とPt1000センサを使用するDC接点に対して標準化されています。データシートの表現は、ここで混乱することがあります。ACユニットでは、「PTC」の使用が求められることもあれば、「PTCチェーン」の使用が求められる場合もあります。各接点にPTCがあるため、正しい名称は「PTCチェーン」となります。データシートで単純な「PTC」が求められている場合、設計者は「PTCチェーン」が使用されていることを確認する必要があります。Pt1000センサに対しては、データシートによっては感度が低くCCS規格に適合しないPt100センサが求められている場合があります。「100」の方が「1000」よりも広く使用されているため、Pt1000センサをPt100センサと呼ぶのはよくある間違いです。設計者は、確かにPt1000であることと、各接点に1個ずつあることを確認する必要があるのです。
まとめ
BEVのAC/DC急速充電は、EVバッテリの大容量化と走行距離延長に対する需要をサポートしています。AC急速充電は、比較的短距離を走行するEVで使用されます。長距離走行のニーズに対しては、EVバッテリを数分で満充電の80%まで充電できる、高電力のDC急速充電が対応します。CCSは、車載および非車載アプリケーションにおいて、ACとDCの急速充電を組み合わせた安全でインテリジェントかつ効率的な方法を設計者にもたらします。
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